出会い
ミーンミンミンミン……。
「あーーー!!」
ぼくは空に向かって吼えた。
ぼくは今、右手に虫取網、首からは虫かごを下げ、海の近くの林にいる。
昨日、虫取網をもらったあと、いつもより早く寝た。で、朝六時に起きて、七時に家を飛び出した。
当初の予定では、お昼には虫かごにわんさか虫が入っているはずだった。
それなのに……。
今太陽はぼくの丁度真上にある。
そう、お昼だ。
ぼくの虫かごには、何もいない。
虫が見つからなかったのか?いや違う。
ぼくが捕まえられなかったんだ。
絶対におかしい!あいつらはぼくの動きを読んでいる。
あと一歩ってところで必ず、逃げられるのだ。
確実にぼくは、背後に回り込んでいるのに。どうして分かるんだ。
くっそぉーー!
しばらく中空を睨み付けたあと、ぼくは林を出た。
一旦休憩だ。いい加減お腹も空いたし、もしかしたら午後になったらわんさか捕れるかもしれない。
お昼のあとは、お昼寝の時間だ。きっとあいつらもお昼寝してるに違いない。ちょっと狡いけど、お昼寝しているところを狙うんだ。
小さな希望を抱えて、海辺を歩く。ザザーっと波が砂をぼくの足にかけてくる。その感覚が面白くて、つい足を止めてそれを楽しんでいた。
何れくらい経っただろうか。
ぼくは誰かの視線を感じて、顔を上げた。
顔を上げたその先には、一人の女の子が立っていた。
少し大きな麦わら帽子を被っていて、真っ白のワンピースを着ている。腰まで伸びた漆黒の髪は風に遊ばれ、真っ白なワンピースからは、透き通った白く滑らかな手足が伸びている。
帽子で顔が見れないのが残念だ、と思いながら、ぼくはその子に見惚れた。
これが、彼女との出会い。
<海辺の蝶 出会い>