第2話 小学生な俺のプランA
小学生と言えば、足の速い子は、男女を問わず断然人気者だろう。足が速いと言えば、サッカー部だ。
4年の時にスポ小に入った俺は、がむしゃらに特訓した。小さいころからサッカースクールに通っていた奴をあっという間に追い抜いて、県のサッカー界期待の新人と言われた。
足ももちろん速くなったさ。運動会のリレーでは、確かに人気者だったと思う。
そして、放課後遊ぼうと誘われ始めた。
4年生の3学期、それはある意味、俺が人気のピークを謳歌していた時期だ。
5年生になると環境が一変した。
スポ少の監督に欲が出てきたのだ。
「勝てる!お前らなら、全国に行ける!」
そういわれて盛り上がらないサッカー少年がいるだろうか。
俺だって盛り上がったさ。
これでますます、モテモテの人気者だって。
……サッカーって、雨の日も練習が休みにならないんだよな。
放課後、校庭はサッカー部が優先的に使わせてもらえた。来る日も、来る日も。
月曜から金曜まで毎日。
土日?土日は練習試合で遠征だ。
母親も色々と保護者同士のお付き合いがあって、キレ気味。
「だからスポ少はやめなさいって言ったじゃないの!」
俺だってな、こんなにハードだとは思わなかったんだよ!
だって、4年の頃は練習だって週に3日だったし、遠征も月に1回くらいだったんだ。
無名だった俺の小学校は、5年生の時県予選を勝ち抜き、決勝まで進み一躍脚光を浴びた。
校長先生は大喜びで、新学期の集会の時にみんなの前で言ったのさ。
「えー、先日の児童サッカー全国大会の県予選で、わが校のスポーツ少年団であるサッカー部のお友達が、見事準優勝になりました。今年は残念ながら全国大会には行けませんでしたが、君たちならやってくれる。校長先生はそう思っています。来年は今の5年生である与謝野君たちを先頭に、もっともっと頑張って、ぜひ全国大会に進んでもらいたい。
応援しているみんなも、サッカー部の人達がケガをしないよう、廊下は走らない。教室で物を投げない。運動場では周りをしっかり見て遊ぶ。
そうして、気をつけてあげるのが、一番の応援になるんじゃないかな」
はーい!と全校児童の返事が体育館に響く。
その日からサッカー部の面々は、クラスメイトから遠巻きにされた。
決して人気がなかったわけじゃない。
ただ、恐る恐る遊ぶような、そんな友達は小学生には要らないんだ。
6年生になって、サッカー部は見事全国大会に出場した。
一回戦で負けたけれど。
一緒に戦った仲間たちは将来を見据えて、サッカーの強い中学校や、ジュニアユースの練習に集中できる中学校を選んで、バラバラに進学した。
サッカーに嫌気がさし始めていた俺は、母親の勧めもあって、県内で一番の中高一貫進学校である私立東雲学園を受験した。
自慢じゃあないが勉強も程よく要領がいいから、さして苦労せずに合格できた。そして小学校からたった一人、電車で30分の学校へと通うことになったのだ。