唐突な別れ
その日から、ぼくとスノウは毎日遊んだ。
虫取をしたり、海辺で鬼ごっこをしたり、砂のお城を作ったり。
スノウはとっても器用で、本物みたいなお城を作っちゃうんだ。ぼくも格好いいところを見せようと思って、お城の隣に王子様を作ったんだけど……。なんだか、宇宙人シュウライ?みたいになっちゃった。
恥ずかしかったけど、スノウが涙を流すほど笑ってくれたから、良しとしよう。
それから、家でもたくさん遊んだ。
初めてスノウを家に連れていったとき、お母さんが「あら、ガールフレンド?」なんて言うから、ものすごく恥ずかしかった。でも、もっと驚いたのは、スノウがその質問に頷いたことだ。
スノウはぼくのこと、好きなんだ。でも、会ったばかりだし。
なんて考えてたら、ガールフレンドは女友達って意味だと、スノウがこっそり教えてくれた。彼女って意味だと思ってたから、少し恥ずかしかった。
やっぱりスノウは天才だな。
毎日が楽しくて、気づけばもう夏も終わりに近づいていた。あと何日か経てば、秋に入ると、お父さんが言っていた。
「もうすぐ、夏も終わっちゃうね」
砂浜に、二人で並んで座りながら、ぼくはポツリと呟いた。
目の前を、赤とんぼがスイスイと飛んでいる。
スノウは小さく頷いた。
その横顔が、なぜだかとても悲しそうに見えるのは、ぼくの気のせいだろうか……。
お日様も大分傾き、今はそんなに暑くない。ザザーンと波の音が聞こえる。
遠くの方で、ヒグラシが鳴いている。
あぁ本当に夏も終わるんだと、少し悲しい気持ちになった。
「夏が、終わらなければ良いのに……」
スノウが小さく呟いた。
なんだか泣いているみたいに聞こえて、ぼくはギュッとスノウに抱きついた。
「夏が終わって、秋が来て、冬が来て、春が終われば、また夏が来るよ?」
泣いてほしくなくて、そう言ったけど、それでもスノウの顔は泣きそうなままだ。
「あのね、……」
そう言って、スノウは口を閉じてしまった。
ギュッて眉毛を寄せて、泣くのを我慢するみたいに、海の方を見つめるスノウ。
ぼくは黙ってスノウの言葉を待った。
だけどなんだろう。とってもとっても、嫌な予感がする。スノウの言葉を聞きたくないって思うんだ。
「あの、ね……」
スノウはゆっくりとこっちを向いて、ぼくと目を合わす。
聞きたくない。だけど、聞かなくちゃいけない。
「あのね、テツくん……今日で、お別れなんだ」
ザザーンと、波の音が、やけに大きく聞こえた。