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三十二話 支配者

待ちに待ったやべーやつとの戦い。


ヒロイン不在が長すぎるこの小説ですが、作者の認識では主人公がヒロインみたなものなので全然問題ないですね(?????)


そもそもの話ですが、主人公の精神状況が改善されない限り、主人公の追っかけができても恋愛には発展しません。主人公がほだされませんので。


作者が想定している、主人公が前を向けるようになることをテーマとした一部が終了するまで、まともな恋愛はできないということですね!(なお作者は現状二部の構想を全く練っていない模様)


一部はだいたい、今回の遊戯が終わって、現実世界パートが終わって、次の遊戯が終わって、そのタイミングで終了します。次の遊戯のタイミングで大きなイベントが起きるので、ここで色々やってようやく一部が終わります。


まあ、ある程度結末までの重要なダイス判定は既に終わっているということですね。


というか600日のボスはここまで大きな扱いになることはなかった予定なんですけどね。どうしてこうなった……?

 600日。0時。あなたは夜の自宅にて、魔法を発動させる。


 【秘密基地(アジト)】の魔法。誰も存在しない超次元へあなたは飛翔する。


 そして時が来た。あなたは白い空間へ誘われる。


「……おや?」


 白い空間にはあの少年が立っていた。肩甲骨の辺りまで伸びた白い髪に、男性とも女性ともとれる中性的な容貌。


 そしてここまで美しい人間がいるのかと驚嘆するほどの、尋常ならざる美貌。


 しかしそれでも、あなたにとって彼はひどく恐ろしい人間であった。得体の知れない精神干渉系の攻撃を仕掛けてきて、あげくには見せつけるように自殺を行なった異常者。それがあなたの彼への印象である。


「恥ずかしがっているのですか、緑」


 緑。そう、あなたの名前である。


 あなたは彼に名乗った覚えはない。つまり、あの200日の一瞬の攻防で、自分の何かを覗かれていたのだ。


「そうですね。貴方はそういう人でしたね」


 少年はゆっくりと片手を挙げた。


「では、私がエスコートしましょう」


 あなたは何かに引っ張られた。


 ――!?


 いつの間にか、あなたは通常の次元に帰ってきていた。


「お久しぶりです」


 目が合う。少年はニッコリと笑った。


「へぇ……なるほど、思ったよりこの遊戯の難易度は高いんですね」


 ……?


 まさか。あなたは少年の言葉から、自身の記憶を覗かれたことを疑った。


 だが、本当に記憶が覗かれたのか、あなたには分からなかった。魔術にしろ魔法にしろ、その予兆を一切感知することができなかったのだ。


「あぁ……! 見込んだとおり、貴方は本当に素晴らしいですね!」


 少年が恍惚とした声をあげる。


 あなたの背筋に凄まじい悪寒が走った。


 やはり彼を相手にしていると、向けられるひどく濁った感情に得体の知れない恐ろしさを感じてしまう。


 そう、あなたは感じたことがないのだ。この少年の内に宿る、黒々とした得体の知れない感情を。


 今まで生きてきて、このような感情の色は初めて見たのだ。


 だから分からなかった。ひどく濁ったそれでも、それは確かにあなたへの好意を示しているということを。


「ふふ……500日目はとても頑張ったんですね、緑」


 ――っっ。


 あなたは思わず身構えた。記憶は覗かれている。それはほぼ確実である。


 さらに少年のおぞましさに気圧(けお)されて一瞬忘れていたが、あなたの【秘密基地(アジト)】の魔法が一瞬で破られている。


 今記憶を覗かれたことも併せて、この少年の実力は……明らかにあなたより上だ。


「そんなに怯えないでくださいよ。悲しいですね……」


 クスクス……クスクス……と。悲しげな様子は見せずに、むしろ楽しそうに少年は笑みをこぼした。


 どうする……先手を取った方が良いか。あなたは悩む。


 魔法使いクラスの戦いは基本的に速攻が強い。相手の攻撃技のほとんどが一撃必殺であるため、相手が切り札を使うよりも前にこちらが切り札を叩きつけてしまえば、多くの戦いに勝利できる。


 あなたにも必殺技が存在する。その一撃を当てることができれば、あの500日目のボスさえも倒すことができた。この少年にだって、当てることさえできればきっと……。


「ふふ……試してみますか?」


 ――ッッ。

 

 躊躇はあった。人としての倫理感。自分から敵対する、攻撃を仕掛けることへの躊躇い。


 だが、ここでこの少年に勝てなければ、何もかもが滅茶苦茶にされそうな恐怖があった。


 だから。


――【降臨する黒き奈落アドヴェント・オブ・アバドン


 黒い渦が炸裂した。


 それは法則の崩壊。無限に存在するエネルギーが世界の法則を崩壊させ、空間そのものを破綻が呑み込んでいく。故にそれは魔法だろうが防ぐ手段はない。


 黒い渦が少年を貪る。


 直撃。


 勝った。


 内心、あなたは確信した。


 だってそうだ。今までこの一撃を受けて無事だった存在はいない。あの500日目の男でさえ、この一撃を当てれば倒すことができた。


 だから……。


 この胸に渦巻く不安は、きっと杞憂になるはずだから…。




「クフフ……不安なんですか?」




 ――ひっ……。


 耳元。あなたの肩に顎をのせるように、少年が背後で囁いた。


 怖い。


 察知できなかった。少年の動きの一切を、声を掛けられまで全く捉えることができていなかったのだ。


 恐怖に駆られたあなたは、逃げるようにもう一度必殺技を放つ。


――【降臨する黒き奈落アドヴェント・オブ・アバドン


「フフ……」


 黒い渦に呑まれながらも、少年は不気味に微笑んだ。


 なんだ…。なんなんだ、この人は。




「効かないですよ、それは」




 吐息。


 気づけば鼻が触れあうような距離にいる少年。


 ――どうして…?


 思わずこぼれたあなたの弱々しい呟き。


 それを見た少年は、嗜虐的に微笑んだ。


「その攻撃はとても強いです。ですが、いくつか弱点があります」


 少年は後退るあなたの手首を掴み、引き寄せる。


 それは非常に強い力であり、あなたは為す術もなく少年の前に引っ張り出された。


「分かりますか? それはものすごく接触に弱いのですよ」


 何か指し示すように、あなたの眼前に少年は一本の指を立てた。


「超光速状態で基盤次元に帰ってくることで、基盤次元では実現できない超光速の速力を得て、その速力をもって無限のエネルギーを発生させて、世界に負荷をかけて世界ごと破壊する。それがあなたの必殺技です」


 ぐりぐりと、少年の指があなたの頬をつついた。


 あなたの全身に鳥肌が立った。


「しかしその無限のエネルギーは物質と干渉することで初めて発生します。つまり、下手すると空気に触れただけで崩壊現象が起こってしまうわけです。だからこそあなたは変なところで崩壊現象を起こさないために、相手にほぼ接した状態で現実世界に帰ってきていました。ならばそれを回避するには、あなたが帰還した瞬間に転移すればいい。そうすればあなたは私がいた跡の空気を殴り、崩壊現象を誤爆させる」


 驚愕。自身の必殺技が深淵魔法などのごり押しで対処されたのではなく、理論的に対処されたことにあなたは非常に大きな衝撃を受けた。


「あなたの【秘密基地(アジト)】の魔法は、現世に戻る瞬間にあなたが現れる空間を真空にします。つまり、人と同じ大きさの分の空気を周囲に転移させる予兆があるということですね。その魔力の反応はとても分かりやすいですよ。それに崩壊現象は局地的な事象です。直撃さえしなければ、呑まれた部分を素早く切り離して余裕で回避することだってできますよ」


 あなたは追い詰められていた。最も安易に使える最強の矛を破られたために、あなたはどのようにこのボスを攻略していけばいいのか困惑していたのだ。


 しかし、それでもあなたは活路を見出した。


――複合魔法【共鳴する反動形成リゾナント・リアクションフォーメイション


 【投影(プロジェクション)】と【反動形成リアクションフォーメイション】の合わせ技。


 それは意図したことと反対の行動を相手に強制的に行なわせる、あなたが持つ魔法の中でも最強クラスの妨害技。


 これで相手の抵抗を封じて、今度こそ必殺技を……


「――無駄ですよ」


 魔法の感覚が消えた。


 ……え。


 あなたの魔法は消失した。


 いつの間にか少年の手の平の上に、深い海のような藍色の球体が浮いていた。


 そして。


 パクリと。少年はそれを食べた。


「うん、美味しい!」


 ……。


 何それ。


 あなたにはそれが理解できなかった。


――混合魔術【火精転身】


――複合魔術【星光収斂】


 極限まで熱エネルギーが凝縮された太陽のごとき球体。あなたの魔力の多くを用いたその魔術は、少年に飛翔していきそして――


 少年の眼前で、一瞬でかき消された。


 ――ッッ!


――複合魔術【多重加速電磁砲】


 連射。


 しかし、全てかき消された。


 ……。


 ……。


 ……ッッ!!


 あなたは地面を蹴る。


――魔法【防衛機制ディフェンス・メカニズム


――【同一視アイデンティフィケーション勝利を求める男(ミスターヴィクトリー)


 勝利の魔法。あなたはそれを用いて、少年の意味不明な防御手段、無効化手段を上回るように魔法を発動させる。


 それはまさに常勝の魔法。よく分からないけどあの防御に打ち勝ちたい。ただそれだけの粗雑な認識でさえ、その魔法は有効に機能する。


 あらゆる危機に対して、それの詳細、理を上塗りして自身の勝利を押しつける。


 500日目のボスは勝利の魔法以外の戦闘手段をほとんど使わなかったが、それは何も慢心したわけでも、かの男が不器用といったわけではない。


 ただそれ以外が必要ないから。その手段だけを極めれば、あらゆる局面に打ち勝つことができるのだ。


 故にその有様を取り入れたあなたの拳は、全ての防御を上回る必勝の――




 ぽすん。




 あなたの拳が、軽く少年の胸を打った。


 クスクス……。


 クスクス……。


 ただ、笑い声だけが聞こえる。


「こんな優しいパンチをしてくるなんて、貴方は戦う気がないんですか?」


 少年はあなたの拳を掴んだ。


「それとも私に触りたかたったんですか?セクハラですね」


 いや、違う。ツッコミを入れる気力すらなく、気づけばあなたは膝を突いていた。


 どうして……? 力が、入らない……。


「魔術。魔法。それはあらゆる全てを魔力と意思の力によって引き起こすことができます」


 どしゃっ。


 あなたはもはや力を入れることすら叶わず、地面に倒れ込んだ。


「逆説的に考えるなら、あらゆる全ての事象を魔力と意思の力に変換することができるというわけでもあります」


 少年は倒れ込んだあなたの顔をひどく愉快そうに覗き込んだ。


「術式反転。分かりますか? これが魔術の究極奥義ですよ」


 術式反転。それはあらゆる全ての事象を魔力や意思の力に変換する技術。


 その技法をもって、あなたの全ての攻撃は少年に無効化された。


 神業。そういっても過言ではない究極の奥義の前に。


「……っ」


 あなたはただ無様に、大地に横たわることしかできなかった。




いつも通りボコボコにされてる主人公ですが、まあお許しください。遊戯パートは気持ち良く無双できる世界ではありません。無双パートは現実世界パートまでお待ちください。


なおこのホモ野郎について、感想欄で違和感を指摘できた方でも3分の1点程度でした。あと2点くらいあるんですが、まあ、判定場面を毎回しっかり見ている方はそんなにいないということですかね。

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