第6話 そして高一な俺のプランE
そんな訳で、俺は相変わらず寂しい人間関係のまま、高校生になった。
中高一貫だったから、受験勉強がなかったのは良かったな。6月の1回目進路選択希望は、取りあえず理系だ。
とりあえずって言っても、いいかげんに選んだわけじゃあない。
俺は苦手な教科がないんだ。数学が苦手だから文系に、国語が苦手だから理系に。
それってちょっと、後ろ向きな理由だろ?
だけど、苦手がなかったらどっちを選んでも良いわけ。
あ、好きな教科があったらもっと良いんだけど、だいたい何でも好きだからなあ……
じゃあどうやって決めたらいい?
俺はゆずに聞いてみたね。
「なあ、ゆずって理系?文系?」
「理系かな。俺んち、病院だからさ」
「へえ……」
「そういえば、高2からは、理系と文系でクラスが分かれるってさ」
「わかった。俺、理系にする!」
選択教科も、特に好き嫌いはないから、物理と地理と音楽。
全部ゆずに合わせてやった。
やっほー!
相変わらずクラスメイトからは何となく遠巻きにされているが、たまに話しかけてくれる奴もいて、それなりに充実した毎日を送っている。
そんなある日。
「なあ、ゆず。俺ってなんでみんなに遠巻きにされてるのかって、考えてみたんだよ。そして一つの結論に辿り着いた」
「へえ。何?」
「俺って、なんかいろいろ頑張ってもいつも一人で盛り上がってるじゃん?」
「……まあ、そうだね」
「なんか頑張って成功した時ってさ、『くっそー、あと5点取ったら俺が……』とか『お前、速いな!俺も次は頑張るぞー』みたいな合いの手があると良いと思うんだ」
「……まあな」
「ゆずって、成績いいじゃん?俺の次に。『くっそー、あと5て……』」
「言わねーし(笑)」
「足も速いだろ、『俺も次は……』」
「言わねーよ!お前なあ、俺だってまじで勉強してるんだぜ。何で全部のテストで2点ずつ負けてんだよ!」
「あ、それ俺も思った。何でゆずっていつも1問間違うの?」
「……なんでかなあ、全く。こんな能天気に勝てねえ俺……」
何故か落ち込むゆず。総合的には俺に勝ってると思うんだけどな。友達の数とか、顔とか……くそっ、なんか俺も落ち込んできた。
どうやらゆずは、俺と一緒に盛り上がってくれる気はないらしい。
他は点数に少し差があるからなあ。みんないいヤツではあるんだよ、時々一緒にご飯食べてくれるし。あと、忘れ物したら貸してくれるし。後は話しかけてくれさえすればなーーー。
けど、それで諦める俺じゃないんだぜ!
7月の初め、ネットの海をさまよっていた俺は、スゲー情報を手に入れた。
それから夏休みを1か月使って、準備を整えたんだ。
ゆずを超える、最強の俺のライバルを手に入れる方法を!
8月28日、夏休みが終わったその日の放課後。俺はゆずを引っ張って、職員室へ特攻した。
「失礼します。あ、先生!それと校長先生!」
職員室中の先生が一斉にこっちを向いた。
よし、校長先生も見てるな。
「えっと、俺、転校しまーす。右田楪くんと一緒に!」
「ええええええっ!」
職員室中に沸き起こる悲鳴。
ふと横を見ると、珍しくゆずもびっくりしてる。
何驚いてるんだよ?
あ、そっか。ゆずに事情説明してなかったっけ。