ケンタウロスを食べよう!②
焼いたことでいい匂いがしてきたケンタウロス。
まぁケンタウロスっていうよりエビかカブトムシだけどさ。
でもこれはケンタウロスらしいし……仕方ないね。
「ふむ、美味そうな匂いがしてきたな。これも切り分けて持ち帰ってしまおう」
「お、お貴族様、本気!?」
リャイちゃんが声を出して驚く。
しかし卵殻卿はなにかおかしなことを言ったか? とばかりに首を傾げた。
「既にリザードマンを食っているのになにか妙なことがあるか?」
「それは、そうですけどぉ……」
「しかしこの量は簡単に持ち帰れませんよ」
アコさんが冷静な指摘をする。
しかしその口には涎が垂れている。
これは冷静に、自分の食える量を増やしたいだけ!
あるいはここでいくらか食べてしまおうと提案するつもりだ!!
「ふむ、そうだな。今の戦闘を聞きつけて他のパーティも来るであろう。それまでに切り分けて持ち帰ってしまおうではないか!」
「ではチョーくん、頼めますか」
「ああ、もちろんだよ」
というわけで早速ケンタウロスを切り分ける。
ふわふわでプリっとした身はカブトムシいうよりエビに近い。
これは期待できそうだ。
「て、手伝いましょうか……!」
ぐるるるる、と喉を鳴らしながらアコさんが近づいてきた。
完全に匂いで飢えている。俺は切り分けなきゃいけないから手伝ってもらおうか。
「じゃあ鍋に水を入れて、この身を茹でてくれないかな」
「茹でるんですね! わかりました!!」
水撃でアコさんが鍋に水をいれる。
そのまま火打ち石で携帯燃料を燃やすと、熱し始めた。
鍋の水が沸騰したところで、ケンタウロスの身を投入するアコさん。
うむ、基本はちゃんとできているな。後はほっといても大丈夫だろう。
「アコさん、調味料は俺の道具袋に入ってるから」
「はい!!」
……あ!! ちょっと茹でた身が減ってる!
食ってやがる!! 茹でながらにして食ってやがる!!
まぁ、身はまだまだ大量にあるからいいか……。
なんとか全ての身を切り分けたところで他のパーティがやってきた。
ブロック状にして布に包んだから、後は持って帰ってもらうか。
「茹でた身を甘辛に焼いてみました!!」
目を離している間に、渡した身が甘辛焼きになっていた。
ケンタウロスの甘辛焼きかぁ~~。
なんだかふんわりとした不思議な見た目。
それに甘辛いソースがかけられているのだ。
アコさんはそれを口に含みながら、他のメンバーに配っていた。
「お、おいしい!! アコさん、料理も美味いのね!」
リャイちゃんが目を輝かせて甘辛焼きを食べる。
さきほどの嫌そうな顔はどこへやらだ。
「どれ、オイラも……」
デュランくんも一口食べるなり、にんまりと笑顔になった。
「うん!! 美味しいっすね!! ご飯があるといいのに……」
「それは帰ってからにしましょうか」
うふふふ、と言いながらアコさんがもきゅもきゅとケンタウロスの身を食ってる。飽食を楽しんでいるようだ。人に渡していた甘辛焼き以外に、なにやら串焼きも作っていたらしい。
まったく、身が多くて良かった。
「どれ、余も一口」
被っている殻を少し上げて、卵殻卿が甘辛焼きを食べた。
うおっ……下半分しか見えなかったけれど、すごい美形だ。
「うむ、美味い。流石だな、余の愛妾にならぬか?」
「申し訳ありませんが、私より料理が上手い方に嫁ぐと決めているので……」
「これほど上手いのにか……」
アコさん、自分で作るより作ってもらうほうが好きだからなぁ。
あと、解体はやっぱり苦手っぽいし。
まぁ、教える気もないけれど。変なものを解体して食われたら困る。
さて、俺も一口。
ふむ、プリップリの身に甘辛いソースがなんとも合う!!
しかしただのエビよりも数段プリプリしているな……。
デカいし、森で色々食ってるからだろうな。
たしかにこれはご飯に合いそうだ。
しかし今ご飯を炊いている余裕はない。
飯の匂いで魔物が寄ってこられたら困るからな。
デカい戦闘だっただから、しばらくは近づいてこないと思うけど。
「じゃあ、帰るとするか」
そんなわけで、ひとまず俺達は森を後にした。
帰宅すると、早速冒険者の宿では倒したケンタウロスを調理してもらえた。
ケンタウロスの天ぷらだ。
今度はご飯もある! 山菜を切ったサラダもだ!!
「わぁい!!」
冒険者たちは一斉に料理を食べ始める。
アコさんも美味しそうに食べているようだ。良かった良かった。
やはりエビとは違って、ふんわりプリップリだな。揚げた衣とよく合う。
「──というわけで、アタシが大活躍したってわけよ!」
「嘘つけ。倒したのはチョーさんだったっしょ」
「べ、別にいいじゃない! そんな細かいことは!」
デュランくんとリャイちゃんが喋っている。
別パーティに加わっていたポールくんとダンテくんも一緒だ。
「やっぱチョーさん強いんだな」
「アコさんもすごかったっすよ。一撃でケンタウロスの装甲をぶち破って」
「それは流石に盛ってるでしょ!!」
「信じられないですね、アコさんの細腕で……」
「いやいや本当なんすよ!!」
デュランくんの言葉に、ダンテくんとポールくんが怪訝な顔をする。
それも仕方ないだろう。アコさんの怪力は誓約と呼ばれる力によるものだ。
神に何かしらを誓い、法力を授かる。
魔法とは神々から授かるものだが、誓約はいわば神々との契約だ。
魔法はなんか……ふわっと授かるため、どんなものが得られるかわからない。
だが誓約を結べば、ある程度望んだ力を手に入れることができるのだ。
もっとも誓約を破った時のデメリットもあるのだが──。
アコさんがどんな誓約を結んでいるかは知らない。
教えてくれたこともないからな。
ただ、間違いなくあの怪力は誓約によるものだ。
多分、誓約とそのデメリットも……。
……うん、とりあえずしっかり三食食べさせるとしよう。




