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二十話 コミュイベント

この小説を読んでいただきありがとうございます。この小説もついに10万文字を超える分量を書くことができました。

元々この小説は11話くらいまで書いてエタらせていたのですが、スコッパーの方がこの小説を見つけてくれて、とても有り難い感想をいただいたのが再開の切っ掛けでした。


読者の皆様には、本当に感謝いたします。




≪一般コミュ≫


○一般コミュとは?

各キャラの持つ関心の高さに応じて確率を割り振り、ダイスを振ってでた数値のキャラと主人公が交流します。


○確率の算出方法

まず、コミュ可能キャラ全員の関心を合計して、その合計に対して各キャラがどれくらいの比重を占めているかで割合を出します。


≪コミュ判定≫


○各関心数値

叔父     関心【79】

クラスメイト 関心【100】

先生     関心【100】

アレハンドラ 関心【79】

ソフィア   関心【100】

サイディ   関心【58】


総関心 【516】


○比率判定

叔父    【15%】

クラスメイト【20%】

先生    【20%】

アレハンドラ【15%】

ソフィア  【19%】

サイディ  【11%】


※割合がいくつか小数点になるので、切り捨てからの六面ダイスを振ってでたキャラに1%プラスする。結果、2と3がでたので、クラスメイトと先生が20%。


○判定(1d100)

結果【12】叔父



1~15:叔父

16~30:アレハンドラ

31~50:クラスメイト

51~70:先生

71~89:ソフィア

90~100:サイディ




≪リクエストコミュ≫


○アンケート結果

クラスメイト【8票】 6%

叔父    【20票】15%

サイディ  【42票】31%

ソフィア  【37票】27%

先生    【30票】22%


○ダイス判定(1d101)

結果【79】ソフィア


1~6    クラスメイト

7~21   叔父

22~52  サイディ

53~79  ソフィア

80~101 先生


※ハーメルンのアンケート集計のパーセンテージが切り捨てか切り上げか四捨五入か良く分からないが、合計したら101だった。しかし計算するのも面倒なのでそのまま採用。


 ピンポーン。


 呼び出しベルが鳴った。


 密林かな?


 あなたはネット通販で注文した品が届いたのかと考え、玄関へ足を運ぶ。


 ガチャ。扉を開く。




「やあ、緑」




 叔父である。


 ????????


「お昼を一緒に食べに行かないか?」


 あ、はい。


 常識的な対応。良くも悪くも他人の好意をあまり無碍にはできない気質故、あなたは断ることができずに、思わず了承の返事をしてしまう。


 そうして。


 戸惑っている内に、あなたはいつの間にか叔父とご飯を食べることになっていたのであった。






 車内。


 あなたは後部座席で、死んだような瞳で窓の外を見つめる。


 完全に不意を突かれたので、あまり身支度ができていない。普段外を出歩くときはワックスでアホ毛をしっかりと固めるのだが、その準備をすることをすっかり忘れてしまったため、今日のあなたのアホ毛は感情豊かに揺れている。


 といっても、あなたの心情を如実に表わしたアホ毛はあなたの人への苦手意識も相まって、縮こまるようにふるふると震えており、現在あまり活発に動いてはいなかった。


「……」


 叔父は、そんなあなたの特徴的な髪の毛をバックミラー越しに確認する。


 ああ、少し強引に連れ出しすぎたかな。内心で反省した。


「そういえば。(ゆき)が君に会いたがっていたな」


 ――そうですか。


 (ゆき)。それを聞いた途端、あなたのアホ毛はビクンと逆立つように強張る。


 彼女は従姉妹であり、この叔父の娘なのであるが……あなたは彼女がどうにも苦手であった。


 人間がだいたい苦手であるあなただが、従姉妹に関してはことさら強い苦手意識を持っていた。


 なぜ苦手なのか。一言で言うなら、従姉妹は陽キャなのである。しかも陰のものであるあなたにも積極的に絡みにくる陽キャだ。


 彼女があなたに好意的なのは自身の瞳の感情を見抜く力で察することはできたが、それでも苦手なものは苦手なのである。


 好きなものは何? 最近はまってるテレビは? どんな音楽をきくの? 映画好き? 今度一緒に見に行こうよ! 一緒に遊ぼう! じゃあかくれんぼね! 私が鬼をやるから。じゃあ行くよ、い~ち、に~い、さーん……。


 あの濁流の如き快活さは、当時心ステータスを搭載していないあなたに、何十発とボディーブローをたたき込むような心理的苦痛を与えた。


 野良猫とそれを追っかけ回す子ども。彼らの関係を見ていた叔父が、その仲を的確に表現した言葉である。


「まあ、流石に幸はもう中学生だから。少し大人びて、前よりはマシになっているよ」


 ほんとぉ?


 あなたは胡乱(うろん)げな瞳をしながら、内心で呟いた。


「結構な頻度で女友達を家に連れてきて一緒に遊んでいるから、緑は会うならタイミングを気を付けなきゃいけないかも?」


 ひぇ……。


 あなたのアホ毛がブルブルと震える。


 そんな少しばかりの雑談をしながら、あなたは移動中の時間を過ごしたのであった。











 叔父に連れてこられたのは、回らないタイプのお寿司屋さんであった。


「気にしないでいい。無理矢理連れ出してしまったお詫びだよ。懐には余裕があるから、好きに頼んでくれ」


 う、うーん。


 お寿司の値段に少しばかり気後れするあなた。


 確かに叔父は大企業の偉い人で、かなり裕福に暮らしていることは知っている。それでも、あなたは庶民的で良識的な感覚を持っていたので、どうにもこういったお寿司を遠慮無く頼むのは気が引けた。


 少し安めの赤身のマグロを注文するあなた。


 同時に。叔父は中トロと大トロを注文した。


「遠慮するな」


 微笑ましいものを見るような。叔父はそんな笑顔を浮かべた。


 作られた高そうなお寿司があなたの前に並べられる。


 赤身、中トロ、大トロ。ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ。


 お前は誰だよ。


 そんなことを考えながら、あなたはいただきますと挨拶をした。


 まずは赤身のマグロをいただく。


 ――おいしい!


 ぴこーんと、あなたのアホ毛が天を突く。


 さっぱりとした味わいながらも、確かにある脂の旨み。舌に馴染む。そんな味わいであった。


 シャリも美味しい。こういった土台となる場所に、やはりチェーン店の回るお寿司屋さんとの違いが出てくるのだろう。


 次は中トロを。お箸で掴み、醤油につけ、口に運ぶ。


 ――うまい!!


 あなたは基本質より量というか、コスパを気にするタイプだ。一つのとても美味しい高級な何かより、そこそこに美味しいものを複数の機会で味わいたい。


 例えるなら、一つハーゲンダッツより、3つのガリガリくん。そんな感じなのである。


 だがそれでも。そんなあなたの普段の考えをひっくり返しえるほどに、その中トロは美味しかった。


 あなたはここまで上質なものをあまり食べない。そこそこ安いものでも美味しいと感じるが故に、こんな高級な脂を食べたことがなかった。


 だから、適切に形容する言葉は上手く見当たらない。それでも、とても美味しいと感じているのは確かなのである。


 乱暴に形容するなら、脂が美味しい。そうとしか言い様がない。


 こ、これで【中】トロだというのなら、【大】トロとは一体何なのか……?


 期待に胸を膨らませ、アホ毛を揺らしながらあなたは大トロに箸を伸ばす。


 そして、口へ。


 ――!!??


 口に大トロのお寿司を入れた瞬間、あなたのアホ毛がピンッと張られた。


 もぐもぐと口を動かす。へにゃりと、腰が抜けるようにアホ毛が張力を失う。


 無意識に、あなたは頬に手を当てて。


 小さく。本当に小さくである。


 人前では年単位で久しぶりとなる、僅かな笑みを浮かべていた。




 そんなあなたの様子を、叔父はゆっくりと食事をしながら静かに見守っていた。


 何回か食事に連れて行った経験から、食事中の彼には話しかけない方がいいことを察していたのだ。


 そういった気遣いが、適切な扱いを心得ていたから。あなたにとって叔父は嫌々ながらも、全力で拒否するような相手ではなくなっていた。


 食事中のあなたに話しかけることはしない。代わりに、遠慮してあまり積極的に注文しないあなたのために、叔父はいくつかのお寿司を追加で注文する。


 しなしなと、申し訳なさそうに彼のアホ毛が縮こまるが、美味しいお寿司を食べるとそれは情緒豊かに張ったり揺れたりしていた。


 ――ああ、ようやくここまで来られたんだな。


 叔父は、初めてあなたに会った時のことを思い出していた。











 高梨(たかなし)(みどり)


 高梨の名字は彼の母親の名字であり、彼を引き取ることになった時、唯一彼は声を挙げてその名字であり続けることを私に懇願した。


 彼は非常に痛ましい経緯でこの世に生まれた。ある意味彼は我が家の汚点であり、罪の象徴のような存在でもあったのだ。


 ――彼は私の兄が、彼の母親に暴行をした時に身籠もった子だ。


 彼の母親は非常に美しい女性であった。


 兄を擁護する訳ではないが、そういった邪な願望を抱くことを禁じ得ないほどには、惹きつけられる何かを持つ女性であったのだ。




『あなた方の力は借りません。この子は、私一人で育てます』




 とても強い言葉だった。


 強い意志を感じる、真っ直ぐな瞳をしていた。


 だから信じられなかった。


 あの強い意志をもった女性が、彼を置いて自殺してしまったことを。


 彼を育てていた彼女がいなくなって初めて、私たちの家族は彼に会うことができた。それほどまでに、彼女は強く私たちを拒んでいたのだ。


 だが、一人遺された彼を見た時、彼女を無理矢理にでも手助けするべきだったと私は後悔した。


 彼女と似て、彼は美しい容姿をしていた。


 だが、雰囲気が大きく違った。


 絶望を具現化して閉じ込めたような。一切の光を映さない瞳。


 南極の氷のごとく、温度を感じさせない凍り付いた表情。


 あの時の彼の様子は、本当に酷かった。


 彼にとって母親は本当に大きな存在だったのだろう。だからこそ今も、私たちと暮らすことを拒んであのアパートに住み続けている。


 あの子はとても傷ついていた。はっきりと分かるほどに。


 だから私は恐ろしかった。


 傷ついているはずだ。苦しいはずだ。悲しくて仕方がない筈なのに、彼は誰にも助けを求めなかった。


 葬式の場。それからの日々。私は彼が涙を流すところを一度も見たことがない。


 私が彼に有効な手助けをできたとは思わないし、周りに支えてくれる誰かがいたとも思えない。


 彼は一人で立ち直り、どこか闇を感じさせながらも、それでもある程度普通に見える子どものように振る舞うことがいつの間にかできていたのだ。


 それが私には恐ろしかった。足を骨折しながらも、血反吐を吐きながら走り回るような。そんな痛ましい何かを感じずにはいられなかった。


 だから今日。寿司を食べて本当に小さくだが、彼が笑みを浮かべていたところを見て、心底ほっとした。


 ああ、良かった。本当に良かった。


 そんなことがあった帰り道。彼の家。駐車場。


 車から降りて、彼を見送る。


 ありがとうございます、ごちそうさまでした。お礼を言って、家に帰る彼に私は手を振った。


 突如。


 くらりと、私は立ちくらみをした。


「あっ」


 私は貧弱だ。あまりものを食べられない体質のせいか、体は骨が浮き出るように細く、貧血等の症状に常に悩まされる。


 だから、それはよくあることだった。少し休めばなんとかなる。そんな程度の症状だった。


 だが、気づけば傍に彼がいた。


 ふらつく私の体を支えながら、彼はどこか心配げな様子で私を見つめる。


 ああ。これはまずいな。


 それはどうしようもなく、感動的であった。エモーショナルというか、ファンタスティックというか。


 彼に疎まれていることは知っていた。それでも、何とか支えになりたくて。私なりに努力をしてきたつもりだった。


 いつも近づくと逃げてしまう野良猫が、少しばかり歩み寄ってくれたような。そんな感動だ。


 だが、同時にどうしようもない一つの感情がこの身から湧き上がる。


 彼は、優しい子だ。本当に良い子なのだ。


 本当は人間そのものが嫌いなのだろう。そういったものは、態度を見ていればなんとなく察することはできた。


 それでも、嫌いでも、怖くても、苦手でも。彼はこのように誰かを助けようとする善意を捨てることができないのだ。


 本当に良い子だ。


 初めて、彼の瞳をこんなに間近で見た。


 端正に整った顔立ち。兄の血を拒み、母親の血を強く継いだのだろうか。どこか色香を感じる女性的な容貌。


 おいおい、冗談だろう?


 私は妻子持ちで、同性で、年齢だってこんなに離れているんだぞ。


 だが。それでも。


 どうにもこの胸の高鳴りは、抑えられずにはいられなかったのだ。




















 とある日。まだ、ランキング2位のプレイヤーの存在が発覚していなかった頃の出来事。


 あなたはプレイヤーを見に行こうと決心した。


 学校から帰ってきた時間帯。あなたは魔法を使って、メリケンの4位のプレイヤーを一目見てみようと思った。


 やはり、あなたは現状のトップクラスのプレイヤーがどれほどの実力を持つのか知りたかったのである。


 なぜ4位なのかというと、どこに所属しているかハッキリしているプレイヤーの中で、一番ランキングが高いのが4位の人物であったからだ。


 あなたは魔法を使い、異次元の空を駆ける。


 この異次元において、あなたは思考することで体を自由に動かすことができる。故に、考えただけで空を飛ぶことができるのだ。


 だからこそ、【延々】の魔術や【加速】の魔術で体感速度を向上させれば、あなたは凄まじい速度で移動することができた。


 その速さは、あなたの街からクワモスまでだいたい7200キロ近い道のりを数分で到着することができるレベルだ。


 メリケンの首都まで飛ぶことさえ、十数分あれば可能な速さである。


 大きな海を見ながら。少し経って、あなたはメリケンに到着した。


 そして気づいた。


 メリケンはまだ日が昇っていない。深夜、もしくは夜の時間である。


 時差。あなたは17時頃に家を出たが、メリケンと和国の時差は14から19時間ほど。


 メリケンの東部は現在深夜の3時ほど。西岸の地区でさえ、深夜0時だ。


 プレイヤーを見つけようにも、プレイヤーが眠っていてはその実力は分からない。


 失敗したかな……。


 あなたは少し考え、一応プレイヤーがどこにいるかだけ探っておこうと決めた。


 あなたは集中する。


 感:2110


 それがあなたのステータスだ。


 そしてそれは、メリケン中のプレイヤーを捜索するには充分すぎるステータスでもあった。


 意識するのは、強い生命力……氣を放つプレイヤー。


 ――あ。グリズリーってこんなに強い氣を持っているんだ。


 少し意識がそれた。あなたはプレイヤーの氣を探ることに集中する。


 見つけた。


 メリケンにいるプレイヤーは7人。


 あなたはこの数に少し驚いた。


 1億分の1の確率を引き当てた人がプレイヤーになるなら、人口3億と少しほどのメリケンには、3人か4人程度のプレイヤーしかいないはずなのだが……。


 たまたまか、それとも何らかの都合があってこの国にいるのか。よく分からないが、その中でも特に強い氣を保持するプレイヤーにあなたは意識をさく。


 見つけた。


 でも、寝てるかもしれないし、どうしよう。


 そんなことを考えていたあなただが、よく集中してみると、そのプレイヤーの氣の揺らぎを捉えることができた。


 これは……。


 それは高速で移動していた。そして氣が高まったりしている。つまり、この人はまだ起きているのだろうか。もしかして戦闘中ではないか?


 ちょっと気になって、あなたはそのプレイヤーに会いに行くことにする。












 とある建物の中。


 プレイヤーランキング4位。ソフィア。


 彼女は今、ギャングと戦闘をしていた。


 なお、この動きについて報告を受けた政府の人々は泡を食ったような状況であり、急いで特殊部隊等の戦力の手配をして、彼女の安全を確保しようとしていた。


 プレイヤーが普通の人より頑丈なのは知っているが、それでも万が一の可能性がある。とても貴重なプレイヤーをこんなところで失うわけにはいかなかった。


 ソフィアとて、好き好んで争いに首を突っ込んだわけではない。


 ただ、見過ごせない悪事と、救うべき命がそこにあったのだ。


 彼女は敬虔(けいけん)なクリスチャンである。人を救うことに関する使命感は人一倍強いものがあった。


 地を駆け、ギャングを一人一人素手で制圧していく。それはある意味慈悲であった。


 彼女が本気で殴れば、一撃でギャングを殺害することができた。


 彼女が本来の戦闘スタイルであるスキルを使えば、もっと早くギャングを制圧することができた。


 ただ、殺さないように慎重に戦っているから。ソフィアは彼らの制圧に少々手間取っていたのだ。


 彼らは拳銃どころか、フルオート射撃が可能な短機関銃や突撃銃さえ持っていた。


 しかし、ソフィアの移動速度は素早い。少なくとも、手を動かして照準を合わせるよりは素早く動くことができた。


 だから、彼女にとって銃は脅威ではない。


 そう、彼女にとっては。


 銃の射線にいたのは、小さな子ども。彼女がこの騒動に首を突っ込むことになった原因。


 発砲。避けられない。避けてしまったら、子どもに銃弾が。


 ――覚悟を決める。


 もはやスキルさえ間に合わない。せめて頭だけは守って……。






 ――魔術【延々】






 突如。無数に放たれた銃弾は非常にゆっくりと飛翔し、やがて床に落下した。


 放たれた銃弾は全て彼女まで届くことなく、たった数メートルの飛翔で落下していったのだ。


 刹那。


 銃を構え、戦意を見せていたギャングが一瞬で全員倒れた。


 ――何が起きたの?


 ソフィアは戸惑った。


 倒れたギャングに近寄ってみると、彼らはスヤスヤと眠りについていた。


 ふと、甘い香りがした。


 その中に、ソフィアは凄まじい魔力を感じた。


 気づけば、彼女は動き出していた。


 なぜか?分からない。ただ勘としか言いようがなかった。


 彼女はこういった時、いつも直感の赴くままに動いていた。それで物事が悪い方向に転んだことは、ない。


 窓を飛び出し、壁を蹴る。


 上へ、上へ。


 そして、屋上。


 そこには誰もいない。


 誰もいるはずがない。




「ねえ! いるんでしょう、水瓶さん! 姿を現わして頂戴! あなたとお話ししてみたかったの!」




 不思議と、誰かが聞いてくれている確信があった。


 でも、応答はない。


 このままでは、その誰かが立ち去ってしまうだろう。


 だから、彼女は直感のまま行動した。


「あなたとお話したいの」


 そう言って、彼女は屋上から飛び降りた。


 頭から。


 自分の身を守ることなど、毛頭なく。


 狂気の沙汰?いいや違う。彼女はこれが最適だと信じていた。


 シャイな1位を引っ張り出すには、これくらいしないといけないと思っていたのだ。


 重力に引かれ、地面が近づく。


 流石のプレイヤーでも、この高さを頭から落下したら死んでしまうだろう。


 でも、なぜだろうか。


 彼女は不安も恐怖も、微塵に抱いてはいなかったのだ。




 ――ガシッと。




 誰かが彼女の体を抱きしめた。


 落下の勢いは止まる。まるで重力などなかったように。


 そして風が吹いた。


 気づけば、彼女は再び屋上に舞い戻っていた。


 そして、彼女は誰かにお姫様抱っこをされていた。


「初めまして、水瓶さん」


 水瓶。ソフィアは彼の頬にそっと触れた。


「私、ソフィアというの。私はきっとあなたを幸せにするために生まれてきたのだわ」


 ビクリと。彼のアホ毛が怯えるように跳ねた。


「あなたの目、見ていると心が締め付けられるようだわ。とても悲しいことがあったのね」


 まるで大きな穴が空いているような。そんな空虚さを感じる瞳だった。


 ああ。ならば私が彼を救うのだ。


 彼は私の隣人である。


 強い決意を抱いた、その瞬間、彼女はゆっくりと床に下ろされ。


 フッと。


 彼の存在が消えた。


「あ……」


 行ってしまった。直感で分かった。彼はもうここにはいない。


「必ず、私が救ってみせるわ」


 私は彼に出会った。それがすなわち、主の導きなのだろう。


 とても悲しい目をしていた。太陽をなくし、凍てついたような表情をしていた。


 だから、救えと。それが主の意思なのである。


 主と同様に、主の愛(アガペー)を示すべきなのだ。




「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます」


「わたしは心優しく、へりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすればたましいに安らぎが来ます」


「わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです」




 祈るように、彼女は聖書の言葉を口にした。















 ソフィアはメリケンの非常に裕福な家庭に生まれ、何一つ不自由ない生活をしてきた。


 だからこそ、満ち足りた彼女の心は誰よりも清らかで美しい。


 衣食足りて礼節を知る。まさにその言葉を体現するがごとく、家族の愛を受け、友人と友情を育み、教会で様々なことを学んできた彼女は、非常に敬虔なクリスチャンとなった。


 アガペー、隣人愛。彼女の好む言葉である。


 聖書の語句を一字一句暗記するほどに信仰熱心な彼女だが、現実が見えていない理想家というわけではない。


 社会でのボランティア経験や様々な人間関係のいざこざ等を経て、人には様々な事情があり、悪心があることも彼女は知っていた。


 また、身長は小さく、あまり豊かとは言えない体型をしている彼女であるが、彼女の容姿は非常に整っており、本人の育ちの良さも相まって、そういった欲望を向けられる機会は頻繁にあった。


 故に、彼女は知っていたのだ。綺麗事だけではすまされないものがあるのだということを。


 だがしかし。


 それでもソフィアは理想を見ることを止めなかった。


 自分を愛するように、隣人を愛することができる社会。それが実現したらどれだけ素晴らしいことか。


 無理かもしれない。夢物語でしかないのかもしれない。それでも、その夢の眩しさ焦がれたのだ。


 だから、彼女は困っている人を見捨てない。


 苦しんでいる人に手を差し伸べる。


 そう。あなたにだって。


 彼女はプレイヤーという存在の重要性をしっかりと理解していた。


 彼女の理念を実行すると同時に、最強のプレイヤーの精神が病んでおり、悲しみを抱えている状態が世界にとっていかに危険なことであるかも理解していたのだ。


 だから、彼が会いに来てくれたこと。自身の窮地を救ってくれたことを運命だと捉えた。


 主の導きに違いないと確信した。


 そして同時に、ソフィアは彼に非常に大きな好意を抱いていた。


 ――とても優しい人なのだわ。


 悲しみを抱えながらも、誰かのために動くことができる。苦しみながらも、他に苦しんでいる人を見捨てない。


 屋上から飛び降りた彼女のそれは、彼からすれば気狂いのような所業だっただろう。咄嗟に助けなくても、誰も責めはしない。


 しかし、彼は助けたのだ。彼女を抱きかかえて、今こうして姿を現してくれている。だから、彼が高潔な人物であることを彼女は深く理解することができた。


 悲しみを抱えていることもあり、それはむしろ絵に描いたような完全無欠のヒーロー的な人物より、さらに人間らしくて好感を覚えるような……そんな印象さえもあった。


「また、会えるかしら」


 彼がどのような能力を持っているのか分からないが、あのように霞のごとく消える能力を持つのなら、探すこともできないし、居場所が分かったとして、逃げられれば彼に会うことさえできない。


「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している」


 聖書の言葉を呟く。


 そして彼女は祈る。


 あの悲しくどこか空虚な印象を抱いた青年が、愛で満たされることを祈って。


 ただ真摯に、彼女は祈りを捧げたのであった。












 帰宅。


 あなたはようやく自宅に辿り着いた。


 敷きっぱなしの布団にそのまま突っ込む。


 と、とても疲れた。


 最近のあなたは不幸だ。厄介な先生に絡まれたり、唐突に身投げするやべーやつに絡まれたり。


 幸運にもプレイヤーになれたからであろうか?そして最初のダイスで100を出すことができたからであろうか。


 その揺り戻しというか、確率の収束があるのかもしれない。


 ――いや、それなら今後の人生ずっと不幸になるのでは?


 あなたは絶望したような気分で、せめてもの平穏を神に祈った。


≪解説≫

「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます」

「わたしは心優しく、へりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすればたましいに安らぎが来ます」

「わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです」


聖書の言葉。byキリスト

意味としては、疲れた人などは私のところに来なさい。癒やしてあげましょう。そして私の教えを学びなさい(キリスト教の教え)。そうすることで、あなたは安らかに過ごすことができるでしょう。


「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している」


聖書の言葉。キリスト教は人間を楽園から追放され、現在を抱える罪深いものだとしているが、同時に神の愛を語る宗教でもある。神様はあなたを愛している。あなたは価値あるものである。そんな無条件の肯定が、キリスト教の考え方には存在している。


作者が説得力があるなと思ったのが、神様は自分の息子を地上におくるほど人を愛しているという聖書の言葉。確かに、神の息子とされるキリストが十字架にかけられてなお、特にノアの箱船みたいなことが起こらずに現実が進行していることを思えば、そういう解釈も説得力があるなぁと感じた。


○後書き

ソフィアちゃんの価値感を形成するために結構聖書に関して調べたりしましたが…こういう異国感のあるキャラクターを作れるのって、なんかいいですね。宗教への理解が足りなので、主人公目線だと完全にやべーやつ扱いされていますが。


とりあえずソフィアちゃんが結構やばいキャラになりましたが、彼女はヒロインと言うよりどちらかというと主人公のような設計でキャラ付けをしています。君が(たす)けを求める顔をしていた。考えるより先に体が動いていた。物語の主人公がたまに見せる、勘に任せた行動でパーフェクトコミュニケーションをして、ヒロインを救い上げるような……。今回の行動はそういったものをイメージしております。


というかプレイヤーランキングで上位に入るような人物は、基本的に主人公(ヒーロー)をイメージしてキャラを練っているので、大概の人物がすごい一芸を持っています。彼女の場合は直感ですかね。


○メリケンのプレイヤー7人もいるのはなんで?なにかの補正?

素です。プレイヤー所属ダイスで大金星をあげてました。




≪一般コミュリザルト≫


○コミュイベント幸福度(1d100)

結果【100】最高


○叔父好感度上昇判定

⇒幸福度100補正より、確定で5上昇




<叔父の好感度が76になったことにより恋愛判定が発生>




○恋愛判定(1d6)


※同性、年齢差、妻子持ちにより、3分の1から6分の1へ。

6の場合のみ、ホモになる。


結果【6】ホモ




○好感度の法則(※後でバランス調整する可能性あり)

76以上になると恋愛判定が発生。基本的に3分の1の確率でラブ(恋愛)になるが、同性や年齢差、肉親などの壁があるとより判定は厳しくなる。


76で一度ラブにならなかった場合、次の好感度上昇の際に2分の1のダイスを振り、ラブ判定に挑めるかの判定をする。この判定はラブ判定と同じように、同性等の障壁があるたびに確率が厳しくなる。そしてその判定に成功した場合、再度ラブ判定に挑める。二回目以降のラブ判定は、回数を重ねるごとに確率が上昇する。


また、好感度の上がり方としては、例えば好感度が【60】あった場合、好感度の最大上昇は16になる。ダイスとしては16面ダイスを一度振る判定。76を一つの壁として扱い、それを一足に超えるようなことはしない。


同じように、91も好感度の壁として設定する。また、100も好感度の壁とする。


そして100に到達したものが現われた場合、ヤンデレ判定を行なう。これは基本3分の1とするが、病みそうな気質である等、キャラクター性によって変動する。




≪ソフィア情報≫


出身:メリケン(アメリカ)

名前:ソフィア

種族:人間

性別:女性

外見:若者(大学生)


≪外見詳細≫

○身長(1d5)

結果【2】小さい


1.とても小さい

2.小さい

3.普通

4.大きい

5.とても大きい


○体型(1d5)

結果【1】絶壁


1.絶壁

2.スレンダー

3.普通

4.大きめ

5.でかい


○容姿(1d4)

結果【3】とても整っている


1.普通

2.整っている

3.とても整っている

4.やばい


○関係(1d100)

好感度【99】 とても良い(ライク)

相性 【85】 良い

関心 【100】とてもとてもある(好感度補正+30)


○恋愛判定(1d3)

結果【3】


※1の場合のみラブになる。


○プレイヤー情報

プレイヤーネーム:ステファノ

強さ【99】


レベル:39

ランキング:4位(32日)


戦闘スタイル:スキル主体(遠距離)

力:10% 体:10% 技:15% 感:20% 速:20% 魔:5% 心:20% 


行動判定:政府貢献


○備考(性格)

・かなりの善人。

・彼女は恵まれた家庭に生まれ、恵まれた学校生活をおくり、そしてそのまま恵まれた大学に入学して、恵まれた人生をおくってきた。

・彼女を象徴するのは、何よりも【余裕】。自分が満たされてきたからこそ、他人を思いやる心を持つ。 自分が幸せだから、それ以上の他者の幸せを求めることができる。

・ある意味社会主義的な思想を持っているが、メリケン社会においてそれは難しいことだとも気づいている。

・理想主義者だが、現実も知っているという、ある種高度に完成された人間。

・主人公との相性は基本的によい。主人公は彼女を善人で、美しい人間だと尊敬するが、 決して同じ人間だとは思わない。高尚な人間。そういうくくりに入れるため、主人公自身の心の問題が解決しない限り、彼女を受け入れることもない。

・隣人愛の体現者。キリスト教的道徳観の最良を体現する者。主人公を見て、彼女はまず主人公を可哀想な人だと思い、救わなければ的な考えを持った。

・直感がやばい。




≪リクエストコミュリザルト≫


○コミュイベント幸福度(1d100)

結果【36】少し悪い


○ソフィア好感度上昇判定(1d100)

結果【17】上がる


36以下の場合、好感度上昇。


<ソフィアの好感度1上昇した。ソフィアの好感度が100に到達した>


○恋愛フラグ挑戦判定(1d2)

結果【2】恋愛判定はまたの機会


1.恋愛判定へ 2.恋愛判定はまたの機会





○唯一信頼度が高めの親族がホモ堕ちした主人公の気持ちを述べよ。

こんな……こんなのって、ないよ……。


割と作者にもダメージが来てます。淫夢は好きですけど、別にホモが好きなわけではないんだよなぁ……。


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