控室トーク:勝負のあとに
(舞台裏の控室。木目調のあたたかな空間に、テーブルを囲むようにソファが配置されている。
中央のテーブルには、色とりどりの料理と飲み物が並び、名前入りの小さな札が添えられている。
そこに、対談を終えた4人が順々に入ってくる)
あすか(控室の中で出迎えて):
「お疲れさまでした!みなさん、本当に素晴らしい対談でしたね。
……というわけで、ここではちょっと肩の力を抜いて。
それぞれのお気に入りの飲み物と料理、用意しましたよ!」
---
クーベルタンのおすすめ:フランス風ミートパイと赤ワイン
クーベルタン(目を輝かせて料理を指さす):
「これは、私の故郷で親しまれている“トゥールティエール”というミートパイ。
香ばしく焼き上げた生地の中に、牛と豚の旨みが詰まっています。
赤ワインと一緒にどうぞ。」
キング(パイを切って一口):
「……あっ、すごくスパイスが効いてて、でも優しい味。家庭料理っぽいのね。」
アリ(ワインを香ってから口に含み):
「上品だな……俺にはちょっと背筋が伸びる味だけど、悪くない。」
武蔵(無言で噛みしめ、静かに一言):
「……これもまた、“構え”を持つ料理だ。」
クーベルタン(笑いながら):
「それは最高の褒め言葉ですな、武蔵殿。」
---
アリのおすすめ:フライドチキンとスイートティー
アリ(得意げに):
「さあさあ、こっちは俺の地元ケンタッキーの“フライドチキン”!
それに合わせるのは、氷たっぷりのスイートティーだ。
揚げたてをどうぞ!」
武蔵(じっとチキンを見つめてから、箸でつまむ):
「……香りが強い。が、“油の波”の中に芯がある。」
キング(パリッとした音を立てて頬張る):
「うん、これは……試合後に食べたくなるやつね。疲れを吹き飛ばす味。」
クーベルタン(おそるおそる齧り):
「これは……豪快だ。しかし、確かに力が湧いてくる!」
アリ(笑って):
「でっかく勝った後は、でっかく食うのさ!」
---
キングのおすすめ:フルーツとカリフォルニア・レモネード
キング(透明なグラスを手に取りながら):
「私はさっぱりしたもので。
これは、レモンとベリーの“カリフォルニア・レモネード”。
あと、地元の農園から届いた新鮮なフルーツの盛り合わせも一緒に。」
クーベルタン(レモネードを口にして目を丸く):
「これは……心が洗われる。まるで、湖のほとりにいるような気分です。」
アリ(ぶどうを口に放り込みながら):
「おお、これ、俺の娘が好きそうな味だな。やさしくて、でも主張がある。」
武蔵(柑橘を一房ずつ分けている):
「果実を食むとは、“静かなる勝利”を祝うにふさわしい。」
キング(笑いながら):
「みんな詩人みたいな感想ね!」
---
武蔵のおすすめ:味噌汁と塩むすび
武蔵(小さな漆器と竹の籠を前に出して):
「……拙者の推すものは、これ。
白米に少し塩をまぶした“塩むすび”と、出汁を利かせた味噌汁。」
アリ(おむすびを持ち上げて一口):
「……ん? なんだこれ、シンプルすぎる……のに、ウマい……!」
キング(味噌汁を啜って):
「深い……え、何このだし? 海の香りがする……落ち着く……」
クーベルタン(しみじみと):
「“素材に勝らぬ工夫はない”――という哲学ですね。これは……“道”の味。」
武蔵(静かに頷く):
「技とは、余計なものを捨てて残った“核”のことよ。」
---
穏やかな団欒
(全員がそれぞれの料理を楽しみながら、笑みを交えて語り合う)
アリ:
「なあ、武蔵。あんた、“二刀流”でチキン食えるか?」
武蔵(すっとチキンを両手に持ち、黙って頷く)
キング(笑って):
「ピエール、オリンピックで“食文化部門”つくる気ない?」
クーベルタン(真面目な顔で):
「……実に面白い。食を通じて、世界がつながるのです。新しい理念です。」
あすか(くすくすと笑いながら、テーブルを囲む全員を見渡して):
「勝負を終えたあとも、皆さんの言葉は、あたたかくて、深くて、そしておいしいですね。」
---
(控室の笑い声が遠く響く――
テーブルには空になりかけた皿と、交わされた言葉の余韻が静かに残っている)