浮いた声援
大事な大会の決勝だから見に来てくれと言われた。
じゃりじゃりと砂を踏みつけながらコートにたどり着くと、既に女子の群れができている。辛うじて見えそうな場所を探して、帽子を被り直した。
応援と言っても、何を言えばいいのだろう。
頑張っている人に『頑張れ』などと言うな!とは、よく聞く理屈だ。
しかし競技特有の声掛けなど知らない。
そもそも応援とは、『頑張れ』と言うことではないのか?
『応援しています』という言い回しが通用するのは、手紙や会話の中だけだ。今まさに応援している場で『応援してるよー!』と言うのは、なんか違う。
勝てるよ、とか?
いけるよ、とか?
それでは対戦相手に失礼ではないか?相手だって決勝まで勝ち上がった選手だぞ。
そもそも『頑張れ』とは、何も努力の強要ではない。
古くから応援といえば『頑張れ』なのだ。応援する側はそういうもんだと思って『頑張れ』と発し、選手はそれを応援として受け取ってきた歴史がある。
ゼロの状態から頑張ってほしいと思っているのではなく、鼓舞。
そう、鼓舞だ!
『頑張れ』という言葉で、彼らの闘志を煽っているのだ。
ならば、ごちゃごちゃ考える必要はない。
彼は応援してほしいから、私に見に来てくれと言ったのだ。
頑張っている人に『頑張れ』と言って、何が悪い!
周囲が突然湧き始めた。彼がコートに踏み入るのが見える。黄色い声たちは、皆一様に彼の名前を叫んだ。
「頑張れーーー‼」
さして可愛げのある声質でもない。
ひねりのある言葉でもない。
ライブ会場のような歓声の中で、私の応援は非常に浮いていた。
目が合った彼が、力強い笑みとともに右手を掲げた。




