EPISODE4-3
「ねぇ、やっぱり琥珀くんも魔法使えるんだよね?」
って、私何普通のこと聞いてんの!?
魔法学園の生徒だから当たり前だよー
何か話さないといけないって思ったら何も思い付かなくてつい・・・
「空とか要とか泉さん程凄い訳じゃないけど、俺も一応学園の生徒だからね。」
へぇー、やっぱり琥珀くんも凄い魔法使いさんなんだなぁ。
いいなぁ、私も魔法使えたら一緒の学校通えたのになぁ。
「何言ってんだよ琥珀。
この中じゃ一番強いんじゃねぇの?」
確か明くんだったかな?
活発そうな琥珀くんとは違った感じのカッコイイ人。
あともう一人の要くんは優しそうな感じがするなぁ。
「そうですよ。
僕も負けちゃいましたしね。」
えっ!?
琥珀くん要くんに勝っちゃったの!?
「でもでも、要くんってSクラスだよね?」
チカちゃんが思わず要くんに聞いた。
「はい。
僕と空さんと泉さんはSクラスです。」
やっぱり空さんって凄いんだ・・・
何だか魔法使えて、それに成績も良いなんて憧れちゃうな。
でも、何で琥珀くんはSクラスじゃないんだろ。
要くんに勝てるぐらい凄いのに。
「やっぱり魔法いいなぁ・・・」
「双樹ちゃんも頑張ったら使えるかもよ?」
私の呟きに返事をしてくれたのは美代ちゃんだ。
「でも私、適性ないって・・・」
私は昔、魔法の適性検査で結果が出ている。
その結果を踏まえて進学などが決まってくるわけである。
「確かに適性とかは関係あるんだけど―――――」
美代ちゃんが言葉を詰まらせたのを見て、今度は要さんが続ける。
「あくまで適性とは向き不向きを調べるためのものです。」
「じゃあじゃあ、私たちにも使えたりするのかな?」
要くんの言葉を聞いたチカちゃんが身を乗り出して尋ねる。
きっとチカちゃんがしなかったら私がしてたかも。
「それはわかりませんが、可能としては考えられますね。」
「そもそも魔法って何なんですか?」
隣で聞いていたミチルちゃんが今度は尋ねた。
「そういやぁ俺もあんまり考えたことねぇなぁ。」
「私もー。」
明くんと美代ちゃんも話にのってくる。
正直、魔法が使えない私にとってかなり興味がある。
「なら簡単に説明しますね。
まず魔法を使うのに何が必要かわかりますか?」
「それは魔力だよね。」
私が要くんに答える。
「じゃあ東条さん、魔力とは何ですか?」
少し難しい質問をする。
「えとー、なんだっけ?」
「そうですね、精神エネルギーと呼ばれてはいますが詳しくはまだわかっていません。
そして魔法が使えるかどうかは、この魔力を蓄積できるかどうかと言うことに関係しています。」
「どういうことですか?」
ミチルちゃんが要くんに問い掛ける。
私は早くも話がわからなくなりつつある。
「魔力は誰の体でも精製されているんです。
ただ、魔法遣いと呼ばれる人の体は少々違いがあるんです。」
「ファクターと呼ばれる因子―――」
琥珀くんが話しはじめた。
何かを思い出すように。
「魔法遣いの体にはファクターと言う因子が存在する。
この因子の役割は発生した魔力を体に蓄積することができる。
逆にこの因子がなければ精製された魔力は体に蓄積されずに霧散、つまり蒸発する。
まぁ解りやすく言えば蓋が有るか無いかということだ。」
うわぁ、琥珀くんの説明わかりやすいなぁ。
あれ?でもそれじゃあ
「なら適性なしと言われた人にはその因子はないんじゃないですか?」
私が考えつくより先にミチルちゃんが口にだした。
「適性検査は向き不向きを調べると言いましたよね?
つまりは向いてはいないが、因子はあるかもしれないんです。
元々因子はみな多少なりとも保持しています。
ただその量には個人差があって、多い人は向いているというだけです。」
要くんが最後まで丁寧に言葉を繋いだ。
もしかしたら私にも使える魔法ってあるのかも!!
なんかそう考えただけでもテンションあがってきたかも。
「ただあまりに少ないと魔法が発動しないし、下手をすると倒れちゃうかもしれませんけどね。」
えー!?
要くんちらっと怖いこと言ってるよ!?
「ある程度練習すれば元素を操ることぐらいはできると思いますけど。」
「要くん、あんまり煽るようなこと言ったらダメじゃないの?」
空ちゃんが要をたしなめた。
でも、すでに私の中では魔法が使えるかもということで頭がいっぱいだった。
「魔法使いすぎちゃった時ってどうなるの?」
チカちゃんがさっきの要くんの言ったことに反応した。
もしかして使い過ぎたら死んじゃうとか・・・?
なら怖いなぁ。
「魔法の過剰行使は・・・疲れて気絶しちゃいますね。」
もしかしたら死んじゃうとか思ってた私は何なの!?
「ですがあまりムリをすると本当に体を壊してしまいますよ?」
話が一段落して、目の前にある紅茶を一口飲むと、少し冷たくなった液体が口の中を潤していく。
「ところで琥珀くんと遊んでるあの小さい動物ってやっぱりドラゴンなの?」
チカちゃんがシロと遊ぶ琥珀くんに目を向ける。
手の平サイズのドラゴンなんて聞いたこと無いよ。
でも白くてかわいいなぁ。
さっき触ろうとしたら噛まれちゃったけど。
「それとも使い魔さんとかなの?」
私もチカちゃんの話の流れに乗る。
ドラゴンってもっと怖いもの想像してたのに、実際見てみると琥珀君のポケットの中に入ってるようなかわいさだもん、違う意味でびっくりしちゃったよ。
「うーん、どうだろ。
琥珀さんはシロさんと契約したんですか?」
少し離れたところで遊んでいた琥珀くんに要くんが声をかけた。
琥珀くんってもっと寡黙なイメージだったけど、シロちゃんと遊んでる時の顔かわいいな・・・
なんてこと言ったら怒られちゃうかな?
「いや、してないけど。
やっぱした方がいいのか?」
「そうですね、ドラゴンといえども魔法生物ですからね。
魔力の供給を受けないと生きていけないんですよ。
その点を考えるやはり契約をして安定的に供給をする方がよいのではないかと。」
琥珀くんと要くんの会話は私にはよくわからなかった。
契約とか魔力の供給とか。
「んー、ならちょうどいいし今からやるか。」
「そうですね、神崎さんたちに見てもらうという意味ではいいかもしれませんね。」
えっ?えっ?
今から契約っていうのが見れるの!?
それを聞いてチカちゃんもミチルちゃんも興味津々だ。
そして琥珀さんはごそごそと何やら準備を始める。
部屋にある紙とか軽いものを片付けていく。
「よし。
なら始めるから少し下がってて。」
部屋の中の開けた場所にシロちゃんを立たせ、その正面に琥珀くんが膝立ちになる。
それから右手の手の平を天井に向け、そのうえにグレーのビー玉の様なものをそっと乗せる。
琥珀くんが静かに目を閉じた。
空気がピリッとした気がする。
「盟約を交わし、我と契りを交わさん――――」
そっと琥珀くんの口から優しく言葉が紡ぎだされる。
それがなにを示しているのかは私には直感でしかわからない。
手の平の玉が一瞬だけ輝く、そして琥珀くんとシロちゃんを囲むように線が空間を走った。
やがてその線は円を描き、さらに円の中に不思議な幾何学模様を作り出す。
不思議と私は安心できた。
「シロ。」
円の中にいる琥珀くんがシロちゃんを呼ぶ。
そして琥珀くんは左手を延ばしてそっとシロちゃんに触れると、弾けるように2人を囲んでいた魔法陣が消え去った。
「っと、これで終わりだ。」
「すっごーい!!」
「すごいすごい!!」
私とチカちゃんが一斉に声を出す。
今目の前でファンタジーの世界の中だけに起こるような現象を見て私の気持ちは押さえられなかった。
魔法かぁ、私も使えたらいいのになぁ・・・
~~~~~~~~~~
「マスター。」
碧眼の女が傍らに座っている男に口を開く。
長く延びたブロンドの髪は暗い部屋にわずかに窓から差し込む光に反射してきらめく。
ゆったりと椅子に腰かけている男はその様子を見ることもなく言葉を返す。
「首尾の方はどうなっている。」
「はい、我らの同胞が現在準備に取り掛かっています。
ですが、やはり日本の学園は中々難しいようで手こずっています。
今しばらくお待ちいただくことになるかと。」
「そうか。
期待しているぞ。」
短いやり取りを終え、再び女が広い部屋から出ていく。
中に残された男はただ黙って椅子に座っていた。
目を閉じ、何かを思い続けて。




