幕間コーナー:観客からの質問タイム
(ラウンド3の余韻が残るスタジオ。少し照明が明るくなり、あすかが中央で観客席に向き直る)
あすか(司会)(にこやかに):
「さて、ここでちょっと一息――
会場にいらしているお客さまから、対談者へのご質問を受け付けたいと思います!
時代も国も超えた皆さまの答え、ぜひ生でお聞きしたいという声がたくさん届いています。」
(観客席がざわつく。ステージ下手からスタッフがマイクを持って登場し、観客席の一人に渡す)
あすか:
「ではまず、お一人目のご質問者……どうぞ!」
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質問者1:勝敗のプレッシャーに悩む高校生
(マイクを受け取ったのは、高校の運動部と思しき制服の少年。緊張した面持ちで立ち上がる)
高校生(質問者1):
「あ、あの……自分、高校でバスケをやってます。
強豪校にいるんですけど、大事な試合になると、緊張して、頭が真っ白になって……
“勝たなきゃ”って思えば思うほど、普段のプレーが全然できなくて……。
皆さんは、“プレッシャー”って、どう乗り越えてきましたか?」
(観客からあたたかい拍手)
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アリ(すぐさま笑顔で応じる):
「おい、よく言った。俺もな、マジで怖かったぞ、タイトルマッチの前夜なんて。
心臓が爆発しそうだった。
でもな――俺は、“怖い”ってことを否定しなかった。
“怖がってる自分”をそのままリングに連れてった。
“こいつと一緒に勝つ”って決めたんだよ。」
キング(頷きながら):
「私も、プレッシャーは“味方”だと思うようにしてた。
だって、緊張してるってことは、“本気”ってこと。
“本気でいたい自分”を大事にしてあげて。
あとね……“負けても自分を嫌いにならない”って約束してから、私は強くなったわ。」
クーベルタン(やさしく語りかけるように):
「少年よ、忘れないでください。
あなたが“本気で挑んでいる”という事実に、すでに価値があるのです。
結果に縛られすぎると、挑戦の本質が霞んでしまう。」
武蔵(静かに):
「心が乱れるのは当然。だが、“勝たねば”ではなく――“勝ちたい理由”を見つめよ。
その“核”が定まれば、他の雑念は斬れる。」
(高校生、目に涙を浮かべながら深く頭を下げる)
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質問者2:感情の制御で悩むスポーツマン
(次にマイクを受け取ったのは、ジャージ姿の青年。目には覚悟のような光)
青年(質問者2):
「僕は大学で柔道をしています。
自分では冷静に戦いたいと思ってるんですけど、
相手に押されると、つい感情的になってしまって――
怒りとか焦りとかで、頭が真っ白になる。
感情って、どう扱えばいいんでしょうか?」
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武蔵(即座に、静かに):
「感情とは、“風”のようなもの。
吹かれたままに動けば、型は崩れる。だが、風の“流れ”を読めば、それを“力”にも変えられる。」
アリ(笑いながら拳を握って):
「怒り? それ、使えるぜ。
俺はね、怒りを“燃料”にしてきた。
でも、“その怒りを、どこに向けるか”が一番大事なんだ。
相手にぶつけたら喧嘩だ。自分の拳に込めたら、勝負になる。」
キング:
「私は感情を否定しなかった。
怖い、悔しい、腹が立つ――それ、全部“自分の大切な反応”なのよ。
感情って、自分が何を大事にしてるかの“地図”なの。
読み解いてあげて。」
クーベルタン(静かに):
「“感情”を恥じる必要はありません。
それを制御しようとする意志こそが、あなたを成長させるのです。」
(青年、胸に手を当てながら深く頷く)
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締め:司会の言葉
あすか(観客の方を見て、優しく):
「ありがとうございました。
勝負の場で感じる重圧や感情――それはきっと、今ここにいる誰もが、一度は通ってきた“道”なんですね。
でも今日の対談者たちは、その道を“語れる言葉”に変えてくれました。」
(観客、大きな拍手)
あすか(微笑みつつ):
「さて――“問い”は、もう一つ残っています。
最後のラウンド、
“究極の勝負とは何か?”
――その言葉に、どんな答えが返ってくるのか。
どうぞ、このままお付き合いくださいませ。」
(舞台が静かに暗転。次なる戦いの幕がゆっくりと上がろうとしている)