桜・神楽VSかぐや①
色神学園旧校舎前――。
花子、貞子、月見の三者による戦いは熾烈を極めていた。しかし、三人は突如として感じた異常な気配に一斉に反応し、動きを止めた。即座に空を見上げ、迫り来る隕石を目にし、その威圧感に圧倒された。
「なっ!? あれは――!」花子は目を見開き、声を上げた。
「隕石!?」貞子も叫ぶ。
月見は一瞬だけ目を見開いたが、すぐに冷静さを取り戻し、呆れたように小さく息をつくと、静かに呟いた。
「派手にやり過ぎです、かぐや様……。あれでは、この学園はおろか、街全体が消し飛んでしまいます」
「さーちゃんの念力で、何とかできないの!?」花子は落ち着かない様子で問いかけた。
「あんな巨大な隕石、わたしにはとても無理です」貞子は戸惑いながら答えた。
夜空に輝く巨大な隕石。その圧倒的な光景に、誰もが言葉を失い、立ち尽くした。――ただ二人、桜と神楽を除いて。
色神学園に佇む『月姫竹取神社』上空――。
かぐやは、隕石を見上げる桜と神楽の様子を見つめ、優越の笑みを浮かべていた。
「ふふ……さあ、どうする?」かぐやは挑発的に呟いた。
桜と神楽は、容赦なく迫る巨大な隕石を前に一瞬驚愕し、その場に固まった。しかし、驚いている暇はない。二人は即座に気を引き締め、瞬時に動き出した。
「桜、魔力を溜めて! わたしが時間を稼ぐから!」
神楽は一声かけると、隕石に向かって飛んでいった。
「わかった!」
桜は深く息を吸い込み、杖を胸の前で構えた。魔力を練り上げ始め、その力が渦を巻き、空気が震える。桜色の光のオーラが彼女を包み込み、魔力の塊が徐々に膨れ上がっていく。
神楽はその姿を背に、空高く舞い上がり、隕石を鋭く見据えながら片手を掲げる。
「五重大結界!!!」
神楽が手を突き出すと、五つの巨大な四角い結界が連続して重なり、隕石に向かって急速に展開された。それぞれの結界が強固に隕石を迎え撃ち、神楽はそのすべての力を結界に注ぎ込む。
隕石が一つ目の結界に衝突した瞬間、ガラスの割れるような音とともに、その結界は瞬時に粉砕された。続けて、二つ目も砕け、三つ目の結界に迫る。
神楽は霊力を注ぎ込み、必死に結界を支え続ける。しかし、隕石の圧倒的な質量が、容赦なくそれを砕こうと迫ってくる。三つ目の結界も、破裂音を立てて崩れ落ちた。
「くっ……!」
神楽の額に汗が滲む。結界が圧倒的な力で押し潰される中、神楽は必死で耐え続けていた。結界が隕石にぶつかる度に、衝撃波が空間を震わせ、神楽の体はその圧力に押しつぶされそうになる。しかし、必死で霊力を込め続け、最後の一線を守ろうとする。
「……もう少し、もう少しだけ……!」
神楽の体が震え、苦悶の表情が浮かぶ。だが、結界はひび割れ、無慈悲に砕けていく。四つ目の結界も限界に達し、音を立てて崩れ落ちた。残るのは、五つ目の結界だけ――。
神楽は大きく息を吸い、最後の力を振り絞るように霊力を注ぎ込んだ。
隕石が五つ目の結界に直撃し、その瞬間、爆発的な衝撃が周囲に広がった。凄まじい風圧と熱が渦巻く中、神楽は結界を維持し続け、その執念で押し返そうとする。その瞳に、諦めは一切なかった。だが、結界の表面に大きな亀裂が走り、ついに限界が訪れた。大きな破裂音とともに粉々に砕け散り、完全に崩れ去った。
その衝撃で、神楽の体は弾かれたように吹き飛ばされる。その刹那、桜が入れ替わるように前に飛び出した。研ぎ澄まされた桜色のオーラが、炎のように激しく桜を包み込んでいた。
神楽は地面に激突しかけたが、寸前で桜の風魔法が彼女を包み込み、その衝撃をやさしく和らげた。ふわりと着地すると、すぐに視線を上げ、桜を見つめながら力強く言い放った。
「頼んだわよ、桜!」
その声を背に、桜は杖を強く握りしめ、空へと突き出した。杖の先端に集束した魔力が眩い光を放ち、膨大なエネルギーが溢れ出した。
「シヴァ!」
桜が力強く声を上げると、集束した魔力が一気に解放され、周囲の空気が震えた。白い光が爆発的に炸裂し、隕石に向かって突き進む。その衝撃波が隕石を包み込み、まるで星を粉砕するかのように、圧倒的な力で隕石を貫いた。
隕石は、光に包まれた瞬間、粉々に砕け散り、破片が熱せられ、空気中で蒸発していった。桜の全力の魔法が隕石を完全に粉砕し、空は静寂を取り戻した。
桜は疲れた表情でゆっくりと息をついた。
「ふぅ……」
神楽はすぐに桜の元へ飛び、二人は安堵の表情を浮かべ、軽いタッチを交わした。
しかし――。
「ほう、あれを凌いだか……」
かぐやは少し感心したように呟いた。そして、冷酷に言葉を続けた。
「さて……二個目はどうする、小娘?」
安心したのも束の間、桜と神楽は再び背筋が凍るようなただならぬ気配を察知し、即座に空を見上げた。猛烈な勢いで迫る二つ目の隕石を捉え、言葉を失った。その隕石は、一つ目の隕石よりも明らかに大きく、圧倒的な迫力を放っていた。
「なっ――!?」
桜が目を見開き、神楽が口を開く間もなく、二人の前にまたもや死をもたらすような危機が迫り、その表情に戸惑いの色が浮かんだ。
桜は即座に対抗策を考えた。
あれを破壊するには、魔力が全然足りない。溜める時間もないし、神楽もまだ回復しきってない。くっ……どうすれば……!?
桜は冷静に状況を分析したが、打開策が見つからず、切迫感がますます高まるばかりだった。顔に冷や汗が滲み、鼓動が速くなる。神楽もまた、桜と同じく、切羽詰まった様子で余裕がなかった。
二人が窮地に追い込まれ、絶望的な光景を前に困惑していると、突然、阿修羅の声が響き渡った。
「二人とも、今すぐ構えろ!」
その声に、桜と神楽は即座に反応した。振り返ると、阿修羅が猛スピードで大地を駆け抜け、桜たちの元に近づいてきていた。
「阿修羅!!」桜と神楽は声を揃えた。
「おれがあれをぶっ壊す!」
阿修羅は大胆に宣言し、力強く地面を蹴り上げ、猛烈な勢いで飛び上がった。隕石に向かって飛びながら、小さく呟く。
「身体、もってくれよ」
その声とともに、阿修羅は躊躇なく鬼神の力を解放する。身体から燃え上がる炎のようなオーラが溢れ出し、稲妻が体を包み込むように走り、バチバチと音を立てた。額には二本の角が鋭く伸び、圧倒的な鬼迫を放ちながら金棒『鬼丸』を構えて突撃した。
頼もしい仲間の登場により、桜と神楽は落ち着きを取り戻す。表情を引き締め、即座に構えた。桜は杖をしっかりと握りしめ、神楽は霊符を素早く取り出した。
「地獄の王・玖の裁き――」
阿修羅は低く呟き、手に力を込める。怒涛の勢いで隕石に突進し、叫んだ。
「都市壊滅!!!」
声とともに、阿修羅は全力で鬼丸を振り下ろした。鬼丸が隕石に衝突した瞬間、圧倒的なエネルギーが爆発し、空気が引き裂かれる音が響き渡る。隕石は一瞬で粉々に砕け散り、その破片が広範囲に飛び散った。
桜と神楽は即座に散らばった隕石の破片を処理し始めた。桜は杖を突き出し、光魔法で破片を次々と撃ち落とす。神楽は霊符をまき散らして、粉砕していった。すべてが破壊されると、まるで何事もなかったかのように、再び静寂が広がった。
息つく暇もなく、桜は周囲を見渡した。力尽き、元の姿に戻りながら落下する阿修羅に気づくと、急いで風魔法を展開し、彼の体を地面ギリギリで包み込むようにやさしく受け止めた。桜と神楽はすぐに阿修羅の元へ駆け寄り、彼の顔を覗き込んだ。阿修羅の目はすでに閉じており、呼吸も浅かった。体中に傷があり、阿修羅が無理をしていたのは、明らかだった。
「阿修羅……無理させてごめんね。助けてくれてありがとう」桜はやさしく声をかけた。
「あんたの死、絶対無駄にしないから!」神楽は冗談っぽく言った。
「勝手に殺すな!」阿修羅は上体を起こし、すぐにツッコんだが、全身に痛みが走り、表情を歪めて再び倒れ込んだ。
「これだけ元気があれば、大丈夫そうね」神楽は軽く言った。
「そうだね」桜も淡々と言った。
「お、お前ら……」阿修羅は弱々しい声で言った。
そのとき、和やかな雰囲気を切り裂くように、かぐやの不気味な笑い声が響き渡り、空気が一変した。
「ふふふ……」
桜と神楽は素早く視線を移し、かぐやを鋭く睨みつけた。
かぐやは扇子で阿修羅を指し示し、口を開いた。
「鬼の小僧……わらわはそなたを気に入った。新しい『ペット』として迎え入れてやろう」
予想外の提案に、阿修羅たちは驚きを隠せなかった。
「は……?」神楽は目を見開く。
「ふざけてんのか? そんな申し出、受け入れるわけねぇだろ!」阿修羅は怒りを込めて断った。
「ふふ……その反抗的な態度、調教し甲斐がありそうじゃ。わらわが直々に――」
かぐやは構わず言葉を続けていたが、突然、彼女の目の前で光弾が弾け飛んだ。言葉を止め、鋭い眼差しで見下ろす先に、桜の姿が映った。
「調子に乗るな、七代天使……お前なんかに、大切な仲間を渡すわけがないでしょ!」
桜は淡々と言ったが、その表情には静かな怒りが滲み出ていた。神楽も闘志に燃え、阿修羅は少し嬉しそうに照れていた。
桜は杖を構え、さらに大胆に言い放つ。
「お前はここで、わたしが倒す!」
その瞳には、揺るぎない決意が宿り、桜と神楽は強い目でかぐやを見据えた。
かぐやはわずかに表情を歪め、滲み出る怒りが隠せなかった。
「あまり図に乗るなよ、小娘……」
その言葉とともに、空気が重く沈み、じっと張りつめた静けさが周囲を包んでいく。あたりの風がピタリと止まり、無音の中、かぐやの体から一気に圧倒的な力が漲り始めた。
背中からは不規則に波打つような光が広がり、その光は次第に強さを増し、やがて大きな白い六枚の翼へと変貌した。その翼は、透明感のある白で、まるで天から降り注ぐ光そのもののように輝いた。
かぐやの頭上には、煌めく黄金色の天使の輪。それは、彼女の周囲に神々しい光を放ち、無限に広がるような圧倒的な威圧感を持って輝く。
かぐやの顔立ちは凛とし、優雅な美しさを際立たせ、その目には闇を貫くような鋭い光が宿った。さらに、透き通った美しい羽衣が身を包み、その一端は優雅に舞い上がり、かぐやの動きに合わせて揺れた。
桜たちは、あまりの眩しさに手で光を遮り、目を背けた。
かぐやは冷笑を浮かべ、神聖な威厳を放ちながら、冷徹に言い放った。
「これが、わらわの真の姿じゃ……ふふ、あまりにも美しすぎて、見つめることすら叶わぬか」
桜と神楽はその姿を見上げ、思わず体が震えた。かぐやから放たれる神々しい圧力に、一瞬、全身が凍りつきそうになるが、すぐに目を合わせ、互いに気を引き締めた。対抗して力を解放し、オーラが二人の体から燃え上がるように溢れ出す。
三者の視線が交わるたびに火花が散り、壮絶な戦いの幕が、再び開こうとしていた。
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