三十八話 アンケートコミュ②
○アンケートコミュ(1d100)
結果【44】座敷童子
1~21 100日ボス 21%:52票
22~23 200日ボス 2% :6票
24~28 300日ボス 5% :13票
29~34 400日ボス 6% :15票
35~36 変態 2% :4票
37~53 座敷童子 17%:43票
54~65 強欲 12%:29票
66~76 救恤 11%:28票
77~97 ソフィア 21%:52票
98~99 サイコ 2% :4票
100 ????
力尽きたあなた。
粒子となり、現実に帰還する間のひととき。
あなたは不思議な夢を見た。
「おにいさん……」
夢の最中。あなたは童子に会った。
再会はあまりにも突然で、あなたは思わず言葉に詰まった。
どんな言葉をこの子にかければいいのか、咄嗟に思い浮かばなかったからだ。
結局、以前会った時、童子は自殺をしてしまった。
自分のせいだ。自分に至らないところがあったから、あんな結末になってしまった。
あなたは自責の念にずっと苛まれてきたが、600日目の戦いの最中、あなたは童子に助けられた。
童子はその時、あなたを応援してくれたのだ。
しかし、その行動が童子のどういった感情に起因したものなのか、あなたは理解することができていない。
ただそれまでの経緯を見ていて、洗脳された自分に殺されることを嫌ったのか。それとも、自分のことを考えて応援してくれたのか。
あなた自身、どうして童子が自殺してしまったのか見当がついていなかったため、童子の感情がどういったものだったのか理解できないのだ。
だから、怖い。
今、目の前にいる童子が、自分に対してどんな思いを抱いているのか。
「おにいさんは……」
複雑そうな表情をして、何かを言いよどむ童子。
あなたの人の心情を見る目を通して見ても、悲しいような、触れることを躊躇うような、一目でその心情を見抜くことができない、寒色のオーラをまとっていた。
「どうして、そこまで優しくしてくれるの?」
それを聞いて、あなたの脳内では瞬時に膨大な思考が行なわれた。
まず、どうしてそういった質問が行なわれたのかという思考。
あなたはその思考の中で、いくつか可能性を検討した上で、あなた自身がどうしてそこまで童子を必死に救おうとしているのか、その理由を童子視点ではよく分からないから、童子がこういった質問をした可能性が高いという結論を出した。
あなたは童子が可哀想な子どもであり、救われるべき人であるという価値観をもとに動いているが、童子からすればその考え方は、あまりにも偽善的に見えたのではないだろうか。
そしてそれは、あなた自身にも問いかけとして機能する。
童子とは、ただダンジョンで出会っただけの関係だ。遊ぼうと言われたから遊んだ。
そう。あなたと童子の関係そのものは、非常に希薄なものでできており、あなたの道徳を重視した規範のみが、童子との関係をとどめている。
あなたは童子のことが好きか?否である。色々と悩まされ、トラウマを植え付けられた分、下手すれば道ばたを歩く一般人より、童子への苦手意識は強い。
あなたが童子を好きになる要因などは存在しない。基本的に人間が苦手なあなたは、その延長線上にある童子も同じように、好意の対象にはなり得ない。
それでも、あなたは童子を救いたいと思っている。
なぜだ。
その思いだけで、あなたは400日目のボス戦で底力を発揮し、500日目のボスでは【降臨する黒き奈落】を、限界を超えて乱発し、600日目のボス戦においては奮戦の鍵となった。
確かに、おかしい。
自分はどうして、ただ少し知り合っただけの子どものために、ここまで力を発揮できたのだろうか。
童子がそれを尋ねるのは、至極真っ当なことだろう。あなた自身でさえ、振り返ってみるとそれを異常と感じるのだ。
そしてなぜこの質問がされたのかを思考すれば、次はどう答えるべきかが思考された。
思いつく選択はいくつか。まず、素直に話す。これは嘘をつかない、飾らないということで、その素直さが評価される可能性があるが、同時にストレートな言葉が童子を傷つける可能性もある。
次に思いつくのは自分の本心はひとまず置いておいて、童子が望んでいそうな言葉を言うこと。
これは童子の望む言葉を話す分、今後の童子の自殺防止に非常に役に立つ可能性がある反面、嘘を見抜かれたらひどく傷つける可能性があるということと、そもそもこちらが正確に童子の望む言葉を見つけることができるのかという難点がある。
他には、童子の質問に対して、質問で返すこと。
私がどうして貴方を熱心に救おうとするのが、気になったのですか?と繋げ、そもそも以前、貴方が大切だということを伝えていることを確認した上で、貴方は自分自身が大切にされることには、理由が必要だと考えているのですね。といったように、カウンセリング的に会話を運ぶことが考えられた。
これの良い点としては、童子の内心に切り込んでいける可能性があるということ。
悪い点としては、童子が本質的に知りたがっていると思われる、どうして自分が童子のためにここまで必死になっているのかという疑問に対する、根本的な答えをうやむやにしてしまうことだろうか。
これをうやむやにしてしまうことで、今後の信頼関係の形成に悪影響を及ぼす可能性があることは否めない。
あなたは知のステータスを最大限に活用し、さらに思考をまわす。
そもそも、だ。どうして童子は自殺をしてしまったのだろうか。
これは自分の未熟さが原因だということは分かるが、自分のどこが未熟で、何がダメだったのか。それに対する検証があやふやだったように思う。
あなたは思い出を振り返る。知のステータスの補正もあり、あなたはよほど何か特別な事情がない限り、思い出を忘れることがない。
だからその当時の状況を、非常に正確に思い出すことができた。
思い出す。回想。
しかしながら。振り返っても、あなたは根本的な原因を見つけることはできなかった。
一見、対話は成功しているように思える。あなたの思いは伝わったし、童子自身も自分が大切にされていることをしっかり実感してくれたように思える。
ならば、どうして?
童子と話す時は、いつもこのような感じだ。やったか?と思いきや、救いの手を払いのけるように、自殺してしまう。
救われたくない?自分はもっと本質的な問題に触れることができていない?
あなたはいくら考えを巡らせても、答えを見つけ出すことはできなかった。
その上で、童子の質問にどのように答えるのか。
思い悩む。あなたには正解が分からなかった。
あなたは人とコミュニケーションを取ることがほとんど無いため、現実の人間の心情を考える際は、知っている創作のキャラクターの心情に当てはめて考えることしかできない。
この分野においては、圧倒的にあなたの経験値は不足しているのだ。
「……」
故に、あなたは決めた。
迷いながらも、自身の心情を素直に吐露することが、最も効果的な手段であると判断した。
なぜならあなたは童子の心情を詳細に知ることができないのだ。
あなたは心情の色を見る特別な瞳があっても、人の心を深く知ることができない。
だから、自分の頼りない知見をもとに、童子が投げかけて欲しそうな言葉を飾ったとしても、それの精度に自信がない。
同じように、カウンセリングという付け焼き刃の技術を用いたとしても、根本的に自身の対人能力が欠如しているが故に、童子の心情を測ることはできないのではないか。
実際に対人能力が普通の人より低いのかはともかく、あなたは自身の言葉にひどく自信をなくしていた。
それはある意味当たり前でもある。なんせ、この童子の説得を試みて、その結果童子は二回も自殺したのだ。
特別自尊心が低い人物でなくても、ここまで失敗すれば、自信を失うのは当然のことだろう。
あなたは怯えるように、懺悔するように。震えた声で、童子の質問に答えた。
――貴方が、子どもだから。
本当に正直な、偽りのない言葉だった。
――貴方が、泣いていたから……。
だから、です。あなたはそう答えた。
熟考した末に出た言葉は、どうしようもないほどに拙く、あなたの人間的な未熟さを露わにしていた。
童子はその言葉を、黙って聞いていた。
あなたが童子に執着する理由は、本当にそんな程度のものでしかない。
童子への打算も好意もない。
ただ、子どもが泣いているのは可哀想だから。それだけであなたは何よりも本気になって動くことができた。
ある意味、一般的な人間としては歪である。
あなたがそこまで童子のために本気になれる理由は、本質的には自分自身の価値を低く見ているからである。
きっと、自分が苦しむより、この子が笑ってくれる方が、ずっと大切なことなのだ。
人間を厭うわりに、自分を認めることができなかったあなたの、どうしようもない闇である。
しかしながら、そのやりとりを見ていた【救恤】は、素晴らしい献身の精神に内心で大いに賞賛をおくっていた。
子どもを必死で助けようとし、さらに自分の価値を低くおく謙遜の価値観。まさに神の子の教えを実践する、素晴らしい人間であると。
この少年は必ずや父なる神により、楽園へ導かれることになるだろうと、確信を得た。
ああ、緑。何も怯える必要はありません。主は貴方を深く愛しております。
【救恤】は優しい瞳であなたを見守っていた。
「そっかぁ……」
童子はどこか呆れたような笑みを浮かべた。
「おにいさん。それはね、危ないよ」
優しい瞳だった。
ただ、同時に悲しみを秘めたまなざしだった。
「きっとおにいさんの世界にも、不幸な子どもはたくさんいるんだよ」
童子はあなたに究極的な問いを投げかける。
「全て救えるの?」
その言葉、あなたにひどく突き刺さった。
確かにそれは、あなたがいずれぶち当たる、非常に大きな問題なのだから。
「止めた方がいいよ。おにいさんに、全ては救えないよ」
「だって、おにいさんは……僕一人、救うことができないんだから」
悲しげに、童子は微笑んだ。
――っっ!!
夢の世界に終わりが訪れる。
待って。待って。
あなたは叫ぶ。もう終わりだと、どこか諦めた笑みを浮かべる童子に向かって。
まだ終わりたくない。貴方はまだ泣いている。悲しみの色は消えていない。
「いいんだよ、おにいさん。僕は悪い子だから。迷惑をかけちゃうよ」
違う、違うだろう。あなたの目はその色を見逃さない。
納得したような表情をしているくせに、童子の悲しみの色はずっと強くなっているのだ。
童子は悲しくて悲しくてたまらないはずなのだ。
こんなところでは終われない。まだ、スキルを使って……。
あなたの行動よりも早く、夢は終わりを迎える。
あなたの思いもむなしく。
神々のアイテムが起こした奇跡の邂逅の時間は、そこで終わりを迎えた。
「ごめんね、おにいさん」
残された童子は一人呟く。
「おにいさんには、僕だけを見て欲しいんだ」
でも、それはできないから。
『迷惑をかけちゃうよ』
その言葉はある意味、童子の合理化であり、虚飾であった。
おにいさんのためだから、仕方がない。そういう言葉で誤魔化して、自分の本心に蓋をした。
中途半端に賢くて、中途半端に大人の分別を身につけてしまったから。
その気持ちはどうしようもなく中途半端なものになってしまった。
おにいさんは僕のことを、子どもだから助けようとしてくれるのは嬉しかった。とても優しい人だと思った。
でも、それは結局の所、僕じゃなくてもきっと助けようとしたのだろう。
だから、それはどうしようもない絶望だった。
もう分からない。
この行動がヤケなのか、それともおにいさんのためを思ってのことなのか。
僕を救えないということで、おにいさんが誰でも助けようとするのを止めてくれた方が、きっとおにいさんはこの後幸せに生きることができる。
僕みたいな悪い子に手を伸ばすなら、もっと良い子を助けた方がおにいさんの支えになってくれるだろう。
合理化。合理化なのだろうか?
おにいさんにとって僕が特別ではないことに絶望したから、そんな同情はいらないと、意気地になって差し伸べた手を振り払っただけなのではないか。
もう、よく分からないや。
ただ、一つ分かるのはね。
もうおにいさんと会えないと思ったらね。
悲しくて、悲しくて、仕方がないことかな。
終わる夢の世界の中で。
透明な雫が何滴もこぼれ落ちていった。
それを拭うものは。
誰も、いない。
≪リザルト≫
○座敷童子の救済判定(1d2)
結果【2】救えない
1.救える 2.救えない
遊戯の始めに主人公のメンタルをブレイクして、終わりでもしっかりメンタルをブレイクしていくやべーやつ。今回の遊戯における主人公の曇らせが半端ない件。メンヘラショタが頑な過ぎて、ちょっと笑えるレベルですね。
○救恤ポイント
キリスト教の聖書、特に福音書のあたりを見てみると、謙虚はかなりキリストに推されている。そして自己犠牲も素晴らしい。ぶっちゃけ、主人公の精神は病んでいるように見えるが、キリシタン的にはポイントが高い。
○知のステータス
頭の回転が滅茶苦茶早くなっているが、あくまで主人公の思考レベルの物事しか考えられない。つまり、主人公が1時間くらいかけて考えることを、知のステータスを上げることで1秒で思考できるようになる感じ。
例を変えると、100桁×100桁のかけ算を一瞬で解くことができても、よく分からない数式を使った問題は解けないのである。




