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巨人族

俺はなんかわかった気がする。

ヨーロッパの伝承で、エルフとか巨人族とか出てくるが、あれはこいつらのことだ!


今、目の前に座っているアトランティス人は、立っていると身長が3メートルぐらいはあった。お茶を持って来た女でもこいつより10㎝低いかなというぐらいのことだったので、押し述べて皆、背が高いのだろう。


見た目は神古代のギリシャの彫像のようで、掘りの深い顔立ちに、絹のように流れる髪を持っている。

アトラスとかいうこの男はがっしりとした筋肉質の身体に白い布の服をつけ、腰には古代戦士のような太い皮ベルトをしていた。出かける時には、後ろの棚に置いてあるぶっとい剣を、腰にさげるのかもしれない。


「ふん、1万7000年後の未来から来たのか。眉唾物だが……後ろの従者の様子を見るに、機械文明の発達を感じるな。あながち、お前が言うことも間違いではないのかもしれん」


疑い深いおっさんだな。

アトラスが最初に気にしたのは、俺よりも連れて来た護衛の5006ロボットの方だ。5千番代のこのタイプのロボットは、滑らかな動きと人工被膜のそこそこの高級感を漂わせており、古いものだといっても使い勝手がいい。うちのじいさんが最後に使っていたのも、同じタイプの介護ロボットだ。


「俺の船を見てくれれば本当かどうかはすぐにわかる。凍りついたアンテナが故障の原因だそうだ。修復するために精錬された金属を譲ってもらえないだろうか」


俺がジュナたちのところへ行っている間に、マザーコンピュータが指示を出して、コマンダー(ワン)に故障原因を調べさせたようだ。どうやら2万年前のあの隕石の氷片で、タイムリープをするためのアンテナが氷結し、始動してすぐに吹っ飛んでいったらしい。


アトラスは(わし)のような鋭い目で、俺の方をじっと見すえながら何か考えていたが、ニヤリと嫌な笑みを浮かべて顎をさすった。


「わかった、本国へ連絡を取ろう。しかしお前としても無償の要求は心苦しかろう。未来の情報提供とここの村人たちへの啓蒙(けいもう)活動、それが条件だな」


この野郎、俺を自分の勝手がいいように働かせるつもりだな。


宇宙船の廊下にでも穴を開けて、その金属で修復するという手もあるが、マザーコンピュータが船の総重量が変わるとタイムリープに微妙な誤差が生じる危険性があるというので、その方法は最後の手段として取っておく。


ここはこのアトラスのやり方に乗っておくか。


「その条件をのもう」

「よし、手打ちだ」


アトラスは俺と片手を叩き合わせて、その後、拳を突き合わせた。これがアトランティスのシェイクハンドらしい。



俺はアトラスに指示されて別の部屋へ行き、さっきお茶を出してくれた大女と話をすることになった。

彼女はアフロデーテという名前だった。身長に目をつぶればかわいこちゃんと言えなくもない。

金髪の豊かな髪をくるんとひねって、頭の上の方でお団子にしている。

アトラスの秘書といった役どころだろうか。


「それで、君たちは何のために村の人を啓蒙しようとしてるのさ?」


そこを聞いておかないと、ジュマたちにどんな風に接していいのかわからない。


「今年に入ってから天文学者たちが警鐘を鳴らしているのです。再び、隕石の雨が降る時が来たと」

「再び? もしかして3000年前の隕石群の記録があるのか?!」


俺がそう言うと、アフロデーテは少し腰を浮かしたかに見えた。


「どうしてそれを……そうですね、あなたは未来人でした」

「ああ、ちょっと前に見てきたよ。隕石から散った大きな氷の塊がたくさん海に降っていた。実を言うとその時に俺の宇宙船が破損したんだよね」

「破損ぐらいのことですんで良かったです。地球では多くの文明が淘汰されてしまいました。残ったのは私たちアトランティス文明だけです。あれから海が三倍ちかく膨らんだようです。翌年には残りかすの隕石が地球の神の力に引かれ、月となりました」


は?! とんでもない情報だぞ。


「月は2万年前、いや3000年前に地球の衛星になったのか?」

「はい。エイセイというのが何か知りませんが、夜の空に居座るようになったのです。それから海は荒れるようになり、海の神に祈っても鎮まりません。科学者の中には、人間の内部の時が25時間のままなのに、一日の長さが24時間に変わったのも月の仕業だと言っている者もいます。アトランティス大陸の外部の人間はどんどん身長が縮み、今では私たちの半分の身長になってしまいました。女たちにも変化がありました。あの……一年に一度だけだった発情期が、外の人間には毎月、訪れるそうです」


…………もしかして月のもののことを言ってるのか?

そうか、生理のことを月のものというのは、ここからきてるんだな。


わかった、重力だ!

月の重力場が地球に住んでいる人間に影響を与えてるんだ。


アトランティス大陸に住む者だけに影響がないということは……この飛行船があることと関係がありそうだぞ。


「もしかして、この飛行船が浮かぶ仕組みが、アトランティス大陸でとれる鉱石かなんかと関係してるのかな?」

「さすが未来の方の知能は素晴らしいですね。そうです、アトランティス大陸の地下には大量の飛行石が眠っているんです」


知能をほめられたが、俺は学校ではそんなに成績がいい方じゃなかった。どちらかといえば赤点すれすれの通知表ばかりもらってくるので、いつも親父にしこたま怒鳴られている。

しかし飛行石か。

これは反重力物質の塊なのかもしれないな。

それが大量にあることで、アトランティス大陸に住む者だけには月の重力場のストレスがかからなかったってことか。


しかし月は何十臆年以上も前、太陽系の生成期に地球の引力に囚われたと学校で習ったが、これは新発見なのかもしれないぞ。



「アトラス様が、ユーヤ様に未来の話を強請(ねだ)られたのには、わけがあります。たぶんこれから降る隕石の雨の影響を知りたいのだと思います。アトランティス大陸は、私たちの文明は生き残れるのでしょうか?」


うわーーー、核心に触れてきたよこの人。

マザーコンピュータに聞けば、何年頃に隕石が多かったのか記憶してると思うけど……

もしかして、アトランティス大陸が大西洋沖に沈んだのって、隕石の落下が原因なのかな。


迫力のある美人がずずずっと迫ってくる姿に、ちょっぴりチビリそうになった裕也だった。

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