1話:居酒屋『三途の川』
深夜にようやく1話が書き上がりました。よろしくお願いします。
「初めての仕事だが、お前なら大丈夫さ」
先輩は、俺の肩をポンと叩く。
居酒屋は、仕事上がりの死神達でごった返していた。
ここは、死者が最初に訪れる場所・・・
現世との境界。
昔は三途の川と呼ばれていたそうだが、俺が死神のライセンスを取った頃には、あちらこちらにビルや飲食店が立ち並んでいた。
三途の川は、当の昔に埋め立てられたそうだ・・・
「何か、緊張しますね・・・ただ、死者の魂をここに連れてくるだけなのに・・・」
ジョッキをぐいと飲み干すと鼻に付いた泡を手の甲で拭い去る。
「まぁな。俺も最初は緊張したものさ。明日だっけ?初仕事は」
「はい・・・とりあえず時間は一週間あるんですが・・・」
「初仕事ならその位時間に余裕があれば何とかなるだろう。ま、あまり小難しく考える事はないよ」
先輩はカラカラと笑うとビールを注文する。
確かにそれほど難しく考える必要は無い。
死神の仕事は、ただその人間がその一生を終える時に迎えにあがるだけ・・・誰にも見られず、その存在すら感じる事は出来ない。
そう、後は目的の人物の耳元で死を宣告する。
本人には、聞こえないが死神の言葉はそれだけで絶大な力を発揮する。
明日、あなたは死ぬ。
そう宣告するだけで、云われたほうは、抗ことも出来ず次の日にはこの世から去る事になる。
それで終わり------その後、魂は死神の手によって、ここへ連れて来られる。
それで、死神の仕事は終わりだ。
「おい?どうしたんだ?」
「え・・・あ」
不意に声を掛けられ、俺は動揺した。
「まだ、悩んでるのか?」
「いや・・・別に・・・」
そう、悩んでなどいない。
ただ、初仕事で感傷的になっているだけだ。自分にそう言い聞かせる。
「一週間も時間があるんだ、さっさと宣告してしまって休暇でもしてろよ。どうせ、また忙しくなるんだから」
先輩は、ごきゅごきゅと喉を鳴らせてビールを飲み干す。
「そ、そうですよね」
心の中で何かが吹っ切れた。
そう、1週間なんて猶予は新人に与えられる特権みたいなもの。
さっさと済ませて自宅でゴロゴロしてるに限る。
これから先、急な仕事が入らないとも言い切れない。
「お!その表情は、吹っ切れたな」
「ええ。先輩のおかげで何とか」
俺は、負けじとジョッキを傾ける。
「はははっ!そうだ、その意気だ」
そう・・・その時は、それほど深くも考えていなかった------------------あの不思議な少女に出会うまでは---------
まだ、話は展開を見せていませんが次回には何とか・・・