プロローグ 三話
使える回復アイテムを使いまくり、HPもSPも満タンにすることができた俺は【オジジャーナの墓】をさらに進んでいた。
正直さっきの戦いはかなり、というよりめちゃくちゃ精神的にかなり疲れた。
あんなギリギリの戦いはもうごめんなので、今まで以上にSPを惜しみなく使い探索系の技をフル活用して全力で警戒をしながらゆっくり進んだ。
よくよく考えたら、さっきの戦いは警戒不足というよりもただ運がわるかっただけなので、その警戒はあまり意味がないのかもしれないが完全に及び腰になっていた。
とにかく早く自分の考えの検証をして、帰りたかった。
【オジジャーナの墓】。
推奨レベル:75以上。
挑戦可能人数:6人。
主な出現モンスター:アンデット系
はるか古代の王様が眠る巨大な墓で、様々な怨霊が跋扈するとかいう、よくある設定のダンジョンであるが、実装されてから1年以上たつ今においても『Myriad OF Arms』プレイヤー同士の話題によく上がっている、ある意味人気ダンジョンである。
ある意味という言葉がつく理由は、【オジジャーナの墓】がどう呼ばれているか知ることででなんとなく想像できる。
バカジャーナの墓、運営のおもちゃ箱、実験ダンジョン、悪ふざけが行き着いた先、β版ダンジョン、詰込み運営の弊害、復活した古き悪きゲーム、などなど言われ放題であり、否が多めの賛否両論が乱立するダンジョンである。
オレはどっちかというと賛の方でけっこう好きなダンジョンなのだが、否側の意見もよくわかる。
ここ【オジジャーナの墓】には運営が暴走したのか、様々な要素がぶち込まれているのだ。
さっきの罠フルコースゾーンとかいうストレスがマッハのものや、謎の行動するモンスターなど、それこそ実験ダンジョンと呼ぶのがふさわしい、いろんなことにチャレンジしているダンジョンである。
またそういったモノのほかに、隠し要素がありすぎるのだ。
すぐ分かるものもあるが、隠し要素の中にはほとんどノーヒントで、『気づくわけねーだろ!』といいたげなものが多くありすぎるのだ。
ある場所で10分以上なにも行動しなかったら、隠し部屋の扉が出現したり、五階までにしか出現しないモンスターをどうにか六階まで誘導して、そしてある壁を攻撃させるとあるアイテムが落ちてきたリなどなど。
そのためこのダンジョンが追加されてから1年以上たつ今においても全ての要素は見つかっていないと言われている。
実際つい先日も新しく隠し要素が見つかったと、掲示板でちょっとした話題になったのだ。
その新しく見つかった隠し要素こそが、俺がこの【オジジャーナの墓】を一人攻略する要因おとなったものである。
そうこう考えているうちに、目的地の一つ手前のエリアにたどり着いた。
このまま進めば目的地まですぐだ、しかし目の前には大きな穴が鎮座していた。
もしこの穴に落ち場合すぐにゲームオーバーであり、穴の大きさも跳び越えることはできないものだった。
向こう岸には可動式の橋が見え、本来ならばこの穴を渡るためには別のエリアにあるスイッチを押し橋を稼働させ架けないといけない。
そう本来ならば。
俺は次の攻撃のみ範囲を伸ばす技【ほんの少し先に』を発動する。
それだけでは足りないのでさらに【ほんの少し先に』を発動して重ね掛けをする。
これで十分だ。
俺は全力で腕を思いっきり伸ばし鞭を振るう。
対象は向こう岸の可動式橋。
対象までかなり距離はあるが、重ね掛け【ほんの少し先に』により十分に届く。
そして鞭が可動式橋を掴む。
『掴み状態』になったのを確認したら、そのまま技をつなげる。
【樹抜】。
背負い投げの要領で『掴み状態』の対象を投げる技である。
この技を使い無理やり可動式橋を動かした。
何かが激しくこすれるようなひどい音がしてかなり強引だが、それでも橋を架けることができた。
剣とか鎗とかそういった武器ではこうはいかないだろう。
鞭という武器だからこそできたことである。
しかも、この技以外に鞭でターザンロープのようなことをして向こう岸に渡る方法もあるのだ。
その方法だと失敗して穴に落ちる可能性もあり、今回は用いなかったが、鞭ではそういったこともできるのだ。
(さあ、みんなも鞭を使おう!!)
などと次の鞭宣伝に使う文句を考えながら橋を渡り、目的地のエリアに向かった。