第1話 モテない俺
俺はモテない。
女子にも、そして男どもにも人気がない。
与謝野一郎、県内トップの中高一貫男子校、私立東雲学園の高校一年生だ。
見た目は普通だと思う。まあ、イケメンと言う程じゃあないが。
身長だって175センチある。髪型は常に清潔な短髪で、おしゃれにも気を使って美容院へ毎月通っている。
勉強だってできる。そりゃあ、全国一位という程じゃあない。けれど都会から遠く離れた地方都市では、県内一位の称号は輝いているはずなんだ。
なのにモテない。
スポーツ?得意なのはサッカーだが、リレーじゃあ陸上部にも負けないさ。今は部活には入っていないが。
話題だって気を使ってる。
テレビはさらっと流す程度に各局まんべんなく見て、ネットニュースも面白そうなのは動画でチェックする。誰から話しかけられたって、全部の会話を俺が拾ってやるぜ!
話しかけられたらな!
金だって。こんな風に言うとイヤらしいが、高校生だって稼ごうと思えばいくつかの方法がある。もちろん、俺は大金を動かすような度胸がないから、ほんのお小遣い程度の儲けだ。それでもバイトの代わりの家での1時間程度の作業で、カラオケや映画に行くくらいの収入になるのは魅力的だろう。
誘われたことはないが。
「なあ、加藤、数学何点だった?今回のテスト、楽勝だったよな」
「あ、ああ、与謝野君。うーん、いつもよりは良かったかな。与謝野君にはかなわないけど」
俺が加藤に話しかけると、加藤と仲のいい正木も近付いてきた。
「え、かってぃー、数学良かったの?何点、ねえ、何点」
「おう、まさやん、聞いて驚け!94点だ!」
「スゲー!かってぃー、さっすがー。ところで、昨日テレビ見た?」
「もちろん。テストも終わったし。っていうか、あれさあ……」
クラスメイトの加藤と正木は、二人で仲良く食堂に行った。
俺は100点だ……って言えなかった。
……
「あ、今井、昨日のサッカーの試合見た?」
「あ、うん。与謝野君も見たんだ」
「かっけーよな、TERUのボールコントロール。今井もさ、得意じゃん?ボール……」
「ありがとう、与謝野君。でも、もういいんだ。俺、与謝野君みたいに才能ないからさ。コツコツいちから鍛えなおすしかないんだ」
うつむき加減で自分のクラスへと帰っていく
今井はサッカー部の期待のエースだが、先月のクラスマッチで俺にせり負けてから、スランプ気味だ。慰めようと思ったけれど、上手くいかなかった。
俺は人気がない。
友達もほとんどいない。
というか、俺と喋ってくれるのは親友たった1人だけだ。
子どものころから、人一倍目立ちたかった俺。決して努力しなかったわけではない。
小学生のころから、モテるために誰よりも努力していたんだ。
相手は女とか男とか、そんなのどうでもいい。
ただモテたいだけなんだ!