表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/52

第3話 中一な俺のプランB

 中学生になった俺は、学校の度重なる説得にも首を振らず、サッカーをやめた。

 サッカーが出来たらモテるなんて、嘘だ。

 そして、小学校と違って足が速いからモテるわけでもない。

 そもそも、ここには女子もいないがな。


 ああ、それは良いんだ。

 俺は人気者になりたいだけだから、モテる相手が男だって一向に構わない。

 中学生になって、モテるために俺が頑張ったのは、音楽だ。

 その前にお笑いも試してみたが、これは全く才能がないと分かって早々に諦めた。

 音楽と言えばギターだろう。だがうちにはギターがない。

 仕方がないから、母親が若いころ弾いていたというハープを習った。

 母親に。くっ、屈辱!

 そうそう、ハープと言ってもあの見上げるほど巨大なやつじゃないぞ。膝に乗せて弾く、かわいいやつだ。


 中学に入ったら通学時間も倍になって、宿題の量も半端じゃない。成績は常に上位を維持しないと、一回落ちたら後が大変なんだ。

 東雲学園は部活が参加自由だったから、俺はほぼ行かなくてもいい美術部に入部した。学校が終わったら速攻家に帰って、宿題を済ませ、予習も完璧に終わらせてから、母親にハープを習った。中一の俺が母親に何かを習うのは屈辱的だったが、モテるためには仕方がない。


 夏休みも、部活の合宿にも行かず、家でひたすら宿題と筋トレとハープをこなす俺。

 ハッキリ言って、2学期が始まるころには、少し飽きてきたが、モテるためには仕方がない。

 そんな俺にも、友人と言えるやつが出来た。

 右田楪みぎた ゆずりは

 9月の運動会の時に、俺にあと少しで追いつくほど足が速かったんだ。

 部活やってなくて、こんなに足が速いのはすげえと思う。

 まあ、おれのがすげえけどな。

 隣のクラスだったから、運動会が終わってからよく喋るようになった。

 俺はゆずって呼んでるんだが、ゆずは頭もいい。学年じゃ俺に次いで2番だ。

 爽やかなイケメンで、そして、とにかくクラスの人気者だ。

 くっ。そこだけは負けているかもしれない。

 だが見てろよ!

 俺は文化祭で、絶対人気者になる!


 それを聞いて、ゆずは、くっくっくっとイケメン笑いをした。

 くそぅ……



 秋の文化祭の時に、全校生徒の前で弾き語りした。

 曲は、有名なわりに簡単で、習い始めの俺にも弾ける、アメージンググレースだ。

 その頃まだ、身長が150センチ台で声変わり前だった俺は、ボーイソプラノを活かして、滔々と歌い上げた。

 やべえ。何とか合唱団にスカウトされるかもしれねえ。

 最後のグリッサンドも美しく決め、その余韻が消えた時会場は……静寂に包まれた。

 あれ?

 割れんばかりの拍手は?

 ブラボーとか、言っちゃっていいのよ?


 謎の静寂に、どうしたら良いか分からなくなって、ぺこりと頭を下げて俺は引っ込んだ。

 俺が舞台から消えると、会場内にはため息が広がった。

 ため息つきたいのは、俺だよ?


 歌は失敗しても、せめて、笑いくらいはとれるはずだったのに。

 だって、ハープだし?

 面白くない?


 こうして俺の中一の時の挑戦は失敗に終わった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ