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カミカゼエース先輩の話をしようと思う  作者: BNorider
「○○峠の走り屋」編
9/17

中編1

 その時1台の車が駐車場に入ってきた。


 自分達は駐車場の端に車を止めていたので、その車まで距離があったのと、周りが暗かったせいでその車種まではよくわからなかった。

 しかしフロントグリルの辺りに、まるでラリー車にでも付けるようなでかいライトを付けていたことと、こんなに離れているにもかかわらず、すごくマフラーの音がうるさかったことだけは覚えている。

 大方この峠を走りに来た走り屋だろう。それであのでかいライトはおそらくドライビングランプで、出来るだけ前方を遠くまで照らすためにつけているんだろうな。かなり本気仕様の車だ。

 しかし、これだけ走り屋に対する規制が厳しくなっているというのに、未だにそんな奴らがいるのか。まぁ、だからこそ遊びじゃなく、あんな本気仕様の車に乗ってるんだろうな。

 その時は、その程度に思って、それ以上は気にも留めなかった。


 そして、そろそろ時刻が2時に近づこうとしたときに、その車はヘッドライトに加えドライビングランプまで点けて、自分達がこれから向かおうとしていたふもとの方角へマフラーの爆音を轟かせながら走り出していった。


「まぁ、待っててもきりがないから、そろそろ行ってみるか。どうせ何も起きねーだろうしな」


「それはいいですが、くれぐれもゆっくり行ってくださいね。某マンガみたいに『オレはカミカゼエースならぬイニシャルエースだぜ!』なんて言って、とばさないでくださいよ」


「そんなのあたりめーの、よっちゃんイカよ」


 これだよ。このオヤジ。ほんとにこっちの話聞いてたのかな。




 この峠道は昼間ならなんてこともないのだろうが、これだけ周りが暗いと、曲がりくねっていてしかも幅も狭いが故に、とてもスピードを出そうなんて思わない。そのくらいの道だった。

 こんなところをライトを消して走るなんて絶対に無理だ。その事故った走り屋ってのは頭のネジが1本どころか、2、3本ぐらい飛んでて、相当頭がイカレているとしか思えなかった。

 と、その時だった。S先輩が叫んだ。


「おい、後ろにライトを消した車がついてきてるぞ! なんだあれ? いつの間についてきたんだ!?」


 後ろを振り返ってみると、確かにライトを消したままの車が、ぴったりと自分達の車の後ろについていた。


 しかも、あれ? あのフロントグリルに付いているライトって、さっきの車じゃないのか?


「S先輩、後ろの車って、さっき駐車場に入ってきた車かもしれませんよ。あの特徴的なライトさっきの車に付いてましたから」


 でもおかしい。さっきの車はあんなに爆音をさせていたのに、今はこんなに煽られているというのに、まったくマフラー音が聞こえない。

 それに自分達がここまで走ってきた道は狭くて途中待ち伏せできるような場所なんてなかっただろうし、対向車とも1台もすれ違わなかったから、自分達より先に出て行ったはずの車が、自分達の車の後ろに回りこむことなど出来ないはず。やはり違う車か。


「おい、ちょっとお札見てみろ」


「あ、はい。って、あ!!! お、お札が、あ、赤色に……」


「なんだと! ちっ、あれが本命ってことかよ。やべーな」


「先輩、いったん車を止めましょう。そうすればどうせあっちが追い越していきますよ。少なくともこのまま走り続けるのはやばいです」


「そうだな。そうするか」


 S先輩がハザードランプを出して車のスピードを落とすと、後ろの車はすぐさま反対車線にはみ出し、自分達の車を追い越していった。そしてあっという間に見えなくなった。

 それで追い越された時にその車を見て驚いた。その車はまさに黒のインプレッサだった。

 窓が真っ黒に見えたので、おそらくスモークフィルムが貼られていたのだろう。そのため車内はまったく見えなかった。

 それと、やはりマフラーの音はまったく聞こえなかった。

 そのため形ははっきり見えていたにも関わらず、まるで幻覚を見たかのようだった。


「S先輩! 今の車見ましたか! 黒のインプレッサでしたよ! あれって事故った走り屋の車なんじゃ? あとその黒のインプレッサって、ああいうでかいライトつけてたんじゃないですか?」


「いや、そこまではわからんが、確かに黒のインプレッサだったな。そしてお札が反応したところを見ると、あれは本当に走り屋の霊だったのかもしれん」


「そうですね。そんな有名な走り屋だったらああいうライトつけててもおかしくないだろうし、駐車場にいた車と違ってマフラーの音が全然聞こえなかった。ということは、やはり本物だったということなんでしょうね……」


「そうだな。そういうことになるだろうな」


「あ、お札の色が青色に戻ってます。もう大丈夫でしょう。念のため少しここで止まって、しばらくしてからスタートしましょうか」

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