第6話 俺VSゆず
翌日、野々村高校に通うのは2日目だが、親しみやすい名前パワーがさく裂し、俺はクラスメイトに囲まれている。
……男ばっか!
「なあなあ、山田、東雲の制服着てたら電車で女子校の生徒に声かけられるって本当?」
「……俺は無いけどね」
「だろうなあ。ははは」
「そういえば、教科書とか制服は全部借りてるんだろ?ほかに困った事とかないか?」
「んー、今んとこ大丈夫かな。ありがとう。あ、先生情報知りたいな」
「先生……あ、美術の梅田の前じゃ『ハゲ』と『カツラ』は禁句だぜ」
「そうそう。あと、化学のオーちゃんは、授業中にあてる順番が、出席番号の下一桁なんだけど、2回に1回は『では、本日はラッキーセブンで』って7の付くヤツなんだ。山田は47番だから注意しろよ」
「わかった!ありがとう。でも化学は得意だから大丈夫だ!」
「お前、東雲ってことは頭良いのか?」
「んー……まあ?」
「ははは。おもしれえヤツ!」
みんなイイ奴!
一方その頃ゆずは……
「ねえねえ、右田くんて彼女いるの?」
「いや、いないよ」
「えーっ、マジで?」
「マジで?うっそー!キャー!ほんとー?」
「え、じゃあ放課後とか暇なんじゃない?帰りにさあ……」
「あ、ごめん、放課後は部活なんだ」
「えー、決めるの早くなーい?部活、なあに?」
「……考古学研究部だよ」
「えー、そんな部活あったっけ?」
「……うん。発掘とかするんだって」
「ウッソー!恐竜とか?」
「それ、コワくない?」
「キャハハーー!」
「……あ、そろそろチャイム鳴るよ」
……コメントし辛いな。
男ばかりに囲まれた俺と、女子3人に囲まれたゆず、どっちがラッキーだっただろう?
今日は担任の手島先生の授業がある。
超めんどくさハードな漢字の宿題を出した先生だ。
「じゃ、宿題のノートを返すぞ。自分のを取って後ろにまわして」
宿題は朝、始業前に集めて持って行ったのだが、もうチェックしたらしい。
「今日は高野君、いつもより分かりやすく書けてたぞ!みんなも読みやすい字を書くべし。採点する先生の心証を少しでも良くするためにもな」
ノートを俺にまわすために振り向いた高野さんが、俺を見てにっこり笑って頭を下げた。か、可愛い……
ついぼんやりと、今の高野さんの笑顔を思い出してしまう自分を叱咤しながら、国語の授業に徐々に集中していった。
よし。
今日もノートは完璧!




