表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

養豚令嬢は今日も無敵らしい 下

趣味は創作小説投稿、さんっちです。ジャンルには広く浅く触れることが多いです。


用事がある夕方まで待つ午後は、本当に落ち着かない。同時に何も無いので持て余す。そんな時は創作だ(何様のつもりだ)!

「げっ、養豚令嬢!?」


第一声でそう叫んだルキドを1発殴り、ファビロス候爵は深々とお辞儀する。


「よ、ようこそいらっしゃりました、トリア・パールム様。愚息の無礼をお許しください」


「いえいえ~。突然の来訪ですが、お出迎えありがとうございます。とりあえず、少し領土にブーちゃんを放ちますね」


・・・・・・空白が数秒間。え?と間抜けな声すら出なかった。


「えっと、トリア様?今、なんと・・・」


トリアの前に、ダーヴィッドとボーが割って入る。


「ハッキリ言う。ファビロス候爵家の領土内で魔物の目撃が増えている。ということは、領土内に魔物がこちらへ来る通り口がある可能性が高い」


「早く見つけないと、永遠に塞がらないわ。見つけ出さないとね。そこで魔物の使いである豚ちゃんが、活躍するってことよ!」


候爵の言葉より前に「出動~!」とボーの明るい声。刹那、トリアについてきた豚全員、一斉に散らばっていくではないか!


豚が魔物の使いと言われている理由。それは豚という生き物はどういうわけか、魔物のエネルギーにそこまで悪影響を受けないからだ。そして彼らは、そのエネルギーをすぐさま察知することが出来る。豚が魔物と似ているのか、その逆かは分からないが・・・というのが、ダーヴィッドの説明だ。


慌て出す候爵たちだが、数分もせずに1頭の豚が駆け寄ってきた。それらしきモノを見つけたようだ。トリアたちはすぐに走り出す。


現場は、かなり荒れていた。木々が何本も倒され、地面はひび割れている。倒れている木を来た限り、そこまで日は経ってないだろう。そして地面の大きな切れ目から、黒ずんだオーラが湧き出ているのを確認した。


「あれだ、あれが歪みの出来はじめだ。小さな魔物なら、容易く通れてしまうな」


ダーヴィッドは向こう側で学んだ知識で、大量の魔方陣を記していく。そして念を込め、封印術を唱えだした。バチバチと火花が散るような音、ガスのように空気を漂う黒い歪み。一刻も早く消したいが、思ったように進まない。


「マズいわね、ダーヴィッド1人じゃ太刀打ちできないかも・・・」


ボーが魔力を持って応対するが、変わらず劣勢だ。魔力を扱える人間は、そう多くないのがこの国だが・・・。


「・・・ブーちゃん達、私を応援してくださいね!」


トリアがその言葉と同時に、彼らを手助けする体制に入った。刹那、彼女から溢れ出す魔力。普通の人間からは考えられない、何十倍もの威力だ!その力の前では歪みも無力、するすると小さくなり・・・やがて、跡形も無く消滅した。


「なっ!?何故、貴様が・・・」


「さぁ~?元々パールム公爵家は、魔力の扱いが上手いですし。お姉ちゃんもその甲斐あって、王妃になりましたからね。あとブーちゃんを愛でるようになってから、もっと上手くなりました~」


ウフフと何事も無いように微笑むトリア。相変わらず、ただ者ではなさそうだ。


「本当に・・・本当に感謝します!だが何故、我が家の敷地に歪みが?」


「うーん、この感じ・・・魔力伴った武器を使ったでしょ。下手すると武器から魔力が漏れて、それが魔物側の世界と繋がるのよ」


ボーの言葉に「あら?」とトリアが首をかしげる。


「そういった武器の購入には、国の許可が必要ですよ?ですがお姉ちゃんの報告では、ファビロス候爵家からは、特にそういう報告は無かったはずですが?」


チラッと見た先には・・・冷や汗を1つ、また1つと落としていくルキド・ファビロスの姿が。「ルキド、何か言いたそうだなぁ?」と、ファビロス候爵がジロリと睨む。


「・・・いや、その・・・。最近手に入れた剣の切れ味、試すために・・・そこら辺の木、片っ端から。いや、その・・・まさかここまで・・・」


「大馬鹿者ぉおおお!!そして私の許可無く、武器を購入するなぁあああ!!」


それから小1時間、ルキドは父からこっぴどく説教される。その様子を背に向けつつ「ちゃーんと報告しますねぇ、では」と、トリアたちは弾み足で帰路につくのだった。





歪みは無事に消え、人間と魔物の衝突は回避できた。ファビロス候爵家は勝手に魔力武器を購入した罰として、「私がちゃーんと見てあげますね」とトリアが言い出し、定期的にパールム公爵家が見張るような関係になったという。今まで自由奔放さを放置してきたことを反省した候爵により、ルキド・ファビロスには厳しい教育係が置かれることが決まった。これを機に、独りよがりなワガママがなくなったとか。


そして今回において、功績を作った豚の評判は広がり、多少国民の豚への嫌悪が薄れた形となった。他にも魔力関連に豚の活用が注目され、国内で豚の成育に力を入れる動きが増えている。


「これで皆さんが、ブーちゃんを好きになれば良いですねぇ。お姉ちゃんも、もっとブーちゃんの家を作りたいと言ってました」


(それ、養豚場を作るってことよね?食用だと思うんだけど・・・)


「でも何故皆さん、ブーちゃんと言わないのでしょう?そっちの方が可愛いのに。お姉ちゃんなんか“ブーブー”って言うんですよ!失礼ですよね」


(どちらも似たようなモノだと思うが・・・?というか、王妃も似たような性格だな)


パールム公爵家は、あれから変わらない日々を過ごしている。ブーちゃんの家で作業、公爵家の執務、間にちょっとした休憩。目的を果たしたダーヴィッドとボーは帰るつもりだったが「ブーちゃん達が、ここに残ってって言ってますね。勿論、私も同じですよ~」というトリアの言葉を受け、ここに残ることを決めた。こうしてトリアと同じ席で、ティーブレイクも出来ている。


「で、アンタどうすんの?せっかく残るんだし、今度こそトリアちゃんの婚約者になる?」


ボーの言葉に、ダーヴィッドはぶほぉ!?と紅茶を吹き出した。かなり器官に入ったようだ、ゲホゲホと低い咳が止まらない。


「大馬鹿者!トリア嬢には既に、複数の縁談の申し出が来とるわ!!」


「あ~、それ全部断ります。もうちょっとブーちゃん達のお世話がしたいので」


「ふぁ!?き、聞いてないぞ!?」


「さっき決めましたので。あ、連絡は既にしてありますよ~」


相変わらず、ダーヴィッドはトリアに振り回されてばかりのようだ。ある意味大変そうな日々だが、向こうでの生活よりかは楽しいだろう。



だって彼らは「協力者」、互いをしっかり信頼しているのだから。



(まぁ世の中、上手い関係があればソレで良いでしょうね)


ボーはそんなことを思いつつ、庭先の雑草をムシャムシャ食べ尽くしていく。ぎゃあぎゃあと騒がしい彼らの日常は、少しずつ周囲に影響を与えているようだ。


何百年か後、魔物(ブーちゃん)を率いて富を成し、大陸のほぼ全土を統一した“養豚女神”の神話の始まりになるなど、全く知らずに。


fin.

読んでいただきありがとうございます!

楽しんでいただければ幸いです。


次作は4部作と、長くなりそう。またまたファンタジー系ですので、お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ