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肉喰君と魔法少女  作者: ぽよぽぽ
第1章 肉喰君と始まり
1/5

1話 ようこそ僕の

わぁー初めての投稿

何すればいいんだこれ?

とりあえず、頑張ります!!

なんか文字数無駄に多いけど暇な方はペラペラ見てください


「僕と契約してほしいんだっぷ」

子供の声のように高く、幼い声が響いた。

ベンチだけがぽつんと置かれた公園に、契約、というおとぎ話めいた単語が飛ぶ。

深い沈黙の後、一秒遅れでその言葉が耳に届く。

だが、言葉の意味が理解できない脳みそは依然止まったまま。冷たいような生暖かいような風が公園の落ち葉を飛ばしていく。その公園には背丈が160cmほどの、学ランを着た黒髪の少年と、豚が一匹。と言ってもその豚は、リアルな動物の豚ではなく、つぎはぎだらけでおまけに薄汚れている、数十センチの豚のぬいぐるみのような見た目をしていた。背中と思われる場所からは、綺麗とは言えない、これまた薄汚れたハエの羽のようなものが生えていた。右目には黒いボタンが縫い付けられていて、とても不気味だ。

少年は驚いたような顔で硬直し、瞳孔を震わせる。

「…………契………約?」

震える声で、少年は豚に問いかける。呼吸が荒い少年の手は、なぜだかあふれ出る不安と恐怖でぬれていた。それは危機を回避するための本能が必死に働きかけ、ここから逃げ出させようとしていたからなのかもしれない。

「そう、そうだっぷ!」

少年の問いかけを聞いた豚は、嬉しそうにその場で回転して見せる。無機質で何も映しようがないように思えるその瞳は、確かに光を帯、美しく輝いていた。

「あれ?足、震えてるっぷ…………………もしかして…………怖がらせちゃったっぷか!?ごっごめんっぷ………全然怪しいものじゃないから怖がらないでほしいっぷ!」

豚は怯える少年を見て、誤解を解こうと少年を気遣いながら必死に訴えかける。

「あっごめん…………大丈夫………少し、驚いただけ」

少年はうつむきながらまだ少し震える手を抑えながらそう言った。そんな少年を豚は心配そうに見つめる。その瞳にドキッとした少年はなにかしらの言葉を紡ごうと、必死に脳を働かせようとする。

「別に妖精なんて今どき珍しくないし…さ………急に茂みから飛び出してくるから、ほんとに少し、びっくりしただけで…………」

少年はもごもごと、終始聞き取れないほどの音量で話した。

そう、この世界では妖精は珍しくない。数百年前、突如として現れた彼ら。特に人間に害を与える訳でもなく、友好的な存在であり、人間とは共存しているような状態だ。ただ、彼らと似た生物に、怪獣が存在する。人間に害をなすことで力を手に入れ、人間の血肉で飢えをしのぐ怪物、それが怪獣だ。

……………目の前のこいつはどっちなのだろうか。

見た目だけでは妖精なのか怪獣なのか判断が難しい。だが、目の前の奴はなんとなく妖精ではない気がした。少年は今まで妖精になんてあったこともないし、怪獣は見たことはあるが、テレビ中継でしか見たことはない。それでも、こんな不気味なやつが妖精だなんて、想像がつかない。見た目で判断するなとは言うが、ここまで怪獣のような見た目の怪獣も珍しいだろう。

「そうなんだっぷかぁ。今どき妖精は珍しくないんだっぷね!勉強になるっぷ。それで、さっきの続きなんだっぷけど………」

そうだ、どう考えても怪しい。こいつは怪獣に違いない。

怪獣を見つけたときは、警察に連絡すればいいんだっけ?

少年はばれないようにカバンの中を漁り、スマホを探す。

あっ、あった………

「僕と契約してほしいんだっぷ!」

少年はその言葉を聞き、見つけたスマホを落としてしまった。契約。たしかに、そう言った。いや、最初からそう言っていた。

少年の手が震える。落ち着いてきた呼吸がまた荒くなり、冷や汗とは違う汗が少年の体を伝う。

妖精との契約。契約者は妖精と契約をし、妖精はその契約により生じる、生きるために必要なエネルギーを貰う。契約した人間は、何か一つ、なんでも願いを叶えてもらえる、そんな夢のようなものが契約だ。願いによっては人生そのものを変えられる、一世一代の大チャンス。

少年は、ぐちゃぐちゃになった情緒を表したような潤んだ瞳で豚を見つめる。その目を確認すると、豚は満足気に目を瞑った。

「実は僕、誰とも契約できてないせいで今にも死にそうなんだっぷ!だからどうにかして契約をしてもらおうと地を這って来たんだっぷけど…………この見た目のせいで誰も契約してくれないんだっぷぅぅぅ!!!」

豚は瞳から大粒の涙を流しながら大きな声でそう放った。あまりにも情けない姿に少年は相槌の代わりにため息を吐くように声を漏らした。

「だからお願い!優希君!僕と契約して魔法少女になって欲しいっぷ!」

「えっ………えぇと………」

豚に急に詰め寄られた優希は、思わず声を漏らす。

契約………そりゃしたくない訳じゃないけど…………それに………魔法少女って………ん?………魔法少女……?

「ちょっと待って!魔法少女って…………」

「あれ?言ってなかったっぷか?僕と契約すれば魔法少女になれるんだっぷよ!」

優希は思わず顔をひきつらせる。妖精だろうが怪獣だろうが、こんなポンコツと契約したらろくな目に会わなそうだ。

「魔法少女って………なんでそんなのにならなきゃ………」

僕は少年であっても少女ではない。第1そんなよく分からないものになれるものか………………

「それはね優希君!魔法少女になって悪い怪獣を倒すことで、僕たちが生きるためのエネルギーを回収することが出来るっぷからだよ!」

そんな物騒な仕組みだったのかと優希は思いながら、落としてしまったスマホを拾い上げる。そして、豚に背を向け走り出した。

「えっ!?ちょっと待つっぷ!!優希くーーーん!!!!」


────────────────────


優希は一軒家の自宅まで走り切り、膝に手をつきながら荒い呼吸を繰り返す。

(はぁ……………無駄に体力使った…………まぁあぁゆうのには関わらないのが1番)

「優希くーーん」

「うわぁぁっっ!!!!????」

すると突然、先程振り切ったはずの豚が背後に現れ、優希はその場で尻もちを着いた。

「もう!酷いっぷよ!まだ僕との契約が終ってないっぷのに…………」

豚はブツブツ文句を言いながら痛めたお尻をさする優希の目の前で、どんと構えた。

「ほら!早く契約しようっぷ!!」

「いった……………あぁもう!しないよ!契約なんか!だいたい信じられないんだ君のこと!!ってかなんで当たり前のように名前呼んでんだよ!名乗ってないじゃん!!!」

優希はたった数十分のうちに溜まったイライラを全てぶつけるように、豚を怒鳴りつけた。

「妖精なんだから魔法を使って名前を知ることなんて簡単だっぷし、信用ができないだなんて心外だっぷよ!僕のどこが信用できないんだっぷか!?」

豚は少しキレ気味で優希に訴えかける。優希は今更ながら信用できない、と言ってしまったことを少し後悔し、下を向く。

見た目が不気味だから、という理由で信用できないだなんて、ルッキズムの権化でしかない。別に目の前のやつに良い奴だと思われたいわけでは無いが、悪いやつだと思われるのは、なんだか嫌だ。優希は居心地悪そうな顔をしながら豚の方をむく。

「ご………ごめん…………だって今の世の中物騒だし…………妖精だって確証もないわけだし…………」

優希はボソボソと途切れ途切れに言葉を並べた。それを聞いた豚は、なるほど、と顎に手を置き、考え込むような仕草をする。

「でも………僕が本当に妖精だって確証を得てもらうためにはどうすればいいんだっぷか?信用できないって言われても………証明しようがないっぷし………」

うーん、と唸りながら、豚は申し訳ないような声色でそう言った。その姿は本当に困っているように見えて、今までで1番生物らしい動きをしていた。

しばらくの沈黙の後、豚はあっ、と声を上げ、自分の手を叩いた。そして、優希に向かい、優しく微笑んだ。

優希はそんな態度の豚を不思議に思いながら首を傾けた。

「だったら僕の魔法を見せてあげるっぷよ!」

「魔法…………」

優希は豚の言葉を聞き、魔法という言葉をほとんど無意識のうちに発した。これから何が起こるのかわかっていない優希だったが、その目は確かに期待と好奇心で輝いていた。それを感じた豚は、その思いに応えようと優希の手を取る。ザラザラとしたようなチクチクとしたような感覚が優希の手のひらから全身に広がった。そしてつま先から脳天へと電流のごとく熱が走り…………………

「………!!」

気づけばそこは、雲の上だった。沈みかけた太陽が世界を照らしていた。反対側には暗闇が顔を出し始め、星が光り始めている。空中に放り投げられるような感覚に内蔵がくすぐったかったが、不思議と怖くはなかった。むしろ、この感覚をずっと閉じ込めておきたいと思うほど心地よかった。

「どうだっぷかぁ?楽しいっぷかぁ?」

幻想的な景色と心地良さをかき消すような、そんな少し抜けている声がどこからか聞こえた。姿を探すがどこにも見当たらない。

「僕は今魔法そのものだっぷから、姿が見えないのも仕方ないぷよ〜」

優希が辺りを見渡していると、どこからかまた、豚の声が聞こえた。魔法そのもの………?言葉の意味は分からないが、豚がそう言うのならそうなのだろう。そんなことを考えていると、優希はあることに気づき、あっ、と小さく声を漏らした。

どうしたんだっぷ?

声は聞こえなかったが、空気がそう問いかけているような気がした。そんな不思議な現象も、なぜか頭はすんなりと受け入れた。

「名前…………聞いてないなって……………」

優希は独り言のようにつぶやく。なぜだか答えは帰ってこない。そのうち、目を瞑りたくなるような突風が吹き、夜空を飲み込んでいった。なにかに飲み込まれるような、体が奪われるような感覚だったが、不思議と怖くなかった。

気がつくと、そこは家の前だった。辺りは暗くなり、街灯がつき始めていた。

「あれが魔法だっぷよ、優希君」

そして、目の前にはあの豚がいた。暗くて少し姿が見づらいが変わらずニコニコと笑っていた。変わらないはずの声で自分の名前を呼ぶ豚に、少しだけ心臓が掴まれるような感覚を覚えた。例えではなく、本当に……………あと少しで握りつぶされていたような……………………………

「どうだっぷか?これで僕が妖精だって信じてくれるっぷか!?」

豚はボケっとしている優希に笑顔でそう問いかけた。

優希はその言葉で夢から覚める。そしてはっきりとした目で豚を見つめた。

「あっ………うん………うん?………でも怪獣も魔法を使えるんじゃないの?」

優希は思い出したようにそう言った。テレビでそんな話をしていた気がする。証明のためにせっかく魔法を見せてもらったのに…………………今更そんなことを思い出してしまい、気まずさに目を逸らした。

「えっ………?………………えぇぇ!!??」

優希の言葉を聞いた豚は思わず素っ頓狂な声を上げる。数秒間硬直した後、じゃぁどうすれば証明できるんだっぷよぉ、なんて情けない声で豚はうなだれ始めた。そんな豚の姿を見て、優希はふっと笑った。そして豚にそっと手を差し出した。

「…………………………?」

豚はよくわからないというような顔で優希を見つめた。

「えっとまぁ……………………契約………をしよう、みたいな」

その言葉を聞いた豚は驚きの表情を浮かべた。だが、すぐにその顔は笑顔一色に染まり、キラキラと、まぶしいほどに目を輝かせていた。

「ありがとう!優希君!!じゃぁさっそく契約を」

「あっ、ちょっとまって……………」

優希は手を引っ込めそう言った。契約をしようとした豚は急にそう言われ、目をぱちくりさせる。

「あのさ、契約したら願いを叶えてもらえるんでしょ?」

「そうだっぷ!どんな願いでも一つだけ叶えることができるっぷ!」

豚は早く契約がしたくて内心そわそわしながらも、優希の問いかけにしっかりと答える。

「あの、その願いって今しなくてもいいのかな?後で願いを叶えてもらうことって、できる?」

優希は無理も承知でそう問いかけた。契約の過程で願いを叶えてもらうのだから、契約後すぐに願いを言わなくてはならなくても、おかしくはないと考えたから。

「全然大丈夫だっぷよ!」

そんな心配を他所に、豚はほとんど間を開けずに簡単に答えた。心配して損した。というより少し神経質になりすぎていたのかもしれない。魔法だとか契約だとか、今日は意味の分からないことがいろいろ起きているのだから無理もないが。

「というか、むしろ助かるっぷ!」

「…………………えっ?」

安心していた優希の耳に入ってきた予想なんて一切していなかった言葉に思わず声を漏らす。

「えっとね、すごく言いづらいんだけど、僕、今あんまり力がなくて、実は僕のほうから願いを叶えるのは後にしてほしいって言うつもりだったんだっぷ」

そういえば最初の時もそんなことを言っていた。妖精は生きるためのエネルギーを契約することにより手に入れる。怪獣を倒すことでも手に入れることができるらしいけど…………原理はよくわからないし、どこからそんなエネルギーが湧いているのかもわからないが、要するに契約は食事のようなものなのだろう。食事を今までまともにできていなかったのだから、弱っていて力が出せないということだろう。優希は自分の中でそう結論付けて、意識を現実に戻す。あれ?待てよ

「でも、それ言う前に契約しようとしてたよね?」

沈黙が生まれる。あぁなるほど………………何となくいろいろ察した優希は、深くため息をつく。そしてギロッと豚を睨みつけた。

「もしかして、ほかにも不都合なこととか隠してるんじゃないよね?」

依然として沈黙は続く。豚は優希の言葉を聞き、ダラダラと滝のような汗をかきながら目を泳がした。

「あっ………………ハハ……………ハ」

「…………………………はぁ、もうこの際言わなかったことには目をつむるよ………………だから、今から正直に話しほしい。契約することのデメリットを………あとメリットも」

優希はあきれ顔で豚にそう提示を求める。正直契約していいのか、信用していいのかわからなくなってきたが、とりあえずメリットとデメリットを聞いて決めようと考え、答えを待った。

「わかったっぷ。じゃぁまずはデメリットからいくっぷ」

「嘘だけはつかないでよ」

豚は、わかってるっぷよ、と少し不貞腐れた態度で答えた。不貞腐れたいのはこっちだといわんばかりに優希はため息をつく。すると豚はどこからかミニ黒板を取り出した。

「デメリットは主に二つだっぷ。一つ目は、人によっては大きなデメリットだっぷ」

豚は白いチョークで一番上に大きくデメリットについて、と主題を書きながらそう話す。

「人によっては大きなデメリット?」

「そうだっぷ。まぁズバリ…………魔法少女になってもらわないといけないんだっぷ」

そうだそうだ。そういえばそんなことも言ってたな。

「でも別に魔法少女になるだけでしょ?まぁ少女ってのは少し引っかかるけど」

「いや、それが……………………」

豚は少し気まずそうにどこからかあるものを取り出した。

「…………………………………………」

そのあるものを見た瞬間、優希の顔は凍り付いた。豚が取り出したもの、それは…………………………

「これを着てほしいんだっぷ」

魔法少女の衣装だった。

それも、水色基調のキラキラとした衣装。当然のごとくスカート。かわいらしいレースの装飾が、頭からつま先までまんべんなく施され、星のスパンコールのようなものがスカートに散らばっていた。さらに豚はもう片方の手に、リボンが両端についたカチューシャと水色のストッキングを持っていた。

「えっ、死ねってこと?」

その衣装を目の当たりにした優希は真っ黒に染まった瞳と抑揚のない声でそう発した。

「いやでもなんで着るんだよこの意味わかんないのこうゆうのってかわいらしい子が着るからいいんだろ僕が着たらただの変態じゃないか文化祭の悪ノリでもこんなの着たくないよ僕は」

現実を受け入れたくない優希は普段はあまり上手く回らない舌と頭をフル回転させて早口で異議申し立てる。

「えっと実はこの衣装は防弾チョッキみたいな感じになってて、銃弾くらいなら簡単に防げるくらい頑丈なんだっぷ………それでなんで着るのかというと、それは二つ目のデメリットの話にもなってくるんだけどっぷね」

二つ目のデメリットと聞いた優希は露骨に顔を引きつらせ豚を睨みつけた。正直これ以上のデメリットは予想できないが、だとしてもこのどぎついデメリットにプラスでさらにデメリットを乗っけられるのはさすがにきつい。今のだけでも正直、契約を破棄したいというのに。

「優希君には怪獣を倒してほしいんだっぷ」

「へ?」

あぁなるほど。確かに魔法少女って怪獣とか倒してるイメージあるわ。そういえば怪獣を倒してエネルギーをどうとかこうとかとかも言ってたなぁーーーーHAHAHA……………………

「帰っていいかな」

「えぇ!?」

優希はそう言い、目の前にある自分の家のドアに手をかける。

「うわぁぁぁ!!まってくれっぷ!!!さっき契約してくれるって言ったっぷのにぃ!!!」

豚は必死に優希の足をつかみ絶対に離さまいと必死にその場で踏ん張る。

「いや無理意味わかんないあんな得体のしれない怪物とどうして戦わないといけないんだ無理無理無理無理無理」

対して優希も、絶対に契約なんかするもんかとその場から全力で逃げようとする。

「くっそ無駄に馬鹿力…………」

だが、数十センチ程度しかない豚から出るとは思えないほどの力で、優希は引き戻されてしまった。

「なんで怪獣なんかと………………」

「でも怪獣のことは最初の時に言ったはずっぷよ?」

「さっきまで忘れてたんだよ………………」

なかなかのデメリットに優希はその場でうずくまってしまう。今説明されたデメリットでわかったこと。それは、こいつと契約すれば命と尊厳の両方を失うことになるかもしれないということ。

キッッッッッッツ…………………………

「まぁデメリットはこれでおしまいっぷ………次はメリットについて話していくっぷね!メリットは主に3つだっぷ!1つ目はもう知ってると思うっぷけど、どんな願いも一つだけ叶えることが出来ることだっぷ!2つ目は魔法が使えるようになること、そして3つ目は」

豚はメリットについて淡々と話していく。デメリットはなかなかきついものだったが、メリットを聞くとそれも薄れる。それに今、魔法と言った。さっき豚が使っていた空中に浮く魔法?みたいなのも使えるようになるのだろうか?あまり想像ができないような世界の話だが、契約すれば遠い世界の話ではなくなる。その事実に胸が踊る。よく分からないが、遠い世界に足を踏み入れる特別感、優越感に近いのかもしれない。そんな感覚がこそばゆく、なぜだか心地いい。ボーッと無意識に任せるように思考する脳みその隅で、3つ目のメリットについて思考を巡らせる。

願い、魔法……………次にくるのはなんだろう…………

デメリットを隠したり、商売上手な1面が見え隠れしているこいつのことだ。きっと、最後にものすごいメリットを持ってくるに違いない。優希は期待の目で豚を見つめる。豚も、自信満々に胸を張り、もったいぶるように目を瞑った。

「モテるっぷ!!」

うんあぁうんまあ………………

うん………………………………………

「うん…………そっか」

数秒間の沈黙を過ごした後、優希は今日一冷めた目でそう発した。別に悪いメリットではないけど………………………うん

「えっ………なんか嬉しくなさそうだっぷね…………おかしいっぷ………だって人間は常日頃からモテたいモテたいと口癖のように言ってたっぷのに………………」

真剣に悩む豚の姿を見た優希は妖精に対する曖昧だった印象が、一気にアホに変わった。

「えっとまぁ…………契約………してくれるっぷか?」

自信なさげにそう問いかける豚に優希は大きくため息をついた。別に、答えは最初から決まっていた。よっぽどのデメリットはない限り答えを変えるつもりはなかったし、まぁよっぽどなデメリットがあったのだけれども…………

優希は豚をなんとなく見つめた。

それになんだか、この不気味な見た目に愛着が湧いてきてしまっていた。

「しよう、契約………実は気が進まないけど………」

優希は豚に手を差し出す。もうこの手を引くつもりは無い。

「優希君……………」

豚は目を大きく見開き、しっかりと優希を見据えながら優希の手に自分の手を合わせる。

「!!」

すると、重なった手の中心から眩い虹色の光が溢れ始めた。辺りを包み込む光はやがて空高く上り、夜に包まれた世界を、一瞬だけ光が包む。ふわっと浮くような感覚に数十分前にいた空の風景を思い出す。やがて光は消え失せ、辺りを再び夜の闇が包み込んだ。

「………これで………契約が…………」

まだあまり実感が持てないまま、優希は深くため息をついた。今度は、呆れや怒りからきたため息ではない。疲れからきたものだった。先程まではなかった疲労感が契約を終えた瞬間、何かが体から抜けるような感覚とともに襲ってきた。なんでだろう………汗が止まらない。気持ち悪い。

「ありがとうっぷ!!優希君!!」

疲労のせいでボーッとする脳みそを叩き起すかのように、正面からはそんな声が聞こえた。あまり外の音が聞こえないし、目も今にも閉じそうで意識も曖昧だが、目の前の豚の声はハッキリと聞こえた。

「ベルゼ………………」

「そう、ベルゼ、僕の名前だっぷね。僕はここにいるっぷよ」

あれ?なんでこいつの名前を?

いつ名前なんか聞いたっけ?……………聞いた時には答えてくれなかったはず………………………

優希はそんな疑問を浮かべながら、筋肉痛のように痛む体を抑える。なぜだろう………水中にいるように息が苦しい………

その苦しさを紛らわすために、優希は必死に咳をする。

「ありがとう優希君。そしてよろしくね。」

豚、ベルゼは苦しむ優希に気を使うことなく話を続ける。

「ようこそ。僕の魔法少女」

そこで優希の意識は途切れた。

おいおいベルゼが怪しいって思ったそこの君~~~~~~~~

私もそう思う!

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