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五人の貴公子、現る!

 四月二五日、月曜日。〈フリーデン〉がルシファーと対峙していたその頃、阿修羅たち『アルカナ・オース』は、日本各地に出現した兎天使との戦闘に身を投じていた。

兎天使たちの目的は、依然として桜の居場所を知ることだった。

当然、阿修羅を含むアルカナ・オースの仲間たちは、兎天使たちの問いかけに一切耳を貸さず、次々と撃破していった。

 午後九時過ぎ、阿修羅はとあるビルの屋上で、最後の兎天使五体と対峙していた。そのとき、突然オレンジ色の光が夜空一面を覆いつくした。

阿修羅は思わず空を見上げ、低く呟いた。

「……さすがに、あれはヤベェな」

その隙に、兎天使が一斉に攻撃を繰り出したが、阿修羅は軽い身のこなしですべて躱し、鬼丸を一閃。兎天使たちを一撃で霧散させた。

阿修羅は鋭い目つきで空を見据え、鬼丸を握る手に力を込めた。静かに呼吸を整えると、赤いオーラがゆっくりと彼を包み込んでいった。オーラは次第に膨れ上がり、十分な鬼力きりょくが満ちると、阿修羅は鬼丸を振り上げた。

「鬼力……」

小さく呟き、技を繰り出そうとしたその瞬間――阿修羅は膨大な魔力を感じ取った。

「この魔力……間違いない、桜だ……!」

阿修羅が静かに鬼丸を下ろした、その刹那――遠くの空で無数の白い光弾が放たれ、夜空を覆うスペースデブリが一瞬で消し飛んだ。

その光景を見た阿修羅は、鬼丸を肩で担ぎ、笑みをこぼした。

 二日目の戦闘を経ても、兎天使の襲撃は終わらなかった。火曜、水曜、木曜と、日を追うごとに戦いは続いた。

個々の兎天使はたいした強さではなかったが、日本各地に同時に大量発生していたため、誰もがうんざりしていた。

 神楽は魂送師の仕事をしつつ、兎天使が現れると、そちらを優先して討伐に向かっていた。

「はぁ~、いい加減しつこいわね……」とため息混じりにぼやきつつ、神楽は難なく兎天使を仕留めていた。

 アリスとヴラドも存分に力を発揮し、確実に兎天使を仕留めていた。

 一方、風魔は兎天使と会話を交わした。

「お前たち、なぜ“白雪桜”を狙う?」と風魔は冷静に問いかけた。

「貴様に教える義理はない。それよりも、早く居場所を教えろ。もし邪魔をするのなら、容赦なく殺す」と兎天使は淡々と言い返した。

「そうか……」

風魔は一瞬だけ目を伏せると、すぐに鋭く睨み返した。刹那、彼の姿は影のように消え――兎天使は全身を切り刻まれ、跡形もなく霧散した。

そこに佇んでいたのは、風遁で切れ味を増した忍者刀を逆手に持つ風魔だけだった。風魔は一瞬で兎天使を倒したあと、忍者刀を静かに収め、ぽつりと呟いた。

「お前らの好きにはさせん」

 彼らの活躍により、兎天使による被害は最小限に抑えられていた。

 阿修羅は目の前の兎天使を淡々と仕留めながらも、狙われ続ける桜のことが頭を離れなかった。月曜日以来、一向に姿を見せない桜を心配しながら、「この程度の奴らなら、心配いらないか……」と自分に言い聞かせていた。しかし、同時に妙な胸騒ぎを覚え、それはアルカナ・オースの誰もが同様に感じていた。

 その嫌な予感は、金曜日に訪れた。


 かぐやがショックで引き籠ってから四日が過ぎた。

月見と兎隊は、各自仕事をこなしていた。

金曜日の早朝、かぐやは突然、意気揚々と部屋から姿を現した。沈んでいた気持ちがすっかり晴れたようだった。

 かぐやが本殿に到着すると、すでに月見をはじめ、兎隊が列をなし、跪いて待っていた。

かぐやは列の間を優雅に歩き、堂々と上座に腰を下ろした。

「お帰りなさいませ、かぐや様」と月見は深く頭を垂れた。

「月見……前に手鏡が言っておった者について、報告せよ」とかぐやは命じた。

「はい」月見はゆっくりと顔を上げ、静かに立ち上がった。「失礼します」と一礼し、かぐやの正面に向き直ると、手をかざし、空中に桜の姿を映し出した。

 かぐやは咄嗟に顔を背け、着物の袖で目を覆った。まるで桜の姿を見ることが耐えられないかのように、身をよじるように避けた。

 そんな中、月見は続ける。

「――この者が、以前、手鏡が申していた魔法使いです。名は“白雪桜”」

 かぐやは恐る恐る袖の陰から顔を覗かせ、桜の姿に視線を注いだ。そして、目を見開いたまま、息をのむようにじっと見つめた。

 月見は淡々と続ける。

「――白雪桜は、アルカナ・オースに所属する強大な魔法使いです。現存する魔法使いの中でも屈指の実力者で、これまでに数多くの天使をその手にかけてきました」

かぐやは身を乗り出し、空中に浮かぶ映像を凝視した。体勢を戻すと、眉間に深いシワを寄せ、鋭い目つきで睨みつけた。

「こやつが、白雪桜か……ふふっ、どれほどの者かと思えば、わらわの美しさには到底及ばぬ、ただの小童ではないか!」

「はい、わたしもそう思います」と月見も即同意した。

 従者らも激しく頷いた。

「ふん、この程度の小童に心乱されたとは……まったく、損した気分じゃ!」とかぐやは顔を背けながら吐き捨てた。「――で、こやつはどこにおるのじゃ?」

「日本にいることは確認済みですが、住まいを特定するまでには至っておりません」と月見は答えた。

「そうか。まあ、この程度の者なら、いつでも始末できよう。焦る必要はない」

「そうですね……」

月見は一瞬、目にかすかな陰りを宿したが、すぐに瞼を閉じて気持ちを整え、表情を引き締めた。

 かぐやは手に持つ扇子をクルクルと回し、何かを考え始めた。扇子の先端をそっとこめかみに当てた瞬間、かぐやの頭に閃きが走った。

「そうじゃ! 名案が浮かんだぞ!」かぐやは扇子をひらりと一振りし、月見に先端を向けた。「月見、あやつらを呼んでくるのじゃ」

 月見はすぐに察し、恭しく跪くと、「かしこまりました、かぐや様」と深々と頭を垂れ、本殿を後にした。

 少しして月見は、五人の貴公子を従えて本殿に戻ってきた。

五人の貴公子たちは、静かに進み出ると、一糸乱れぬ所作で正座し、同時に地を這うように深く頭を垂れた。

「面を上げよ」とかぐやが告げると、五人は静かに顔を上げた。

正面向かって右から石作いしつくり庫持くらもち阿部あべ大伴おおとも石上いそのかみの順で並んだ。

五人はいずれも、かぐやを心から崇拝する特級天使だった。彼らは目を輝かせ、体が微かに震えるほどの昂揚感に包まれていた。かぐやに呼ばれた喜びが彼らの胸を打ち、抑えきれぬ興奮が全身を駆け巡っているようだった。

「そなたらに、一つ新たな難題を課す……」

そう告げると、かぐやは無言で月見に目配せを送った。

月見はかぐやの合図に応じ、静かに手をかざすと、空中に桜の姿を浮かび上がらせた。

五人は、息をのみながら桜の姿を見つめ、緊張と興奮の入り混じった表情を浮かべた。

「――この小童の首を、わらわの元へ持ってまいれ」とかぐやは厳かに命じた。

五人は即座に頭を深々と下げ、「御意!」と声を揃え、力強く答えた。その決意のこもった声が、本殿の空気を震わせた。

かぐやの命を胸に、彼らは速やかに本殿を後にし、それぞれ散開していった。

「……ふふ、くれぐれも、わらわの期待を裏切るでないぞ」

 かぐやは満足げに、不敵な笑みを浮かべ、その唇の端にわずかに冷徹さを漂わせた。笑みの奥には、計り知れぬ自信と高揚感が宿っていた。


 その頃、アルカナ・オースの面々は各地に散り、それぞれの地で兎天使と戦っていた。戦況は概ね優勢で、彼らは次々と敵を討ち取っていた。だが、平安貴族のような直衣を身に纏った五人の特級天使が一斉に現れると、戦況は一変した。

 五人の特級天使も兎天使と同様、桜の居場所を探り、答えぬ者には容赦なく襲いかかった。彼らの力は強大で、太刀打ちできる者は少なく、アルカナ・オースの仲間は相次いで倒されていった。

 ある森の上空を、桜の先輩である三人の魔法使いがほうきに跨って飛んでいた。すると、三人の前に目隠しをした特級天使――石作が現れた。

 魔法使いは、目の前の特級天使の只ならぬ力をすぐに察し、小さく呟いた。

「……こいつ、相当強い。一瞬も気を抜いちゃダメよ」

 他二人は、緊張した面持ちで静かに頷いた。

 緊張が張り詰める沈黙の中、彼女らは、じっと石作を見据えていた。

「貴様らに質問がある」

石作が口を開いた瞬間、魔法使いたちは警戒して構えた。

彼女たちの警戒など意に介さず、石作は淡々と問いかけた。

「白雪桜はどこにいる?」

 少し間を置き、一人が鋭い目つきで睨みながら答えた。

「……あんたなんかに、教えるわけないでしょ!」

 同意するように、他二人も頷き、石作を鋭く見据えた。

「そうか……ならば、死ね!」

 石作は冷酷に言い放ち、突撃した。



読んでいただき、ありがとうございます!

次回もお楽しみに!

感想、お待ちしています!

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