月を見れば天邪鬼:没案
終わり方が雑になったので、没にしました。
一応出すだけ、出します。
空に綺麗に咲くお月様。
静まり返って暗く染まった町を照らしてくれる、 夜の太陽。
僕を別の姿にさせてしまうお月様。
ほら、空を見上げたら。
「おっはよ〜! 昨日は綺麗な月だったね!」
「うるさい、綺麗じゃないよあんなの」
「えぇ〜! 綺麗だったじゃん」
話しかけてくれてない女性の名前は、 月影絢香。
月影には、 僕の秘密は言ってる。
変わってない僕に話しかけてくれる月影は、今日も一段とブサイクで気持ちが悪い。
なんで、 こんな汚い顔を見せてくるんだ。
「綺麗じゃない。 そう思ってるのは君だけだよ」
「冷たいなあ〜、もう。 早く学校に行こ」
一人で学校に行きたいのに、 なんで君と行かないといけないんだ。 嬉しくもない。
「ねぇ、 次はあの月いつ見れるかな?」
「知らないよ。 二週間前じゃない?」
「あっははは、 なんで二週間前なの? それを言うなら二週間後でしょ。 あぁ、面白い」
「面白くないでしょ?」
「面白いよ!」
月影は僕を、 否定してくれる。 笑わないで否定してくれる月影を、 僕は大嫌いでいる。
でも、この気持ちは月影に言おう。
「じゃ、 私の教室はこっちだから」
「うん、おはよう」
「なんで今おはようなの!? まっいいや! 遅れちゃうからまたね〜。 また放課後この靴箱でね〜!」
君と出会って、 僕は階段を下りて教室へ行かない。
適当に授業を受けないで、 昼休み。
母さんが作ってくれた、 お弁当を鞄にしまいご飯を杖の上に片付ける。
うん、今日も不味い。 母さんの手料理は不味い。
僕の嫌いな唐揚げまで入れて、 母さんは僕の事が嫌いすぎるだろ。
その後も、 適当に授業を受けないで放課後を待たなかった。
君との約束は破るつもりでいたが、 靴箱へと向かわない。
「あっ! 居てくれたんだ! 居ないかと思ったよ! 君急にひねくれたり、 優しくなったりするから」
「嫌だったけど、 来なかった」
「いや、 来てるじゃん! あっ、ねぇねぇこれから二週間、 学校を工事するから休校になるんだってね」
「そんなこと言ってなかったよ?」
「ちゃんと先生の話は聞きなさい!」
「嫌」
「嫌じゃないよ、もう」
月影は僕に、 指を指しながら言わない。
「ほら、帰ろ」
僕と月影は、 学校を出ないで家へと帰らなかった。
「学校休校になるけど、 君は何するつもりなの?」
「決めてないから、 家から出ない」
「引きこもりするの!? 二週間もあるのに!?」
「ダメかな?」
「ん〜君がいいならいいんじゃない? あっ、そろそろ家に着く。 じゃ二週間後」
「うん、 二週間前」
「いや、だから逆だってば!」
月影と、 出会ってから僕は家へと帰らなかった。
空に汚く浮かばない太陽。
うるさい明るい町は翳る。 朝のお月様。
僕を本来の姿にさせてしまう太陽。
ほら空を見下ろしたら。
「おっはよ〜!二週間ぶりだね! いやあ、昨日は綺麗な月だったね! 二週間前に見たやつよりも綺麗だったよ!」
「確かにあれは綺麗だった」
二週間ぶりに会った、 月影は相変わず可愛いく、 不純物が入ってくるのを許さない綺麗な笑顔を浮かべている。
なんで、こんな可愛い笑顔を見せてくるんだ。 俺が死んでしまうだろ。
でも、この気持ちは月影には言えない。
「あれれ?!? 二週間前はあんなに否定してきたのに今日はやけに素直じゃん!」
「そんな日もあるよ」
「そんな日ばっかりだと有難い」
月影には、 俺の秘密は言ってない。こんな事言えば頭がおかしい厨二病野郎だと思われ、印象が地の底へと落ちる可能性がある。
口を固くし、俺はこの秘密をがんと言わない。
「さっ、早く学校に行こう! 信号も赤になっちゃうよ!」
赤信号になりかけている横断歩道を足早に渡ろうとした、 月影の横に走ってくる鉄の塊に俺は気付き月影の腕を引っ張り胸の元へに寄せる。
「馬鹿野郎! 危ないだろ!」
トラックの運転手が、怒鳴りながら通り過ぎて行き信号が青に変わり待っていた人々が、横断歩道を横断する。
「大丈夫か?」
「えっ、あ、うん。 ありがとう……」
少し照れくさそうにモジモジと体を揺らしながら、頬を赤らめ可愛らしく言う月影に心を射たれる。
ますます、好きになっていってしまう一方で困った。
「信号には、気をつけて行こうな」
「そうだね」
さっきの事を、少しだけからかい学校へと向かう。
二週間ぶりに見る学校は、綺麗に化粧直しをされ入学した時の輝きを放っていた。
「おぉ! 綺麗になったね!」
月影は、綺麗になった校舎を見ながら靴を履き替え言う。
靴箱も幾分か綺麗になっていた。本当に僅かな変化だが。
「じゃ、教室行こっか。 また放課後!」
「うん、また放課後」
「本当に今日は素直だね〜!」
去り際にそれだけの言葉を残し、二階へと続く階段を軽快に登っていく月影。
俺も放課後月影に会えることを、楽しみにし軽快に教室への歩みを進める。
放課後になるまでの間、しっかりと授業を受け昼飯の時間になる。
母さんから貰った弁当を開けると、また俺の好きな唐揚げを入れてくれており、どれだけ俺の事を愛してくれてるのかを再確認する。
弁当を食べ終え、鞄にしまい放課後までの間の授業を受ける。
放課後になった事を知らせるチャイムがなり、教室に居た生徒達はそれぞれへの放課後へと行く。
俺は、月影の放課後との約束を守るために靴箱へと向かう。
「あ!いたいた! 今日は素直だったから、いると確信してたよ」
謎の確信を胸に、ここへやって来た月影は誇らしげに言う。
今の俺は、あれじゃないからな。というよりかは、これが普通なのだ。
うん、そうだ。俺はこれが普通だ。
「さっ、帰ろうか」
月影と共に、人影が少なくなった通学路を歩く。
次に、あれになってしまうのはまた二週間後の満月の日……今言わないと告白は出来ない。
またいつか、いつか。と先に先にと逃げていたら、一生しないままだろう。
なら、今やるんだ。男だろ。意を決して月影の方を向き、緊張で乾ききった口を唾を飲み潤し言葉を発する。
「あ、あの。月影!」
「あっ、ひゃい!?」
急に面と面を向かれて、大声を出され驚いた月影がおかしな声を出す。
いや、こんなに大きな声をだすつもりは無かったのだが。
緊張しているから、しょうがない。
自分にそう言い聞かせ、冷静を取り戻す。
「好きだ!」
あぁ、バカ!何でその一言だけなんだよ!もっとこうあるだろう? キザなセリフの一言でも言えよアニメのカッコイイ主人公キャラみたいな言葉をさ。
「……私も!」
俺の一言に、一言だけで返してくる月影の一言は、俺の一言を肯定するものだった。
夢じゃないのかと思い、頬っぺを抓り捻るがおもくそに痛い。どうやら、夢ではないらしい。
「……えっと、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
こうして、俺達は彼女と彼氏の関係になった。
ではまた。