第44話「わからせ」
「でも、冬月君は夏目君と一緒に暮らしていませんよね?」
「よく知ってるね」
美優さんの指摘はごもっともで、本当に春野先輩はよく知ってる。
一瞬慌てたように春野先輩が俺の顔を見てきたけど、多分ストーカーじゃないと否定したかったんだろう。
とりあえず笑顔を返すと先輩は豊満な胸に手を当ててホッと息を吐く。
安心したようだ。
ただ、その行動を見ていた美優さんはとても物言いたげな目をしていた。
そして視線は春野先輩の豊満な胸へと釘付けになっている。
何を考えているのか一瞬で理解したけど、怒られるのは嫌なので俺は両者から目を逸らす事にした。
「えっと、夏目君も特に一緒に暮らしてるとか言ってなかったので」
「そっか。まぁ、という事情があるから優君がお店を継ぐ事には何も問題ないんだよ」
美優さんが言ってるのは子供が親のお店を継ぐだけだから問題ないという事だ。
だけど、本当に問題がなかったかと言えばそうじゃない。
「でも、今働かれてる方とかは抵抗があるんじゃ……」
春野先輩の言う通り、翔太たちのお父さんがやってるお店の従業員さんが納得できるかどうか、それはその人次第だ。
そして最初は受け入れられなかった。
当然だ、お父さんが経営するのは一流レストランであり、働く人たちは皆腕に覚えがある人たちばかり。
そんな人たちが自分よりも遥かに実力が劣る者が将来上に立つと言われて納得できるはずがない。
「まぁ色々とあったようだけど、全員黙らせたよ」
「えっ!?」
「あっ、別に権力を使ったわけじゃないから。優君が実力で黙らせた、ただそれだけの話だよ。実力さえあれば年齢も経験も関係ない。それが料理人の世界なの」
美優さんが言ってるのは極論だ。
実際にはそのお店で働いた年数や経験などは重視される。
ただ、実力があれば無視はできない、ただそれだけの話だ。
「実際にはどうされたのですか?」
「腕が立つ人間三人に最も得意とする料理を優君と一緒に作らせたの。で、その後優君がもう一度同じ料理を一人で作った後、出来たものをお父さんのお店で働いている人たちに食べさせたんだよ」
「どうして二回――あっ、一回目は手本があるから本当の実力をはかれないからですか?」
「ふふ、そう考えちゃうよね~」
春野先輩の質問を聞いてニヤッと笑う美優さん。
実に楽しそうだ。
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