魂送の天⑤
五月四日、水曜日の夜。
色神学園の音楽棟屋上に、天と花子が向かい合って立っていた。
張り詰めた空気の中、花子は真剣な表情で静かに問いかけた。
「ねぇ、天……。あなた、一体何者?」
天は驚いたように目を見開き、言葉を失ったまま固まった。
同日の朝、天はベッドの上で静かに目を覚ました。朝食と着替えを済ませると、色神学園へ向かう準備を始めた。そのとき、ましろんがいつもの場所にいないことに気づき、家の中を探し回った。イリスに訊いても、心当たりがないようで、なかなか見つけられずに戸惑っていると、頭の中に桜の声が響いた。
「ごめん、天。ちょっと代わってもいい?」
天は静かに目を閉じ、数秒後、ゆっくりと目を開いた。桜が表に出ると、すぐに杖を手に取り、軽く振った。すると、目の前に小さな異空間が出現し、桜は迷わずそれに手を突っ込んだ。少しして「あった」と呟き、引き抜くと、その手にはましろんとまくろんが握られていた。
異空間から出てきた途端、まくろんは「ニャア! やっと出られたニャァァァァ!」とくたびれた様子で言った。
「ごめんね、まくろん。出すのが遅くなって……」桜は淡々と謝った。
「桜も大変だっただろうし、気にすることニャいニャ!」まくろんはすぐに気を取り直し、明るく返した。
桜は小さく微笑み、そのままましろんに目を向けた。「それじゃあ、天をよろしくね、ましろん」とやさしく告げたあと、桜は一息つき、そっとまぶたを下ろした。
数秒後、目を開いた天は、手に握られているましろんとまくろんを見つめ、ほっと胸を撫でおろした。ましろんを左手にはめ、まくろんを棚の上にそっと置いた。笑顔で見つめながら、「行ってきます」と告げると、まくろんが微かに笑ったように感じた。
準備を終え、玄関で靴を履き、立ち上がったその瞬間、天はふと靴箱の上にある霊符に気づいた。
「あっ、これも、ちゃんとつけないと!」
天が額に当てると、霊符はまるで溶けるように消えた。
「よし!」
天は気合を入れ、外に出ると、ほうきに腰を下ろし、ボタンを押す。静かに起動音が響き、イリスが肩に乗ると、二人は空高く舞い上がった。
色神学園へ向かう途中、天はイリスから奏音の現状報告を受けた。
奏音は一週間前のライブ以降、再びピアノが弾けるようになったらしい。演奏の途中で手が強張ることもなくなり、以前のように美しい旋律を奏でられるようになっていた。さらに、奏音が優雅にピアノを演奏する姿が、ネット上にアップロードされると、瞬く間に拡散した。それを各メディアが『天才ピアニスト、完全復活!』と取り上げ、加えて彼の端正な顔立ちに見惚れるファンが急増し、奏音は世間から注目の的となっていた。
イリスが淡々と説明を終えると、天は少し驚きつつ呟いた。
「たった一週間で、そんなことになってたんだ! すごい……」
「そうだね……」イリスは浮かない顔つきだった。「でも、まだ――」
イリスがそう言いかけた瞬間、ましろんは「あっ、見えてきたニャ!」と言葉を遮り、前方を差した。その先に、色神学園の校門が見えた。校門の前には、霊体の奏と、その隣に天の見知らぬ黒髪おかっぱ頭の小柄な少女が立っていた。
「あの子、誰だろう?」天が小さく呟くと、ましろんは「さあ?」と肩をすくめた。イリスも目を細めて見据えたが、その視界には誰の姿も映らない。それでもサーモセンサーや超音波センサーを駆使して探ろうとしたが、やはり捉えられなかった。
その様子を見て、天はおかっぱ少女も霊体だと察した。
天は校門前に降り立ち、ほうきを小さく畳んでポケットにしまい、奏たちのもとへ歩み寄った。
「おはニャア!」ましろんは元気に挨拶し、天は無言でお辞儀をした。
「おはようございます」奏は微笑みながら返した。
天が顔を上げると、おかっぱ少女と目が合った。天は思わず視線を逸らし、その代わりに、ましろんが見つめ返した。
少女は天をじっと見据え、静かに口を開いた。
「あなたが神楽様の言っていた協力者ね」
そう言うと、少女は背筋を伸ばし、胸に手を当て、続けて名乗った。
「あたしは花子。今日は神楽様の代わりに魂送の任に就くから、よろしくね。あっ、ちなみに花も霊体だけど、あまり気にしないでね!」
「ニャ!?」ましろんは驚きの声を漏らし、天も内心動揺していた。
は、花子ちゃんって、確か桜ちゃんのお友達だよね……。ま、まさか、この前、ライブのあと、翠ちゃんと入れ替わってしまったから、正体がバレちゃったのかな……!? いや、翠ちゃんは『ご心配なく、バレてないですよ』って言ってたし、多分、大丈夫なはず……。
天が恐る恐る視線を戻すと、まじまじと見つめ返す花子と目が合い、思わず顔を背けた。
花子は天をじっと見つめながら、訝しげに呟いた。
「あなた……前にどこかで会ったことがあるような……?」
その言葉を聞き、天は息をのんだ。
か、完全に怪しまれてる! どどど、どうしよう!?
張り詰めた空気が周囲を包み、しばらくの沈黙が流れた。
そのとき、ましろんが天の肩にそっと手を置いた。ましろんのやさしい温もりが伝わってくると、天は少しずつ落ち着きを取り戻していった。
ましろんは天を守るように一歩前に出て、少し照れながら口を開いた。
「そ、そんニャに見つめられると、恥ずかしいニャ」
「あ、ごめん。花の友達に似てたから、つい……」
花子が少し退くと、ましろんは咳払いして話を戻した。
「それじゃあ、改めて……この子が天ニャンで、この子がイリス、そして、ましろんはましろん。よろしくニャ!」
ましろんの紹介に合わせ、天とイリスは小さくお辞儀をした。
花子は三人を順に見渡しながら、「天と、イリスと、ましろんね……ん? ましろん?」と呟き、怪訝な表情でましろんを見つめた。
ましろんは瞬時に(あ、まずいニャ!)と直感し、慌てて話題を逸らした。
「花子ニャンが代わりに来たってことは、今日、神楽ニャンは来ニャいニャ?」
花子はわずかに目を伏せて答えた。
「あ、うん。神楽様は、ちょっと急用ができて……」
その言葉に合わせて、少し空気が重くなると、ましろんはすぐに明るい口調で言った。
「そっか、それニャら仕方ニャいニャ。じゃあ、今日は新しいチームで頑張るニャ!」
ましろんが拳を掲げると、天も控えめに拳を上げた。
それを見て、花子はすっきりした表情を浮かべ、「そうね」と呟いた。
軽い自己紹介を済ませた天たちは、音楽棟へ向かい始めた。その途中、奏は天に、奏音の現在の様子を嬉しそうに語った。
「この前のライブを経て、奏音はまた楽しそうにピアノを弾けるようになりました。これもすべて、天さんのおかげです。本当にありがとうございました」
「そ、そんなこと、ないです。ピアノが弾けるようになったのは、奏音くんがこれまで諦めずに努力を続けてきたから、です」天は謙虚に答えた。
「そうかもしれませんが、その努力が報われるきっかけを作ったのは、間違いなく天さんです。このご恩は決して忘れません」
天が少し照れながら黙り込むと、代わりにましろんが「それほどでもニャいニャ」と誇らしげに胸を張った。そのやり取りを、花子は微笑ましい表情で見守っていた。
しばらくして、音楽棟が近づくと、美しいピアノの音色が響いてきた。奏でられていた音楽は、『白雪×シークレット』だった。その演奏は力強く、聴いているだけで元気をもらえるような温かみが広がっていた。
天たちが音楽棟へ足を踏み入れると、すでにグランドピアノの周囲には人だかりができていた。その中心で、奏音は堂々とピアノを演奏していた。
聴衆は心地よさそうに奏音の演奏を聴いていた。天たちも広間の端で立ち止まり、静かに耳を傾けた。
天は奏音の演奏を聴きながら、彼が楽しそうにピアノを弾く姿を見て、心の中で喜んだ。その喜びが表情に漏れ、自然と嬉しそうに微笑んだ。周囲を見渡し、隣で音楽を聴き入る奏の姿が視界に入った。そのとき、天はふと考えた。
あれ? 奏音くんは無事にピアノが弾けるようになったのに、どうして奏さんは成仏しないんだろ?
天が不思議そうな表情で奏を見つめていると、花子がそれに気づき、静かに声をかけた。
「天、ちょっといい?」
花子が手招きすると、二人は奏に気づかれないよう静かに距離を取った。花子は囁くような声で続けた。
「今、どうして奏さんが成仏しないのかって考えてたでしょ?」
天とましろんが無言で頷くと、花子はその理由を述べた。
「……それは、まだ根本的な問題が解決できてないから」
「根本的な問題?」ましろんは首を傾げながら小声で呟いた。
花子が真剣な表情で頷き、口を開こうとしたそのとき、奏音が演奏を終え、広間に聴衆者たちの拍手が響き渡った。奏も嬉し涙を流しながら、拍手を送っていた。
その音に気を取られ、花子は途中で言葉を止め、奏音に視線を向けた。天とましろんも続けて目を向けた。
演奏後の余韻の中、奏音はしばらく自分の手を見つめ、満足げに微笑みながら拳を握りしめた。聴衆を見渡し、天に気づくと、一瞬目を見開いて硬直した。
「あっ、気づかれた!」
そう呟く花子の姿は、奏音には見えていない。彼の目は、確実に天だけを捉えていた。
天は視線が合うと、軽くお辞儀をした。
奏音は無言で立ち上がり、迷いなく群衆の中へ飛び込み、人混みを掻き分けながら早足で天のもとへ歩み寄ってきた。
「こっちに来るニャ! どうする、花子ニャン!?」ましろんは焦りながらも、助言を求めた。
「天に任せる」花子はあっさりと答えた。
「ニャ!? 手伝ってくれニャいニャ?」
「だって、奏音には、花の姿が見えてないんだもん」
「それは、そうだけど……」
ましろんが奏に視線を向けると、彼女も申し訳なさそうに手を合わせてお願いした。
「奏ニャンまで……!」ましろんは言葉を失った。
「大丈夫、ちゃんと近くで見守ってるから!」
そう告げると、花子と奏はふわりと浮かび、静かにその場を離れていった。
「あぁ……」
ましろんは手を伸ばして引き留めようとしたが、花子は口元に指を当て、軽く微笑みながら話しかけてはいけないという返答をした。徐々に離れていく二人を見つめていると、事情を察したイリスが天の目の前にふわりと浮かび。小声で言った。
「わたしもいるから、大丈夫だよ」
イリスの目は頼もしく、天を真っ直ぐに見つめていた。
「ありがとう、イリスちゃん」天は泣きつくような勢いで頼った。
そのとき、奏音が天に近づき、少し緊張した面持ちで声をかけた。
「よ、よう、久しぶりだな」
天たちは静かに向き直り、奏音を見据えると、ましろんが返事をした。
「おはニャ、かニャとくん」
「ここでピアノを弾いてたら、またあんたと会えるんじゃないかと思ってたんだ」
「え……?」天は目を大きく見開き、驚きの声を漏らした。
「ライブのあと、気づいたらいなくなっていて、もう会えないんじゃないかって思ってた……でも、こうしてまた会えて良かった」
奏音の表情はやさしく、穏やかだった。これまでの険しくて不満げな表情が消え、落ち着いた雰囲気をまとっていた。
天は彼の変化に驚きつつ、ふと周囲の視線に気づいた。先ほどまで奏音の演奏を聴いていた人たちが、天たちに視線を向けながらヒソヒソと話していた。
「え、なに、あの子?」
「奏音くんとどういう関係?」
「まさか、奏音くんの彼女!?」
「小動物みたいでかわいい!」
様々な憶測が飛び交い、次第に広間がざわざわし始めた。
天は周囲の囁き声と鋭い視線に耐えきれず、思わず身をすくめた。
奏音は驚いたように天を見つめ、心配そうに言った。
「おい、どうした?」
そのとき、周囲の騒がしさに気づいたイリスは、静かに二人の間に入り、冷静に言った。
「西奏音様。ここでは人目につきますので、もう少し落ち着いた場所に移動しましょう」
奏音は周囲を見渡し、みんなの視線を感じて初めて気づいた。「悪い、気づかなかった」と謝り、すぐに人だかりを抜け出す場所を探したが、どこにも隙間がなかった。
しかし、次の瞬間、突然グランドピアノの重低音が広間に響き渡り、すべての視線がその音の方向へ一斉に向けられた。鍵盤を叩いたのは奏だった。奏は霊体なので、天以外に見えていない。生徒たちは不可解な面持ちで硬直した。奏音も驚いていたが、はっと我に返ると、「こっちだ!」と天の手を取って導いた。
天はそのまま奏音に引っ張られ、足早にその場を後にした。イリスもすぐあとを飛んで追いかけた。
少ししてから、生徒たちは立ち去ろうとする天たちに気づいた。音楽棟を出たばかりの天たちを慌てて追いかけようとしたが、不思議と自動ドアが開かず、それ以上追跡することができなかった。
「あれ? ドアが開かない!?」
「故障か!?」
「ここままじゃ、見失っちゃう!」
生徒たちは戸惑いを露わにした。残念そうな表情を浮かべて天たちを見据える彼らの前に、ドアを押さえて開かないようにしている花子がいた。
花子は天に視線を向け、ドヤ顔で親指を立てて見送った。
天は必死についていきながら、ふと奏音の背中を見つめた。その背中はたくましく、彼の手のひらから伝わる温もりに、安心感を覚えた。しばらくの間、天は無言で身を委ねていたが、次第に疲労が溜まり、息が上がっていた。
イリスはそれに気づくと、すぐに奏音の目の前に飛び出し、「奏音様、ここまで来れば、もう安心です」と両手を広げて行く手を遮った。
奏音が立ち止まると、天はようやく足を止め、膝に手をついて、息を整えた。
奏音は息を切らし、疲れた様子で周囲を見渡した。追手がいないのを確認すると、ほっと息をついた。しかし、ふと天の手を握っていることに気づくと、顔を赤く染め、慌てて手を離した。
「わ、悪い!」
奏音の言葉に、天は返事をする余裕もなく、ゆっくりと呼吸を落ち着かせた。
その様子を見て、奏音は辺りを見回した。少し先にある噴水広場のベンチを見つけると、「あそこで少し休もう」と提案した。
天たちがゆっくり向かい始めると、イリスは一人どこかへ飛んでいった。二人はそれに気づかぬまま歩を進め、到着すると、ベンチに腰を下ろした。
「面倒なことに巻き込んじまって悪かった」奏音は申し訳なさそうに言った。
「これくらい、大丈夫ニャ!」ましろんは軽く応じた。
少しして、イリスが戻ってきた。手には二本のペットボトル飲料水が握られていた。
イリスが飲料水を渡すと、天は「ありがとう」と言ってそれを受け取り、すぐに蓋を開けてひと口含んだ。
イリスは続けてもう一本を奏音に差し出した。
「え、いいのか?」奏音は戸惑いながら言った。
イリスが「はい」と頷くと、奏音は少し迷いながらも受け取り、「ありがとう」と呟いた。水をひと口飲んだあと、続けて「あんた、シエルのパーソナルAIか?」と問いかけた。
「はい。自己紹介が遅くなり、申し訳ありません。わたしは、天ちゃんのパーソナルAI、イリスです。その節は、天ちゃんの突然の申し出を受けていただき、ありがとうございました」
イリスに倣って、天とましろんも軽く頭を下げた。
奏音は少し戸惑いながら返した。
「いや、感謝をするのはおれの方だ。あのときシエルが誘ってくれたから……いや、そばにいてくれたおかげで、おれは一歩踏み出せたんだ」
「そう言っていただき、光栄です」
イリスが丁寧に応じる横で、天は頬を赤らめ、ましろんは「ニャッハッハ!」と誇らしげに胸を張っていた。
イリスはそれに気づくと、少し冷ややかに言った。
「ましろんは、何もしてないですよね?」
「そ、そんニャことニャいニャ! ましろんだって、天ニャンのそばに寄り添って、いつも応援してたニャ! そうだよニャ? 天ニャン!」
ましろんは身を乗り出して、天にぐっと近づいた。
天が控えめに、「そ、そうだね」と呟くと、ましろんはすぐに向き直り、自信満々に「ほらニャ!」と胸を張った。
「わたしも常日頃から天ちゃんのそばに寄り添っています。ましろんには負けませんよ」イリスは冷静に、しかしどこか鋭い眼差しで言い返し、対抗心を燃やした。
そのやり取りを、奏音は驚きと困惑を隠せない表情で見つめていた。少しの間のあと、表情を引き締め、天をじっと見据えながら口を開いた。
「シエル……じゃなくて、天」
不意に名前を呼ばれ、天は思わず姿勢を伸ばした。
奏音は続けた。
「あんたのおかげで、おれはまたこうしてピアノを弾けるようになった。本当にありがとう」
奏音は深々と頭を下げ、しばらくその姿勢を崩さなかった。
「ニャ!? そ、そんニャことニャいニャ! それは、かニャとくんが諦めずに努力してきたからニャ!」
ましろんが慌てて返すと、奏音は顔を上げ、柔らかな表情で言った。
「いや、おれが努力を続けてこられたのも、シエルの楽曲があったからなんだ。これまで何度も挫けかけたとき、おれの心を救ってくれたのは、シエル――あんたの曲だった。だから、いつか感謝を伝えたいと思っていたが、まさか、直接言えるとは想像していなかった。でも、こうしてあんたと出会えて、本当に良かった」
天は面と向かって感謝を伝えられ、顔を赤らめて目を逸らした。代わりにましろんが「ニャハハ、それほどでもニャ~」と照れ笑いしながら、頭を掻いた。奏音も恥ずかしそうに頬を赤く染め、少しの間、言葉を探しながら互いに視線を避けて沈黙が流れた。
天と奏音は水を静かに口元まで運び、ゆっくりと一口含んだ。
せっかく落ち着いていたのも束の間、天の鼓動は再び速くなっていた。
まずい、何か話さなきゃ……! でも、何を言ったらいいのかわからないし、どうしよう……。
天が心の中で戸惑っていると、奏音も同じような様子で口を噤んでいた。
イリスはその様子に気づくと、すぐに手助けしようと口を開いた。
「西奏音様、このあとのご予定は、空いていらっしゃいますか?」
奏音は一瞬言葉を詰まらせながら、「ん? あ、ああ、特に何もないけど……」と返した。
「そうですか。では、もしよろしければ、色神学園の案内していただけませんか?」
イリスの提案を聞き、天は目を見開いて見守った。
イリスは天を一瞥し、得意げな顔で頷くと、すぐに奏音に視線を戻した。
「案内……?」奏音は首を傾げた。
「天ちゃんは色神学園に編入してまだ日が浅いので、どこに何があるのか、ほとんどわかりません。なので、ぜひとも、西奏音様に案内していただきたく存じます」
奏音は少し考え込み、困惑しながら「……おれでいいのか?」と言った。
イリスが言葉なく天に視線を送ると、奏音もすぐにその視線を追った。
判断を迫られた天は、一瞬心の中で動揺したが、すぐに覚悟を決め、力強く頷いた。
イリスは微笑みながら、「決まりですね」と呟き、奏音も安心したような表情を浮かべた。
こうして、天は奏音と色神学園を見て回ることになった。
読んでいただき、ありがとうございました。
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