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プロローグ
ザザーン……。
ザザーン……。
太陽も沈み、空は紫と黒が混ざったような色になっている。
昼間のまとわりつくような暑さとは、うって変わって、今では少し肌寒くなってきている。
そんな中、砂浜に、一人の少年が立っていた。
紺色のタンクトップに、黒の短パン。麦わら帽子を首から提げ、左手に緑の柄の虫取網を持っている。
年のころは、五、六歳だろう。
波打ち際に立っている少年は、波で足が砂に埋もれていくのにも目もくれず、ただ真っ直ぐと海を見ている。
いや、海のもっと向こう側を見ている。
誰も居ない砂浜で、少年は一人、身動きもせずに、海を見つめている。
〈海辺の蝶 プロローグ〉