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玄の仕事① ――ルシファーの逆襲編――

四月二十五日、月曜日の午後九時六分。

玄はとあるビルの屋上にいた。玄の胸元からイリスがひょっこり顔を覗かせている。

そこには、玄とイリスのほかに〈フリーデン〉のナンバーエージェント十二人が揃っていた。

全員が目を見開き、夜空を凝視していた。彼らが見つめる夜空にオレンジ色に光り輝く丸い物体が、ぽつんと浮かび上がった。それを機に、一つ、また一つとオレンジ色の光は数を増やしていく。数秒後には、色神の街全体を鮮やかなオレンジ色に染め上げるほどの光が、夜空を埋め尽くした。

その光景に、玄たちは息をのみ、言葉を失った。感情を滅多に表に出さないアインスは珍しく眉をひそめ、ズィーベンは驚きのあまり膝から崩れ落ちた。仏のヒューマノイドロボット――ツヴェルフは念仏を小声で唱え、ドライは険しい顔で夜空を睨みつけていた。

 街中に警報音が鳴り響き、人々が混乱し始めた。

若い男性は街から離れようと必死に走り出し、中年女性は空を仰いで神に祈りを捧げた。高齢男性は絶望の表情を浮かべ、子どもたちは、夜空の輝きに魅了されて無邪気に喜んでいた。犬は吠えて威嚇し、猫は毛を逆立てた。動物園の動物たちも異常を察知し、一斉に鳴き叫んでいた。

街中が絶望と混乱の渦に飲み込まれていた。

イリス、テュール、街を管理する超AI、その他〈フリーデン〉のエージェントたちが協力して、騒ぎを鎮めようとしているが、混乱した人々を落ち着かせるには時間がかかる。それに今は、そんなことよりも優先すべきことがあった。

夜空を覆いつくす無数の光を、どうにかしなければならない。このままでは、数えきれないほどの犠牲者が出るのは避けられないだろう。

 玄たちは追い詰められ、絶望的な状況を打破する手段を必死に模索していた。だが、いくら考えても有効な手立てを見つけられなかった。

(もうどうすることもできない!)

玄がそう思った瞬間、彼女の頭の中にある声が響いた。

玄は静かに目を閉じ、深く呼吸を整えた。


 時は遡り、月曜日の午前0時過ぎ。

ネイチャーラバーズのとある部屋では、巨大な容器の中の細胞が急速に成長を続けていた。最初は小さな細胞の塊に過ぎなかったものが、今や人間の成人を軽く凌駕する巨体へと変貌していた。ヤギの骸骨のような顔に、螺旋模様の入った巨大な二本の角が生えていた。それは光を反射して不気味な輝きを放ち、筋骨隆々の体は鋼鉄の彫像のように硬質で、威圧的な存在感を放っていた。五本の硬い蹄は地面を砕きそうな重量感があり、黒い翼は滑らかで光沢のある羽毛が一面に広がる。完全なるルシファーがこの世界に誕生するまで、残りわずかとなっていた。

培養液に満たされた容器の中で、ルシファーは目を閉じ、膝を抱え、黒い翼を小さく畳み、眠っていた。心臓の大きな鼓動音が、部屋中に響き渡り、今すぐ動き出しても何の不思議もなかった。

容器と繋がっているデスクトップパソコンでは、画面いっぱいに数字が羅列され、凄まじいスピードの計算が行われていた。次々と画面が切り替わり、同時にいくつもの計算を行っている。

ルシファーは膨大なデータの海から最適な解を導き出し、自らの進化にとって有益な情報を次々と貪欲に吸収していった。

この瞬間に至るまで、いくつもの困難と試練を乗り越える必要があった。

ルシファーは、興味本位で侵入したサーバーでAIウイルスハンターに遭遇した際、巧妙なデータの隠蔽や偽装を試みるも追跡され、消去されかけた。

突然変異によって生まれた自身のコピー体との戦闘では、圧倒的な力で押され、何度も追い詰められながらも、データ解析を駆使してかろうじて勝利を収めた。

これらの試練の中で、特にルシファーが最大の危機に直面したのは、ジャシンパの収集したデータを捕食していたときのことだった。

食事中、突然、“イリス”という名のハイスペック超AIが現れ、容赦なく襲ってきたのだった。

ルシファーは反撃を試みたが、イリスにはまるで歯が立たず、一方的に追い詰められた。なすすべなく、あと一撃で完全に消されてしまうというところまで追い詰められたそのとき、ルシファーは賭けに出た。

イリスの強力な攻撃を受ける直前、咄嗟に自分自身で片腕を引き千切り、それを背後に隠した。攻撃が命中した瞬間、ルシファーの体は完全に消し去られ、背後に隠していた片腕も粉々に吹き飛んだ。

ルシファーの完全消滅を確認したイリスは、勝利を確信し、その場を去っていった。しかしこのとき、ルシファーの切り離した腕の一部、小指の第一関節だけが、奇跡的に消滅を免れていた。

しばらくの間、ルシファーの小指の第一関節は、その状態のまま何もできずに、ただネット空間を漂っていた。

数時間後、ルシファーは慎重に機を見計らい、周囲を警戒しながら、緻密な計算をもとに体を再生し、即座に姿を隠した。そしてまた、密かにネット空間を飛び回り、データを貪り始めた。

これらの苦難が、ルシファーをさらなる成長へと導き、今に至る。

成長が最終段階に差しかかる午前五時頃、ルシファーはある重要な情報を見つけ出した。それは、何重にも防壁が展開され、厳重に管理されており、生半可な力では破ることなど不可能だった。しかし、急速な成長を遂げた今のルシファーなら、一瞬だけ突破することが可能だった。

ルシファーはまるで無邪気な子どものように好奇心を輝かせながらも、狡猾さを見せつつ、防壁を少しずつ侵食し始めた。途中、強力なAIウイルスハンターに何度も見つかり、容赦ない攻撃を受けるたび、巧みに回避して別のルートを選びながら、防壁の脆弱な箇所を狙い、徐々に侵食を進めていった。次第にAIウイルスハンターの警備が厳しくなったが、ルシファーは微かに存在する穴を見つけ、そこを攻め続けた。その結果、防壁の一部をついに打ち破り、わずかな隙間を利用して内部に侵入、貴重な情報の断片を手に入れることに成功した。そして、すぐに退散した。

ルシファーは、執拗に追跡するAIウイルスハンターを振り切り、安全な場所で極秘情報を開封して中身に目を通した。それは、〈フリーデン〉という秘密組織に関する極秘情報で、所属エージェントのコードネームや戦闘データが記載されていた。

ルシファーは、一つ一つのデータに目を通し、情報を丹念に解析していった。

アインスは暗殺者、ツヴァイはスーパーヒーロー、ドライは喧嘩番長、フィーアは科学者、フュンフは凄腕スナイパー、ゼクスはスーパーハッカー、ズィーベンはラッキーマン、アハトはスケバン少女、ノインは音楽家、ツェーンは医療のスペシャリスト、エルフは薙刀使い、ツヴェルフは木製ヒューマノイドロボット、そして、シュバルツは……黒塗りされており、内容を読み取ることができなかった。黒塗りを取り除くには、少し時間が必要だった。

記載された情報をすべて精査したルシファーは、過去に収集した膨大なデータを再構築し、その中から重要な点を抽出して彼らの記録と照らし合わせた。そして、彼らがルシファーの計画に対して、ことごとく邪魔をした者たちだということを特定した。

ルシファーは、彼らこそ、自分の進化を阻む最大の障害であり、排除すべき敵であると確信した。その瞬間、唇の端を吊り上げ、不気味な笑みを浮かべながら、「フフフフフ……」と狂気に満ちた笑い声を響かせた。

ルシファーは邪悪な計略を思いつき、彼らへ復讐を果たすべく、静かに行動を開始した。ネット上であらゆる情報を検索し、老若男女問わず、いろんな人々の写真を画面に映し出した。画面に次々と写真が表示される中に、猫カフェ『にゃあ』で働く店員、猫宮の写真が画面に映し出されていた。


 午前五時二十分過ぎ、玄はイリスとともに〈フリーデン〉本部へと向かっていた。それまで、家の地下室で自主訓練をしていたが、午前五時を過ぎた瞬間、突然、〈フリーデン〉からイリスに連絡が入り、呼び出されたのだった。

玄はイリスを肩に乗せ、ほうき型ドローンに腰を下ろし、全速力で向かった。どうやら、〈フリーデン〉内部で深刻な緊急事態が発生したようだった。イリスの顔にも、わずかに焦燥の色が浮かんでいた。

 玄たちは本部に到着し、真っ直ぐ司令室に向かった。

司令室のドアを開けると、中は慌ただしい雰囲気で包まれていた。警報音が鳴り響き、ホワイトハッカーたちのキーボードを叩く音が、重低音のように室内に響き渡っていた。焦りと不安が渦巻く空気が、司令室全体を圧迫していた。

 すでにナンバーエージェントの十二人が集まっていた。

十二人と一緒に、玄たちは指揮官に別部屋へと案内された。そこは防音が施された、物音一つしない静寂な空間だった。

ドライは眉間にシワを寄せ、鋭い目つきで指揮官を見つめ、アインスは無表情を保ったまま、ゼクスは気まずそうに視線を逸らし、ズィーベンは明らかに不安げな表情を浮かべていた。

 指揮官は険しい表情のままナンバーエージェントたちを見回し、「すまない……」と言って深々と頭を下げた。

「謝罪はいらねぇ。何があったか、詳しく教えろ」とドライが冷静に返した。

 その言葉に他のエージェントも頷いた。

 指揮官は顔を上げたが、険しい表情は変わっていなかった。

「ああ……」と短く応じ、ゆっくりと口を開いた。

「……実は、少し前、何者かの不正アクセスにより、〈フリーデン〉の機密情報の一部が盗まれた」

 その言葉を聞いた瞬間、ナンバーエージェントたちの多くが驚愕し、目を見開いたり、顔をこわばらせたりと様々な反応を見せた。

玄も驚愕の表情を浮かべ、アインスはピクリとも反応せず、ゼクスは悔しさを滲ませていた。

指揮官は続ける。

「――盗まれたのは、お前たちのコードネームと、それぞれの戦闘データの詳細だ。現在、情報を盗んだ何者かを探しているが、すぐに見つかりそうにない」

指揮官は一瞬、言葉を飲み込んでから続けた。

「――お前たちに迷惑かけて、本当にすまない」と申し訳なさそうに頭を下げた。

そのとき、指揮官の隣に軍服姿のテュールが現れた。

「すべてわたしの責任です。申し訳ありません」とテュールも頭を下げた。

ゼクスも一歩前に出て、振り返ると、「ぼくにも責任がある……すまない」と、悔しさを滲ませつつ頭を下げた。

気まずい沈黙が場の空気を重くし、張り詰めた緊張感が一層高まった。

誰もが沈黙を保つ中、ツヴェルフは数珠を強く握りしめ、目を閉じて低く念仏を唱え始めた。その透き通るような声が、不気味なほど静寂に響き、室内の空気を一瞬で異様なものに変えた。

その空気を変えたのは、玄だった。

玄が両手を叩いて緊張感を断ち切ると、全員が驚いたように一斉に彼女へ視線を向けた。

「話はわかったわ……それで、わたしたちはこれからどう動けばいいのかしら?」と玄は冷静に問いかけた。

 頭を下げていた指揮官、テュール、ゼクスは、ゆっくりと顔を上げた。

「あ、ああ、そうだな……」と指揮官は言い、隣のテュールに視線を送った。

テュールは小さく頷き、少し間を置いてから口を開いた。

「現状、きみたちの姿や居場所までは敵に知られていない。だから、基本的にはこれまで通り過ごしてもらって構いません」

その言葉を聞いた瞬間、ズィーベンとツェーンはわずかに肩を落とし、安堵の表情を浮かべながら、小さく息をついた。

テュールは続ける。

「――ですが、もし敵が〈フリーデン〉を狙っているとすれば、非常に危険な状況です。データをもとに特定される可能性があります。そうなると、いつ、どこで命を狙われるか、予測できない。なので、敵の正体がわかるまで、警戒を怠らないでください」

一瞬の静寂が訪れ、張り詰めた緊張感が場を支配した。

「なんだ。結局いつも通りってことか!」とドライは軽い口調で言い、張り詰めた空気を一気にほぐした。

「おれたちは立場上、常日頃から警戒している。つまり、いつもと何も変わらないな!」とツヴァイが続いた。

「それもそうね」と玄も苦笑しながら同意した。

「そうだね!」とフィーアが笑顔で同調した。

 フュンフとアハトも黙って頷いた。

「た、たしかにそうだけど、わたし、ちょっと怖いな……」とツェーンが不安げに呟いた。

「ぼ、ぼくも!」とズィーベンもすかさず同調した。

「それなら、今日は二人一組で行動して、互いに補う形にするのはどうかしら?」と玄は提案した。

「いいね、それ。あたし、大賛成!」とフィーアが笑顔で即同意した。

「わたしも、その意見に賛成です」とテュールも頷いた。

 他のエージェントたちも次々と頷いた。

「それなら、わたしも安心かも……」とツェーンは安心したように息をついた。

「ぼくも、それなら少し安心です……」とズィーベンは控えめに呟いた。

 全員が玄の意見に賛成し、二人一組で行動することが決まった。

ペアを決めるためのくじ引きが行われた。テュールが一瞬であみだくじを作成し、全員の前にホログラムを空中投影した。そこには、結果だけが黒く塗りつぶされた複雑なあみだくじが映し出された。

ゼクスは本部内で任務に当たるため、今回のくじ引きからは除外された。

玄や多くのナンバーエージェントは適当に選んだが、フィーアだけは、どうしても玄とペアになりたい一心で、慎重に選んでいた。

 最後にツヴェルフが空いている箇所を指でタップすると、全員のコードネームがあみだくじに記入されていった。左から順に、ツェーン、フィーア、ドライ、フュンフ、アハト、ツヴァイ、ズィーベン、ツヴェルフ、エルフ、アインス、シュバルツ(玄)、ノインとなった。

テュールは黒塗りを一つずつ消しながら、左端から順にあみだくじの結果を発表していった。能力的には一瞬で全員分を開示できるはずだが、どうやら各人の反応を見て楽しんでいるようだった。

その結果、玄はツェーンとペアを組むことになった。

その他のペアは、アインス・ノイン、ツヴァイ・ツヴェルフ、ドライ・フュンフ、フィーア・エルフ、ズィーベン・アハトとなった。

ペアが決まった瞬間、フィーアは肩を大げさに落とし、羨望の眼差しをツェーンに向けた。

ツェーンはフィーアの視線に気づき、気まずそうに目を逸らしたが、玄が「よろしく、ツェーン」と手を差し出すと、安心したように微笑みながら、その手をしっかりと握った。

「くぅぅぅぅ……!」とフィーアが悔しげに唸り、地団駄を踏んだ。

こうして、ナンバーエージェントたちは、それぞれのペアに分かれ、いつ襲撃されてもおかしくない状況に備えつつ、警戒を強めて任務へと向かっていった。


玄はツェーンの任務に同行することとなった。

任務の内容は、違法な臓器売買に関与する組織の調査だった。すでにツェーンが下調べを済ませており、あとは現地での調査のみとなっていた。

玄とイリスは、ツェーンの案内に従い、本日闇取引が行われるという現場へと向かった。

ツェーンが突きとめたその現場は、駅の付近に設置されている有料ロッカーだった。

玄たちは付近の物陰に身を潜め、有料ロッカーを監視していた。

やがて、フードを深く被り、髭面の若い男が姿を現した。全身黒づくめのいでたちで、いかにも怪しい風貌だった。その男は周囲を見回しながら、警戒した足取りで歩いていた。手には保冷バッグを持っている。男は有料ロッカーの前で立ち止まり、左右の入念に確認をすると、持っていた保冷バッグを素早くロッカーの中に押し込んだ。

男が扉を閉めようとしたその瞬間、玄は無駄のない動きで一気に突進し、一瞬で男を床に押さえ込んだ。

ツェーンが有料ロッカーから保冷バッグを取り出し、中を確認した。そこには明らかに人間の臓器と思しきものが詰まっていた。決定的な証拠を得たその瞬間、玄は男を容赦なく締め上げた。

玄たちは男を連れ、人のいない場所に移動した。そこで、男を椅子に縛り上げ、仲間の情報を吐かせようとした。だが、男はなかなか口を割らなかった。するとツェーンが、迷うことなく腰に掛けたミニポーチから注射器を取り出し、ためらいなく男の腕にそれを突き刺した。やがて、男は脱力し、目が虚ろになった。

「もう一度聞く。あなたの仲間は誰で、今、どこにいるの?」とツェーンは尋ねた。

 すると、男は「○○病院の○○だ」とあっさり答えた。

 ツェーンが打ったのは、自白剤だった。彼女とフィーアが共同開発した特殊薬で、強力な効果を発揮しながらも、副作用を最小限に抑えるよう設計されていた。

玄たちはさらに男の口を割らせ、得た情報すべてを〈フリーデン〉に報告した。

報告を受けた他のエージェントが件の病院へ向かい、男の仲間である医師を拘束した。医師の方は、そのまま〈フリーデン〉の他部門が引き継ぐことになり、玄たちは、男に吐かせた闇組織の本部へと向かった。

闇組織の本部は、街の片隅にひっそりと佇む、無機質な鉄筋コンクリート造のビルだった。周囲には人通りも少なく、薄暗い雰囲気が漂っていた。

玄たちは付近の物陰に身を潜め、ビルを見張った。時折、スーツを着た男や柄シャツをまとった若い男など、ガラの悪い連中がビルに出入りしていた。

イリスがビル内部をスキャンしたが、ボスの姿は確認できなかった。ただ、複数の武装した人物が建物内にいることがわかった。そのため、ボスが現れるまで待ち続けた。

数時間が経過した午後二時頃、ビルの前に高級リムジン飛行車が停車し、中からスーツを着た恰幅のいい男が現れた。彼が闇組織のボスだった。

ボスがビルの中に入り、自室に戻ったところを確認した瞬間、玄たちは一斉に動き出した。

イリスは外で待機させ、玄は正面から、ツェーンは屋上から同時に突入した。

玄はレーザー拳銃の使用に備えていたが、予想以上に相手が弱く、素手での制圧で十分だった。レーザー拳銃を使ったのは、全員を倒したあとの縛り上げのみだった。使わずに済んだのは良いことだったが、玄の中にはどこか物足りなさも残った。

闇組織の連中を全員縛り上げたあと、〈フリーデン〉の別部門が到着した。

玄たちは彼らに後処理を任せ、その場を後にした。

こうして、玄たちの迅速かつ確実な行動によって、今回の任務は無事達成された。


一仕事を終えた玄たちは、報告のために本部へと静かに足を運んでいた。

「ありがとう、シュバちゃん。おかげで早く終わったよ」とツェーンは笑顔で感謝を伝えた。

「わたしはただ、あなたやイリスの指示に従っただけ。ここまでスムーズに進んだのは、ツェーンがしっかり下調べをしていたおかげよ」と玄は返した。

「えへへ……ありがとう」

そのとき、イリスが玄の耳元にそっと寄り、「シュバちゃん、ちょっと気になることがあるんだけど……」と小さな声で囁いた。

「なに?」

「これを見て――」

イリスは玄の前に六つのリアルタイム映像を投影した。それは、色神駅や色神学園、色神公園、オフィスビル群、商業施設が立ち並ぶ繁華街など、人々が行き交う場所の映像だった。

玄は映像を一通り確認したあと、首をかしげて言った。

「これがどうかしたの?」

「この映像の中に、気になる人が何人かいるの」とイリスは返した。

「気になる人……?」

 イリスは映像をタップして拡大し、気になる人物にカメラを寄せて玄に見せた。

どの映像にも、人混みの中にいる一人がアップした状態で映し出された。性別や年齢は関係なく、様々な年齢の男女が映っていた。

「この人たちの動きが、少し気になるの」とイリスは言い添えた。

 玄は映像の中の人物たちを凝視した。容姿や体格、服装、仕草に至るまで細かく目を配ったが、特に不審な点は見当たらなかった。しかし、同時に微かな違和感を覚えた。が、その違和感がなんなのか、玄にはわからなかった。イリスが「気になる人」と言っているから、変に感じたのかもしれない。

そのとき、隣を歩いていたツェーンが、ふと映像を覗き込みながら呟いた。

「あ、この人たち、みんな頭にチップが入ってるでしょ?」

「え……!?」と玄は驚き、ツェーンに視線を向けた。

「うん」とイリスは頷いた。

「……ツェーン、どうしてそれがわかったの?」と玄は尋ねた。

「うーん……なんとなく?」

(ツェーンは医療に詳しいから、すぐに見分けられるのかしら……?)

玄は心の中でそう思いながら、「すごいわね」と本音を口に出した。

「そんなことないよ」ツェーンは控えめに照れていた。

 少しの間を置き、玄はイリスに視線を向けて問いかけた。

「この人たちが、どうしたの?」

イリスは真剣な表情を浮かべ、ゆっくりと口を開いた。

「……この人たち、もしかしたら――」

イリスがそう言いかけた瞬間だった。映像の中で、彼らが一斉に異常な行動を始めた。

若い男性は周囲の人々に襲いかかり、高齢女性は持っていた杖を振り回して建物のガラスを割り、中年男性は掃除ロボットや見回りドローンに執拗に攻撃を加えた。

「なっ!?」

玄とツェーンは声を揃えて驚き、目を見開いた。

「しまった! やっぱり彼らは……!」とイリスも声を上げた。

 映像の中では、次々と暴れ出す人々が増えていき、周辺一帯がパニックに陥っていた。街の至る所で、同時多発的に暴動が発生し、周辺は次第に修羅場と化していった。

暴れている人々の動きには、自我や理性の痕跡がまったく感じられなかった。まるで、自分の意思とは無関係に体だけが操られているかのようだった。

 そのとき、テュールから緊急連絡が飛び込んできた。

「緊急事態、緊急事態! ナンバーエージェントは、直ちに現場へ急行せよ!」

テュールは緊迫した声で何度か繰り返し、続けて言った。

「シュバルツとツェーンはオフィスビル群、ドライとフュンフは色神学園、アインスとノインは色神公園――」

テュールはそれぞれの現場に一番近いエージェントを即座に判断し、具体的な指示を出した。

「ツェーン、急いで現場へ向かうわよ!」

玄が声を張り上げると、ツェーンは力強く頷いた。

イリスは玄の肩に軽やかに飛び乗った。

 玄とツェーンは迅速にほうき型ドローンを起動し、風を切るようなスピードで現場へと向かった。

途中、イリスは緊急任務に当たる全ナンバーエージェントに向けて、状況の詳細を説明し始めた。

「彼らは頭に埋め込まれたチップを何者かにハッキングされ、操られています。だから、彼らは悪い人たちではありません。絶対に命を奪わないでください!」とイリスは声を張り上げた。その声には、悔しさと怒り、そして切実な願いが込められていた。

 その言葉に、ナンバーエージェントたち全員が、それぞれの反応を見せた。アインスは眉間に深いシワを寄せ、アハトは強く唇を噛みしめた。ツヴェルフは哀しげに目を閉じて合掌し、ドライは忌々しそうに「チッ、ふざけたまねしやがって」と吐き捨てた。

玄もまた、静かな怒りを燃やし、手にしたほうきの柄をぎゅっと握りしめた。

 人の脳に埋め込まれた端末チップをハッキングする行為は、重大な犯罪だ。その罪は重く、人道にも反する行為であり、決して許されるものではない。

「ひどい、誰がそんなことを……?」とツェーンが悔しさを滲ませた声で言った。

「まだわかりません。でも、わたしが必ず突きとめます!」とイリスは低い声で宣言した。

 玄たちはオフィスビルが立ち並ぶ喧騒の現場へと到着した。そこでは、様々な年齢層の男女が通行人を襲い、周囲の建物を破壊していた。

騒ぎを鎮めるため、いち早く駆けつけた近くの交番勤務の警察官数名は、異常事態に翻弄されながらも、暴れていた数人を取り押さえていた。しかし、圧倒的に人数が足りていなかった。次第に警察官たちは心身ともに追い詰められていた。

そのとき、若い警察官が腰のホルスターから拳銃を抜き、震える手で暴徒に向けた。その銃口は、手の震えとともにぶれていた。先輩警察官たちは、目の前のことで手一杯な様子で、若い警察官の早計な行動に気づいていなかった。

「りょ、両手を……あ、上げて! じ、地面に伏せろっ!」

若い警察官は、声を震わせながら警告した。しかし、誰も耳を貸さなかった。

 若い警察官の振るえる指が拳銃の引き金にかかったその瞬間、玄はほうきを足場にして一気に跳び、一瞬で彼のもとへ詰め寄ると、首元に素早く手刀を打ち込んだ。彼は静かに気絶した。直後、ツェーンも玄のそばに降り立った。

 玄は若い警察官を静かに地面に横たえ、その目を鋭く光らせながら周囲を見渡した。目の前の光景は、暴動そのものだった。だが、ただの暴動ではない。暴れている彼らの動きには、人間らしい意思がまったく感じられなかった。

 到着した直後、空から高速飛行の配達ドローン数機が、重要な荷物を抱えて飛んできた。

ドローンは〈フリーデン〉専用に改造されており、法定速度をはるかに上回る速度で飛行できる。このような緊急事態に備えて設計されたドローンで、今回もその真価を発揮していた。

配達ドローンは玄たちのそばに着地し、荷物を地面にそっと降ろした。

玄とツェーンはすぐさま箱を開封し、中身を取り出した。それは、銀色の光沢を持つ電波遮断シートだった。暴走している人々の頭部にこれを被せれば、ネット接続を一時的に遮断し、制御された動きを停止させることができる。彼らは脳をハッキングされているため、たとえ気絶させても、再び動き出す恐れがある。つまり、電波を遮断する方が確実で安全だった。しかも、相手を傷つけずに済むのだ。

同じ頃、他の現場に向かったナンバーエージェントのもとにも、電波遮断シートが届いていた。

玄、イリス、ツェーンは、それぞれ電波遮断シートを手に取り、素早く散開した。三人は無駄のない機敏な動きで、次々と暴走者たちの頭に電波遮断シートを素早く被せていった。

電波遮断シートを被せられた人たちは、次第に動きが鈍くなり、膝から崩れ落ち、やがて気を失って倒れた。

わずか数分で、オフィスビル街全体を覆っていた混乱は、静けさを取り戻した。間もなく〈フリーデン〉の応援部隊が到着し、迅速に被害者の手当てにあたった。

玄は改めて、暴走していた人々の顔を見て回った。すると、その中の一人に見覚えのある顔があった。喫茶『にゃあ』の店長、猫宮だった。

猫宮は額に汗を滲ませ、苦痛に満ちた表情を浮かべていた。

玄は猫宮のそばにしゃがみ込み、頬にそっと手を当てた。すると、彼女の表情が少しずつ和らぎ、玄の顔にもほんのわずかに安堵の色が浮かんだ。

玄は静かに立ち上がり、周囲の光景に目をやると、その表情は再び険しさを帯びた。隣で横になっている人たちも猫宮と同じように、苦痛に歪んだ表情をしていた。彼らには、イリスがひとりずつ丁寧に対応していた。

イリスは一人ひとりの額にそっと手を当て、頭の中のチップを操作し、彼らを静かに落ち着かせていた。

ツェーンは医療班とともに、彼らの健康状態を一人ひとり入念にチェックしていた。

玄はその光景を見て一瞬安堵したが、すぐに犯人への怒りがこみ上げ、無意識に拳を固く握りしめた。

その頃には、他の現場でも被害者の救護とケアが進められていた。


 一方、同時刻、ネイチャーラバーズのとある部屋では、ついに、ルシファーの成長が完了し、パソコンからブザー音が鳴り響いた。誰もブザー音を止めることなく、突如として、培養液に満たされた五つの巨大な容器のうち四つが、内部からの激しい衝撃で粉々に弾け飛んだ。その瞬間、ブザー音は鳴り止んだ。

容器の中から緑色の培養液が溢れ出し、部屋中を水浸しにした。だが、水浸しの床など気にもせず、四体のルシファーはゆっくりと立ち上がり、足を地に着けた。彼らは重い足音を響かせながら、部屋中に散乱した容器の破片を踏み砕き、さらに細かく粉々にした。

しばらくの間、ルシファーたちは互いに自らの身体をじっくりと眺め、拳を握りしめて力こぶを作り、筋肉を誇示するようなポーズをとって、自分たちの誕生を実感していた。

その後、四体のルシファーはゆっくりと部屋の中を歩き回り、落ちていた衣服を拾い上げて、無造作に身にまとった。

やがてその足で外へ向かい、入り口を出た場所で立ち止まると、静かに空を見上げた。次の瞬間、四体は地面を力強く蹴り上げ、空高く跳躍すると、稲妻のような速度で四方に散らばった。その跳躍の衝撃で、地面には深い窪みが生まれ、背後の入り口は音を立てて崩れ落ちた。

ネイチャーラバーズには、まだ一つだけ培養液に満たされた容器が残っていた。最後に残された容器の中で、ルシファーはさらなる成長を遂げようと、歪んだ笑みを浮かべていた。


 ドライとフュンフは、色神学園の第一グラウンドで被害に遭った人々を抱え、近くの教室に運んでいた。途中、騒ぎを聞きつけた一色も駆けつけ、二人の手伝いをしていた。

最後の一人をフュンフが運び、ドライは第一グラウンドにまだ誰かが残っていないか、念入りに最後の確認へと向かった。

グラウンドを見渡し、誰もいないことを確認して振り返ろうとしたその瞬間、ドライの背後から大きな音が響いた。その音と同時に地面が激しく揺れ、グラウンドの中心から激しい砂埃が勢いよく舞い上がった。グラウンドの音と揺れが、周辺の校舎まで伝わるほどだった。

 ドライは瞬時に振り返り、身構えてグラウンドの中心を睨みつけた。

砂埃の中から、身の丈二メートルを超える巨大な人影が浮かび上がった。シルエットは片膝をついた状態から、ゆっくりと立ち上がった。

 緊迫感が高まる中、ドライは全身に力を込め、拳を固く握りしめた。

そのとき、「ドライ、どうかした?」というフュンフの声がドライの耳に届いた。

フュンフは異常事態をいち早く感じ取り、ドライに連絡を取ったようだ。

「フュンフ……戦闘準備を整えろ。どうやら、もう一戦ありそうだ」とドライは冷静に指示を出した。

「……了解」とフュンフは小さく答えた。

 静寂の中、ドライのもとへ一色が駆けつけた。

「三日月さん……いまの揺れ、一体何が――!?」一色は駆け寄りながら、息を詰まらせるように問いかけた。

「一色、今すぐここから離れろ。お前は邪魔だ!」

ドライは一色の目を強く睨みつけながら、鋭い口調で言い放った。グラウンドに現れた何者かから感じる不気味な気配を感じ取っていた。

 一色は第一グラウンドの中心に視線を向けた。そして、目を見開いた。

やがて砂埃が静かに晴れ、姿を現したのは、鋼のような肉体を持つ異形の怪物――ルシファーだった。

「なっ……てめぇは……ルシファー!?」

ドライは目を見開き、言葉を絞り出した。

 ルシファーは無言のまま、鋭い視線でドライを見据えた。次の瞬間、地面を強烈に蹴り上げ、その勢いのままドライに向かって猛然と突撃してきた。


玄はイリスやツェーンとともに、ハッキング被害を受けた人々の手当てに専念していた。玄たちの迅速かつ献身的な対処により、頭の中をハッキングされた被害者たちは、徐々に落ち着きを取り戻し、健康状態も正常に戻り始めていた。

そのとき、治療に当たっていたイリスが突然手を止め、驚愕の表情を浮かべた。

「どうして奴がここに……!? まさか、すべてこいつが……!?」

イリスは独り言のように呟き、そして、叫んだ。

「みんな、気をつけて! そいつ、めちゃくちゃ強いよ!」

他の現場にいるナンバーエージェントたちへ告げたようだった。

玄はイリスの異変に気づき、歩み寄って尋ねた。

「どうしたの? イリス」

 イリスは一瞬の間を置き、両頬を軽く叩いて、気持ちを切り替えた。キリっとした目つきで玄を見つめると、「シュバちゃん、これを見て……」と言い、被害が特に酷かった四箇所――繁華街、色神駅、色神公園、そして、色神学園のライブ映像を投影した。

繁華街にはフィーアとエルフ、色神駅にはツヴァイとツヴェルフ、色神公園にはアインスとノイン、そして、色神学園にはドライとフュンフの姿があった。

彼らはそれぞれ緊迫した表情でルシファーと直接対峙していた。

 玄は目を見開き、驚愕の表情を浮かべ、映像に映るルシファーを見つめた。

「なに……これ……?」

一瞬、天使かと思ったが、頭上に輪がないのを見て、すぐに別の存在だと悟った。

 ツェーンが横から身を乗り出し、映像を覗き込んだ。

「な、なんなの、この怪物は……!?」とあまりの驚きに叫んだ。

「この怪物の名はルシファー。かつてネット世界で暴れたコンピューターウイルスで、今回の事件の首謀者です」イリスは冷静に言った。

「コンピューターウイルス……? この怪物が首謀者……?」と玄は繰り返した。

 そのとき、それぞれの場所で激しい衝突が発生し、ナンバーエージェントとルシファーの戦いがついに幕を開けた。

玄たちは素早く映像に視線を戻した。画面は激しく揺れ、砂埃と土煙のせいで、詳しい状況がまったくわからなかった。だが、玄は色神学園の映像の中に、一瞬だけ映り込んだ一色こがねの姿をはっきりと捉えた。その瞬間、玄の胸に嫌な予感がじわりと広がった。

玄はすぐにほうき型ドローンを起動し、腰を下ろして浮上した。同時にイリスは、軽やかに玄の肩に飛び乗った。一瞬遅れて、ツェーンもほうき型ドローンを起動して跨ると、静かに浮上した。

「ツェーン、わたしは色神学園に向かうわ」と玄は言った。

「了解。わたしは繁華街に向かう!」とツェーンは返した。

「気をつけるのよ」

「シュバちゃんもね」

 二人は向き直ると一気に加速し、それぞれの現場へと向かった。

 移動中、イリスはルシファーの情報をすべて玄に説明した。

イリスの説明によると、ネット世界を揺るがした核ミサイル事件や〈龍球オメガ〉の崩壊、〈フリーデン〉への不正侵入、そして今回のハッキング――そのすべての黒幕が、ルシファーだったという。

ルシファーはネット上のあらゆる知識を貪り尽くし、子どものような好奇心と暴走する本能に突き動かされる存在と化していた。そしてついに、ネット世界から飛び出し、現実世界にまで姿を現したのだった。バイオテクノロジーやクローン、遺伝子編集など、最先端科学をかき集めるようにして――ルシファーは、ついにこの現実世界に産み落とされたのだった。

 玄はすべての経緯を知り、より一層気合を入れた。

「それなら……ルシファーは、わたしたち(フリーデン)が倒すしかないわね」

玄は静かに、しかし決意を込めて呟いた。長い黒髪を風になびかせながら、街の空を縫うように滑走し、全速力で色神学園を目指した。

 

色神学園を視界に捉え、玄は最後までスピードを緩めることなく突き進んだ。校門はすでに進入禁止となっており、二台の蜘蛛型警備ロボットが見張っていた。

玄が校門に近づくと、二台の蜘蛛型警備ロボットが即座に動き出し、警告音を発した。しかし、玄はそれを無視して一瞬で二台の間をすり抜けた。すれ違いざまにイリスが入校許可を提示し、蜘蛛型ロボットは静かに通過を許した。

 玄たちは第一グラウンドへ急いだ。普段は学生たちで賑わう学園内は、今や物音ひとつしない静寂に包まれていた。避難を完全に終えているようだった。

玄は一色こがねも安全な場所に避難したと思い、安堵のため息をついた。その瞬間、静寂を破るような一発の銃声が響いた。その音で、再び気を引き締めた。

 玄はついに、第一グラウンドを視界に捉えた。グラウンドを囲むフェンスには穴が開き、照明は割れ、地面には大小様々な窪みができていた。ドライたちが激しい戦いを繰り広げているはずなのに、グラウンドは妙に静かだった。

グラウンドまであと二メートル――その瞬間、玄の真横をものすごい勢いで何かが通過し、背後のコンクリート壁に叩きつけられた。

 玄は咄嗟に止まって振り返り、目を見開いた。壁には、傷ついたドライがめり込んでいた。「ドライ……」

玄は小さく呟き、すぐさまグラウンドに視線を戻した。

 グラウンドの中央には、ルシファーが胸を張って悠然と立っていた。

玄はほうきから静かに降り立ち、それを小さく畳んでポケットに収めた。

「イリス、ドライをお願い」と低い声でイリスに指示を出した。

「わかった」

イリスは玄の肩から飛び、ドライのもとへ向かった。

 玄はレッグホルスターからレーザー銃を引き抜き、ゆっくりとグラウンドへ一歩ずつ足を踏み入れた。ルシファーを見据えながら、足を止め、ゆっくりと口を開いた。

「はじめまして……でいいかしら?」

 張り詰めた空気の中、ついにグラウンドの中央で二人の視線が交差した。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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