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【8】

《登場人物紹介》

◇白山茶花 桃椿-シロサザンカ モモツバキ-

  …中学生


◆黒檀 未恋-コクタン ミレン-

  …転校生


×××


☆マジカルカメリア

  …白の魔法少女


★マジカルエボニー

  …黒の魔法少女

camellia[意味:椿]



「決着をつけましょう、(もも)ちゃん」


指定の時間に公園に行くと既に未恋(みれん)ちゃんがスタンバイしていた。


深緑を基調とした服を着ているが確実にハルっちのものだろう。


二重の意味で(うらや)ましい。


「未恋ちゃんあのさ…」


「その前に言っておきたいことがあります」


あたしの言葉を(さえぎ)る未恋ちゃん。


こっちも言いたいことあるんだけど。


「桃ちゃんがどんなつもりで、どんな魂胆(こんたん)で私の正体を知りながら私に近づいたのかは知りませんが」


「…………」


「私は桃ちゃんと……、いえ桃ちゃんとハルさんと嫁入(よめいり)さんと出会えて楽しかったです」


あたしのことを見据(みす)えながら、静かに語る未恋ちゃん。


「楽しかったなんて両親がいた頃以来ですね。何年も前以来ですね。……ですが、それもここまでです。決着をつけましょう」


言い終えると未恋ちゃんは顔を伏せた。


…そうされると前髪の長い未恋ちゃんの表情は伺えない。


「最後にどういう意図で私に近づいたのか教えてはくれませんか? 少しでも、本当に私のことを友だちだと思ってくれていたのなら」


どういう意図だって。


そんなの。


「友だちになりたかったからに決まってるじゃん」


「…………」


顔を伏せたままの未恋ちゃんに語りかける。


「魔法少女同士として出会って、それからもう一度学校で会って未恋ちゃんの顔を見て。〝あ、この子と仲良くなりたい〟って思った、それだけだよ」


「本当に?」


「本当だよ」


「本当ですか?」


未恋ちゃんが顔を上げた。


…未恋ちゃんは泣いていた。


「信じていいんですか? 桃ちゃん」


「うん、騙すつもりはなかった。本当にごめん、未恋ちゃん」


「…嬉しいです」


泣いたまま笑う未恋ちゃん。


「これで思い残すことはありません。今度こそ本当に決着をつけましょう」


未恋ちゃんは(ふところ)から異界石(いかいせき)を二つ取り出した。


「やっぱ未恋ちゃんならそう来るよね」


騙されたと思えば本気で傷ついて悲しむし、仲直りできればちっちゃい子どもみたいに純粋に喜ぶ。


それはそれとして目的のためなら信念も何もなく平気で世界を壊せる。


それが彼女だ。


「でも、そんな未恋ちゃんが最高に好きなんだけどね」


あたしも胸ポケットから妖精石(ようせいせき)を取り出す。


「ありがとう、桃ちゃん。

貴女が死んだら本気で泣きますから、しっかり恨んで下さいね。〝黒式大恋化(くろしきだいれんげ)〟!」


「愛を重ねて恨みはしないし、あたしは絶対死なないよ。

〝ホワイトマジカルプリンセス・ロールアウト〟!」



二人同時に変身する。


「黒の魔法少女〝マジカルエボニー(かい)〟!!」


マジカルエボニーの仮面が砕け散り、未恋ちゃんの素顔が(あらわ)になる。


更にスカートが紫色に染まり、両手に黒手袋が装着された。


「魔法少女とは魔の深淵(しんえん)! 異界の力を見せてあげましょう!」


ポーズを決めるエボニーちゃん。


「白の魔法少女〝マジカルカメリア〟!!」


あたしも口元を隠していたマジカルマフラーを外し、ポーズを決める。


「いきますよ、かめりあさん!」


「かかってきなよ、エボニーちゃん!」


エボニーちゃんが突貫(とっかん)してきた。


「〝黒死恋拳(こくしれんけん)〟!!」

「〝フェムトシード〟!!」


エボニーちゃんの拳を左手でシールドを張ってガードする。


「〝黒死恋脚(こくしれんきゃく)〟!!」

「〝エクサバルディッシュ〟!!」


エボニーちゃんの蹴りをミドルキック・ローキック・ハイキックの三段蹴りで弾き飛ばす。


「〝黒死恋掌(こくしれんしょう)〟!!!」

「〝ギガスタンプ〟!!!」


重ね当てを左手の張り手で相殺する。


「…くっ!」

「〝ペタナックル〟!!!」


右拳でエボニーちゃんを殴り飛ばす。


距離が出来たところで左足を振りかぶる。


「〝ホワイトマジカルプリンセス・キューティクルカッター〟!!!」


左足の蹴りで衝撃波を生み出す。


それに対してエボニーちゃんは両手を合わせた。


「〝(れん)〟」


更に合わせた両手をハートの形に変えた。


「〝(れん)〟」


そして、両手を前に(かざ)した。


「〝()〟!!!」


エボニーちゃんの両手から放たれた衝撃波がキューティクルカッターを相殺した。


…衝突により発生した砂煙に突っ込む。


「〝ゼタアタック〟!!!!」


「…がっ!」


エボニーちゃんを体当たりで吹っ飛ばす。


距離が更に開いたところで両手を前に翳す。


「〝ホワイトマジカルプリンセス・〟」

「〝(れん)(れん)・〟」


それに対して態勢を立て直したエボニーちゃんは両手を合わせ、さらに両手でハートマークを作った。


「〝ヨタカメリアレイ〟!!!!!」

「〝()ッ〟!!!」


あたしの両手から放たれたビームがエボニーちゃんの放った衝撃波にぶつかり、一瞬も拮抗(きっこう)することなくエボニーちゃんごと飲み込んだ。



「やりますね。やりますね。流石は桃ちゃん、いえマジカルかめりあさん」


地面に倒れたエボニーちゃんが懐から黒い結晶を取り出した。


あたしも拳を構える。


「ですが勝負はここからです…。降臨せよ〝異界神獣(いかいしんじゅう) 6番〟!」


結晶が巨大化して黒いオーラでエボニーちゃんと(つな)がった。


「エルトワイライトゾーン! マンティコア!!」


発音上手くなったな。


…慣れたとかじゃなくて、練習したんだろうな。


蝙蝠の羽と三本の(さそり)の尾を持った黒い影の異形の獅子が現れた。



「〝黒蠍毒撃波(こくかつどくげきは)〟!!!」


蠍の尾から紫色の液体が発射される。


…毒って言ってるくらいだし、喰らったら不味いな。


「〝アトラック〟!!!」


高速移動でかわす…。


と、かわした先にいるんでしょ!


「〝フェムトシード〟!!!」

「〝黒獅炎撃咆(こくしえんげきほう)〟!!!」


異形の獅子が吐き出した炎をシールドでガードする。


〝グオオオオオオオゥ!!!〟


ってか、獅子叫んでてうっせえ!


「今です!」


エボニーちゃんの言葉に合わせて蠍の尾がこっちを向いた。


…不味い!


「〝黒蠍毒撃破(こくかつどくげきは)〟!!!」

「〝アトラック〟!!! …ちっ!」


〝フェムトシード〟を解いて高速移動で毒攻撃を回避。


…ちょっと焼かれたか。


可愛いコスチュームが焦げた、クソがっ!


「同時に技は出せないんですね」


冷静に分析するエボニーちゃん。


「そっちは出せるみたいだね」


「そうですね。そうですね。気分がいいですね」


いつもエボニーちゃんに勝ち誇ってたけど、言われる側になると腹立つな。


…でも、攻略法はもう思いついた。


つけ入る隙は一つ!


「〝黒蠍毒撃破(こくかつどくげきは)〟!!!」

「…ちっ! 〝アトラック〟!!!」


そっちの技じゃねえ!


高速移動でかわす。


…かわした先に獅子が飛びついてきた!


「〝フェムトシード〟!!!」


獅子の爪を弾く。


シールドにヒビが入った。


「終わりです! 〝黒獅炎撃咆(こくしえんげきほう)〟!!!」


獅子が咆哮(ほうこう)と共に炎を吐き出す。


これを待ってた!


「〝ゼタアタック〟!!!!!」


炎に突っ込み獅子の顔面に体当たりをぶちかます!


熱いな、クソ野郎っ!


でも、ダメージを受ける程じゃない。


「…なっ!」

「〝テラストンプ〟!!!!」


そのまま獅子の上に乗り、頭を踏みつける。


「〝黒蠍毒撃破(こくかつどくげきは)〟!!!」

「〝アトラック〟!!!」


蠍の尾からの毒攻撃を高速移動でかわす。


…毒攻撃は獅子の(くび)に命中した。


「ぎぃやあああああアああぁあアあ!!!!!!」


エボニーちゃんが悲鳴を上げる。


…ダメージ連動してるの忘れてた。


っていうか、エボニーちゃんお馬鹿。


「終わらせるよっ!」


動きの鈍くなった獅子の頭を押さえ込む。


「〝ファイナルカメリア・ヨクトピュリファイ〟!!!!!!!」


白いオーラが異形の獅子を包みこみ昇華させた。



「…ここは?」


「やっと起きた? 未恋ちゃん」


あたしの膝枕で寝ていた未恋ちゃんが目を覚ました。


もうちょっと可愛い寝顔を(なが)めていたかったんだけどなー。


「私は…、負けたんですね」


「そう、あたしの勝ち」


膝枕の状態のまま話す。


「桃ちゃんを殺さずに済んだのは良かったです。負けたのは悔しいですが」


「あたしは未恋ちゃんが死ぬかと思ったけど、無事で良かったよ」


異界獣(いかいじゅう)とダメージ連動してるっぽかったし、毒喰らってたらどうしようとか思っちゃったよ。


まあ、そこまで連動してるみたいじゃなくて良かった。


「負けたのは悔しいですが」


二回言うほどか。


「まあ、いいんじゃない? あたし達これからも友だちだし、幾らでも真剣勝負の機会はあるって」


未恋ちゃんの髪を撫ぜる。


「ふふふ。英語の試験の点数とかは止めて下さいね」


未恋ちゃんが笑った。


…未恋ちゃんの英語の点数は笑いごとじゃないけどな!


「それにしてもこれからどうしましょう。〝異界神獣〟まで倒されて負けてしまって。(くろ)ウサになんて言えば…」


「それなんだけどさ。 …っ!!」


気配を感じて未恋ちゃんの頭をそっと置いて立ち上がり、辺りを見回す。


「桃ちゃん?」


「隠れてないで出てきなよ」


あたしが呼びかけると十メートルほど先の空間に黒いデフォルメされたような兎の影が現れた。


『ウササササ。ウサは逃げも隠れもしてないウサ』


デフォルメされた兎の影にギョロリと目玉が生えた。


「…黒ウサ」


「あれが」


黒ウサね。


っていうか。


「何かキモいな」


「見た目だけなら可愛いと思ってるんですけど」


「未恋ちゃんセンスがどうかしてるね」


目を離さないようにしつつ懐の妖精石に手を伸ばす。


『ウササササ。変身してどうするウサ? もうエネルギーが殆ど残ってないのはわかってるウサ』


語尾ウゼーな。


まだ〝ニャン〟の方がマシだ。


「黒ウサ。私負けてしまったんですが…」


『元から人間のオマエに期待なんてしてないウサ』


未恋ちゃんの言葉を遮って影の兎は言った。


『もうオマエは用済みウサ、マジカルエボニー。

…そいつと一緒に大人しくシね』


そういって兎の影は大量の異界石をバラ撒いた。


あたしも〝二つの〟妖精石を手に取る。


「あたしの未恋ちゃんに死ねとは、よっぽど兎鍋にでもなりたいらしいな。

〝ホワイトマジカルプリンセス・アルティメットロールアウト〟!!!!」


-さあ、これが本当の最後の戦いだ。

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