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【超短編小説】死因はウォシュレット

掲載日:2025/12/26

 冬の葬祭場はなんだか浮世離れした明るさで、沈みがちな気分が曖昧になっていくのを感じていた。

 精進落としをひと口ふた口食べてぼんやりしていると、馬並毛太郎がラスイチaka遠慮の太巻き手を伸ばして俺が「あ」と言う間もなく飲み込んでしまった。

 案の定と言うべきか、新しく山盛りにされた精進落としの皿が提供される。


 やれやれ、と首を振って

「マヌケ、精進落としは食べきっちゃダメなんだよ」

 と言うと、馬並は不貞腐れながら

「初めてなんだから仕方ねえだろ」

 と反論した。

 不貞腐れていた割には出されてしまったものは仕方ないしこの皿を空ける訳では無いと言わんばかりに、馬並はさらに料理を口に詰め込んだ。


「大体、何でここに来る前にメシ食わなかったんだよ」

 ようやく料理を飲み込んだ馬毛が訊いた。

 葬儀なんか空腹で参列するものでもないだろうにと思いながら

「お前がラーメン食おうとか言うからだろ。中華そばならまだしも葬儀前に横浜家系ラーメンなんて食えるかよ」

 と言うと、馬並はもう一段ギアを上げた不貞腐れ顔で再びもぐもぐとした。


 大体、この馬並がウォシュレットの水圧設定さえ元に戻しておけば結野は死ぬ事がなかったのだ。

 そう言う点で言えば馬毛は殺人者だが、ウォシュレットの水圧で死ぬ結野も結野だ。

 そもそも「ウォシュレットは水を直腸にブチ混んで強制的に腹を下して排出する為の機構だ」と言う結野の方が分からない。

 あんなものはケツの周りにこびりついたクソカスを洗い落とすものであって直腸に入れるもんじゃない。



 そのケツ穴についたクソカスが地層みたいに固まっているからと、わざわざ裏コード(水圧強ボタンと温水を長押し)して削り落とさなきゃならない馬並も異常だ。

 どう言うクソ生活をしていたらそんな地層がケツ穴に発生するのか。

 俺の家のウォシュレット設定を変えて元に戻さない馬並も、弱点がケツの穴に産まれた結野もどうかしている。

 そいつらと長年つるんでいる俺もどうかさているのか?


 まぁ考えていても仕方ない。

 名残惜しそうに精進落としを眺める馬並を立たせて葬儀場を出ることにした。

 死んだ結野の弟か葬儀会社の人間か知らないが、喪服を着た男が御挨拶の書かれたカードをトランプみたいにシャッフルしていたので、取り敢えずカンチョーをしておいた。

 その男のケツも今後は地層の様なクソカスが発生するケツになれば良い。


 斎場の外に出るとすっかり夜になっていた。

 俺は自分の部屋が事故物件になってしまった事をようやく受け入れつつ、水圧カッターでケツから脳天まで貫通された結野の事を考えながら煙草に火をつけた。

 馬毛は爪楊枝で歯間を弄りながら「ラーメンでも食って帰ろぜ」と言った。

「そうだな」

 俺が笑うと馬毛は嬉しそうに「いまは帰りだから家系ラーメンだな」と言うと小走りで駅に向かった。


 もうすぐ、春がくる。

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