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第3話 『マイホーム』


「で、どうしたら僕の家にってなるんだよ」


 現在地。たぶん愛しのマイホーム。たぶんって言うのは、それなりに住んでるから愛着もそれなりにはあるかな〜って意味合い。


「先程話しただろう? まぁ、いい。もう一度話すぞ。【塔】からの通達でな、以下の観点からお前の家にした方が良いと判断した故によく聞け」


 任務として認識しているからなのか、真剣な表情の雷牙が呆れたようにするのはいつものことで慣れているけど。


 曰く、彼女の解析や質疑応答は必要だろうけど、本部にいる人員で非常事態に対応できないかもしれない。

 曰く、目が覚めるまでひとまず【死神】の家……つまるところ僕の家に泊めておけ。


 はーん。僕の家は極端に言って爆発で吹っ飛んでも良いってこと!?

 例えば、目が覚めた瞬間どかーんとかされたら本部どうするの? 手当て出してくれる!?


 これでもたくさんの思い出の詰まった家だよ?

 いや、まあ……、確かに妥当だろうね。それこそ、その例えで言って本部でいきなりどかーんされるのが最悪の事態だし。


 しかも、彼女のことが見えない雷牙だと、彼女が起きたことすら分からない。つまり対応不可。


 別に彼女をよくゲームであるような出会って1ターン目に即爆発してくるやつとは僕は少なくとも思ってないけど……例えね? 例え。


「それで、僕の家なのね……」


「【塔】からは、『申し訳ないです、先輩。てへ☆』と伝えて欲しいと。ちなみにその分給料は出るらしい」


 うわぁ……【(かなた)】の最後の一言が無ければなぁ……。まだ、申し訳なさあるなら仕方ないかって思えたんだけどなぁ……。


 ちなみにちゃっかり申し訳程度の給料出さないでよ……。

 世の中、お金が無ければ、もちろん生きていけないけど。

 そんなお金で抑えれる人間だと判断されていたのね、僕は悲しいよ。およよ……。


「まぁ……分かったよ。けど決してお金で納得したわけじゃないからね!?」


 ツンデレとか心の中で思ったそこのお前、100歩譲ってもそれは無い。

 今時、男のツンデレが流行るかよ。

 おそらくだけど、今とても自分は怠いし、気怠いし、やりたくないですオーラ出してると思うけど。


「……ふん、ひとまず俺の少女護衛の任務は片付いた。後は任せたぞ」


「君は本気で任せてくるから、文句言えないんだよね……けど、僕と君の仲って言うのもあるからね。はぁ……『死神は鎌を振り、その星を斬る』」


「『星はその身を以て、死神を穿(うが)つ』」


 雷牙との合言葉。

 別に本当に戦うってわけじゃないよ?

 この世界、何が起こるか分からないから、何とも保証できないけど。


 皮肉を言い合うような仲だから、その任務あるいは頼み事は任されたよって時に、頼まれた側から言い出す言葉。


「なら、問題ないな」


 その言葉に満足したのか、ふっと頬を少し緩めて僕に背を向けて去っていく。

 相変わらず無駄にスタイル良いな……。


 ほら、当然嫌な人とか、人間関係がある以上はいるけれど、雷牙みたいに少しは嫌だけど憎めないとこがある人もいるよね。


 とは言え。

 既に余っていた部屋に彼女は寝かせてある。

 この家には、元々は僕の兄さんも住んでいた。そう、住んでいた。

 過去形。文字通りの過去の産物を指す言葉。

 現在のものではない。


 その理由は……………。

 あの日のことがチラッと頭を過った。

 一枚の写真、あるいはモノクロの砂嵐の混ざった映像のように。悲しい悲しい記憶。


 けれど、それは……。

 結論から言うと兄さんは死んでいる。

 その理由が今の職業に繋がっているわけだが。


 ……語っても良いよ。寧ろこの流れからして語るべきかもしれないけど。


 一度受け入れたこととは言え、思い出すのは辛いと言うもの。

 身体的な傷が治っても、精神的なものは治らないとは良く言ったものだね……。


 だからこそ、容易には思い出せない。

 いや、純粋に思い出したくないのかもしれない。


「はぁ……兄さんなら、どうする?」


 答えが無い。それは当然で。

 こんなところで寧ろ返事が返ってくる方が恐ろしい。この家がそんな幽霊屋敷になった覚えはない。


 けれど、どこかまだ(すが)りたい自分がいる。

 そこから出た溜め息。

 玄関で話してはいたけれど、このまま突っ立っているわけにもいかず、彼女を見に足を動かす。いろいろな意味で、まるで鉛でもつけられ、水の中を歩いているようなほどの重さに感じる足を。


 ……ガチャッ。


 静寂を切る…とまでカッコ良くはないけれど、まさにそんな感覚を思わせる音。

 僕が静かに彼女を寝かしてある元兄さんの部屋のドアを開けた音。


「…………」


 まだ起きてはいないらしい。

 女物の下着などは当然持ってない。

 かと言って馬鹿正直にジーンズを履かせたところでどんなプレイだよとなってしまうので、俗に言う彼シャツみたくシャツと上着だけ羽織らせて寝かせてある。


 え、僕の性癖? 違うし、誰が正直に暴露するんだよ……暴露しても、損しかないよ……。


 そう勝手に突っ込みをしていると。


 キーーーーン!!


「だッ……!? 頭に響く……音……?」


 思わず頭を物理的に抱えてしまったわけど、かと言って痛いわけじゃない。

 黒板を爪で引っ掻くような不快なものでもないし、強いて言い表すなら、音叉と音叉をぶつけた音。少女と出会った時に聞いた音。


「これ……は……?」


「私の契約者〜〜♪」


 むにゅ。

 うん、柔らかい。スライムほど弾力があるわけでもなく、マシュマロ的な?


 それでいて、人肌のように温かい。

 うん、心地良い。そしてえr……じゃなくて!


 ここでやっと背中から手を回され抱きつかれていることに気付く僕。遅い。


「……ふぇ?」


 変な声出た。あれ、僕こんな声だっけ?

 確かに、僕はさっきの音に対して咄嗟に頭を抱えて、扉を背にはした。

 また彼女が襲われる可能性はもちろん拭えなかったから。


 ということは。


「えーと……君はどうして抱きついているのかな……?」


 おそらくは背後にいるであろう少女にそう声をかけた。

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