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【1】

camellia[意味:椿]



「ホワイトマジカルプリンセス・ロールアウト!!!」


あたし、白山茶花(しろさざんか)桃椿(ももつばき)


今日から中学二年生。


「白の魔法少女マジカルカメリア!!!」


なんとあたしは異界からの侵略者〝異界獣(いかいじゅう)〟と戦う魔法少女なのだ!


敵を見据え、足に力を溜めて蹴りだす。


「ホワイトマジカルプリンセス・キューティクルカッター!!!!」


黒い靄のような異界獣を衝撃波が蹴散らした。


今日のお勤め終了だ。


「マジカルモードオフ。それにしても異界獣って弱すぎない?」


変身を解いて隣のネコに話しかける。


「ツバッキーが強すぎるのニャン」


ネコが喋ったが幻聴でもなんでもない。


こいつは妖精族の妖精猫リンクス。


異界獣を退治するあたしに力を貸している胡散臭いヤツだ。


「なんでツバッキーはそんなに強いニャン?」


「自意識が強いからじゃない?」


「けっこうありえそうニャン」


魔法少女の強さは素質以外にフィジカルやメンタルも大いに影響しているそうだ。


知らんけど。


「じゃあ、学校行って来るから。寂しくても連絡しちゃ駄目だよ!」


「絶対に連絡しないから安心して欲しいニャン」


「夜になったら学校がどんなところかたっぷり話してあげるからね!」


「絶対に連絡しないで欲しいニャン!」


またまたそんなこと言って、昨日なんて三時間も(魔法の石で)長電話したのにさ。


「いってきまーす」


「いってらっしゃいニャン。学校でいっぱい友だちと話してくるといいニャン」


「ありがとー」



「また一緒のクラスだねー。」


イエーイ、とハルっちと手を合わせる。


「またお前らと同じクラスかー! って、ホントは嬉しいんだけどなっ!」


嫁入(よめいり)のそういう正直なとこ好きだよ」


「ボクとはハイタッチしないのかよっ!」


「分かった分かった」


そういう若干ウザいところも嫌いじゃない。


いえーい、と嫁入ともハイタッチする。


「ワタシとはしないの、サク?」


ハルっちが座ったまま右手を掲げている。


「え、いいの?」


そういってハルっちの手を握る嫁入。


「これはハイタッチじゃないね……」


「あわわわわ、すまん」


「ワタシはいいけど」


そういって両手で嫁入の手を握るハルっち。


「あわわわわわ」


「ハルっちストップ。嫁入が沸騰しそうだ」


「そう? ごめん」


素知らぬ顔で手を離すハルっち。


分かっててすっ惚けてるな。


「あわわわわわ」


「落ち着けや嫁入」


嫁入の頭をチョップする。


「痛ェっ!? 何すんじゃー!!」


「壊れた家電は……」


「叩いて直すってか!? ボクは家電じゃねー!!」


うん、いつもの嫁入に戻った。


つまり、嫁入は家電だ。


「なんか失礼なこと考えてるなコラー!!」


「サクがいると賑やかでいいよね」


「え、そう?」


「遠まわしにうるさいってことだよね」


「せっかく時雨(しぐれ)がボクのこと褒めてくれたのにケチつけんなー!」


今更だがこのやかましいツインテール眼鏡は嫁入朔(よめいりさく)


好きなものはハルっち。


特技はツッコミだ。


「ふふっ、サクは可愛いなぁ」


「えぇっ、ホントホント? もう一回言って!」


「サクは可愛いなぁ」


「あわわわっわわわっわわわ」


「嫁入で遊ぶのは止めい」


こっちの女たらしのダウナーな短髪は卯花腐(うのはなくたし)春時雨(はるしぐれ)

(あたしが言うのも難だがスゲー名前だ。)


女子なのに女の子にモテるが、本人曰く〝気が合えばどっちでも〟だそうだ。


因みにあたしはありか聞いたら、〝余裕であり〟と言われた。


…将来彼氏が出来なかったら考えないでもないが、嫁入に悪いからやっぱなしだ。



「でも、二人と一緒で良かったよ。あたしハルっちと嫁入以外友だちいないし」


「笑顔で悲しいこと言うなよ。まあ、ボクも二人以外友だちいないけどなっ!」


嫁入はいいヤツなんだけどウザいからなぁ。


「ワタシはモモとサク以外にも友だちいるけど……」


「うわーん、時雨の裏切りものー!」


「でも、二人と一緒にいるのが一番好きだよ?」


「大好きだー!」


「何時にも増してウザいな、嫁入」


長期休暇挟むとストレスヤバいんだろうけど。


「そういや、聞いたワタシたちのクラスさ……」


〝助けて欲しいニャン!〟


「うぇっ!?」


変な声漏れた。


「…モモ、どうかした?」


「い、いや何でも…。ちょっとトイレに」


「…どうぞ」


「いってら」



トイレに入り、リンクスから渡された魔法の石を取り出す。


〝学校行ってる時に話しかけてくんなっつったろニャン助!〟


〝悪かったニャン。でもオイラの命がかかってるニャン! 助けて欲しいニャン!〟


いつもの異界獣だったら一人(一匹?)で撒けるのに。


まあ、ホントにピンチっぽいし仕方ないなぁ。


〝くだらない用事だったら、うちに小屋作って住まわすからな〟


〝背に腹はかえられないニャン〟


〝難しい言葉知ってるな……。場所は?〟


〝オイラとツバッキーが会った公園ニャン〟


〝了解〟


トイレを出て教室に向かう。


「おかえり」


「ちょっと用事出来たからあとよろしく」


「任された」


内容聞かないで即答サンキュー。


流石ハルっち。


「おい、ここ二階だぞ!」


嫁入の言葉を無視して、窓を開けて飛び降りる。


公園まではトイレの窓よりこっちのが近かった。


校内を出たところで変身。


こっちのが速い。


顔バレ対策にマジカルマフラー(コスチューム)で口元を隠す。


「あっ、ヤバ」


変身の掛け声忘れた。



公園に着くとリンクスが倒れていた。


「リンクス!!」


急いで駆け寄る。


…フリをして背後からの一撃をかわす。


「っ!?」


「不意打ちにしては甘いですなっ」


さらにかわした勢いで一回転して襲撃者に回し蹴りを喰らわす。


「…ぐぅっ!?」


襲撃者は左腕でガードしたが威力に耐えられずガードごと吹っ飛ぶ。


そして、襲撃者の姿を改めて確認する。


「へぇ…」


あたしの衣装のバージョン違いのような黒いミニドレス。


髪型はサイドテールで、顔には仮面をつけている。


こいつは。


「気をつけるニャン! コイツは……」


「魔法少女、でしょっ!」


右手を(かざ)し、光を放つ。


「ううっ!?」


「目を逸らしちゃ駄目じゃん、〝ギガスタンプ!!!〟」


「がっ!!?」


お腹に張り手を喰らわす。


「〝テラストンプ!!〟」


「…っ!!」


吹っ飛び倒れた相手に追撃の踏みつけ攻撃…、


はかわされた。


立ち上がり態勢を立て直す黒い魔法少女。


あたしは再度右手を翳した。


「〝ホワイトマジカルプリンセス・ピンポイントフラッシュ!〟」


「…ああっ!?」


再び目晦まし。

(さっきは技名言い忘れた。)


「〝ペタナックル!!!!〟」


右パンチで吹っ飛ばす。


「あがっ!!?」


黒い魔法少女は五メートルほど吹き飛び公園の金網にめり込んだ。


「…………」


「助けに来てやったぞ、感謝しろニャン助」


呆気に取られている様子のリンクスに声をかける。


「…あ、ありがとうニャン」


「ひょっとして、あの子もリンクスが魔法少女にした子?」


「…だったら襲われてる訳ないニャン」


「あたしを嵌めようとしてたとか」


「何でそんなに疑り深いニャン!」


まあ、いろいろと、ね。


傷だらけのリンクスを抱き上げる。


「でも、擦り傷ばっかで怪我っぽい怪我ないな」


「命からがら致命傷だけは避けてたニャン」


「…そんな訳ないでしょう」


黒い魔法少女が金網から復帰した。


リンクスを降ろして構える。


「攻撃を当てないようにするの大変だったんですから……。だから、私は猫を苛めるような仕事最初から嫌だって言ってたのに」


ぶつぶつ言いながら懐から何かを取り出す黒い魔法少女。


「仕事ってことは上司でもいるの? お嬢ちゃん」


「よくボコボコにした相手にそんな笑顔で話しかけられますね……」


「よく言われる。それにしても声かわいいな。顔も見せてくれる?」


「見せてもいいのかもしれませんが、大事をとって止めておきましょう。〝この子〟を倒される可能性もあるので止めておきましょう」


そういって、彼女は懐から黒い石を取り出した。


「現れよ〝異界獣〟!」


石が巨大化した。


…そして、カンペのようなものを取り出した。


「〝とうぃりぐと……ぞね? らぶびて!!!〟」


「〝異界ウサギ〟!」


巨大な黒い靄ようなが兎が現れた。



「この子を倒すようなことがあれば、また…」


「〝ホワイトマジカルプリンセス・ヨタカメリアレイ!!!!!〟」


両手からビームを放つ。


まばゆい閃光が黒い靄の兎を塵一つ残さずに消し飛ばし、勢いあまって後ろの遊具(兎の乗り物)も消し飛ばした。


「…………」


「…………」


呆気に取られる一人プラス一匹。


「〝この子を倒すようなことがあれば、また…〟何?」


「…兎に何か恨みが?」


「我に返っての第一声がそれかい」


ツッコミの才能があるな。


友だちに欲しいタイプだ。


「あと、異界兎なら〝ラビット〟じゃないの? 何〝らぶびて〟って?」


「…が、外国語で書いてあったから」


今日一の動揺を見せる黒い魔法少女。


「英語でしょ。〝ラビット〟くらい読めなよ」


「…日本人だから日本語しか読めない」


「日本人が日本語しか読めないなら大多数は日本人じゃなくなるわっ!」


「ご、ごめんなさい?」


あー、もうなんかメッチャ可愛く思えてきた。


「襲撃の理由と中学の英語の成績」


「え?」


「それ答えたら見逃してあげる」


「…え、英語の成績は関係ないのでは?」


「言わないのならここで始末する」


黒い魔法少女に向けて拳を構える。


「えぇ…。分かりました」


「分かればよろしい」


拳を下ろす。


「襲撃の理由は最近異界獣を退治してる魔法少女、つまりあなた……」


「〝マジカルカメリア〟」


「え?」


「〝あなた〟じゃなくて〝マジカルカメリア〟」


「…あ、はい」


語気に圧されて萎縮する少女。


ちょっと苛めすぎたかな。


「〝まじかるかめりあ〟さんを誘き出してその戦力を査定、あわよくば始末することでした」


「まあ、ボロ負けした訳だけどね」


「…はい、何で光線とか出せるんですか?」


「逆に聞くけどあんたは出せないの?」


「……はい」


どんどん落ち込んでくなこの子。


「英語の成績は?」


「…1です」


「よく聞こえないなぁ!」


「私は英語の成績1のおバカさんです!!」


可愛い声が泣き寸だ。


正直そそる。


「よく進級できたね」


「…追試と補習受けましたから。もう帰っていいんですよね? この後予定があるので」


「うん、気をつけて」


そういって、黒い魔法少女を見送る。


「…このまま帰しちゃっていいニャン?」


「あ、そうだ!」


リンクスの言葉で大事なことを思い出した。


「名前教えて、変身名でいいから」


正直期待していなかったが返答があった。


「〝まじかるえぼにー〟とか言うらしいですよ。黒ウサが勝手につけた名前ですけど」



「なかなか面白い子だったな」


戦闘力は不合格だけど、個性でいったら満点合格だ。


「どうして逃がしちゃったニャン?」


「捕まえて拷問しろとでも? あ、でもあの子はいい声で鳴きそう」


「…そういうこと言ってる訳じゃないけどニャン」


「狙いがあたしでそれ以外に危害を加えるのに乗り気じゃないからそんなに危険じゃない&ビームで力使いすぎてガス欠気味だったから」


じゃなきゃ親玉について吐くまで殴り倒してた。


「なるほどニャン」


「それに気づかない程のおマヌケさん&情報漏らしまくりのおバカさんで助かった」


「情報ニャン?」


「〝黒ウサ〟とかいうのに力を与えられた中学生、それも進級してるから多分二年か三年生。それが〝マジカルエボニー〟ちゃんの正体だよ」



「すみません、世界を救っていて遅れました」


「うん、二時限目始まるから席についてね、白山茶花さん」


「はい」


流石に二年連続で担任だとあたしへの対応も慣れっこだな、先生。


「おかえり」


「どこ行ってたんだ、コラー! 寂しくて死ぬとこだったぞ!」


「いやぁ、これには深い訳があってね…」


席に着きつつ小声でハルっちと嫁入に話す。


「すみません、体調不良で遅れました」


可愛らしい声がして前を向く。


「気にしなくていいですよ。みんなに自己紹介を」


黒髪サイドテールの可愛い女の子が黒板の前に立った。


「今日からこの学校に転校してきました〝黒檀未恋(こくたんみれん)〟といいます。好きな動物は兎です。よろしくお願いします」


パチパチパチ、と拍手が起こる。


「じゃあその空いてる席に座って下さい」


「はい」


そういってあたしの横に座る転校生。


「よろしくお願いします」


「あたしは白山茶花桃椿。〝未恋ちゃん〟って呼んでいい? あと、タメ語でいいよ」


そういって、ノートに書いてある名前を見せる。


「綺麗なお名前ですね。敬語は癖なのでご容赦下さい。…代わりと言ってはなんですが私も〝桃ちゃん〟って呼んでもいいですか?」


「もちろん、ばっちこい!」


「はい、仲良くなるのはいいけど静かにね」


「はーい」



「これ読める?」


授業中。


先生の目を盗んでノートに書いた文字を見せる。


「えぼん…や? すみません、ちょっと読めないです」


「うん、いいよ。ありがとう」


読めると思ってなかったし。


「黒檀未恋」


「え?」


「いい名前だね」


「あ、ありがとう?」


「ほら、そこ静かにー」


「す、すみません」

「ごめんなさーい」


進級して早々可愛い友だちが出来てあたしは幸せだなぁ。



ebony[意味:黒檀]

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