表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/16

レプラコーンを食べよう!

 今日は村のお偉いさんに呼ばれた。

 この小さな村は男爵領に当たり、とある男爵が税収やら政務なりを司っている。


 少なくともこのケルディム王国は男爵が村や街を取り仕切る。


 そして、子爵が男爵達から税収を取る。

 その上の伯爵が子爵から更に税収を取り、侯爵が更に伯爵たちから回収する。


 ……という形になっている。

 公爵はほとんど王族に連なるもので、最終的な税収の行き先だ。


 つまり実質的な村や町の管理者は男爵であることがほとんどで、男爵をまとめる子爵、子爵をまとめる伯爵、伯爵をまとめる侯爵、侯爵をまとめる公爵というなんとも面倒な形になっている。


 図にすると王族≧公爵>侯爵>伯爵>子爵>男爵=村長や町長という感じだ。

 もっとも、これはあくまで形式上に過ぎず、子爵や伯爵が街を治めることもある。


 結局、王族まで税収が届きさえすればいいので、そこら辺はなんかアバウトな感じだ。

 これまた形式的な領土としては複数の男爵領を包括する子爵領、複数の子爵領を包括する伯爵領……といったところ。ちなみにうちの実家は子爵領だった。そこそこに偉い。


 騎士爵もあるが、これは他の爵位と兼任していたり、あるいは他領に住み込み領土を持たないこともある。なんかかっこつけで騎士を名乗る貴族もいるので、ただの称号みたいな感じ。


 この村の男爵はなんと、教会で神官長を営んでいるそうだ。

 学があるからそういうこともある。教会に入るとき、家督を捨てるものが多いが、兼任する者もいるのだ。ただ信仰しているだけ、なんて人もいる。うちはどうだったかな……。


 面倒な話をした。

 要は今からお偉いさんに会う、というだけの話。

 今は教会の礼拝堂で待たされている。なんだか緊張するなぁ。


 珍しくアコさんが礼拝堂の女神像に向かって祈っている。

 女神だから……地母神か。色々いるんだよね、神様。


 多神教だから別にそこまで喧嘩しちゃいないけれど。

 誰をメインに祀るか、とかは流石に宗派がある。


「アコさんはすでに会ってるんだよね?」

「はい、卵殻卿は蘇生魔法が使える聖女なんですよ」

「聖女!?」


 聖女といえば、蘇生魔法が使える者が任命される職業だ。

 蘇生魔法が使えたら聖女。とにかく聖女なのである。


 どんな魔法が使えるようになるかは、授かってみるまでわからない。

 蘇生魔法はそこまで希少……というわけではないが、重要度が高い魔法だ。

 神官の百人の内、一人が授かると言われており、もし授かれば将来安泰と言われている。


 まぁ、聖女だからな。

 しかし神官長で聖女で男爵。盛り過ぎだろう。

 神は二物を与えるとかいうやつだ。


「卿ら、参ったか」


 どこか中性的だが、荘厳な声。

 その方向を向くと、大きな卵の殻を頭に被った神官がいた。


 性別はどちらかわからないほど細身――だが、俺よりも背が高い。

 顔のほとんどは卵の殻で見えない。どうやって前見てるんだ、あれ。


 祈りを終え、頭を垂れるアコさん。

 隣に立って、その真似をしつつ耳打ちする。


「えっと……女性なんだっけ。聖女だから」

「蘇生魔法が使えれば、男性でも聖女に認定されます」


「で、どっちなの」

「さぁ……」


「卿らよ、聞こえているぞ」

「「す、すいません!」」


 再び頭を下げ、謝る俺達。

 そんな俺の顎を撫で、くいっと持ち上げてきた。


「ちなみに余はどちらでもいける」

「どういう意味!?」


 アコさんが顔を赤らめ、こっちを見ている。

 なんですか、「キャー」って。小さい悲鳴を漏らすな。

 くそっ、なんかいい匂いがするしこの人!! 香水でも振ってるのか!?


「よい、多少の無礼は許そう。卿らの仕事ぶりは耳にしている」

「あ、ありがとうございます」

「感謝します」


 そう言うと、卵殻卿は礼拝堂脇の扉を開いて、奥へと向かっていった。


「ついてまいれ」


 そう言われたので、アコさんと目を見合わせついていくことに。

 たどり着いたのはテーブルの置かれた談話室。

 ふかふかのソファは客人でもゆったり出来そうだ。


「座りたまえ」


 言われてアコさんとともにソファに座る。

 卵殻卿はワゴンからなにやらティーカップを取り出し、そこのお茶を注いでいた。


「近隣で取れたハーブティーとレプラコーンのクッキーだ。美味いぞ」

「レプラコーン……?」


 レプラコーンといえば、金貨を見つけてくれる妖精で有名だ。

 まさか妖精をクッキーに混ぜ込んだのだろうか。

 シルキーの時のこともあるから、ありえなくはないけれど……。


「うむ。レプラコーンは他の妖精種より多くの白粉を撒き散らす。これが上質な砂糖に使われることから金貨を生む、とまで言われている妖精なのだ」

「へぇ、やはり精人(エルフ)の方が集めたのですか?」

「さてな。その辺りの情報までは知らん」


 もぐもぐとリスのようにクッキーを頬張るアコさん。

 お茶菓子に対して、遠慮という文字は彼女にはない。

 さて、俺も一つ……。


 うん、たしかに上質な甘みだ。

 小麦粉もきっといいのを使っているのだろう。

 ああ、久しぶりにちゃんとした食べ物を食べた気がする……!


 こっちのハーブティーも独特の渋みと甘みがあって、美味しい!

 なんだか目が冴えるようだ。


「うむ。たんと食え」

「あ、あの、俺達は何のために呼ばれたんでしょうか……?」

「おっと、そうであった。説明しよう」


 そう言うと立ち上がり、卵殻卿は黒板を持ってきた。

 既になにやら大きな魔物のような絵が書かれている。正直言ってちょっと下手だ。

 内容的にはこの大きな魔物が、森から小さな魔物を追い出した……と言いたいらしい。


「森林の奥から魔物が溢れてきている理由。おそらく強大な魔物が現れて、住処を追われた魔物たちが街道や村に飛び出している……と考えておるのだ」


「へぇ……」

「つまり、私たちにその強大な魔物――言うなれば”ボス”を探し出して倒せと?」

「うむ、そうすれば今回の騒ぎも落ち着くであろう」


 しかし、なんだってそれを俺たちに言うのか。

 もっと強力なパーティだっているんじゃないかな……。

 ……いないか。少なくともこの村じゃあ、俺たちが今のところ最強だ。


「冬になるまでに討伐に行こうと思う。無論、余もついていく。卿らには有望な冒険者を集めて臨時パーティを設立してもらいたい。”ボス”相手に二人では厳しかろうしな」


「なるほど、承知しました」

「りょ、了解です」


「うむ、時にアコよ」

「はい、なんでしょう?」


「卿とその男はどういった関係なのだ? もうしっぽりいったのか?」

「は、はぁああああああああああああああああ!?」


 顔を真っ赤にして、両手をバタバタと振るうアコさん。

 それに対し、卵殻卿はケタケタと笑っていた。


「よいではないか、いい男の趣味だ」

「べ、別にチョーくんとはそういうのでは……っ! もうっ!!」

「違うなら余が貰おうか?」

「はぁあああああああああああああああああ!?」


 ぶんぶんと振るう手が卵殻卿の方へ向く。

 卵殻卿は笑って避けているが、あれは結構力を込めてるぞ。

 結局、この人は男なのか女なのか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ