プロローグ
弔問に訪れた人々は、一様に沈痛な面持ちで列を作っている。
俺は、列から外れるようにしてタバコをくゆらす。
このような場で不謹慎なのかもしれないが別に構わないだろう・・・俺が見える人などこの中には居ないのだから---一人の老婆が、昨夜未明に息を引き取った。
近所の人達にも愛され、その最後は駆け付けた大勢の人々に見取られ大往生を遂げる事が出来た。
無論、俺もその場に立ち合ったのだが・・・その夜は、夏なのに、夕方から降り始めた雨が一段と強くなり周囲の雑音を打ち消すほどの豪雨だった。
俺は、老婆の自宅の縁側に腰を落ち着け、相も変わらず流れる紫煙を眺めていた。
しばらくすると、パタパタと忙しそうに女性が走ってくる。
顔色は蒼白で、表情も堅い。
俺の目の前で止まると背にある襖を勢い良く開ける。
襖の奥には、すでに大勢の人が老婆の眠るベッドを囲んでいた。今、息を引き取ったところだよ・・・」
スーツ姿の男がうなだれて力の無い声を出す。
それに呼応するように啜り泣く声が聞こえた。
「そんな・・・お母さん・・・」
先程の女性は、どうやら老婆の娘のようだ。
俺は、タバコを投げ捨てるとゆっくり立ち上がるとその部屋に入る。
ゆっくりと部屋を見渡すと、目頭を押さえているもの。
ただ、止めどなく涙を流しているもの。
虚空を見つめるもの。
------と、それぞれ、この悲しみに打ち拉がれていた。
ただ一人、老婆の安らかな表情を除いて------
それが、昨夜の出来事------
今日は、昨日の雨が嘘だったかのように青空を広げている。
セミ達は、自分の一生を呪うかのよに、悲鳴のような鳴き声を上げ、暑さを一層感じさせる。
ま、俺にとっては暑いなど関係のない事なのだが------
どちらにしろ、この天気は老婆の日頃の行いがよかったからなのだろう。
「さて」
タバコをもみ消すと老婆の眠る棺へと向かう。
これで、何人目に・・・いや、もう正確な数など憶えていない。
死者の魂を迎えにあがるのは・・・・・・
初めて書くのですが、たぶんグテグテだと思います。意見、指導がありましたら、よろしくお願いいたします。