EPISODE5-1
海水浴から数日経った。
結局あの日は空も双樹も進展はなかったようだ。
「お帰りなさいませ、お嬢さま。」
学校から帰るなり私を出迎えたのはウチの使用人達だった。
東条家は平安時代から続く陰陽師の家系で、数百年間絶えることなくその血は脈々と受け継がれてきた・・・らしい。
正直私にはそれほど関心はない。
と言うのもだいぶと歳の離れた兄が居るおかげで、私には後継ぎだ、何だと言われたことはない。
ただ、東条家始まって以来初めての魔力と東洋で言う気の両方を持ち合わせた子供なのだそうだ。
そのために私は魔法学園に通わしてもらえている。
「ただいま。」
世間的には時代錯誤も甚だしいのかもしれないが、私個人的には今の暮らしに何一つ不満などない。
「お嬢さま、お嬢さまに依頼がきてございます。」
依頼、と言うものを除けば。
その内容は多岐にわたる。
お祓いなどに始まり、果ては悪鬼退治などの依頼までやってくる。
普段は次期頭首である兄の仕事なのだが、人手不足はいかんともし難いらしい。
なのでこうして代わりに私が依頼をこなすのである。
「内容は?急ぎ?」
海に行った帰りでなるべくならば急ぎでないで欲しいが、そうは上手く行かないみたいだ。
「至急、とのことですが、少し今回はやっかいそうでして・・・」
言い淀む使用人の茂じいは、久しぶりに見たかもしれない。
ちなみに茂じいとはウチの中でも一、二を争う古株だそうだ。
私が小さいときから茂じいはおじいさんだった。
「危険なのね。」
「はい。
どうにも学園の裏手の山に、物の怪の類が出たそうでして、その退治をとのことです。」
「そりゃ大変。
すぐ用意して行くね。」
急いで自室に戻り、すぐさま準備を整えた。
準備と言っても漫画みたいに仰々しい着物などは着ない。
あんなものは正式な行事のときだけだ。
なので私は格好自体は変わらず、小さなかばんを取りに帰っただけである。
「今回は事が大きい故、私も同行させて頂きます。」
と言い、齢70を迎える茂じいも一緒に行くことになった。
基本的に危険度が増せば必然的に人数は増えるもので、逆に2人というのは異例とも言える。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私たちが学園近くの山道にたどり着いたときにはすでに時刻は9時を少し過ぎたころだった。
山に一度足を踏み入れると、たちどころに淀んだ気の流れを感じた。
これほどまでに淀むことはめずらしい。
と言うより寧ろ変である。
「かなり酷いね。
こりゃ悪鬼も出るよ。」
と、愚痴を零しつつも、早速仕事に取り掛かった。
陰陽道と魔法とはそれ程までに大きな違いはない。
簡単に言ってしまえば、燃料の違いというやつだ。
茂じいに辺りの警戒をしてもらいながら、私は早速この歪みの原因の調査に取り掛かった。
予め家から持ってきていたモノの中から一枚の紙を取り出した。
それには大きな円が2つ、その円の間を12分割し、子から亥までの方角に関する文字が、また円の外側には行書体で様々な文字がギッシリと書き連ねられている。
ただ、円の内側にはポッカリと空白になっていた。
紙を地面に置き、鞄からもう一つの道具、小刀を取り出し躊躇いなく美代は自分の指を軽く切った。
浅くとはいえ、左手の人差し指からはうっすらと血が滲み、その滴を紙の空白部分に落とした。
紙はすぐ紅く染まった。
「示せ」
声が森林独特の湿った空気を揺らした。
すると紙に広がったはずの血は一点にあつまると、ゆっくり移動して丑と書かれた文字の上を再び紅く血塗った。
「出たよ。」
近くで警戒に当たっていた茂じいにすぐさま探知結果を伝える。
これは日本古式の陰陽道と、中国伝来の風水を独自に組み合わせた東条家独自の術式である。
使用者の血を媒介に使い、捜索、または探知などを行える便利なものであるが、欠点として対象物の情報が必要で意外と使い勝手は悪い。
今の場合は探知目標である気が辺りに充満しているのでこの点ではその短所はカバーしている。
「左様ですか、それで如何でしたか?」
警戒心は保ったまま近くで警戒に当たっていた茂じいにすぐさま探知結果を伝える。
これは日本古式の陰陽道と、中国伝来の風水を独自に組み合わせた東条家独自の術式である。
使用者の血を媒介に使い、捜索、または探知などを行える便利なものであるが、欠点として対象物の情報が必要で意外と使い勝手は悪い。
今の場合は探知目標である"気"が辺りに充満しているのでこの点ではその短所はカバーしている。
「左様ですか、それで如何でしたか?」
警戒心は保ったまま美代に聞いた。
「北北東だって、それとやっぱりコレは人為的に起こされてるみたい。」
「そうですか、とりあえず急ぎましょう。
日没もきになりますので。」
「うん、早く帰ってご飯食べたいしね。」
お気楽な私を他所目に、茂じいは渋い顔をしていた。
それを見て、私は心配しすぎだと内心で思っていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
三島明は月見山にいた。
月見山というのは魔法学園の裏手にある山の別名で、クラブ活動の一部としてきていた。
サバイバルなどと言っておきながら、今日は山頂まで行って再びふもとまで戻ってくるタイムトライアルだ。
ただし各人が10kgの重り持ちながら行うと説明を聞いたものの、
「うげ、これ結構きつい・・・」
魔法の行使は原則禁止だが、自分の身を守るためなら例外的に許可されている。
とは言え、こんなところでは使うこともないだろう、と甘く見ていた。
それにさっきから人どころか、生き物を見かけることもない。
夏もそろそろ本格的になってきているのにコレは明らかに様子が変だと明は思いながらも、最下位になったら罰ゲームというルールのためにひたすら頂上をめざしていた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
山道から外れたひと際険しい獣道を登りながら、甘く考えていた自分に呆れつつも明はその歩みを止めることはない。
青々と茂る木々の間を縫うようにして歩く、葉っぱと自分の体が擦れる音、布の擦れる音、空気を吐く音が響く。
背筋を伝う汗は乾く前に新たに湧き出てくる。
ガサッ
自分の後ろで葉の擦れる音がした。
どうせ小さな動物だろうと振り向くこともなく歩き続ける。
ガサッ
ガサッ
しばらく歩いても後方からの音がついてくる。
「何だ?」
と明は後ろを振り向いた。
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「ねえ行こうよ~」
琥珀は空に腕を引かれながら、いや、引っ張られながら歩いていた。
事の始まりは放課後、今日は珍しく空の執行部の活動もなく早く帰れるというので琥珀は正門で空を待っていた。
どうせ何だかんだと引っ張りまわされると思っていたが、
「ねえねえ、何か裏山にお化けでるらしいよ?
見に行こうよ!?」
と言われて、琥珀は呆れた。
そしてすぐさま
「行かない。
お化けなんかいない。」
と言い空をおいて帰ろうかと歩きだした。
「待ってよ~。
もしかして怖いの?」
ニヤっと笑った空に、琥珀はうんざりしつつも
「わかったよ。」
溜息をしつつも、すでに腕を掴んで歩きだしている空に並び琥珀は歩きだした。
お久しぶりです。
センター試験のためしばらくお休みしてすみません。
と言いつつ次は2次試験のためにお休みになりそうです 笑”
気長に見てもらえるといいかな、と思います。




