ヒーローの代償
オオスズメバチを擬人化したような、なんとも気持ちの悪い男が顎をカチカチさせている。
不審者と私の間に立ちはだかる彼。手には殺虫スプレーを握っている。一本でどうにかなるわけなかろうが。
あんなもんに刺されたら、毒以前に刺し傷のせいで即死ものである。諦めかけたその時、どこからともなく現れたスーツ姿の男が、彼に一本のベルトを差し出した。
なんでも、装飾が光ると全身に装甲を纏うことができ、超人的な力を発揮できるようになるという。
ありえないことである。まるで日曜日の朝ではないか。
何でできているんだ、そのベルトは。
おおかた、未発表の科学物質がふんだんに練り込まれているんだろう。
ちゃんと治験したんだろうな。
装甲の耐性はテスト済みなんだろうな。
力持ちになるのはスーツの性能のおかげか?それとも体に何かしらの成分が入るからか?
戦い続けることによって影響を受けるメンタルのケア体制も、ちゃんと整えてあるんだろうな。
ぬわにぃーッ、知らない⁉関係者のくせに、考えたこともなかっただと⁉
甘い、甘すぎる!そんな代物受け取れるか!
泣くなよ。
あんたね、大事な恋人にね、自己犠牲の元に守られたって、なんにも嬉しくないでしょうが。
今回の一瞬はさ、助けられて安心するかも知れないよ?
そりゃあ、キュンキュンしちゃうよ。恋人がヒーローなんてカッコいいじゃん。
でもな。
それに伴う心配が大きすぎるでしょうが。
あんたは、自分のために恋人が盾になって嬉しいか?
スズメバチ男は、カチカチ言いながら律儀に待ってくれている。
奪い取ったベルトを、腰に装置した。
逆ならいいと思えるのは、随分身勝手なことである。
まぁ、そういうもんだろう。
彼を守るのは私だ。




