電話越しの少女
夏といえば!そう…心霊なんですよ!
満月が昇る真夏の夜の事。
高校1年生の璃音は部活帰りで遅くなっていた。
璃音は、夜遅く帰るのを嫌がっていた。
街灯は少なく基本暗闇で、夜はほとんど人気のない場所だから。
しかも高校では、メリーさんと言う都市伝説が流行っていた。
“もしもし…私メリーさん”
と言う合図と共に始まるメリーさんの追跡。
捕まると…死ぬと言われていた。
メリーさんの電話が来るかも、たった一つの噂が璃音の恐怖心を余計に煽る。
璃音がゴミ捨て場の横を通る。
ゴミ捨て場は、夜なのにもうゴミ袋の山が積み上げられている。
ゴミ捨て場には、少しヒビが入った西洋人形が一つ置かれている。
璃音が、人形の美しい瞳と髪に引き寄せられる。
気づいた頃には、人形を持ち上げていた。
見れば見るほど人形は美しい。
サラサラな金の髪、精巧に作られ璃音の顔を映し出す赤色の瞳、着せられている服もロリータ系統で可愛らしい。
見惚れたように人形を見つめていると、瞳が閉じる。
突然の瞬きに璃音は人形を投げ捨て家を目指し一目散に走り出す。
家に辿り着くと、着替えもせずベッドへ入り込む。
掛け布団にくるまり眠りについた。
璃音は、鳴り響く着信音で目を覚ます。
スマホを見ると画面には“非通知”と表示されている。
璃音は、恐る恐る電話に出てしまう。
[もしもし…誰ですか…?]
『もしもし…私メリーさん。
今…ゴミ捨て場にいるの。』
璃音は、スマホを投げ飛ばす。
恐怖の余り、声が出ない、脚も動かない。
逃げたくても逃げられないままベッドの上にいる。
数分後、着信音が鳴る。
怯えてる璃音は、スマホを取れないでいる。
数秒後、着信音が止まる。
電話が切れたと思ったその時、
『もしもし…私メリーさん。
今…公園にいるの。』
璃音は、このままではいけないと思い。
壁に手を当て、震える脚を動かして勉強机へ向かう。
噂が本当なら、このままでいると死んでしまう。
璃音は、ノートを開きメリーさんの通った二つの場所を書き記し、電話経路の予想を立てる。
{開始場所…ゴミ捨て場
2回目…公園
コンビニ……家}
璃音の家付近に目立つ場所は後コンビニしかない。
璃音は、鞄に財布、スマホ、モバイルバッテリー、ナイフ本当に最低限の物だけを入れ家を飛び出す。
夜の道を走り続ける。
少しでもメリーさんとの距離をあけるため。
『もしもし…私メリーさん。
今…コンビニにいるの。』
着信音も無く、メリーさんの電話に繋がる。
璃音は、息を荒立てながら交番へ逃げ込む。
[あの!メリーさんに追われてて…!]
璃音の発言に警察は困惑している。
警察が心配そうな目で璃音を見つめている。
「いや…ね?メリーさんは都市伝説なんだよ…」
警察がそう言い残し、璃音を見捨てようとした。
『もしもし…私メリーさん。
今…璃音貴方の家の前にいるの。』
また、着信音が無く通話が開始されていた。
「本当なんですか…?
わかりました!貴方を誠心誠意守りましょう。
術すら持たない私でも…戦えます。」
この通話を聞いた警察は、半信半疑の状態だが味方をしてくれることになる。
警察は、警棒を構えて交番の入り口で待機する。
『もしもし…私メリーさん。
今…スーパーの前にいるの。』
メリーさんは徐々に近づいて来ている。
数十分が経過した。
スーパーの後からも、5回ほど電話がかかってきた。
そして…
『もしもし…私メリーさん。
今…小学校の前にいるの。』
交番の一つ前の建造物にメリーさんが辿り着いてしまう。
「璃音さん…メリーさんがどう進むかは分かりません。
もしかしたら…交番の前を飛ばして、貴方の後ろに現れるかもしれません。
その時は、メリーさんの攻撃を一回は避けてください。
そうすれば、貴方を守れます。」
璃音は、静かに頷く。
突如、打撃音が響く。
その音の数秒
"もしもし…私メリーさん。
今…貴方の後ろに来たの。"
スマホ越しではなく、背後から声が聞こえる。
璃音は、走り出す。
交番の前には、頭部の潰れた警察が倒れ込んでいた。
泣いてる暇はない、警察の死を無駄にしないために振り返ることは無く走り続ける。
“ねぇ…璃音知ってる?
メリーさんって朝になったら消滅するんだって!”
友達が言っていた一つの攻略法。
ソレを信じ続け走り続ける。
例え、脚が痛くなっても、呼吸が苦しくなっても走り続けた。
徐々に月が沈み始める。
もう少しで朝になる。
太陽が上がり始め、街を徐々に陽光が照らす。
まだ…薄暗いでもあと少しで完全な朝になる。
璃音は、ギリギリまで走り続け途中で立ち止まり振り返る。
視界の先には、ゴミ捨て場にいた西洋人形と全く同じ見た目をしている少女がバールを握り追いかけて来ている。
[じゃあね!メリーさん…
もう朝だよ!私の勝ち!]
陽光が完全にメリーさんを照らす。
メリーの身体は粉々に砕け、霊気として消えていく。
一夜の逃走劇は、璃音の勝利で幕を閉じた。
後日、死亡した警察は厚く弔われた。
たった一人の少女の逃走劇を成功させた英雄として。
メリーさんに勝利した数日間、学校で璃音は怪異に勝った非術師として称賛された。
しかし、璃音は称賛を全て否定した。
[称賛すべきは私じゃない。
私を守った警察が一番強かった。]
そう、言い続けた。
満月が昇る真冬の夜の事。
璃音は、懐かしのゴミ捨て場の横を通った。
ゴミ捨て場は、空っぽだった。
璃音は、その場に立ち止まり、ゴミ捨て場を眺めている。
すると、璃音のスマホが静かに鳴る。
画面を見ると非通知と表示されていた。
『もしもし…私メリーさん。
今…貴方の後ろにいるの。』




