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海辺の蝶  作者: 宮野 圭
7/8

唐突な別れ

 その日から、ぼくとスノウは毎日遊んだ。

 虫取をしたり、海辺で鬼ごっこをしたり、砂のお城を作ったり。

 スノウはとっても器用で、本物みたいなお城を作っちゃうんだ。ぼくも格好いいところを見せようと思って、お城の隣に王子様を作ったんだけど……。なんだか、宇宙人シュウライ?みたいになっちゃった。

 恥ずかしかったけど、スノウが涙を流すほど笑ってくれたから、良しとしよう。


 それから、家でもたくさん遊んだ。

 初めてスノウを家に連れていったとき、お母さんが「あら、ガールフレンド?」なんて言うから、ものすごく恥ずかしかった。でも、もっと驚いたのは、スノウがその質問に頷いたことだ。

 スノウはぼくのこと、好きなんだ。でも、会ったばかりだし。

 なんて考えてたら、ガールフレンドは女友達って意味だと、スノウがこっそり教えてくれた。彼女って意味だと思ってたから、少し恥ずかしかった。

 やっぱりスノウは天才だな。


 毎日が楽しくて、気づけばもう夏も終わりに近づいていた。あと何日か経てば、秋に入ると、お父さんが言っていた。


「もうすぐ、夏も終わっちゃうね」


 砂浜に、二人で並んで座りながら、ぼくはポツリと呟いた。

 目の前を、赤とんぼがスイスイと飛んでいる。

 スノウは小さく頷いた。

 その横顔が、なぜだかとても悲しそうに見えるのは、ぼくの気のせいだろうか……。


 お日様も大分傾き、今はそんなに暑くない。ザザーンと波の音が聞こえる。

 遠くの方で、ヒグラシが鳴いている。

 あぁ本当に夏も終わるんだと、少し悲しい気持ちになった。


「夏が、終わらなければ良いのに……」


 スノウが小さく呟いた。

 なんだか泣いているみたいに聞こえて、ぼくはギュッとスノウに抱きついた。


「夏が終わって、秋が来て、冬が来て、春が終われば、また夏が来るよ?」


 泣いてほしくなくて、そう言ったけど、それでもスノウの顔は泣きそうなままだ。


「あのね、……」


 そう言って、スノウは口を閉じてしまった。

 ギュッて眉毛を寄せて、泣くのを我慢するみたいに、海の方を見つめるスノウ。

 ぼくは黙ってスノウの言葉を待った。

 だけどなんだろう。とってもとっても、嫌な予感がする。スノウの言葉を聞きたくないって思うんだ。


「あの、ね……」


 スノウはゆっくりとこっちを向いて、ぼくと目を合わす。

 聞きたくない。だけど、聞かなくちゃいけない。


「あのね、テツくん……今日で、お別れなんだ」


 ザザーンと、波の音が、やけに大きく聞こえた。

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