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第2話 中村君と高野さん

 1時間目の終わりのチャイムが鳴る。


 ふわあああ。

 目が痛くなったよ。

 なんだか俺、授業中は瞬きの回数が少ないみたいで、目が痛くなるんだよね。中三で勉強に力を入れ始めてから、心なしか視力も落ちてきた気がする。

 両目ともに2.0だけれども。



 両手をあげて思いっきり伸びをしてると、隣の男子が話しかけてきた。

「よぉ、山田?よろしくな。俺、中村遥なかむら はるか

 中村遥か。俺のチェックリストには……ああ、全国模試に英語で順位出てたな。

 あの模試の成績は学校名が分かるから、野々村高校の優秀者はもちろんチェック済みだ。

「よろしく、中村君。イチローって呼んでくれ」

「ああ、じゃあ俺もハルカでいいや。ところでお前、部活動する?半年だけど、サッカー部とかどうよ?うちのサッカー部、弱小だから途中入部もオッケーよ」


 ハルカはキラキラした目で俺を見つめてきた。なんてこった!転校して早々に、友達ゲットの予感!!

 が、しかし……俺は知っている。そんな弱小サッカー部だって、きっと毎日放課後に練習があるんだ。雨の日も風の日も。

 くーっ、悩む。ここに来た目的であるライバルを作るのは、サッカー勝負でも良いのか?いや、運動部は拘束時間が危険すぎる。

 それに、事前にゆずと打ち合わせて、入る部活はもう決めてるんだ。

 俺は心を鬼にして、きっぱり断ることにした。


「ごめん、サッカーは嫌いじゃないんだけど、俺、部活はもう決めてるんだ」

「え、もう?転校初日なのに?」

「うん。転校するって決めた時に調べたんだ。考古学研究部に入る予定」


 考古学研究部。

 活動日は週一日だが、ちゃんと部室があって、活動日以外も自由に使える。そして、ライバル候補の2人が考古学研究部なんだ!

 放課後勉強会に使える!


 俺の声が聞こえたのか、前の席の女子がバッとすごい勢いでこっちを振り返った。

「考古学研究部に入るって、ほんと!?」

 ショートカットの可愛い子だ。

 ああ……女子のいる学校生活。


「3年生が引退して、今、部員が2人なの!あ、私、高野美咲たかの みさき。よろしくね!」

 なるほど。彼女がこの学校で成績2位の高野さんか。

「山田一郎です、よろしくね」

「あはは。今日聞いたばかりの名前だから、さすがに覚えてる!11月に学園祭があるんだけど、人手が足りなくて困ってたの。そちらの右田君も一緒にどう?」

 もちろん、ゆずも入りますとも。高野さん、かわいくて一石二鳥!

 にこにこ笑いながら、ゆずがサムズアップしてきた。

 すると、サッカー部のハルカが話に入ってきた。

「高野さん、考古学研究部ってそんなに人手が足りなかったの?俺、サッカーが休みの日だけ、一緒に参加していい?」

「中村君、嬉しいけどサッカー部はさすがに無理でしょ?」

「いや、練習は土日合わせて週に4日だから大丈夫!」

 ……何ですと?

 練習がない日がある!

 弱小サッカー部おそるべし。


 そして転校初日の1時間目で、すでにお友達候補を2人もゲットするとは!

 これはいける。いけるぜ!

 俺は計画成功への手ごたえに、こっそりほくそ笑んだのだ。

 むふふ。


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