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×××話 生誕祝辞その6

「……笑ってたよ」


 ルーウィーシャニトの内心渦巻く感情と相反して、答えはシンプルなものだった。ユヴォーシュはその瞬間(・・・・)を思い出しているのか透き通った表情で、


「勝手なもんさ。好きにやれってそれだけ言って、死ぬまで───死んでも笑ってやがった。あいつはそれでいいかも知れないけど、巻き込まれるこっちの身にもなれってんだ」


 馴染み深いからこそ吹き出すものもあるのだろう。ぽつりぽつりと零すようだった言葉は徐々に語調を強め、堰を切ったように溢れ出すまでにそう時間はかからなかった。ルーウィーシャニトにとってもそうであったように、ユヴォーシュにとっても忘れられない出来事なのは間違いなく。


 まあ、つまり、要するに───


 それくらい彼女が鮮烈だったことの裏返しに他ならなかった。


「悔いはないだろうよ、あの様子だと。俺よか自由に生きてたくらいだぜ」


「それはどうかと思うがな。……しかし、全く」


 ルーウィーシャニトは思い出す。あの日、彼女の誕生日にズケズケと《人柱臥処》に踏み込んできて語るだけ語り、勝手に帰っていったニーオリジェラ。彼女が紡いだ言葉の一つ。ニーオリジェラの口から放たれたときにルーウィーシャニトの胸に刺さり、大罪戦争でニーオリジェラが死んだことで抜く機会を得られないままだった“棘”───半信半疑でいた言葉。


 ───ルーウィーシャニトはずっとここで暮らしてんだろ? 出たいとか思わないのかよ。


 ───そも私はここで産まれ、ここで死ぬことを役割付けられている。出るという概念自体が私には不適当で、そういう生き物だと思うしかない。


 ───うーわ、そりゃ大変だ。アタシは絶対に無理だな。


 ───……私ならば無理ではない、とでも思ったか? 私とてこのような生を望みはしなかった。これしかないというのなら、いっそ……。


 ───おいおい、そりゃ極論が過ぎるだろ。やってらんないことなんてそりゃ当然誰にだってあって、それでも生きた方がいいに決まってら。


 ───軽い言葉だな。


 ───疑り深いな、ったく。いいさ、見てな。産まれた甲斐があったってくらいバカでかい花火を打ち上げてやるからよ。そのとき世界はひっくり返るのさ。


 ───……馬鹿め、私はここから出られないと言ったろう。どうやって見せるつもりだ。


 ───へへ、秘密。


 そう笑って鼻をかく仕草が、やけに印象に残っていたのを憶えていた。“何を賢しらぶって偉そうに”と無性に反発したくなったのだ。

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