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海辺の蝶  作者: 宮野 圭
6/8

よろしく

「そういえば、お名前」


 ボクの言葉に、てんしさまはこてんと首を傾げた。

 可愛い……じゃなくて。


「モンシロチョウは、種類の名前だよ。てんしさまの名前は?」

「そうだったの? 蝶々は名前で呼び合うことがなかったからなぁ。……あ、そうだ。テツくんが付けてよ。あたしの名前」


 良いことを思いついた、とばかりににっこり笑う、てんしさま。


 ぼくが名前を付ける? 良いのかなぁ。なんとなく、責任重大な気がするぞ?

 確か結構前に、お母さんが言ってたな~。ボクの名前は、意味があるって。適当に付けたんじゃなくて、たくさん考えて、付けたんだよって。

 ならぼくも、意味のある名前を付けなくちゃ!

 う~ん……てんしさま、かわいい、真っ白、ちょうちょ……。

 顎に手を当てて考える。お父さんがこの前やってて、かっこ良かったんだよね。


「う~ん……あ!」


 ひらめいた! ピンと来た! 雷がドピャーって当たった感じ。


「スノウ!」


 思わず大きな声が出た。だけど気にならない。だって、こんなに素敵な名前を思い付いたんだもん。

 突然叫んだぼくに、てんしさまはこてんと首を傾げた。


「てんしさまの名前は、スノウ。スノードロップの、スノウだよ。白くてかわいいお花なんだぁ。意味は、天使の贈り物」


 スノードロップは、お母さんが好きな花なんだ。だから、覚えてた。

 真っ白な、かわいいお花を咲かせるスノードロップ。しかも、天使の贈り物だなんて……まさにてんしさまにぴったりだ。


「スノウ……」


 てんしさまは小さく呟くと、にっこりと笑った。

 あんまりにも嬉しそうに笑うから、ぼくはてんしさまから目が離せなかった。

 まるで燃えてるみたいに、顔が熱くなる。なんだろう、これ。心臓も、いつもと違って大暴れしているみたいだ。


「ありがとう、テツくん。すっごく嬉しい。……あたしの名前は、スノウ。改めて、よろしくね」


 ふわっと笑って、片手を出すてんしさま、じゃなくてスノウに、ぼくは少し恥ずかしさを感じながらも、その手をそっと握った。


「よろしく、スノウ」

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