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003 帰ってきた息子が最初に紹介したクラスメートがサムライガール系女学生な話

今回、あの前の作品でもメインヒロイン(?)だったあの子がようやく再登場します。

 ○2026年3月31日朝 地球 日本国 鹿児島県南部 甘富(あまとみ)島 甘富(あまとみ)市瀬那 某農道○


「…はあ、やっと痛みが引いたよぉ…」

「…去年に初めて帰ってきた時を見た時はまたどんな化け物に襲われたんだと思わされた少年が…まさか息子だなんてあの日以前の私達が知ったらどう思うかなー」


 地元の教会での異世界外来生物による襲撃とその事後処理が済まされて数分後、私ダニエル・カールソンと異世界から超が付くやんごとなき方という正体を秘して戻ってきた息子ミカエル・カールソンは、教会から自宅を近道で繋ぐ農道をレンタカー屋に預けていて返してもらった車に乗って進んでいた。


「…こっちも、向こうの世界にここの記憶付きで戻って現状を認識したあの時はー、ここはどうなったんだーって内心ではめっちゃテンパったよー。まー…()()()()以外はそういう姿は向こうの人前では見せられなかったけどー…。それでもー…こうして変わってない()()()風景も残っているのは安心したよー」


 車窓の向こうには三月にしては燦爛と輝く太陽とその陽光に照らされて風に靡いて緑の海原のように揺れるサトウキビ畑が広がり、その中を巨大で白い発電用風車が悠々と廻っており、異世界連結前なら不自然な気温の高さも含めて私達は穏やかな雰囲気を覚えて安堵できていた。


「…三月なのにこっちの今は初夏な雰囲気を楽しめるとはなー。去年に繋がったばかりの時は毎週どころか毎時単位で寒暖の差が変わりまくるとか、何処の○ャンプの偉大な航路と繋がったんだって皆が愚痴りまってたがー…」

「父さーん、それ当時だけじゃなくって今もだからー。それにー繋がったばかりの頃に比べればこっちの技術協力もあって落ち着いた方だからー…止まって!」

「…む? 何だー…あれ、影がーーってのわぁ!?」


 その何気ない日常にも混じる異世界と繋がった故の変化を微細に感じ取る私達だったが、そこで大きな影に車が覆われると私の足は即座にブレーキを強く踏み、それで車が止まった一歩前を巨大な塔が横倒れとなってズシンと地面を揺らして鳴らした。


「…今度はいったい何だ? 異世界から来た巨大蛇か? 超大型ミミズかーーー………ってこれは…!?」


 私が悲しいことに慣れからくる少ししかない驚きと怪訝をもって車から出た確認したそれは、口にしたそれの何れではなかった。


「それは甘藷というにはあまりにも巨大すぎた。黍はあまりにも長く、太く、葉はあまりにも大きく、されど形自体は見覚えがあり過ぎた。それはまさに“巨怪藷”であった」

「何をそんな隻眼及び大砲仕込み義手の黒き剣士の得物のようなナレーションをするんだ息子よ。しかしまーー、異世界と繋がって流入してくるウィルスや菌などのおかげで、こっちの生物にも異常が生じるにはよく見られるようになってるがー…何でこんな急に倒れて来たんだー…?」


 息子が私も好きなダークファンタジー漫画のパロディのようなナレーションを口ずさんでいる横で、私は車から降りてその農道へ横倒れとなって塞いでいる巨大サトウキビに近づくと、畑の中に続いている根元だろう茂みに隠されたそこから何やらガリガリと何かを大きく噛んで削っていく音が聞こえてきた。


「ちょっと待って父さん、危険な生物かもしれないからー」

「そうだがここは家に近いからなー。その時はお前やその先生達を頼むよー」

「あーもー、こっちは表向き病み上がり程度だけどーまだ魂とか内臓とかはまだまだなのにー…ん? 何かこの齧る音って聞き覚えがあるようなー…!?」


 その音に釣られて私は作家生活で身についた取材欲求に釣られたことと、父親として情けない話だが戦闘力や権力云々では私よりも遥かに上である息子が少し呆れ顔ながらも付いてきてくれていることで、私は安堵して巨大サトウキビの根本があるだろう茂みを掻き分けて中を見ていくと、見覚えがあって且つ記憶から外れたあったものがいた。


「ガジガジガジガジ♪」


 私達がその茂みを開いて目にしたものは、巨大サトウキビの根本を美味しそうに大きな葉で齧り続けている、丸っこく黒い巨体は私達が乗っていた軽自動車と同程度のサイズはあり、耳は短くて遠目で見ればつぶらに見える赤い瞳を浮かべて鋭く大きな爪をサトウキビに当てている巨大な“兎”であった。


「…アマミノクロウサ…じゃなくてアマトミクロウサギがどうしてこんなデカい姿になって巨大サトウキビをかじり倒しているんだー!?」

「…あー、それはたぶんこの星にも各所で確認されている、宿主を急速に巨大化させる“シンゲ菌”にでも感染したと思うけどー…」

「息子よそんな名前を出されると私達とあっちのどっちかが駆逐されるんじゃないかって心配になる! もしくは全部とか!!」

「父さん、そんなこの子の前でそんな大声を出していると危ないよ。この子って警戒心が強いけど、逃げるのが普通な通常サイズと違ってサイズで言えばこっちよりも大きいんだから―――」


 原始的な兎の特徴を残しつつも明らかに異世界から微妙な影響を受けている地元の看板的動物に私が声を荒げていると、その兎がびっくりしたようにその体に比べて大きくない耳をビクンと縦に伸ばして驚いたアピールをしながら、その巨大な蹄を無防備となっていた私の背中に振り下ろそうとしているのを息子は見た。


「危ない!」

「ギギイイ!?」

「―――あ…」

「…え?」


 だが、その爪が私の背中に触れようとした瞬間に、巨大風船が巨人に踏みつぶされたような大きなパンという音が鳴り響き、それに叩き飛ばされたように巨大化兎はボールの如く転げまわってサトウキビをなぎ倒しながら、別の巨大化サトウキビの根元にぶち当たって止まって目を回して気絶している姿を晒した。


「…ふう、お母さ…あ、失礼、千美子さんから追加のおつかいを頼まれたので出てみたらこの場を見てしまったのでー、急いだのですがー間に合ったようですね」


 そうして横たわった巨大化兎の前に、夏の星を散りばめた涼しい夜空のような黒きストレートロングヘアーをポニーテールにして腰まで伸ばし、気品のある赤紫色の大きな瞳で凛々しく中性的な美貌をし、その和風と洋風が折衷したような黒を基調として白線で意匠が施された女子学生服の上からでも、女侍を思わせるスポーティーで機能的な筋肉と、瑞々しい肌の艶からして十代半ばなのはわかるがそれから不相応すぎるみごとな曲線美が調和した肢体なのがわかる、和風美少(?)女がスタっと白地に緑色の幾何学的な光線が走っている日本刀風サイバーソードを片手に降り立ってきた。


「あ、おはよう光代(みつよ)。今日はそっちも授業は午後からだったねー」

「ええ、そっちも何もなさそうで良かったです先生」


 そうして私の息子ミカエルと気さくに挨拶を交わすそのいかにもサムライ系クールビューティー美少女の名は日煉(にちれん)光代(みつよ)

 息子が異世界からこの地球へ戻ってきた時に同行してきた、異世界側の帝国の貴族に属していて同じ学校に通うクラスメートにして、異世界における息子の魔道学の弟子である。

 息子と一緒に通っていて今ではこの島にも深く関わりがある帝国の魔道学を中心に学ぶ名門校では風紀委員の一人を務め、成績優秀で真面目な優等生で、その美貌と性格に能力から同性含めて人気が高い良い子で、息子が我が家に戻ってから最初に紹介されて今では我が家にも親しんでいる身の一人だ。


「こっちはミカエルがいたけど大丈夫だがそっちは大丈夫かい?」

「ええ、この子も気絶していますけど大丈夫ですよ。この星の保護対象生物で何よりこちらの不始末と都合で巻き込まれた子ですから、魔道で切れ味をなくした風の衝撃波を撃ち放って脳を揺らして気絶させただけです」

「…あ、いやー…それも重要だけどー、君の身がもっと大事という話なんだがー…!?」


 だが、その鋭さも帯びている美貌とは裏腹に割と天然なところもあり、他にも欠点があるが今はその影響で、光代が巨大化兎を巨大ボールのようにぶち当てた巨大化サトウキビがベギベギと重くも大きな音を奏でながら倒れ始めた。


「まずい! 逃げろー!」

「ぐほぉ!?」

「先生!」


 それを見たミカエルは父である私を安全圏へ蹴り飛ばしつつ、自身は巨大化兎も逃がすべくその巨躯を掴み、光代もそれに続いて、魔道の力もあってその身からは想像できない怪力で巨大化兎も逃すべく避難させた。


「ぬおおお!?」

「うわァ!?」

「あぁ!?」


 何とか私達三人と一匹はどうにか逃げおおせて下敷きとならずに済んだが、巨大化サトウキビは大きな地響きを上げながら本来サイズの同胞を巻き込みながらぶっ倒れ、大きく土煙を吹き上げて私達に遠慮なく浴びせた。


「…ぺっぺっぺ! ど、どうにか助かったか…」

「…ま、まー…こっちはどうにか今回はほぼ無傷だけどー…周りの被害がー…この辺りの農家さんが見たら悲鳴を上げて反基地ならぬ反異世界運動でも起こしそうな惨状だけどねー…」


 十数秒後、どうにか土煙が収まって痛みも和らいで私は安堵するが、息子は周りの無茶苦茶になったサトウキビ畑の惨状に乾いた笑みを浮かべていた。


「…まあ、ダニエルさんの御作品にも出てくる…貴方の言われたあの言葉の通り何とかなりますよ先生」

「…光代」

「ほら“何とかできるようになるまで死なずにいればなんとかできる”…って…」

「…ああ…そうだね光代君…本当に、うちの息子にはもったいない教え子だよ…」


 その青空から降り注いでくる太陽の白光もお付きに変える光代の見た目の若さ通りの凛々しい前向きさと、彼女の真の経歴を知らされたが故の重いなんてものじゃない背景がある故のその意志の強さを知る身として、私は元気づけられるほかなかった。


「よし、じゃー生きているうちにさっきぶっ倒れた巨大サトウキビに押しつぶされた僕たちカールソン一家の車から出ている火とそれが移り始めているサトウキビ畑を何とかしよう」

「「…あ」」


 光代の天然と並ぶ精神的特徴の一つ“ドジっ子”を息子によって再認識させられたこととは分けてである。

やっと久々にメインヒロイン(?)であるこの子を登場させられました。

次回は、あの食品(?)も登場する予定です。

ちなみに今回のお話で登場した兎の元ネタはこちら(https://x.com/kaioosima/status/2067064111402520844)です。

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