たんじょうび
パンッ! パパパンッ!
紙吹雪を飛ばしながら、軽やかに鳴るクラッカー。
「誕生日おめでとー、テツ」
「もう六歳だなぁ。大きくなった!」
「へへへっ」
お父さんと、お母さんに、お祝いしてもらって、ぼくは胸を張った。
そう。今日はぼくの誕生日。今日で六歳になったのだ。
だからぼくはもう、子どもじゃない。大人になったのだ。はっはっは~。
「テ~ツ君!」
ふんぞり返っていたら、お父さんとお母さんが、細長い箱を持ってきた。
「あ、プレゼント! ありがとう、お父さんお母さん」
そう言いながら、プレゼントの箱を奪い取った。
「こらっ」って聞こえた気がするけど、気にしない。だって、大人は小さいことをいちいち気にしないからね。
ガサガサと音を立てながら、包装紙を剥がし、ちょっとドキドキしながら、ゆっくりとふたを持ち上げた。
「……!」
中に入っていたのは、虫取網だった。
柄の部分はキレイな緑色で、光が当たってキラキラしている。網の部分も、ただの白色じゃなくて、所々緑色の糸も使われているのか、とても綺麗だ。
こんな虫取網、今まで一度も見たことない。
ぼくはそっと虫取網を箱に戻すと、お父さんとお母さんを振り返った。
「お父さん!お母さん!ありがとー! だいすきっ」
そう言って、二人まとめて抱きしめた。手が届かなくて、逆に二人に抱きしめられてるだなんて、そんなのきっと気のせいだ。
<海辺の蝶 たんじょうび>