第13話「花子の正体が元同級生で俺の小説の大ファンだった件」
翌朝、♰聖なる森♰に爽やかな光が差し込んだ。
太郎は鳥のさえずりで目を覚ました。昨夜は花子の記憶が戻るかもしれないという期待で、なかなか眠れなかった。
「おはようございます、救世主様」
エリーゼが元気よく挨拶する。
「おはようございます」
太郎は欠伸をしながら答えた。
「花子さんは?」
「まだお休みです」
アルフレッドが答える。
「♰名前の魔力♰による♰記憶の覚醒♰は、深い眠りの中で起こるそうですから」
「♰記憶の覚醒♰...」
太郎は花子が眠る木陰を見つめた。本当に記憶が戻るのだろうか。
その時、花子の体が光に包まれた。
「あ!光ってます!」
エリーゼが指差す。
「♰記憶の覚醒♰が始まったようですな」
アルフレッドが興味深そうに観察する。
光は数分間続き、やがて静かに消えた。
「う...うーん...」
花子がゆっくりと目を開ける。
「花子さん、大丈夫ですか?」
太郎が心配そうに駆け寄った。
「はい...なんだか、頭がすっきりしました」
花子が起き上がる。
「記憶は...どうですか?」
エリーゼが期待を込めて聞く。
「あ...」
花子が太郎を見つめた。その瞳に、昨日とは違う光が宿っている。
「太郎くん...?」
「え?」
太郎は驚いた。くん付けで呼ばれた。
「やっぱり太郎くんだ!」
花子が嬉しそうに微笑む。
「3年2組の田中太郎くん!」
「うわああああ!」
太郎が絶叫した。
「3年2組って...まさか...」
「はい!私、田中花子です」
花子が立ち上がって、丁寧にお辞儀をする。
「3年2組で、太郎くんの後ろの席に座っていました」
「後ろの席の...」
太郎は必死に記憶を辿った。確かに、後ろの席に田中さんという女の子がいた気がする。
「あ...あああ!」
太郎の記憶が蘇った。
「田中さん!地味で目立たない...」
「はい、そうです」
花子が苦笑いする。
「地味で目立たない田中花子でした」
「信じられない...」
太郎は頭を抱えた。
「♰光の巫女♰がクラスメイトだなんて...」
「すごいですね!」
エリーゼが感激している。
「本当に同じ世界からいらしたのですね!」
「これぞ♰過去の因縁♰ですな」
アルフレッドが感心している。
「♰過去の因縁♰って...」
太郎は困惑した。
「でも、なんで花子さんがこの世界に?」
「それは...」
花子が少し恥ずかしそうにした。
「実は、太郎くんの小説を読んだことがあるんです」
「え?」
太郎は驚いた。
「僕の小説を?」
「はい」
花子が頷く。
「『♰終焉の黙示録♰』を...」
「うわああああ!」
太郎が再び絶叫した。
「なんで読んだんですか!?」
「太郎くんが休み時間によく書いているのを見て、興味があったんです」
花子が説明する。
「それで、太郎くんが席を離れた隙に、少しずつ読ませてもらいました」
「勝手に読んでたんですか!?」
太郎は顔を真っ赤にした。
「ごめんなさい」
花子が謝る。
「でも、とても面白くて...それで、スマートフォンで写真に撮って保存していたんです」
「しゃ、写真に撮って...?」
太郎の声が震えた。
「はい」
花子が無邪気に頷く。
「あまりにも素晴らしい内容だったので、家でじっくり読み返したくて」
「まさか...それを他の人に見せたりは...」
太郎が恐る恐る聞く。
「実は...」
花子が申し訳なさそうにする。
「友達にも読んでもらいたくて、SNSに投稿したんです」
「SNSに!?」
太郎は青ざめた。
「『友達が書いた素敵な小説』って紹介して...」
「おいおいおいおい!」
太郎がパニックになる。
「それって、拡散されてるじゃないですか!」
「はい...たくさんの人がいいねしてくれました」
花子が嬉しそうに答える。
「どのくらい...?」
太郎が震え声で聞く。
「えーっと...いいねが500個くらい」
「500個!?」
太郎は目を見開いた。
「リツイートも200個くらい」
「200個!?」
太郎の顔が真っ青になる。
「みなさん『感動した』『続きが読みたい』ってコメントしてくれて...」
「やめてえええええ!」
太郎が絶叫した。
「つまり、何百人もの人が太郎くんの小説を読んだということですね」
アルフレッドが興味深そうに分析する。
「そうなんです!」
花子が嬉しそうに答える。
「♰終焉の黙示録♰、すごく評判が良かったんですよ」
「評判って...」
太郎は絶望的な顔をした。
「みんな『作者は天才』『世界観が素晴らしい』って言ってました」
「天才って...」
太郎は頭を抱えた。
「でも、それがきっかけで私もこの世界に来たんです」
花子が続ける。
「ある日、保存していた写真を読み返していたら、突然光に包まれて...」
「僕と同じですね」
太郎が苦笑いした。
「でも、SNSで拡散されていたなんて...」
「♰異界の扉♰は文字によって開かれるのです」
アルフレッドが解説する。
「聖典を読んだ者は、強い印象に従ってこの世界に導かれます」
「つまり...」
太郎の顔がさらに青くなる。
「写真を見た人たちも...」
「はい、みんなこの世界に来ているはずです」
花子が明るく答えた。
太郎は完全に言葉を失った。
「大丈夫ですか、救世主様?」
エリーゼが心配そうに声をかける。
「だ、大丈夫じゃありません...」
太郎がふらつく。
「何百人もの人が僕の黒歴史を読んで、この世界に来てるってことですか?」
「黒歴史じゃありません」
花子がきっぱりと言う。
「とても素晴らしい物語です」
「そうですか?」
太郎が疑問に思う。
「はい」
花子が力強く頷く。
「私、ずっと♰シュバルツ・フェニックス♰のファンだったんです」
「♰シュバルツ・フェニックス♰って呼ばないでください!」
太郎は恥ずかしがった。
「でも、太郎くんの本名ですよね?」
花子がいたずらっぽく微笑む。
「本名じゃありません!ペンネームです!」
「同じことですよ」
花子が笑う。
「♰シュバルツ・フェニックス♰様」
「様までつけないでください!」
太郎は頭を抱えた。
「でも、なんで僕の小説に興味を?」
太郎は不思議に思った。花子は地味で目立たない子だった。厨二病小説に興味があるようには見えなかった。
「実は...」
花子が照れながら言う。
「太郎くんのことが気になっていたんです」
「気になるって...」
太郎はドキッとした。
「いつも一人で小説を書いていて、とても集中していて...」
花子が懐かしそうに語る。
「なんだか、別世界にいるみたいでした」
「別世界って...」
太郎は苦笑いした。確かに、現実逃避していた部分はある。
「それで、太郎くんがどんな世界を作っているのか知りたくて」
「そうだったんですか...」
太郎は少し嬉しくなった。
「読んでみたら、とても壮大で美しい世界で」
花子の目が輝く。
「私も一緒に冒険してみたいと思いました」
「それで、この世界に来ることになったんですね」
エリーゼが感動している。
「まさに♰過去の因縁♰ですな」
アルフレッドも同意する。
「でも、よく内容を覚えていましたね」
太郎が感心する。
「何度も読み返していましたから」
花子が微笑む。
「太郎くんが書き上げたページを、毎日少しずつ」
「毎日って...」
太郎は恥ずかしくなった。
「そんなに熱心に読んでくれていたんですか」
「はい」
花子が頷く。
「特に、♰光の巫女♰の♰銀月姫ルナリア♰が素敵でした」
「♰銀月姫ルナリア♰...」
太郎は顔を赤くした。
「あれは僕の理想のヒロインだったんです」
「理想のヒロイン?」
花子が首を傾げる。
「はい...美しくて、優雅で、神秘的で...」
太郎が恥ずかしそうに言う。
「でも、現実にはそんな人はいないと思っていました」
「そうなんですか」
花子が少し寂しそうにする。
「でも、花子さんは♰銀月姫ルナリア♰そのものです」
太郎が慌てて言った。
「美しくて、優雅で、神秘的で...まさに僕の理想通りです」
「本当ですか?」
花子が嬉しそうにする。
「はい」
太郎が頷く。
「花子さんは、僕の理想のヒロインを現実にしてくれました」
「太郎くん...」
花子が感動している。
「私も、太郎くんに会えて本当に良かったです」
「僕も...」
太郎も微笑む。
「こんな形で再会するなんて思いませんでしたが」
「♰再会の奇跡♰ですね」
花子が微笑み返す。
「そうですね」
太郎は頷いた。確かに奇跡だ。
「それにしても」
アルフレッドが興味深そうに言う。
「お二人が中学時代からの知り合いだったとは」
「しかも、花子様が太郎様の小説のファンだったなんて」
エリーゼも感激している。
「運命って、本当にあるんですね」
「そうですね」
花子が同意する。
「私たちが出会ったのも、この世界に来たのも、全て運命だったんです」
「♰過去の因縁♰が、今ここで結ばれたということですな」
アルフレッドが満足そうに頷く。
「でも、恥ずかしいです」
太郎が苦笑いする。
「まさか同級生に僕の黒歴史を読まれて、しかもSNSで拡散されていたなんて」
「黒歴史じゃありません」
花子がきっぱりと言う。
「とても素晴らしい物語です」
「でも、何百人もの人が読んだってことでしょう?」
太郎は青ざめた。
「きっとみんな、この世界のどこかにいるってことですよね」
「そうですね」
花子が頷く。
「でも、みんな太郎くんの作った世界を愛してくれています」
「愛してくれてるって...」
太郎は複雑な気持ちだった。
「SNSのコメント、本当に感動的でした」
花子が嬉しそうに語る。
「『この作者に会ってみたい』『続きが気になる』『世界観が完璧』って...」
「やめてください!」
太郎は顔を赤くした。
「恥ずかしすぎます」
「でも、太郎くんの才能をみんなが認めたんです」
花子が真剣に言う。
「私だけじゃなく、何百人もの人が」
「そんなに大げさな...」
太郎は謙遜した。
「大げさじゃありません」
花子が力強く言う。
「太郎くんの想像力と文章力に、みんな本当に感動していました」
「想像力と文章力って...」
太郎は照れた。
「特に、世界設定がとても詳細で」
花子が語り始める。
「♰封印の神殿♰の構造とか、♰滅びの剣♰のデザインとか」
「やめてください!」
太郎は恥ずかしがった。
「あれは中学生の妄想です!」
「でも、今は現実になっているじゃないですか」
花子が指摘する。
「確かに...」
太郎は苦笑いした。自分の妄想が現実になるなんて、考えたこともなかった。
「あの...」
エリーゼが遠慮がちに言う。
「お二人の思い出話、とても微笑ましいのですが...」
「あ、ごめんなさい」
太郎と花子が慌てる。
「つい、懐かしくて」
「いえいえ、構いませんよ」
アルフレッドが笑う。
「♰過去の因縁♰を確認するのは重要です」
「でも、まだ♰四天王♰が残っていますね」
太郎がため息をつく。
「大丈夫です」
花子が太郎の手を握る。
「今度は一緒に戦いましょう、♰シュバルツ・フェニックス♰様」
「だから、その名前で呼ばないでください!」
太郎の絶叫が、♰聖なる森♰に響いた。
同級生との再会。隠れファンとの対面。そして、SNSで拡散された黒歴史。
太郎の冒険は、さらに恥ずかしい展開を迎えようとしていた。
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