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二十一話 座敷童子イベント

<前回の遊戯の因縁より、強制イベントが発生しました>


≪座敷童子との邂逅≫


○救済判定(1d2)

結果【?】

1.救えた 2.救えない


 日曜日、夜。


 一週間の終わり。月曜日へと渡る、週末のひととき。


 あなたはゆっくりと息を吐く。


 そして。


 あなたは遊戯の世界へ誘われた。




 遊戯の世界に来てから、あなたは積極的にダンジョンを攻略していた。


 基本的にダンジョン以外にいるエネミーたちは生存日数と強さが連動するため、日にちが経たないとダンジョン以外でまともな経験値稼ぎができないのだ。


 そして何より、あなたには会いたい人物がいた。


 それから。ダンジョンを巡っているうちにあなたは気づく。


 どうやら今回の遊戯世界は、前回の遊戯世界とダンジョンが違うようだ。


 ダンジョンがある場所も、内装や外装、徘徊するエネミーの種類や強さも。全てが前回と違う。


 俗に言う、ランダムダンジョンなのだろうか。


 それでも、とにかくあなたは何日もひたすらにダンジョンを回り続けた。


 そして。


 あなたはようやく、和風の屋敷として存在するダンジョンを発見した。




 徘徊するエネミーを瞬殺し、あなたはダンジョンの奥へ移動する。


 襖を開ける。エネミーを倒す。襖を開ける。エネミーを倒す。


 そしてようやく。


「また、会いに来てくれたんだね……おにいさん」


 あなたは座敷童子に再会した。








「ありがとう、また会いに来てくれて。とても嬉しいよ」


 笑顔で座敷童子はそう言った。


「今日は遊んでくれなくても大丈夫だよ。おにいさんのためなら、何度でも死んであげるから」


 どこか壊れたような笑み。ああ、やはりこの子は歪だ。


 あなたはこれまで学んできた知識を総動員して、口火を切る。


 ――私は貴方が死んでしまうことを望んでいません。貴方が幸せであることが私の幸せに繋がると、私は強く思っています。


 あなたはそういった主旨の言葉を発する。


「ふふっ、ありがとう。やっぱりおにいさんは優しいね。だから、ボクはそんなおにいさんのために死にたいんだ」


 あなたは首を傾げる。


 ――私のためを思って動いてくれるのはとても嬉しいです。ただ、それは本当に私の幸せに繋がることなのでしょうか。


「繋がるよ。確かに今は悲しい思いをするかもしれないけど、時間が経てば大丈夫だよ。それにステータスがあるおにいさんなら、悲しくても悪い影響はないでしょ?」


 あなたは話を聞きながら、この子は見かけによらず、深く物事を考えて動いているのだということを理解した。


 ――貴方が私の先のことを考えてくれているのはよく理解できました。それは本当に嬉しく思います。


「ふふ。ボクもおにいさんが分かってくれて嬉しいよ。おにいさんはプレイヤーでしょ? だからこの先、とっても大変な目に遭うと思うんだ。だからそんな時のために、おにいさんには今からしっかり備えていて欲しいんだ」


 なるほどなるほど。


 前回は意味不明だったこの子なりの理屈が、ようやくあなたには理解できた。


 少しばかりの手応え。実際に試すのは初めてだが、あなたはこの子と上手く会話を進められていると感じていた。


 子どもの理屈を頭ごなしに否定してはいけない。


 そうなれば余計反発することになるし、渋々言うことを聞いたとしても、納得していないから不満を内心にため込むことになり、監視者のいない場所でルールを守らない子になってしまう。


 なるほど。確かに、本に書いていた通りなのかもしれない。


 ――貴方が以前授けてくれた【座敷童子の祝福】のおかげで、あの後ダンジョン探索の報酬が全体的に良くなっていました。


 あまり認めたくはないが、それは事実なのだ。次のステップに進むために、そこを否定してはいけない。


「ふへへっ……そうでしょ、そうでしょ!? ボクはおにいさんの役に立てるんだよ!」


 目を輝かせる童子。


 しかし冷静に。あなたは次の会話の流れを組み立てる。


 ――ですが、貴方が死んでしまうのは本当に心苦しいのです。例え次の遊戯で会えるのだとしても。


「……そっかぁ」


 これはあなたが最初に言ったこととほぼ同じことだ。だがしかし、この子なりの理屈に理解を示してから同じ言葉を投げかければ、そのリアクションも大きく変わる。


 童子はあなたの言葉を聞いて、考え込むように俯いた。


 この子は聡い子だ。あなたはそれを見取っていた。だからそれも考慮に入れて会話を組み立てた。


 つまり、このように言えば、この子はその解決の手立てを考えるだろうと予測していたのだ。


「でも……ボクにはこれくらいしかできないよ。おにいさんの役に立つには、ボクを殺して【幸運】を授けるくらいしかできないんだ」


 ああ、見えた。その言葉をもって、あなたはこの子の闇が見えたような気がした。


 ――自分は死ぬことでしか役に立てないと考えているんですね。


「うん。だってそうでしょ?? ボクは役立たずだから殺されたんだ」


 その言葉は身を裂くような……童子の悲痛な想いが籠もった言葉だった。




「お兄ちゃんもお母さんもお父さんも生きていた。働くことができないボクだから、あの日ボクは殺されたんだよ……! ボクは無価値で無意味な存在だよ。そうでしょ??」




 この子の本質がこれなのだ。あなたは強く感じた。


 昔の出来事が起因して、自分自身の自己肯定感が著しく低い。それがこの子の問題なのだろう。


 ああ、まるで鏡を見せられているような感覚だ。いや、違う。自分のそれは自己肯定感うんぬんの問題ではない。客観的に自分を見て、正当な判断を下しているだけだ。


 今は自分のことはどうでもいい。この子に向き合わなくては。


 ――昔、そうやって殺されたから、貴方は自分が無価値だと思っているんですか。


 その言葉を投げかけるには、あなたには辛いものがあった。


 本音はできれば励ましの言葉をかけたいのだ。そんなことはない。あなたは価値がある人間だ。そう声をかけたい。


 でも、それでは解決にならない。この子の心には届かない。


 降り積もった自己への不信が、投げかけられる甘い言葉をお世辞だと。もしくは、その人が良い人だから自分のために心にもないことを言ったのだろうと、拒絶してしまう。


 だから、この子自身が自分の価値に気づかないといけないのだ。


「そうだよ! だって、ボクは……ボクがいなくたって、みんな笑顔で、幸せに……座敷童子だって……」


 心の闇を吐き出すように。文体を成さない、想いの羅列が童子の口からこぼれる。


 切り込んだ。そして闇が見えた。でもこれは、一度落ち着かせた方がいいだろう。


 取り乱す童子を前にしても、あなたは冷静でいることができた。本当に、心のステータスに関しては感謝しかない。あなたはそんなことを考えた。


 ――あなたを殺した家族はその後幸せに暮らして、座敷童子のおかげだといったのですか。


 あなたは残酷に、予想した過去を童子に突きつけた。


「うん……そうだよ……そうだったんだ……!」


 ……。


 ああ。


 やっぱり、人間は残酷だ。


 あなたは童子を抱きしめた。


 可哀想。そのような感情は上から目線でその人を見ているようで、あなたはそれが好きではなかった。


 ただ。それでもあなたは確かに童子へ憐憫(れんびん)の情を抱いた。


 ――貴方は家族が座敷童子ではない自分を必要としてくれなかったことが。とても辛かったんですね。


 あなたは童子の頭を撫でる。慰めるように、少しでも人の熱が伝わればと思って。


「うん…っっ、うん…っっ」


 ダンジョンのとある畳の部屋で。


 幼子の小さな泣き声だけがそこにあった。


 それから数分経ち、童子が少し落ち着いた頃。


 ――過去のあなたは家族に必要とされなかったのかもしれませんが。


 ――今も同じだと感じていますか。


 その言葉に、あなたの胸の中で泣いていた童子は顔を上げた。


 視線がぶつかり合う。


 何かを言いかけるように、童子は唇をこわばらせた。


 ――私はあなたのことが……大切です。死んで欲しくはありません。


 あなたは口角を上げ、人生で初めて、意図的に笑みを作った。


 それはある意味呪縛からの解放であった。




『絶対にお母さん以外の人の前で表情を変えてはいけないよ』




 母親からの言いつけを意図的に破る。あなたを縛っていた鎖からの解放。


 僅かな、本当に小さな微笑をあなたは浮かべる。


 それは人為的に作られた微笑みなのかもしれないが、それでもその微笑みには願いが込められていた。


 自分の心情を表わすための笑みではない。


 この泣いている童子に安心感を与えたくて。他者を想う気持ちが込められた微笑みであった。


「そっかぁ……」


 童子は泣きながらも、どこか安心したように笑みをこぼした。


「おにいさんは本当にボクのことを考えてくれているんだね」


 ありがとう。ありがとう。


 ぐりぐりと、童子は頭をあなたの胸にこすりつけた。


 ああ、よかった。


 あなたはその様子を見て、安堵した。


 そして涙がこぼれそうなほどに。達成感や嬉しさが胸の内からこみ上げてきた。


 こんな自分でも、誰かの心を救うことができたのだ。


 それはどうしようもないほどに初めてで、衝撃的な体験だった。


 自分の存在を軽視しているのは、童子もあなたも一緒だ。


 だからこそあなたは誰かの力になれたこの瞬間に、今まで体験したことがないほどの嬉しさを感じていたのだ。


 ――そして同時に、童子はあなたに対して莫大な好意を向けることになった。


 ああ、おにいさん。大好きなおにいさん。


 愛してもいい。愛されている。


 その感覚はそういったものがずっと欠如していた童子にとっては、震えるほどに喜ばしいものであり、今までずっと欠けていたものが満たされたような。そんな安心感を覚えていた。


 ――だが、あなたは一つ忘れていることがあった。


 例えばカウンセリングで、過去の悩みに一つ折り目をつけることができたとしよう。


 カウンセラーはそれに対して安心感と達成感を覚える。


 しかし、カウンセリングを受けた人は後日さらに不安に襲われることになる。


 なぜか。




 ――それは、過去の悩みで今まで気にしていなかったものに、目を向けることができるようになるからだ。




 実際の例をあげるなら、いじめで不登校になって心を病んだ人が、そのいじめられた過去に折り合いをつけられるようになったとしよう。


 そうすると、その人は次に不登校になったことでおろそかになっていた勉強や、将来の進路のことについて考えることができるようになってしまう。


 つまり、忘れていた現実に向き合わなければいけないのだ。


 そこで再び心を病んでしまう。そういったケースがよく実在する。


 そしてこの時、童子はあなたと過ごす今後について高速で思考を巡らせていた。


 だから、童子は思い至ってしまった。


 ――こんなに優しいおにいさんだから、きっとたくさんの人に好かれて、ボク以外の他の人にも救いの手を差し伸べるのだろう。


 想像してしまった。


 その可能性に気づいてしまった。


 だから。




「あはっ」




 童子は壊れた。


 だから、童子はあなたの腕の中から抜け出す。


 あなたは怪訝な顔をした。どうしたのだろうか。少し様子がおかしい?




 ――ボクを置いていかないで、おにいさん。


 ――ボクだけを見て。


 ――ボクを刻んで。




 魔法が放たれた。




 赤。赤。


 血しぶき。それがあなたの衣服を濡らした。


 あなたには理解ができなかった。


 死んだ。童子は、死んでしまった。


 どうして童子が死んでしまったのか。


 さっきまで、順調にできていたはずなのに。


 何がダメだったの?


 何が。どうして。なんで。




 ――そういえば、あの時もそうだった。




 あ。あ。


 涙が、こぼれる。


 ぽたぽた。頬を伝う。


 ――分からない、分からないんだ……。


 何もできない。自分は、誰も救えない。


 膝から崩れ落ちるあなた。


 床にいくつもの雫がこぼれた。


 あなたの脳裏に一つの光景がフラッシュバックする。




 ――首を吊り、息絶えた母親。




 いつも通りの毎日だった。


 いつも通り見送ってもらって、学校から帰ってきたら。お母さんが。


 理解できない。どうしてみんな置いていってしまうのか。


 何で死んでしまうのか。


 分からない。分からない。


 あなたには理解することができなかったのだ。









 それを見ていた童子の胸の中に、どうしようもない喜悦が湧き上がった。


 普段はあれだけ無表情なおにいさんが、涙を流してくれている。


 お兄ちゃんもお父さんもお母さんも。ボクを殺した時は、仕方ない、仕方ないばかり言っていて、あんなに悲しんではくれなかった。


 これなら、きっとボクは忘れられないだろう。


 だって、あんなに涙を流していて、苦しそうにしているんだから。




 ――苦しそう??




 いや、ちょっと待て。


 苦しそうって、あんなに優しいおにいさんに、ボクは一体何をしているんだ?




 ――そんなことしたら、普通嫌われるよね??




 あ。


 ああ。


 待って、待って待って。


 ごめんなさい、ごめんなさい、おにいさん。


 違うの、おにいさんを苦しめたかったんじゃなくて、ボクをずっと忘れないでいて欲しくて……。


 待って、ごめんなさい、嫌だ。嫌いにならないでおにいさん。


 ボクを見捨てないで…っっ。


 ボクを一人にしないで、おにいさんっっ。


 あ。


 そうだ。頑張る、ボク頑張るから。


 おにいさんに何でもするから。おにいさんのためなら何度も死ぬことができるよ。


 本当はあれ、すっごく怖くて苦しいんだ。でも、おにいさんのためなら何回だってやってあげるから。


 おにいさん、おにいさん。


 頑張るから。おにいさんに役に立てるように頑張るからっっ。




<【座敷童子の献身】を獲得した>




 ごほっ、がっ、あ……。



 これ、ダメ、魂、消えちゃう……。



 え、えへへ。でも、でもできたよ。すっごいの。すっごいのっ。ボク、役に立てるでしょっ??



 おにいさ……何回でも、やるから……。



 また、会いに……来てね……。


○後書き

泣き崩れる主人公。幽霊状態で泣き叫ぶメンヘラショタ。

なんだこれ地獄か??


今回の話を書いた作者の感想です。はい。カウンセリングとか、色々な本を読んで勉強した主人公ですが、メンヘラの狂気には敵わなかったようです。

たぶん、作中で一番曇らされてるのが主人公じゃないですかね…。座敷童子君も相討ちですが。


「おにいさんにボクの存在を刻み込みたかったけど、嫌われそうになってもう遅い」

これが今流行りのもう遅い系ですか?




≪リザルト≫


○救済判定(1d2)

結果【2】救えない

1.救えた 2.救えない


<イベント失敗により、主人公の精神状態が悪化した>


<イベント失敗により、主人公の成長方向が限定された>


<この後の成長判定はダイスを振らずに、自動で《魔法の習熟》になる>



【座敷童子の祝福】


○幸運判定(1d10)

結果【9】



<【座敷童子の祝福】を獲得。次の遊戯が開催されるまで幸運判定(獲得物のみ)に+9をする>


<【座敷童子の献身】を獲得。決定的な瞬間のダイス判定を失敗した場合、一度だけダイスを振り直すことができる。一度使った場合、この効果はなくなる>


<好感度上昇!座敷童子の好感度が確定で10上昇した>


<座敷童子の好感度が【91】になった>


○恋愛フラグ挑戦判定(1d2)

結果【2】恋愛判定はまたの機会


<関心が【100】になった>


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