5話 足手まとい
前回のあらすんじ
圧倒的コミュ(障)力を見せつける優希くん!
な、ん、と、お家デートだってyo!(違う)
さぁて今回の文字数なんと8000文字!読むのがだるいが一体どうなるのか?暇かつ優しい人は付き合ってくださいyo!
そして迎えた土曜日。
考えただけで憂鬱だ。目を覚ました優希は、ため息を吐きながら身支度を済ませる。黒いフード付きのパーカーと黒いズボン履く。完全に色が不審者だが、それ以外の服もほとんど同じようなものなので気にしないことにした。
「もうそろそろっぷかねぇ………臭いが近づいてきたっぷ!」
身支度を終え、暇になり椅子に腰掛けていた優希に、ベルゼは嫌そうな声でそう伝えた。
「嫌ならどっか行ってたら?無理に相席しなくてもいいよ……」
「安心してほしいっぷ!もう出ていく準備は万端だっぷ!それにしても嫌な匂いっぷ……………」
そんな会話をしていると、部屋中にインターホンの音が響いた。モニターに映った理沙の姿を確認すると優希は、今出ます、と言い玄関へと向かった。
「……………………………………」
どうしよう………………すごく出たくない…………………
人と話すのは苦手だ。授業で話し合いをする時のちょっとした会話ですら吐きそうになるのに、誰かを家に招き、会話どころか魔法を教えてもらうだなんてハードルが高すぎる。
だが、ずっと扉の前で待たせてしまうのも悪いと思い、優希は鍵を開け、緊張しながら取っ手に手をかけた。
「わっ………」
すると、前に会った時と同じ服装をした理沙が、自分でドアを開けて中へと入ってきた。大胆な理沙の行動に優希は目をぱちくりさせる。
「おはよう!えっと………名前なんだっけ?」
「あっ………石井……優希です………おはようございます」
名乗っていなかったことに今更ながら気づき、優希は目を逸らしながらそう言った。
「OK!よろしく優希くん!」
やはりテンションが合わない……………………
優希はドギマギしながらも平静を装い、理沙をリビングへと案内する。すると、先程までそこにいたはずのベルゼは、いつの間にかに居なくなっていた。
2人はダイニングチェアに腰掛け向かい合う。
「じゃぁどうしよっか?魔法を教えるって言っても、何から教えればいいのやら…………」
私教えるの得意じゃないしなぁ、と続ける理沙に不安を覚えながらも優希は真面目に話に耳を傾けた。
「あっそうだ、魔法少女の衣装に着替える魔法とかはもうできる?」
「あっ、はい。と言っても最近できるようになったばっかりですけど……………………」
「そっかぁ…………うーーん……………」
理沙は腕を組み、唸りながら優希に教える魔法を必死に考える。理沙だけに考えてもらうのは悪いと思った優希は、どんな魔法を教えてもらいたいのか考え始めたが、どの魔法がどのくらい難しいのかわかっていなため余計な口出しはしないよう、口を閉めた。
「そうだ!じゃぁ亜空間でも作ってみようか!」
「亜空間…………?」
その聞きなれない言葉に優希は首を傾げる。
(そう言えば、ベルゼもそんなことを言っていた気がする………亜空間を使った魔法を教えるとかなんとか…………)
「亜空間はまだ作れないよね?」
理沙の問いかけに、優希は首を縦にる。
「よし、じゃまず亜空間について教えるね!と言っても私もよくわかってないんだけど」
不甲斐ない言いわんばかりの顔をしながら理沙は頭をかいた。
「簡単に言うと亜空間っていうのは、こことは違う空間のことで、別次元?とか、異世界?に近いかもしれないね。亜空間を作るとその場所にいろいろなものをしまえたりしてすごく便利なんだぁ。私は魔法少女の衣装やステッキを主に入れてるよ、そうすればいつでも取り出せるからね」
理沙はそう言いながら、どこからか柄の先端に球体が付き、リボンが付いた水色のステッキを取り出した。
(ベルゼが黒板を出した時も、亜空間を利用してたのかな?)
既視感のあるその光景をボーっと眺めながら、優希はそんな考察をする。
「案外簡単に使えるし、使えると便利だから、さっそく練習しよっか!」
理沙はそう笑顔で言い、その場から立ち上がりながら優希の手を引く。突然手を引かれた優希は、驚きながらも素直に席を立ち、引かれるまま歩みを進める。
「ん?あれ……えっと外に出るんですか?」
玄関まで連れてこられた優希は疑問に思いそう聞いた。
「家でやって、もし大きな失敗とかしたら怖いから……………念のためにね」
「でも外暑いですよ?もう九月ですけど、熱中症になんてなったら大変ですし………………」
家を壊されても困るが、わざわざ外に出て魔法を習いたくないと思った優希は理沙を説得しようと、不安の上にさらなる不安を乗せ、理沙を引き留める。外に出るのがめんどうくさいわけではないが、外で魔法なんか使って目立つのは嫌だ。
優希の言葉に、それもそうか、と理沙は苦困った顔をする。
「えっとじゃぁ、家の安全は保障できないけど、それでも大丈夫?」
「ま、まぁ大丈夫です…………」
若干不安のこもったような声を出しながら、優希は返事をする。家の中で練習をすることにした二人は、再び椅子に腰を下ろす。
「教えるとは言ったものの、魔法って結局イメージの話になっちゃうからなぁ…………まぁとりあえずやってみてよ」
「えっと、どうやって?」
理沙の投げやりな言葉に、優希は思わず声を漏らした。
「うーんと、魔力を空間にねじ込むイメージをしてみるとわかりやすい……………かも?」
理沙の分かりやすくない説明に呆然としながらも、優希は何となく言われた通りのイメージを頭に浮かべる。イメージを浮かべやすいように目を閉じ、脳に全神経を注ぐ。
(……………………………………………………いやそもそも魔力ってなんだ?魔法を使うために必要なんだろうけど……………………どうやってそんなもの操るんだ?)
ふと気になってしまったことが頭から離れなくなってしまった優希は、目を開けた。
「あっ、やっぱりわかりづらかった?ごめんね………うーん………ぎっちぎっちの本棚に本をねじ込んだ後、そこから本を抜き出すようなイメージで!これでどう!?」
(急にわかりやすい……………)
優希は理沙の例えどおりのことを頭の中に浮かべながら、今度こそは、と目を瞑った。
(本は魔力、本棚は空間ってことだよね)
理沙の説明を自分なりにそう解釈と整理をしながら、優希は全力で集中する。
「あっ、開いてる………開いてるよ!」
優希がしばらく目を閉じて集中していると、理沙の喜ぶような声が聞こえてきた。優希が驚き目を開けると、目の前に空間が避けたような数十センチ程度の空間ができていた。中は闇にのまれたように黒く染まり、冷たい風が吹いてきていた。
「これが亜空間。優希くんのは私のと少し違うね?私のは中が真っ白でよく見えないんだよね」
優希は目の前の空間を好奇心にあふれた瞳で見つめる。なぜだか見ていると落ち着くような、吸い込まれてしまいそうな何かを感じた。そして、その空間はどこか悲しい空気をまとっていた。
「こんな暗い空間に物を入れて、取り出したいものを取り出せるんですか…?」
優希は亜空間を見つめながら、理沙にそう聞いた。
「あーそれがまた難しいんだよねぇ…………取り出すときは取り出したいものを思い浮かべて手を伸ばせばいいんだけど、亜空間をうまく扱わないと取り出せないんだ。だから最初はどうでもいいものとかを入れて取り出す練習とかをしたほうがいいよ」
「そうなんですね……………………じゃぁカップでも入れてみます」
そう言った優希は台所に行き、縁がかけたカップを取り出した。そして、先ほど生み出した裂け目にカップを近づけた。
(でもこれ、普通に中に入れちゃっていいのかな?割れない?まぁ割れてもいいんだけど…………)
優希は少しためらった後、カップを水に浸すように亜空間へと沈めた。
(………………………浮いた)
カップから手を離した優希は、沈むように浮いたカップを不思議そうに見つめる。
「物を入れた状態で亜空間を閉じて、それからもう一度開けて取り出すっていうのを何回かすれば完璧に亜空間を扱えるようになるから、一回亜空間を閉じてみて」
「わかりましたどうやって閉じるんですか?」
「えっと………ぐわって………なんかー開けた時と……逆?みたいな感じで………………」
(この人教えるのほんとに苦手なんだな)
優希は今更ながらそう感じ、亜空間を見つめる。
(亜空間を開けた時と逆の感じでって言われてもぎっちぎちの本棚から本を取り出して戻すってことになるけどほんとにそれでいいのかな………………いや、何となくだけど違う気がする………………ゲームやアニメに例えられたら想像しやすいかな?)
そう思った優希の頭に最初に浮かんだのは、異世界に繋がるゲートが消滅する描写。煙のように消えるものもあれば、燃え尽きていくように消えるものもあるけど、最近見たのは………………
優希は最近見たゲートが閉じる描写を思い出そうと思考する。
だが、浮かんできたのはベルゼの姿だった。
学校から去る時、ベルゼは背景に溶け込んでいくように消えた。あれは消滅したわけじゃないけど、消滅に近い何かを感じた。あの時のベルゼはベルゼじゃなかったんじゃないかとすら思う。
優希は、あの時の光景を思い出しながら、頭の中で溶けていくように消える亜空間をイメージした。すると次の瞬間、亜空間はそこになかったかのようにきれいに背景に溶け込み始め、最後には跡形もなくなった。
そして、再び亜空間を開き、いとも簡単にカップを取り出す。こんなにもあっさりできるとは思わず、優希は目を見開きながらカップをまじまじと見つめる。
「す……………すごい……………こんなにすぐ使えるようになるなんて………………………私なんて一週間もかかったのに……………」
大きく開かれていた瞳を閉じ、理沙はうなだれながらそうこぼす。そして急に、申し訳ないという感情を映した表情をする。
「教えるのが下手であんまり参考にならなかったよね…………教えるって言っておきながら不甲斐なくてごめんね」
「いえ別に………分かちづらかったですけど」
優希の容赦ない言葉に理沙はバツが悪そうな顔をする。
「でも、楽しかったです。教え方が意味不明で」
「刺が……刺があるんだけど…………」
優希の言葉を聞き、理沙は下を向きながら情けなくそうこぼした。そしてそのあと、照れくさそうにふっと笑った。
「じゃぁ次はどんな魔法を使えるようにしたい?できるだけわかりやすく教えられるように頑張るから、何か希望があったら言って」
理沙は顔をバッと勢いよく上げ、元気よくそう言いはっきりと優希を見据えた。その勢いに少し驚きながら優希は、教えてほしい魔法について考える。
(……………ない…………な………正直いきなりそんなこと言われても思いつかないし…………)
期待の目で見つめてくる理沙の視線に気まずさを感じながら優希は知りたい魔法を考える。
「?地震………?」
しばらく教えてもらいたい魔法について考えていると、家が激しく揺れ始め、立っていられないほどのものになった。
「…………………優希くん、ごめんちょっと行ってくる」
「えっ?どっどこに行くつもりですか!?危ないですよ!理沙さん!」
なんとか机の下に隠れた優希は、理沙の危険な行動を必死に声を張り上げ止める。
「ちょっと怪獣退治に!」
理沙は焦ったような、切羽詰まったような様子で声を張り上げ言い、その場から駆けていった。
「ちょっと!」
理沙は優希の言葉を聞かずにそのまま行ってしまった。
ドアを開く音と閉まる音が響いた数秒後、揺れは収まった。その代わり、外からは耳をふさぎたくなるような何かの鳴き声が聞こえた。
(…………………怪獣)
脳裏に浮かぶのは初めて遭遇した怪獣の風貌と、その威圧感。ニュースで聞くのなんかよりもずっと恐ろしいその怪物の姿が目に焼き付いて離れない。体が震える。地震のせいか恐怖のせいかわからない震えが、体を支配する。
(大丈夫、理沙さんが倒しに行ったからきっと……………それに僕が行っても足手まといだ……………)
自分を落ち着かせるために心中に吐いた言葉が優希を余計追い込む。恐怖とともに脳裏に浮かんだのは理沙の切羽詰まった表情。そして一つの予感。
─────勝てないんじゃないか?理沙さんは…………………
失礼な考えかもしれない。実際失礼すぎる考えだ。でもなぜだろう、そんな気がしてならないのだ。
理沙さんは最初に話した時、いきなり大量の魔力を使うのは御法度だと言っていた。魔法管がぐちゃぐちゃになるからと。
魔法少女を始めたばかりだったとしても、優希の魔法管一撃でがぐちゃぐちゃになるほどの魔法で倒し損ねた怪獣を、見る限り理沙は一撃で仕留めた。
あの時理沙が怪獣を倒すために使った魔法は、どんな魔法だったのだろうか?
騒がしく、熱かった脳内が一瞬で冷えるのがわかった。
その考えに至った時、無意識のうちに優希は立ち上がっていた。
立ち上がったくせに、足はうまく動かない。深く長く息を吐き、優希は心を落ち着かせる。冷や汗をかきながら急いで二階にあるステッキを持ち出し、玄関へと向かい、勢いよく扉を開けた。
「…………………なんだよこれ」
扉を開いた先にあった地獄に優希は絶句する。
正面から数百m先の民家までが完全に消滅していた。近くに人はおらず、悲鳴すらも聞こえない。単に留守にしていたのか、それとも悲鳴を上げる暇なく絶命したのか。
そんなことを悠長に考えていると、頭上に大きな影が下りた。反射的に上を見上げると、そこにはムカデに蛾の羽が生えたような怪獣の姿があった。その尾あたりには魔法少女の衣装を身にまとった理沙の姿があった。遠くからでも理沙がボロボロになっていたのは、はっきりとわかった。それでも理沙は必死に怪獣の尾にしがみつき魔法を放っていた。
(何か、何かできることは………)
冷静ではない頭で、なんとかできることはないかと優希は思考を巡らせる。そんなことをしていると、尾を思いっきり振った怪獣に理沙が吹き飛ばされてしまった。
「理沙さん!!」
思わず大きな声を出してしまい、優希は慌てて口を手でふさいだ。が、怪獣はこちらに気づいたようだ。黒く光る怪獣の瞳と目が合う。
「あっ……………ドモ」
恐怖のせいで動けなくなってしまった優希などお構いなしに、怪獣は口にエネルギーをため始めた。赤い球体のようなものが見る見るうちに、口に生成されていく。
「………わっ」
完全に思考が停止した優希の体に、右から柔らかい衝撃が走る。優希に当たらずに済んだ怪獣の攻撃は、優希の家を木っ端みじんにし、辺りは火山口の近くにいるのかと錯覚するほどの熱を帯びた。そして気づけば足が地についていなかった。先ほどまでこちらを見下ろしていた怪獣が、今は真下にいる。
「えっ!?うわっ!?ん、えっ!?」
「落ち着いて!!あと暴れないで!!」
優希が軽くパニックを起こしじたばたしていると、すぐ隣から理沙の声が聞こえた。
「えっとすみません!!」
優希はパニックになりながらも理沙にそう謝罪をする。
「こっちもごめん!!できるだけ怪獣をここから離すから!!どこか適当なところに降ろすからね!!」
そんな会話をしてる間も怪獣は再び口にエネルギーをため、こちらを狙っている。それを避けつつ急降下し、理沙は優希を雑に下に降ろした。優希はその後の理沙の動きを追うことすらできずに、地面に倒れ込む。
「り、理沙さん?」
見るといつの間にかに怪獣も遠くへと移動していた。
足手まといだった。ステッキは手に持っていたのに、何もできなかった。
優希は自分の不甲斐なさと悔しさに顔をゆがめながら理沙が戦っている方角を確認した。
「……っ」
優希からは言葉にならない声が漏れた。そこには理沙が一方的になぶられている光景があった。立ち上がっては怪獣に地面や建物に叩きつけられている。遠くから見てもわかるほど動きもふらふらしている。
(っ!どうする…………どうにもこうにも………でも………どうにかしなきゃっ)
でもどうする?何ができる?何もできない。魔法なんて服を一瞬で着替える魔法とさっき教えてもらった亜空間を使った魔法しかわからない。
何もできない無力感を味わいながら何とか今ある魔法で理沙を助けられないかと、優希は頭を抱えながら必死に考える。でもどの考えも空振りに終わり、呼吸が荒くなるばかりだった。
(くっそっ!なんにもできないじゃないか!!無駄に出しゃばって足引っ張って!!あの怪獣みたいに光線でも出せたらっ!)
そこまで考えて、優希ははっとした。
(そうだ………………あの時のを出せれば)
あの時、怪獣に傷を負わせることができた魔法を今出せれば、少しは状況がましになるんじゃないだろうか?あの時は殺すことはできなかった。今回も殺すことはできないかもしれない。でも、時間稼ぎ程度にはなるかもしれない。理沙が体勢を立て直すまでの時間稼ぎくらいには。
優希は立ち上がり、数百m先にいる怪獣にステッキを向ける。あの時はどうやった?あの時は何も考えていなかった気がする。うまく魔力を操ることもできなかった。だから魔力管がぐちゃぐちゃになったんだ。無駄に魔力を、瞬発的に大量の魔力を使ったから。あの怪獣は魔法を使うとき、それなりの時間を有して魔法を放った。僕もそれを真似すればいい。
魔法は想像力。ステッキの先端に魔力をためるイメージをすればいい。
ステッキの先端には徐々に光が集まり始めた。
優希は熱を帯びた、ただし冷静に正常に動く脳みそで様々なことを考えながら照準を怪獣に合わせる。
あの時は、イメージどうりに標準を合わせることもイメージどうりの火力を出すことも出来なかった。
魔力がそれ受け付けなかった。
でも今ならできる。容易に想像できる。
優希の頭にはあの時と同じ赤い衝動が走る。
「はぁはぁ……………」
(これ無理だぁ………………まだ治ってなかったの?)
理沙は地面に叩きつけられながら、そんなことを悠長に考える。こんな死にそうな状況でも頭は冷静だ。自分の死を冷静に、容易に受け入れようとしている。
(魔法管が絡まってるせいで上手く魔法が出せない…………せめて倒さなきゃ………………これ以上は犠牲を………)
身体中のいたるところから血が噴き出ている理沙は、うまく動かない身体を憎みながら、怪獣を睨みつける。
(………遊ばれてるな………これ)
泣きたいぐらい情けない自分の姿をふと客観視してしまった理沙は、自虐的な笑みを浮かべる。
(何もできずに死ぬくらいなら…相打ちで終わらせてやる)
理沙は壁に埋もれながら自身のステッキを怪獣に向ける。そして、理沙が切り札の魔法を放とうとした瞬間、向かい側にいる優希の姿が目に映った。
(………優希くん?)
ステッキを構え、何かをしようとしている優希の姿に理沙は目を見開いた。なにかを悟った理沙は、怪獣の攻撃を受け流すことも、攻撃をすることもせず、できるだけ低くその場に伏せた。
次の瞬間、怪獣の頭に一直線に差す閃光とともに震えるほどの魔力が辺りを包んだ。怪獣は優希の攻撃を避けられなかった。怪獣の頭はきれいに消し飛び、数秒遅れで辺りには怪獣の体液が散らばった。そのまま怪獣は力なくその場に倒れ、パラパラと塵と化していった。
(倒し、た?…………………優希くん………が………?)
それを理解した理沙は、驚いたような、嬉しくてたまらないというような顔をする。痛む身体を引きずりながら、優希のところへ向かう。
「あっ………たっ、倒した?」
優希は安心と過度の疲労からその場に膝をついた。
呼吸が乱れる。息が苦しい。
体中に汗が伝ったが、不快感はなく、不思議とすがすがしい気持ちになった。
「優希くん!」
「あっ理沙さん」
理沙は優希に近づくと倒れこむように、力なく抱き着いた。
「わっ、大丈夫ですか?」
「うん…………大丈夫……ありがとう」
ため息交じりに言いながら理沙は優希から身体を離した。
「それにしてもここら一帯酷い有様だ………不甲斐ない」
理沙の言葉に、優希はあたりを見回し、そのあまりのむごい惨状に優希は目を逸らした。すると、理沙の身体についた惨たらしい傷に気づき、目を見開いた。
「理沙さん、怪我、大丈夫、ですか?」
「ん?あー全然大丈夫じゃない!でも心配しないで!これくらいなら死ぬことはないよ多分。あと家のことは安心してね。協会の人が直してくれるから」
「協会?」
いきなり出てきた協会という単語に優希は首をかしげ、声を漏らす。
「魔法少女を管理する協会があるんだけど、怪獣が壊した建物を直したり、そのほかにも怪獣の研究とかもしてるんだぁ………………あっ!国公認だから怪しい組織ではないよ!?私はその協会の魔法少女なの」
「…………僕は入ってないけど……大丈夫、ですかね?」
「入る入らないは自由だから大丈夫だよ」
そんな会話をしていると、どこからかパトカーと救急車、消防車の音が聞こえてきた。
「あっよかったぁ………………救急車の音だー」
救急車の音を聞いてやっと安心した理沙は、魔法少女の衣装から私服に魔法で着替え、その場にバターっと寝っ転がった。
「疲れた………………眠ーい……………おやすみぃ」
「えっ、おっおやすみなさい?………?」
しばらくして理沙から寝息が聞こえ始め、気が完全に抜けた優希は、同じようにその場に寝っ転がった。
なんだかどっと疲れた。
寝心地の悪い瓦礫に身を委ね、優希は目を閉じる。
そして、しばらくしてその場には、2つの異なる寝息が響いた。
理沙さんの切り札はーー相手の魂を焼却する魔法だぜ☆
ほぼ自爆技だけど当たりさえすれば相手を確実にピーできるチート魔法だぜ☆
魔力100%の時は使っても自爆にならないぜ☆
命中率は50( ᐙ )パー




