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アリスVS庫持皇子

 普段は多くの生徒たちが行き交う憩いの場所――色神学園の公園で、アリス・キャメロットと庫持皇子が激しい戦闘を繰り広げていた。

 公園に響き渡る剣戟の音。アリスは冷徹な目で、三体の騎士人形を次々と動かしていく。彼女の操るランスロット、モードレッド、ガウェインは、まるで生きているかのように、無駄のない動きで庫持に迫る。

まずはランスロットが前に出る。彼女の長剣『アロンダイト』が空気を切り裂く音を立てながら、鋭い一閃を庫持に向かって振り下ろされる。庫持は反射的に笏を構え、ランスロットの剣を受け止めたが、その一撃は予想以上の重さで、笏が鈍く震え、彼は数歩後退した。

次にモードレッドが動き出す。脚に力を込め、一瞬で距離を詰め、鋭く飛び込んだ。モードレッドの剣『クラレント』が横薙ぎに振られ、今度は庫持の脇腹を狙う。庫持はすぐに笏を横に回し、刃を受け止める。しかし、その衝撃で体勢が崩れ、すぐにその場を退く。

ガウェインは、その瞬間を見逃さなかった。背後から迫り、『ガラティン』を振り上げる。その剣は、まるで雷鳴のように鋭く切り込んだ。庫持は必死に笏でガウェインの攻撃を受け止めるものの、無情にも、力強い攻撃が一気に集中してくる。ガウェインの攻撃が笏の上に重く打ち込まれ、その衝撃で庫持の体は後ろへ吹き飛ばされた。

「今デス!」

アリスの冷静な声が、次の指令を下す。

ランスロット、モードレッド、ガウェインが一斉に動き出す。三体の騎士は攻撃の手を緩めない。むしろ、ますますその動きが緻密に、そして迅速に変化していった。

 庫持は笏を両手で握り、正面から攻撃を受ける。彼の動きは必死で、三人の猛攻を紙一重でなんとか耐え抜いていた。しかし、次第に動きが遅れ、体に傷が刻まれていく。ランスロットの一撃が彼の肩をかすめ、モードレッドの剣が脇腹に、ガウェインの剣が脚をかすった。

 アリスはその様子を鋭く見つめ、庫持の動きにわずかな違和感を覚えた。何かを隠しているかのような、不自然さを感じる。浅い傷は負いつつも、決して深い傷を受けない庫持は薄気味悪さが漂っていた。さらに、庫持の表情には、時折冷徹な余裕が感じられる瞬間があった。

アリスは警戒しつつも、冷静に攻撃を畳みかける。ランスロットは斜めから、モードレッドは直線的に、そしてガウェインは上から、と三方向から同時に襲いかかった。

三人の斬撃が一斉に迫ったその瞬間、庫持の目が鋭く光り、何かが起こる予兆を示すかのようだった。突然、庫持の体内から凄まじい力が噴き出し、眩い光柱となって空を突き抜け、周囲の空気を震わせた。凄まじい衝撃が広がり、三人の騎士たちは後方へ吹き飛ばされ、空中で一回転してから、軽やかに着地した。

 庫持の頭上には天使の輪が禍々しく浮かび上がり、背中には四つの白い翼が大きく広がる。やがて、天に昇る光が徐々に庫持の元へ収束すると、彼は不気味な笑みを浮かべ、アリスたちを見据えた。

 モードレッドは興奮気味に声を上げた。

「へっ! やっと本気になりやがったか!」

 ガウェインは少し呆れたように言った。

「喜んでいる場合じゃないですよ、モードレッド」

 ランスロットは引き気味に呟いた。

「見た目が、ちょっと不気味でキモい」

 アリスは冷静に言った。

「ランちゃん、ウェイちゃん、モーちゃん……あいつ、きっとまだ何か隠してる。油断しないでネ」

 その声に、三人は表情を引き締め、剣を構えた。

 緊張感が漂い、周囲が静寂に包まれる。アリスが微かに手を動かしたその瞬間、沈黙を破るように、三人の騎士たちが一斉に動いた。庫持も素早く笏を構え、迎え撃つ。再び熾烈な戦いが始まった。

 ランスロットとガウェインは左右から挟撃し、鋭い斬撃を繰り出す。モードレッドは正面から豪快に斬りつけた。庫持はその猛攻を笏で受け止めながらも、次第に後退せざるを得なくなっていた。

「おかしいデス」

アリスは冷徹な眼差しで庫持を見据えながら呟いた。庫持の動きには、明らかな違和感があった。力を解放したはずなのに、その戦闘能力はほとんど変化していない。そのことに、ランスロットたちもすぐに気づいた。

「こいつ、全然強くなってない!?」ランスロットは自信なさそうに言った。

「そのようですね。何か裏があるのかもしれません」ガウェインは冷静に言った。

「そんなの関係ねえ! ただ叩っ切るだけだ!」モードレッドは強気に言い放った。

 ランスロットとガウェインは警戒しつつ、モードレッドは大胆に猛攻を続け、庫持を容赦なく追い詰めた。庫持は一切の反撃をせず、防戦一方に回るばかり。だが、どこか冷静で、まるで自分が不利だとは思っていないような様子だった。そして、予想外の動きが起きた。

 庫持は突然、踵を返し、敵に背を向けたまま全力で駆け出した。アリスたちは一瞬、驚きの表情を浮かべた。突然の逃走に、誰もが目を見開く。

「――待ちやがれ!」

 モードレッドが真っ先に追いかけ、すぐあとにランスロットとガウェイン、そしてアリスも続いた。後を追いながらアリスは三人の騎士を動かし、ランスロット、ガウェイン、モードレッドが斬撃を飛ばして攻撃を放つ。しかし、庫持はそれを軽快に躱しつつ、足を止めず走り続けた。

 モードレッドは苛立ちを浮かべながら言った。

「あの野郎、どこまで逃げる気だ!?」

 ガウェインはふと疑問を投げかける。

「……本当に逃げているだけでしょうか?」

 ランスロットはすぐに反応し、疑問の色を浮かべながら言った。

「どういうこと?」

 アリスは慎重に分析し、冷静に呟いた。

「……どこかに誘い出そうとしている!?」

 その言葉に、三人の騎士たちははっとした。ガウェインが低く呟く。

「深追いは、危険かもしれませんね」

 四人はより一層気を引き締め、庫持の後を追い続けた。やがて、庫持の向かう先に、木々が生い茂るエリアが現れた。

それを見て、モードレッドは確信したように声を上げた。

「わかった! あそこにおびき出して、隠れながら戦うつもりだな! なんてせこい奴だ!」

 モードレッドの推測に、アリスたちもほとんど賛同した。

 しかし――。

庫持は足を踏み入れると、身を潜めるわけでもなく、むしろ木々の間を疾風のごとく駆け抜けながら、枝を折って集め始めた。

 予想が外れ、モードレッドは顔を赤く染め、不満げに呟いた。

「なんだ、隠れるわけじゃねぇのか……」

 恥ずかしそうにするモードレッドに、ランスロットは明るく声をかけた。

「ドンマイ!」

ガウェインもすかさずフォローし、やさしく言った。

「気にすることありませんよ、モードレッド。あなたの予想は、決して悪くありませんでした」

 モードレッドはさらに顔を赤らめ、声を荒げた。

「うるせえ!」

 一方、アリスは庫持の動きをじっと見据え、行動の意図を読み取ろうとした。折られた木の枝を注意深く見つめ、罠が仕掛けられていないか、しっかりと見極める。

「どの枝にも天力の痕跡はないデス。みんな、このまま突っ切りマスよ!」

 その声に、三人の騎士たちはキリっとした表情で頷き、アリスたちは躊躇わず林地に突入した。一直線に駆け抜ける足音が響き、次第に距離を詰めていく。

だが、庫持は林地エリアを突き抜け、芝生広場に出た。そこで立ち止まり、ゆっくりと振り返る。アリスたちが追いつくと、不気味に笑いながら呟いた。

「さあ、これからが本当の戦いだ」

 庫持が手を突き出すと、その手のひらに持っていた木の枝が、まるで生命を持っているかのように反応した。枝がわずかに震え、ひときわ強い光を放ち始める。それは次第に膨らみ、枝全体が歪みながら変形を始めた。まるで枝が自らの形を再構築するかのように、複雑なうねりを見せる。

 アリスたちは反射的に身構え、警戒する。

「なんだ、あれは!?」

 モードレッドが驚きの声を上げた。

最初はただの枝だったその物体が、やがて屈曲し、一つひとつの節が意志を持ったかのように細かく変形していく。枝が細かく分かれ、まるで骨のように曲がり、節が肉体を形作るかのように動き始めた。枝の先端からは次第に肩、腕、そして体幹が形成され、まるでランスロットそのものが枝の中から現れるかのように、徐々に立ち上がっていく。

その不気味な光景に、アリスたちは息をのみ、目を見開いた。

「あれは――!」ガウェインが呟き、「まさか!?」とランスロットが言った。

 その姿が完全に形成されると、枝から作り出されたランスロットは、まるで命を吹き込まれたかのように動き出した。見た目は本物と瓜二つで、その存在感も大差がなかった。ただし、表情が乏しく、感情もなさそうだった。

「ランちゃんの……コピー……!?」とアリスが驚きの声を上げた。

 その後、庫持は不敵な笑みを浮かべたまま、両手に二本の木の枝を握りしめた。次の瞬間、その枝が変形し始め、次第にガウェインとモードレッドそっくりの姿が出来上がっていった。光を放ちながら、瞬く間に体を成し、二人のコピー体は鋭い目つきとともに立ち上がる。その佇まいと気配は、まさに本物そのものだった。

「どうだ? これが、麻呂の新しい部下たちだ!」

 彼は手を広げ、三体のコピー騎士たちを誇らしげに見せつけた。それに応じるように、コピー体たちは庫持の前で一斉に剣を構え、ポーズを決めた。

「これが、お前の能力デスか……!」

 アリスはその光景に胸の内で激しい怒りが湧き上がるのを感じたが、表情を崩さず冷静さを保った。大切な仲間の姿を模倣され、さらにそれを「部下」として扱われることに対する怒りが込み上げていた。

「チッ、おれの姿を勝手に真似しやがって! 気味が悪いぜ」モードレッドは不快そうに言った。

「同感です、とてもいい趣味とは言えませんね」ガウェインは即座に賛同した。

「変態……」ランスロットは軽蔑の眼差しを向け、短く呟いた。

 庫持は冷笑を浮かべながら、自信満々に言い放った。

「こいつらは、貴様の陳腐な傀儡を模倣して作り上げた。見た目だけではない。パワー、スピード、さらには戦闘スタイルまでもが、完璧にコピーされている。その強さは、まさに本物そのもの!」

 モードレッドは挑発的に言い返した。

「へっ! おれたちが、偽物なんかに負けるわけねぇだろ!」

 その言葉に、ランスロットとガウェインも即座に頷いた。

 庫持は余裕な態度を崩さず、冷徹に言った。

「なら、試してみるか?」

 視線を落とし、コピー体を見渡しながら静かに頷いた。

三体のコピー体は無言で頷き返し、同時に本物たちに向かって突撃した。それぞれ、自身の本物と剣を交え、火花を散らしながら戦う。その動きは、まるで本物が憑依したかのように、まったく同じ戦い方だった。

ランスロットのコピーは、まるで本物の動きそのままに、鋭い一撃を繰り出してきた。ランスロットはその攻撃を寸前で躱し、素早く反撃の斬撃を放つが、コピーは彼女を真似るかのように寸分違わぬタイミングで防御し、再び攻撃を繰り出した。

「くっ……!」

 ランスロットは息を荒げながらも、コピーの攻撃を切り返す。

ガウェインのコピーも、本物の攻撃の流れをすべて模倣し、次々と剣を打ち返してきた。ガウェインはその速さに一瞬怯みかけたが、すぐに立て直し、攻撃を躱しながら反撃を繰り出す。

「なかなかやりますね!」

 ガウェインは落ち着いた声で呟くが、少しばかりの焦りを感じていた。

モードレッドは、コピー体の猛攻に少し困惑しつつも、豪快に剣を振るった。

「これなら、どうだ!」

コピー体はモードレッドの動きを読んでいたかのように跳躍し、その一撃を躱す。即座に剣を振り上げると、力強く斬撃を放った。モードレッドはその攻撃を正面から受け止めるも、その力の衝撃に一瞬、驚きの表情を浮かべた。

「この野郎……!」

 モードレッドたちは予想以上に苦戦し、すぐに突破口を見つけることができなかった。

 本物と偽物が拮抗した戦闘が続く中、アリスは庫持の言葉が真実であることを認めざるを得なかった。三人の騎士たちがどんなに攻め込んでも、コピー体たちは同等の力で対抗してくる。悔しさを感じながらも、アリスは冷静に次の手を考えた。

このまま戦闘が続けば、消耗戦になり、いずれ魔力が尽きてしまいマス。そうなる前に、早く本体を仕留めないと!

アリスは状況を見極め、素早く庫持に視線を向けた。

庫持はコピーたちの動きを見守ったあと、満足げな笑みを浮かべ、ゆっくりとアリスに視線を移した。視線が交わると、冷酷に告げた。

「さて、目障りな傀儡どもは完全に抑えた。これでようやく、邪魔が入らずに貴様に近づける」

 ゆっくりと歩を進めながら笏を構え、アリスに迫っていく。

「傀儡を操るのに必死で、動くことすらできぬか。ほほほ、滑稽だな」

 さらに挑発的に言い放つ。

「心配するな。苦しむ暇もなく、一瞬で葬ってやる!」

 アリスは動じることなく、鋭く煽り返した。

「奇遇デスね。ワタシもちょうど、お前の仕留め方を考えていたところデス」

 額に冷や汗が滲み、表情には緊張と決意が入り混じった。

 庫持は鋭い眼差しでアリスを見据えながら、前進し続ける。

「おほほ……まだそんな虚勢を張れるのか? ……麻呂は知っているぞ。傀儡師は本体が弱点なんだろ?」

アリスはその場に佇み、口を閉ざしてじっと身構えた。何も行動はしない。ただ、緊張した面持ちで庫持を引き寄せ、ギリギリまで間合いを詰めさせていた。

もう少し……あと少し、あの位置まで引き寄せれば……!

正確に相手の位置を見極め、絶好の機会を黙って待ち続けた。

庫持は歩みを止めず、どこか余裕を感じさせながら、徐々に距離を詰めていく。

「ほほほ、図星か……」

その表情は、勝利を疑わない自信に満ちていた。

庫持がアリスに近づいていくのを見て、ランスロット、ガウェイン、モードレッドの三人は次第に焦りを感じ始めた。我先にとアリスを助けに向かおうとしたが、その動きはすぐにコピー体たちに阻まれた。

「てめぇ、そこをどきやがれ!」

モードレッドの苛立った声とともに、剣の衝突音が無情に響き渡る。ランスロットとガウェインも焦燥感に駆られ、三人の動きは精細を欠いた。

コピーたちは無表情のまま、淡々と三人の前に立ちはだかり、絶対にアリスの元へ向かわせないよう、その場から動かさないようにしていた。

 庫持はその様子を一瞥し、さらに笑みを深め、興奮気味に言った。

「おほほほほ……! どうだ? 貴様の操る雑魚どもと違って、麻呂の部下は優秀だろう? たとえ偽物でも、本物に勝ることもあるんだよ! そう、あの“蓬莱の木の枝”のように……!」

 アリスは怒りが頂点に達し、呼吸が乱れそうになるのを必死に抑え込んだ。冷静さを保ち、ギリギリのところで耐え抜く。一歩また一歩と迫ってくる庫持を鋭く睨みつけ、その瞬間を待ち続けた。

そして、ついに――庫持が間合いに足を踏み入れた瞬間、アリスは指をわずかに曲げた。その動きの直後、林の中が一瞬煌めき、次の瞬間、光の矢が閃光のように庫持に向かって飛んできた。まるで一条の雷光のように、その矢は驚異的な速度で庫持に迫る。それは、以前から林の中に隠れていた騎士人形――トリスタンの放った一撃だった。

少し前、アリスは林の中を駆け抜けていたとき、庫持に気づかれないようそっと腰のポーチを開けた。その中からトリスタンが勢いよく飛び出し、木の枝に着地した。アリスはそのままトリスタンを木の上で待機させていたのだ。

トリスタンは林の中に身を潜め、庫持を射止める瞬間を静かに待っていた。そして、アリスの合図を受け取り、光の矢『フェイルノート』を放った。

庫持は目の前のアリスを見据え、死角から迫る光の矢にまだ気づいていない。光の矢はそのまま庫持を貫くかに見えた。

しかし――。

突然、三体のコピー体はその気配を感じ取り、一斉に動いた。一瞬のうちに矢の軌道上に割って入り、自らが盾となって庫持を守った。

「なに――!?」

庫持はようやく状況に気づき、素早く体を捻じる。だが、振り向く前に矢が直撃し、爆発が起こった。猛烈な音とともに、煙が一面を覆い、辺りの視界を奪う。

煙がゆっくりと晴れていく。その中から、庫持の姿が浮かび上がった。モードレッドとガウェインのコピー体は完全に消え去っており、残ったのはランスロットのコピー体のみだった。だが、その姿はすでにボロボロで、地面に倒れていた。

トリスタンは悔しそうに呟いた。

「くっ……外した!」

 すぐに矢をつがえ。庫持を狙いながら次の合図に備えた。

庫持は咳払いしながら、軽く体を起こした。大きな傷はなく、ただのかすり傷が数か所ついている程度だったが、その表情は激しく歪み、怒りがその目に滲み出ていた。

「ちっ……!」

 倒れたランスロットを睨みつけ、その身体に足を乗せると、無慈悲に踏みつけた。

「この……役立たずが……! もっと早く気づかなかったのか!?」

 罵声を浴びせながら、さらに力を込めて無情に踏みつけた。

「この……! この……!」

 その光景に、モードレッドは一歩踏み出し、憤怒を込めて叫んだ。

「てめぇ、何してやがる!?」

 ガウェインは目を見開き、口に手を当てて言った。

「酷い!」

 ランスロットは黙って見守っていたが、その眼差しは鋭く、拳を強く握りしめ、震えるような怒りを滲ませていた。

 アリスはランスロットに視線を送り、心配そうに呟いた。

「ランちゃん……」

ランスロットのコピー体は、無表情のまま耐え続けていたが、やがて体が崩れ、元の木片へと戻っていった。細かい木片が散らばり、風に吹かれると、その姿は儚く消え去った。

庫持は満足げに息をついたあと、すっきり怒りが発散された様子でアリスたちに視線を向け、落ち着いた口調で言った。

「貴様の操る傀儡が三匹だけだと思い込んで、もう一匹の存在に気づかぬとは……少し油断し過ぎたようだ」

 反省しつつ、すぐに気を取り直して、冷静に問いかける。

「……貴様、あと何体操れるんだ? 一体か? 二体か? それとも、指の数だけか?」

 アリスは答えず、口を閉ざした。

 庫持は笑みを浮かべ、言葉を続けた。

「まあいい。たとえ貴様が十体操れたとしても、もはや麻呂には勝てぬ。惜しかったな。今の一撃が、麻呂を倒す最後のチャンスだった。貴様はその機を逃したのだ!」

 辛辣に言い放つ庫持に、モードレッドは口元に鋭い笑みを浮かべ、挑発的に言い返した。

「へっ! てめぇ、今の状況がわかってねぇのか? 偽物は全部消し飛んだんだぞ! もう、お前を護る奴はどこにもいねぇ! 今度こそ、おれがぶった斬ってやる!」

 モードレッドが剣を構えると、ランスロットとガウェインも攻撃態勢を取り、トリスタンは狙いを定めていつでも矢を放てるように備えた。

 殺気が漂う中、庫持は動揺することなく、むしろ不遜な笑みを浮かべた。

「ほほ……それは不可能だ」

 そう呟き、備えていた木の枝二十本を両手いっぱいに握りしめ、見せびらかした。

 アリスは目を見開いて呟く。

「まさか――!?」

次の瞬間、庫持が握りしめた木の枝が光を放ち、変形を始めた。光が溢れる中、新たなコピー体が次々と現れ、瞬く間に形を作り上げていく。しかも、今回はその数をさらに増やし、ランスロット、ガウェイン、モードレッドのコピー体が五体ずつ出来上がっていった。

庫持は追い打ちをかけるように言い放った。

「麻呂の『天力』が尽きぬ限り、複製は何体でも作り出せる」

「なん……だと……!?」モードレッドは言葉を失った。

「そんなことが……!」ガウェインも信じられない様子で呟く。

「さらに――」と呟き、庫持は畳みかけるように動いた。トリスタンから受けた傷にそっと触れ、その手で残り五本の枝を握りしめる。枝が変化し始めると、その五本はなんと、次第にトリスタンの姿を作り上げていった。

その光景に、トリスタンは目を見開き、構えていた手をゆっくりと下ろした。

ランスロットは驚きの声を上げる。

「トリスタンの姿は、まだ一度も見られていないはず……! なのに、どうして!?」

アリスはこれまでの庫持の動きを思い出し、一つの推論を導き出した。

「まさか、受けた傷から魔力を読み取って、コピーを作り出しているのデスか?」

「ご名答!」

 庫持は満足げに答え、得意げに自分の能力を語り始めた。

「麻呂の能力は、相手から受けた傷に残るわずかな力の流れを感じ取り、その者を完璧に複製する。視界に捉えるか否かは関係ない。一度でも攻撃を受ければ、それで十分だ」

 その間、トリスタンのコピー体が完成し、無表情で身軽に動き出すと、他のコピーたちとともに庫持を囲むように立った。

 庫持は目の前のアリスたちに挑発的な視線を向けて言い放った。

「たとえ貴様がどれほどの手札を残していようと、麻呂に勝つことはできぬ。ほほほ……これが麻呂の力だ」

その声には、余裕と誇りが滲み出ていた。手を大きく広げ、冷酷に告げる。

「さあ、ここからが、一方的な蹂躙の始まりだ!」

 それを合図に、コピーたちは素早く五チームに分かれた。一チームが庫持の元に残り、四チームは一斉に散開して、各チームが本物に向かって突撃した。

 一対四の不利な状況に、モードレッドは声を荒げた。

「クソ野郎が!」

 四人の騎士たちは、次々と迫るコピーたちを迎え撃ち、激しい戦闘が始まった。

周囲で死闘が繰り広げられる中、庫持は不敵な笑みを浮かべ、アリスを見据える。

「さて、麻呂たちも始めようか」

 四体のコピーが一斉に構え、戦闘に備えた。

 アリスは素早く腰のポーチに手を伸ばすと、口を開け、そこから新たに二体の騎士人形と一匹の獅子人形――ケイとユーウェイン&ローディーヌが飛び出してきた。

ケイは瞬時に剣を抜き、ユーウェインはローディーヌの背中に跨り、二人と一匹がアリスの前に立ち上がった。

庫持は落ち着いた声で、少し感心したように言った。

「やはり、まだ隠していたのか。今度は、剣士と……猛獣使いか」

 ローディーヌは猛獣のように低い唸り声を上げ、鋭い殺気を放ちながら敵を威嚇し、ユーウェインは背中をやさしく撫でつつ、「どうどう……」となだめた。

 ケイはコピーたちを見渡し、引き気味に呟いた。

「完璧な複製体……目の前にすると、少し不気味ね」

「Very Shit! ほんと、最低な能力!」

ユーウェインが不快そうに言うと、ローディーヌも「ガウッ!」と吠えた。

 庫持は高笑いしながら言い放った。

「おほほほほ……! 貴様らごときに、麻呂の高尚さがわかるはずないだろ!」

 そのとき、アリスの怒気を含んだ声が響いた。

「全然、完璧なんかじゃありまセン!」

ケイ、ユーウェイン、ローディーヌ、そして庫持の視線が一斉にアリスに集中した。

「なんだと……?」庫持は眉をひそめ、低い声で呟いた。

アリスはさらに語気を強めて言った。

「偽物には、“魂”が宿ってないデス! そんな奴らに、ワタシの仲間は絶対に負けない!」

 その声には、仲間を信じる強い意志が滲んでいた。

「その通りね!」とケイは即答し、ユーウェインは「うん!」、ローディーヌも「ガウ!」と頷いた。

 アリスの声は、戦闘中のランスロット、ガウェイン、モードレッドたちにも響いた。三人はわずかに微笑み、静かに闘志を燃やした。

 庫持は一瞬、不機嫌な表情を浮かべたが、すぐに不敵な笑みに戻り、冷酷に告げた。

「そうか……ならば、試してみろ!」

 その声に応じて、コピーたちが一斉に動き出し、アリスたちに向かって突撃した。

「あの天使を攻撃すると複製されちゃうから、ケイちゃんたちは、コピーの相手をお願いしマス」アリスは冷静に指示を出した。

「了解!」とケイたちが頷くと、アリスは少し申し訳なさそうに言った。

「……ゴメンね。戦いづらいかもしれないデスけど、頼みマス!」

「任せて! アリスには、指一本触れさせないわ!」ケイは張り切って即答した。

「わたしたちが、全員蹴散らしてやる! ね、ローディーヌ!」

 ユーウェインが意気込んで言うと、ローディーヌは「ガウッ!」と答えた。

 アリスたちの士気は上がり、瞳には決して諦めない光が宿った。その眼差しで敵を見据え、すぐに迎撃態勢を整えた。

 先陣を切って飛び込んできたのは、モードレッドのコピーだった。ケイが冷静に迎え撃つ。ケイとモードレッドのコピーが剣をぶつけ合うと、衝撃とともに金属音が響き渡った。ケイが力強く剣を振り払うと、すぐに横からランスロットのコピーが迫り、剣を横一閃する。ケイは素早く受け止めたが、その隙にガウェインのコピーが剣を振り上げ、容赦なく迫り来る。

しかし、ユーウェイン&ローディーヌが立ち塞がり、前足を振り上げて強烈な一撃を繰り出す。その一撃が躱された瞬間、ユーウェインたちを狙った光の矢が閃光のように飛んできた。

「ローディーヌ!」

ユーウェインが一声かけると、ローディーヌは素早く跳躍し、光の矢を華麗に躱した。着地した瞬間、即座にトリスタンのコピーを見据え、すぐに突進して距離を詰めた。ユーウェイン&ローディーヌは、弾丸のように飛んでくる光の矢を俊敏に躱し、間合いに入ると、鋭利な爪で一閃した。だが、寸前で躱され、爪は空を切った。その直後、背後からモードレッドのコピーが剣を振りかざして迫ってきた。

 ユーウェインはその気配を感じ取ると、反射的に声を上げた。

「後ろから来るよ!」

 ローディーヌは瞬時に反応し、素早く振り向くと、強力な前足で一撃を繰り出した。爪と剣が衝突し、火花が散った。

戦場に響き渡るのは、剣の衝突音とともに繰り広げられる壮絶な戦闘の音だった。その中でケイとユーウェインは止まることなく戦い続けた。ランスロット、ガウェイン、モードレッド、トリスタンたちも、圧倒的な劣勢の中、粘り強く戦っていた。そして、騎士たちを巧みに動かすアリスもまた、必死に立ち向かっていた。

 アリスは敵から集中して狙わないよう、絶えず戦場を動き回った。容赦なく迫るコピーの攻撃を紙一重で躱しながら、戦場全体を見渡し、状況を冷静に把握して、必死に耐え続けた。魔力が消耗し、顔には疲労の色が浮かび、身体中に傷が刻まれていく。それでも屈することなく、不利な状況を打開しようとしていた。好都合なことに、庫持は未だ自ら動こうとはせず、上機嫌そうに見守っていた。

「おほほほほ……実に愉快だ! やはり、戦いはこうでなくては! 麻呂の作り出した複製体が、本物を凌駕する。これこそが麻呂の真髄……かぐや様に認められた最強の力だ!」

 庫持が豪語していたその隙に、アリスは彼を仕留めるための作戦を練った。

 中途半端な攻撃であいつを傷つけてしまえば、またコピーを作られていまいマス。でも、攻撃しなければ、永遠にあいつを倒すことができません。ならば、残る手段は一つ。必殺の一撃で、仕留めるしかありません!

 アリスは冷静に見極め、固く決意し、腰のポーチに視線を向けた。

「それはあなたに託しマス。アーちゃん」

 小さく呟き、表情を引き締め、庫持に視線を戻した。

その様子を見て、庫持は嘲笑を浮かべた。

「おほほ! 何か企んでいるようだが、もう遅い」

 庫持が無慈悲に呟いたその瞬間、アリスの背筋が凍るような気配が背後から迫った。突然、アリスの背後にランスロットのコピーが現れる。そのコピー体は、庫持がこっそりと新たに作り出したものだった。戦闘に集中していたアリスは、それに気づかず、コピー体に背後を取られてしまった。

ランスロットのコピーは剣を突き出し、息をもつかせぬ速さでアリスの体を貫こうと迫ってきた。

アリスは素早く振り向き、ひと突きを回避しようと試みるが、コピーの動きが速すぎて追いつけなかった。

しまった……!

 コピー体の剣先がアリスの胸を貫きかけたその瞬間、突如、二人の間に本物のランスロットが現れた。コピーの剣はそのままランスロットの体に深く突き刺さった。

「ランちゃん!」アリスの戸惑いの声が響いた。

 その衝撃的な光景に、他の騎士たち全員が目を見開き、一瞬凍りついたように動きが鈍った。しかし、すぐに目の前の敵の攻撃が迫り、騎士たちは心配する暇もなく、戦闘を続けた。

「ガハッ!」

 ランスロットは口から血を吐き、苦しそうな表情を浮かべながらも、鋭い眼差しでコピーを睨みつける。体に刺さった剣を左手で掴み、相手を逃がさないようにすると、右手に握りしめた『アロンダイト』を一閃。一瞬でコピー体を斬り裂いた。コピーが木片に戻ると、体に突き刺さった剣も細い木の枝に姿を変えた。木の枝を体から引き抜くと、ランスロットは力尽き、崩れ落ちた。

 アリスは両手でそっと彼女を包み込むようにやさしく受け止めた。目に涙を浮かべ、心配そうに見つめる。

「ランちゃん!」

 ランスロットは消え入りそうな意識の中、小さく微笑み、微かな声で呟いた。

「あ、主を護れて……本当に良かった。あとは……みんなに……託す……」

 そう告げると、ランスロットは静かに意識を失った。

 その様子を見て、庫持は小馬鹿にして言った。

「おほほほほ……身を挺して主君を護るとは、素晴らしい忠義ではないか!」

その挑発的な声は、アリスの耳に入らなかった。

アリスはランスロットを抱えたまま、目を閉じ、静かに涙を堪えた。彼女の忠義が胸に響き、深い悲しみとともにその想いを受け止めていた。やがてそっと顔を離し、柔らかい声で呟いた。

「ランちゃん、護ってくれてありがとう」

 キリっとした表情を浮かべ、たくましい声で言った。

「あとは……任せて!」

 ランスロットをポーチに戻し、強い眼差しで庫持を見据えた。

 庫持は傲慢な笑みを浮かべて言った。

「この状況でまだ諦めないとは。劣等種族は本当に馬鹿で、愚かだな! いいだろう、ちょうどこの戦いにも飽きてきたところだ。そろそろ、決着をつけよう」

 庫持が告げると、二十体のコピーが一斉に退き、彼の周囲に戻ってきた。

騎士たちも、すかさずアリスの元へ集まり、両陣営が対峙した。

 次の瞬間、コピー体全員が一斉に武器を構え、膨大なエネルギーを集め始めた。その力は次第に膨れ上がり、空気を震わせ、場のすべてを圧倒し始めた。

「あいつら、まさか同時に技を放つつもりか!?」モードレッドは驚きの声で言った。

「同じ力を持っているから、その威力は二十倍です……!」ガウェインは即座に分析した。

「HOLY、SHIT! そんなのあり得ない!」ユーウェインは困惑し、ローディーヌも「クゥ~ン」と不安げに鳴いた。

「このままじゃまずい! アリス、早くここから離れて!」ケイは戸惑いつつも、冷静に言った。

 しかし、アリスは真剣な表情を浮かべたまま、その場から一歩も動かなかった。

「マスター……?」トリスタンが心配そうに呟いた。

 間もなく、アリスは冷徹に答えた。

「……いや、逃げたところで、状況は何も変わりまセン。今ここで、迎え撃ちマス!」

 騎士たちは目を見開き、まるで時間が止まったかのように固まった。一瞬の静寂後、全員がやる気に満ちた表情を浮かべた。

「そう来なくっちゃな! ランスロットの分まで、きっちりやり返せねぇと、おれの気が収まらねぇ!」モードレッドは意気込んで言った。

「わたしも同意見です」ガウェインは即座に賛同し、他の騎士たちも力強く頷いた。

 全員が意思を固め、決心した。アリスが両手を広げて構えると、騎士たちは一斉に武器を構え、魔力を溜め始めた。モードレッド、ガウェイン、ケイは剣を振り上げ、ユーウェインも背中の乾坤圏を抜き、トリスタンは矢をつがえた。爆発的に魔力が増大し、地面が激しく揺れる。

 庫持は大きな声で笑いながら言い放った。

「おほほほほ! その程度の力で、麻呂たちに敵うはずがないだろう!」

 その煽りに構うことなく、騎士たちは魔力を集め続けた。そして、両陣営が同時に準備を整えた。

「やれ!」

庫持は冷淡に告げると、二十体のコピーが無言のまま一斉に技を放ち、空気が一瞬で震えた。怒涛のエネルギーが奔流となり、猛然とアリスたちに向かって押し寄せる。その威力は圧倒的で、地面を砕きながら迫っていった。

ほぼ同時、五人の騎士たちは声を揃え、一斉に必殺技を放った。

「クインテット・キャノン!!!!!」

 巨大な光の斬撃が、凄まじい勢いで地面を切り裂きながら飛んでいった。

 二つの強大なエネルギーが衝突すると、猛烈な衝撃波が広がり、周囲の木々を激しく揺らした。少しの間、拮抗してぶつかり合っていたが、やはり、五人の合体技では、二十体のコピー体が放った力の前には圧倒的に及ばなかった。騎士たちの合体技は打ち消され、まったく威力が弱まらない膨大なエネルギーの塊が、アリスたちに襲いかかった。

「みんな、下がって!」

 アリスが叫び、全員が一斉にその場を飛び退く。その瞬間、アリスのポーチから二つの影が飛び出す。ひとつは白銀の盾を持つ騎士人形――ガラハッドだった。

ガラハッドは代わるように先頭に立ち、その盾を構えて、迫り来る攻撃を受け止める。ガラハッドの盾がコピーたちの合体技を受け止めた瞬間、凄まじい衝撃が広がり、まるで雷鳴が轟くような音が戦場に鳴り響いた。ガラハッドは盾を強く押しつけ、必死に踏ん張りながら耐え続けた。その姿は、まさに最後の守り手のようだった。

 庫持は少し驚いたように呟いた。

「まだそんな手を残していたのか……!? だが――」

 すぐにニヤリと笑みを浮かべ、様子を見守った。

 攻撃はあまりにも強力で、ガラハッドは押し込まれ、次第に後退していく。すかさず、ガウェインたちが加勢に入った。ガウェイン、モードレッド、トリスタン、ケイ、ユーウェイン、ローディーヌが一斉にガラハッドを支え、必死に押し返そうとする。しかし、圧倒的な力には逆らえず、ついに大爆発が起こり、強烈な爆風がアリスたちを襲った。

戦場は瞬く間に黒煙に包まれ、視界が遮られる。

 一瞬の静寂を破るように、庫持は自信満々に言った。

「おーっほっほっほ! まとめて塵にしてやったぞ! 麻呂の完全勝利だ!」

 しばらくして、煙が薄れ、徐々に視界が開けていく。ガウェイン、モードレッド、トリスタン、ケイ、ユーウェイン、ローディーヌ、そしてガラハッドが、力尽きて地面に倒れていた。しかし、騎士たちのさらに後方に、ただ一人、立っている者の影が静かに浮かび上がった。

 庫持はその影に気づき、「ん?」と声を漏らした。次の瞬間、その影を中心に風圧が広がり、煙が一瞬にして吹き飛んだ。そこに立っていたのは、金髪の騎士王――アーサーだった。

 アーサーは光り輝く聖剣『エクスカリバー』を振り上げ、とてつもない魔力を練り上げていた。その顔には、一切の恐れがなく、ただ決意だけが宿っている。その剣から放たれる神々しい光が、まるで世界のすべてを照らすかのように輝き出した。さらに、アーサーの背後には。傷だらけのアリスが膝をついて、手を前に突き出し、聖剣に魔力を注いでいた。

 その光景に、庫持は目を見開き、驚きの声を上げた。

「なに――!?」

 すべての魔力を聖剣に流し込むと、アリスとアーサーは声を揃えて叫んだ。

「エクス……カリバー!!!」

 その言葉とともに、アーサーは力強く剣を振り下ろす。光の斬撃は、まるで天地を切り裂くような勢いで、眩いほどの輝きを放ちながら、庫持に向かって飛んでいった。

 庫持は慌てて退き、二十体のコピーたちが必死に護ろうと、盾となって立ち塞がった。しかし、光の斬撃を受け止めた瞬間、その身体はあっという間に塵となり、木片も残さず消えていった。二十体のコピーが一瞬で跡形もなくなり、光の刃が庫持を撃ち抜いた。

 光に包まれ、全身が粉々に散っていく中、庫持は悔しそうに呟いた。

「馬鹿な……麻呂が……こんな奴に……か……ぐ……や……さ……ま……」

 その言葉を最後に、庫持はこの世から完全に消え去った。

 アーサーは冷徹な視線でその様子を見届け、冷ややかに言い放った。

「心のない偽物を何体も従えたところで、あなたは絶対に我が主様には敵わない。本物の絆を甘く見ないでください!」

 壮絶な戦いの余韻が残る中、束の間の静寂が訪れる。

 アーサーはひとつ息をついたあと、振り向き、心配そうに声を上げた。

「主様!」

 急いで駆け寄り、アリスを支えた。

 アリスは肩が激しく上下するほど荒い息遣いで、次第に視界がぼやけていった。倒れた仲間たちを見回し、力を振り絞って手を前に出す。

「みんな……すぐに、治してあげるから……」

 か細い声で呟き、懸命に手を伸ばさすが、やがて視界が暗闇に包まれ、そのまま崩れ落ちた。アリスが気を失うと、アーサーも眠るように地面に倒れた。



読んでいただき、ありがとうございました。

次回もお楽しみに。

感想、お待ちしています。

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