第4話 漢字
「せっかく来たから、俺はここで宿題して帰る。お前たちは帰ってもいいぞ」
藤久保がテーブルに着いて言う。
残るに決まってるじゃん。なあ?
俺とゆずが並んで座ると、高野さんも席に着いた。藤久保の隣に。
「ラッキー!今日は分からないとこ、藤久保に聞けるねっ」
ぐぬぬ……
宿題の出し方というのは、学校によってずいぶん違うらしい。
東雲学園はどの教科も同じようにキッチリ、次の授業までにここを解くようにという指示が出ていたが、野々村高校は担当教師に任せているようで、教科によってずいぶん出し方が違う。
俺とゆずは登校初日なので、藤久保と高野さんに明日以降の時間割と課題を確かめながらの勉強会だ。
主に宿題を出すのは数学ⅠとA、英語、EC、国語現代文の先生だ。
国語現代文は担任の手島先生だが、宿題はひたすら漢字便覧を書き写すというもの。どんな書き方でも良いが、ノートに写して漢字を覚える、時間のかかるしんどい宿題だ。
「テッシ―って鬼だわ!」
B罫ノート3ページ目に突入した時、高野さんの叫びが聞こえた。
見れば、小さい字で今、2ページ目に入ったところだ。
「あ、高野さん、それって」
「わっ、今まで何話しかけても反応もなかったイチローくん、何?急に……」
「ごめんね、高野さん。いっちー、集中すると周りの音が聞こえなくなるんだ」
ゆずが肩をすくめながら答えた。
「え、そうなの?俺?」
んー?わかんないな。ま、いいや。
「えっとね、高野さん。漢字を覚えるときは少し大きめの字で、できるだけきれいに書くといいよ。急いでぐちゃぐちゃな字を書くと、手ではその書き順を覚えるかもしれないけど、目で見た時に頭に入りにくいから。
人って記憶するときに経路がみっつ以上あると記憶しやすいんだ。
見えにくい小さな字や汚い字だと、字を覚えるための経路は手だけ。
大き目の読みやすい字を書くと、手と目の二つの経路で覚える。
ついでに声に出して読めばさらに口と耳の二つの経路で頭に入るんだよ」
「へ、へえ。すごいね、イチローくん」
「面白いな、山田。なるほど、国語が得意なやつは字が上手いのが多い気がする」
「ああ、そうでもないんだよ。これは漢字を覚えたり物の名前を記憶したりするときに有効な方法で、国語の読解力にはあまり関係ないからね。漢字と英単語と、後は生物、地学、日本史、世界史あたりで有効な方法なんだ。
それから、点数的にはあまり大きくはないんだけれど、実は漢字を頑張って覚えることは、成績全体を大きく底上げするって言われてる。何故なら……」
「ハウス」
「わん」
ええええっ、ここからが良いところなんだけど!
「いっちー、説明長いから。藤久保君と高野さん、いっちー説は参考になった?あまり信じなくてもいいけど、たまにいいこと言うんだ」
「あ、ああ」
「なんか、すごいね、イチローくん。……あと、ゆずくんも……」




