女王陛下は復讐ざまあがよく分からない
女王陛下はチートな能力を持つ。
【スキル一覧】
・暗殺 SS
相手に気づかれず致命傷を与えるスキル。初回必中
・光学迷彩 SS
姿を隠すスキル。最長10時間継続、クールタイム10秒
・無限体力 SS
体力が常時回復し続け、疲労デバフがかからないスキル。最長10時間継続、クールタイム10秒
etc……
正直政治には使いにくいスキルだらけだが、女王は裏の顔として能力を利用している。
表では女王として君臨する傍ら、裏で桜のタトゥーを晒して天罰を下しているのだ。
この国の法律は貴族に甘いので、女王が代わりに義賊のフリをして断罪することで民の溜飲を下げている。
人は皆、女王を『神の抑止力』と呼んでいる。
ある男は虐待をしていた。
虐待で謹慎処分で終わったが、女王は裏で彼を男娼屋敷にぶちこんで、年期まで務めさせた。
女王はその後平民向けのスポーツ新聞を読む。
「なんて『神の抑止力』は甘いんだ。生きながらえさせるなんて、甘い!」
女王は頭を抱えた。
そうか。生きていたら甘いのか。
ばこばこにされて性病をうつされても、人生が破滅してもそれは甘いのか、生きていたら。
反省した。
そして次の悪役令嬢は処刑の末、首を市中引き回しの末、体を魔物の餌にした。
悪逆非道すぎて女王は一週間くらい病んだ。
悪役令嬢の青くなった首が忘れられない。血で汚れた魔物の口元が忘れられない。
そしてまた平民向けスポーツ新聞を読む。
「『神の抑止力』は甘すぎる。温情に溢れている。処刑された後に尊厳陵辱されても意味が無い」
これもダメなの!?!?!?!?
臣民の処刑願望は闇が深すぎる。かつて街に犯罪人を首まで埋めて置いて、隣に鋸を置いて「お好きにどうぞ」とする刑罰があったらしいけど、そんなもん誰がやるんだよと思ってたけど絶対やる!臣民、絶対やる!怖い!!
「だめよっ! 愛する臣民達を怖いだなんて思ってはならないわっ!」
ペチーン。
女王は反省した。少し自分の頬も叩いた。
愛する臣民のために自分は辛くともやるのが『神の抑止力』だ。
次に犯罪が決まった魅了魔法テロリスト令嬢は、臣民達が望むとおりに首まで埋めて、隣に「お好きにどうぞ」の鋸を置くことにした。怖すぎる。女王は『神の抑止力』でそんな状態を作ったのちたいそう震え上がった。
そしてまた、女王は平民向けスポーツ新聞を読む。
「体は結局綺麗なままなんでしょ? 首から上が酷い目にあっても意味が無いし」
「あああああああああああ」
「じょ、女王陛下ーッ! いきなり髪をかきむしりあそばれてーっ!!」
部屋に飛び込んできた従者に、女王は泣きついた。
「どうすればいいの!? 復讐とか報復とか好きな臣民感情を慰めるにはどうすればいいの!?」
「考えても仕方ありませんよ。セックスして忘れましょう」
「それもそうね」
女王は従者とソファにもつれ込んだ。
性欲を満たしたあとは、あたまがすっきりした。
「そうね、すっきりしたわ。さらなる酷くむごたらしい報復を考えるわ!『神の抑止力』として!」
机に向かったそのとき、バーン!と執務室の扉が開かれる。
「そこまでだ! 女王陛下、不貞の現行犯で逮捕する!」
「はわわ待って、私、流石に執務室で従者とアレしてるのは不適切かもしれないけれど、夫はいないし、生涯結婚はしないし」
「問答無用! 処女王だと謀った売女の言い訳は聞かぬ!」
「で、でもこれまでの女王もそういうの結構」
「言い訳までし始めた! これは司法の力だけでは臣民感情は収まらない! ひっとらえろ!」
「ええええええ」
女王は悲鳴を上げた。暴れた。
「助けて! 私が死んでしまったら『神の抑止力』が……っ!」
そのとき従者は、冷たい微笑みを浮かべて言った。
「あなたは手ぬるい。私が本物を見せて差し上げますよ」
「え」
従者の頭から角、尻から尻尾が生えてくる。
白目と黒目が反転し、真っ黒な眼でにやり、と従者は笑った。
◇◇◇◇◇◇
「なになに……? 女王陛下にたいして『神の抑止力』は甘すぎる……? は? あれで甘すぎるとは……人間の欲望は、底知れぬ物よ……くっくっく あくまあくまあくま」
明日は戴冠式。
次の国王にも、即位直後に桜のタトゥーが浮かぶはずだ。
最後のあくまの笑い声は誤字ではありません(くしゃみをしたら語尾にまものがつく魔物もいますし……)
もしよろしければブックマークや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価していただけるとすごく嬉しいです。
あと、2月末で第一部完結予定の長編も(これはハッピー)もよろしくお願いします。下にリンクあります。