三十五話 支配者④
少年の持っている色々な道具は、エーテルガチャで深淵魔法級の戦闘でも役に立つとされていた装備と同じ感じです。
つまり装備の段階で大幅な遅れをとっており、今回の戦いは、まんまソシャゲ―の廃課金VS始めたばかりの初心者みたいなようなものですね。
どさっ。
少年は血を吐いて、そのまま倒れた。
「……」
生命力が、途絶えた。
少年は肉体的に死を迎えた。
しかしあなたは警戒を続けた。これで勝ったとは、どうにも思えなかった。
「あーあ、死んでしまいました。貴方も酷いことをしますね」
声が、聞こえた。
幼い。そして高い。小さな女の子の声。
どこか引き攣った顔をして、あなたは声がした方へ顔を向ける。
いた。
小学生にも満たないような、そんな小さな女の子が。
「おかげで命のストックが一つ減ってしまいましたよ」
いたって普通の。整った顔立ちをしていただけのはずの幼女が、邪悪に顔を歪めて笑う。
「あの少年を貴方が殺したんですよ」
その言葉に、あなたは目を見開く。
「私ではないあの少年を、あなたが殺したんです」
息が、荒くなる。
「身代わり。そんな感じの能力です。色々な創作に触れたことがある貴方なら、なんとなく想像がつくでしょう?」
幼女は一瞬だけ、手の平の上に紫色に輝く宝玉を取り出した。
その宝玉からは、あなたが纏っているような空間を破綻させるような黒いオーラを纏っており、電流のように黒い罅をいくつも空間に放出していた。
幼女が、600日目のボスが所持するいくつもの超越したアイテム。きっとそれも、同じように法則をぶち壊すような破壊的な能力を発揮するのだろう。
幼女はすぐさまその宝玉をどこかにしまった。あなたの【異空間収納箱】のような手段があるのだろう。
そしてその様は、今まであなたを弄んできた様子と比べるとどこか余裕がない。おそらく、それが本当に幼女の命綱となっているのだろう。
つまり。
幼女が言うように、本当にあなたは。
クスクス。クスクス。
幼女の笑い声が響く。
「おめでとうございます。初めての、正真正銘の人殺しですね」
ぐにゃり。
あなたは世界が曲がるような衝撃を受けた。
しかし。
それでも、その衝撃を、苦痛を、心のステータスは最小限に押さえ込んだ。
あなたの中には絶望と同時に、大きな疑問が渦巻いていた。
どうして。
どうして?
――どうして、そんなことができるのですか?
物語などで見てきた。サイコパスという人種。理論上ではそういう存在がいるのは知っていた。
共感性、人が持つ一般的な感性が欠如しており、何の罪悪感もなく非道を行なうことができる狂人。
知っていた。知ってはいたのだ。しかし、人の感情を見ることができる目を持ち、人一倍共感性が高いあなただからこそ、そういう人間のことが上手く理解できなかった。
存在を認めることができなかった。
「どうして。どうしてですか? そうですね……。貴方に分かりやすく言うと……」
幼女はその問いかけに、笑顔で答えた。
「私にとって人間とは、面白いオモチャのようなものだからですよ」
幼女は語る。
「私はとっても偉い人の家に生まれて、何の不自由もなく過ごしてきました」
「誰も私の我が儘に逆らうことができません。そんな環境です」
「そして私は、権力と同時に比類無き才能を持って生まれました」
「七日で下位魔術を修め、その後3日で様々な上位魔術を独自に開発し、1日の師事で魔法を習得しました」
「そして次の日には、私は世界最強の魔法使いを意のままに操ることができるようになっていました」
「そんな私だからこそ、発現した魔法は【支配】の力を持っていました。万物を統べ、人心を思うがままにねじ曲げる。そんな魔法です」
「だから、ほぼ全ての人間を私の思い通りに支配することができます」
幼女はあなたを真っ直ぐに見つめた。その視線は変わらずに、あなたを想うどす黒い想念を内包している。
「私に従うことしかできないお人形が、私にとって価値があると思いますか?」
「同じ対等な関係を築いて欲しいというのならば、私の命令にNOということができる存在でなければ、対等とは言えませんよね?」
「だからどうでもいいんですよ。私の代わりにどこかの少年が死のうと」
幼女は自分の胸に手を当てる。
「この幼女が代わりに死のうとも」
「……」
あなたはそれを聞いていた。
臨界を越えるような激しい怒りは、いつの間にか収まっていた。
なるほど、と。
あなたはその考えに、理解を示した。
この人物がここまで歪んでしまったのも、ある意味環境が悪かったのだろうと納得ができてしまった。
だがしかし。
それでもこの幼女が行なおうとしていることは、あなたにとっては許すことができない行いだ。
あなたはこの後起こりえる悲劇を想像し、怒りを燃やす。
――それでも、あの子を踏みにじることは許せません。
あなたは決意を固める。
怒りを僅かに冷ますことができたからこそ、冷静に考えることができた。
ただ攻撃を与えるだけでは、現状のように謎の方法で回避される可能性がある。
つまり、相手を倒すには何らかの仕掛けが発動する余地がないほどに、完璧に幼女を消失させる必要がある。
あの幼女を出し抜いて、あの宝玉の能力さえも弾くことができるほど、幼女を上回る強い意思の力を込めた一撃で、幼女の命を奪う必要があるのだ。
また一人、殺すことになるかもしれないのに?
「……」
あなたはただ前を見た。
右手に黒いオーラが渦巻く。
破壊のために、黒き意思の力を蓄積しているのだ。
「ほう……」
幼女はそれを見て口角を上げた。
「では、次は私から行きますね」
幼女はすぐにその意図を見抜き、安々と力を試させることはしないと攻撃を仕掛ける。
どこからともなく幼女は弓を取り出し、矢をつがえた。
つがえた矢を中心に、黒い罅が周囲に飛び散った。
あなたと同じ、いや、それ以上に強い意思の力。
やはり、純粋な出力は大きく負けている。
あなたはそれを実感しながら、自身のスキルに意識を向ける。
幼女は矢を放った。
黒い流星が宙を裂く。
絶対に躱せない。
それは優れた直感や感性などと関係なく、一目見ただけでその絶対さと性質を理解できた。
なぜならそれは法則を飛び越えた、真正の概念そのもの。かつて500日目のボスがあなたへ向けて放った絶対勝利の槍のように、あらゆる事象を飛び越える超越的な一撃。
絶対必中。
それがあなたへ向けて放たれたのだ。
対抗はできなくはない。
あなたのスキルならば、これに対して鍔迫り合いに持ち込むことができる。
しかしその鍔迫り合いに勝つことは、おそらくできない。
絶対に当たるという結果は変えられない。
――権能【波束の実在証明】
だから、当たることには逆らわない。
飛翔してきた矢は、あなたの着ていた白い上着を穿った。
その標的に干渉することで、力の衝突を避けつつ攻撃をやり過ごす。
今のあなたは右手に意思の力を溜めている最中なのだ。できるだけ消耗なく攻撃をやり過ごしたい。
上に着ているものが白いトゥニカ一枚になり、どこか肌寒さを感じながらあなたは静かに幼女を見つめる。
追撃が来ないなら構わない。こちらから攻撃はしない。今のうちに少しでも多くの意思の力を集中させる。
「ふふっ」
そんなあなたの様子を、幼女は笑った。
「矢1本で1枚脱ぐなら、いくらでも打ち込んであげますよ」
連射。
あなたへ向けて幾十もの黒閃が放たれた。
「……!」
――魔術【植林】
木属性の魔術により、大量に樹木を生成する。
――権能【波束の実在証明】
そして放たれた矢達は多くの樹木を貫いていった。
「期待を裏切られました……」
残念そうに呟きながら、幼女は人差し指をクイッと振った。
まるで何かに合図をするように。
「……っ」
黒いオーラを纏いながら、あなたを取り巻くように鎖が渦を巻き始めていた。
これは以前あの幼女が自分に向けて放った鎖。その時はどこか遠くの場所へ観測して、見当違いの場所を拘束するように仕向けたのだが、いつの間にこれを回収していたのだろうか。それともこの鎖を複数持っている?
鎖と言えば、拘束や、何かの能力を封印されそうな印象が強い。出力差で負けている以上、そういった攻撃を喰らうのは非常にまずい。
不意は突かれたが、その攻撃は一度対処している。
あなたは鎖に対してスキルを行使しようとする。
しかし。
同時に、幼女はあなたに対して絶対必中の矢をいくつも放った。
驚愕。
あなたは目を見開く。
まずい。
ピンチ。
ふと、あなたは童子の顔を思い出した。
――ッッッ
――権能……
「波状攻撃です」
幼女はいつの間にか、剣を構えていた。
その剣は莫大な黒い意思の力を纏っている。
絶対切断。
現状のあなたでは、抗うことはほぼ不可能だろう。
あなたを囲う鎖。飛来する矢。振るわれる斬撃。
詰み。
あなたの脳裏にそんな言葉が思い浮かんだ。
――権能【波束の実在証明】
だからあなたは、まず鎖を対処した。
そして矢と斬撃をその身に受けた。
体は胴体を袈裟斬りにされ、上半身と下半身を斜めに半分にされ、さらに腕や胸に何本か矢が刺さる。
刺さる矢から、切られた切断面から、黒い意思の力により体を、魂をぐちゃぐちゃに崩される。
このままいけば、黒い意思の力があなたを完全に崩壊させるだろう。法則をも容易く破り捨てる一撃だ。あなたの肉体程度、すぐさま塵も残さず消し去るだろう。
まだだッ。
あなたの右手にはまだ、ため込んだ意思の力がある。
戦局を覆し得る、あなたの切り札だ。
あなたは最期にありったけの意思の力を振り絞って。
――自分自身に向けて、その黒い一撃を解き放った。
「え」
あっけにとられたような幼女の声。その行動はどうやら幼女の想定外なようで。
してやったりと。最期に、あなたをニヤリと笑みを浮かべた。
あなたにとっての勝利条件とは何か。
幼女との対話で、一瞬冷静になったあなたはそれを明確に考えることができた。
あなたにとって最も重要なのは、あの童子をこれ以上傷つけないことだ。
だからこそ、あなたにとっては幼女の打倒、もしくは自身の死亡こそが勝利条件であると言えた。
つまり、ゲームから無事に退場することが、現状のあなたにとって最も達成しやすい勝利条件と言えた。
それを踏まえて考えると、無事にあなたが死亡するには一つ障壁があった。
あなた自身の意思の出力が幼女に劣っているため、傷を癒やすあの白い布のような道具で治療された場合、死のうとしても死にきれない可能性があるのだ。
つまり幼女の治療の効果を上回るような一撃をもって、自分自身を殺す必要がある。
そのためにあなた自身の意思の力を振り絞って、幼女の出力を上回る。それが理想だが、失敗する可能性が大きくあった。
ならばどうするか。
あなたは考え、思いついた。
自分自身の出力が劣っているのなら。
――幼女自身の出力を利用すればいい。
だからこそあなたは矢を、斬撃を無防備に受けた。その上で効果が未知数な鎖を遠ざけ、さらに上乗せするように自分自身に渾身の一撃を叩き込んだ。
短時間で練った作戦にしては、上々だろう。
あなたはやり遂げたような達成感を感じながら、意識を闇の中に閉ざした。
「なるほどなるほど。これは一杯やられましたね」
「……」
「……」
「なーんちゃって♡」
幼女は宝玉を取り出す。
「私の説明を鵜呑みにするなんて、可愛いですね」
「【転生の宝珠】」
あなたは目を覚ました。
目の前には、ニヤニヤ笑う幼女の顔があった。
――……なん、で……?
「これ、身代わり系の能力って説明しましたがウソなんですよ」
幼女は宝玉を見せながら、ひどく邪悪に笑う。
「本当は転生する能力なんです。貴方が私の矢をそらしたのと同じ感じですよ。貴方が死ぬのは否定しません。だからこそ、死んだあとに介入するのは比較的少ない労力で行えるんですよ」
ふふっ、安心していいですよ。貴方が殺人を犯したというのは、真っ赤なウソですから。
クスクス。クスクス。
幼女の口が三日月のようにつり上がり、あなたのことを嘲笑う。
「そもそも、洗脳したいのに殺してしまう可能性がある攻撃をするわけないじゃないですか」
あなたはただ、震えていた。
クスクス。クスクス。
笑い声が響く。
意思の力も何もかも、使い果たしてしまったあなたにはもはや抵抗することができない。
「さーて……」
幼女はあなたに手を伸ばす。
「お楽しみの時間といきましょうか♡」
≪リザルト≫
〇第二勝敗判定(1d10)
結果【8】敗北
1~9.敗北 10.勝利
≪新容姿判定≫
○性別(1d2)
結果【2】
1.男性 2.女性
○外見判定(1d7)
結果【1】幼少
1.幼少
2.少年(小中学生)
3.青年(高校生)
4.若者(大学生から20代前半)
5.大人(20代後半から30代前半くらい)
6.中年
7.老人
≪女性外見詳細判定≫
○身長(1d5)
結果【4】大きい
1.とても小さい
2.小さい
3.普通
4.大きい
5.とても大きい
○体型(1d5)
結果【2】スレンダー
1.絶壁
2.スレンダー
3.普通
4.大きめ
5.でかい
○容姿(1d4)
結果【2】整っている
1.普通
2.整っている
3.とても整っている
4.やばい
ホモだと思いましたか? 残念。可変式です。しかしながら本来の性別はまだ謎に包まれているので、精神的ホモかノーマルなのかは不明ということで。
○転生の宝珠
ランダム転生と、そのままの転生で設定可能。主人公は特に容姿、能力が変わらない設定で、その場ですぐさま産まれなおす設定にした。幼女?は生前、ランダム転生で色々な設定にして遊んでいた。




