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EPISODE3-6 return

「つっかれたー」

 

 荷物を降ろして明が大きくため息をついた。

 三泊四日の研修旅行を終えて今さっき学園に戻ってきた。

 ただ行きとは違うのは帰りは自分たちの力で戻ってくることになっていたところだ。

 もちろん近いグループの方が楽で、遠くなればなるほど帰るのが大変なわけだ。

 

「それにしても遠すぎだよぉー」

 

 東条美代が空のとなりでぶーぶー文句を言いながら地面にへたり込んだ。

 研修旅行は一日目を除けばおおむね困ったこともなく、平和だった。

 ただそれは他のグループと比べるとどうかということは考えるまでもない。

 でもそのおかげで地元の人たちと親交を深めたとも言えるわけだが・・・

 

「にしてもムサビさんいい人だったなー」

 

 明の言葉にみな一様にうなずき返す。

 ムサビさんとは村の長老さんのことである。

 山賊の襲撃を助けたことで仲良くなった人である。

 食べ物とかに困っていた琥珀たちを自分の家に招待していろいろと気を使ってくれた、どちらにとっても恩人ということになる。

 

「それでも最初はどうなるかと思ったよね。」

 

 空の呑気な発言の陰には一日目の山賊の襲撃は夢だったということで結論が出ているからだろう。

 それを琥珀も東条も明もあえて真実を教えずに、空が夢だと思っているならそれでいいという合意のもとで秘密にされていた。

 

「だよなー。村人がみんな冷たいんだもんなぁ。」

 

「でも何で次の日には優しくなったんだろうね??」

 

「まあ・・・人見知りだったんだろ、きっと。」

 

 明のごまかしに東条も琥珀も乾いた笑いを返すことしかできない。

 

「ふーん。そういえば琥珀の魔法玉どうするの?壊れちゃったんでしょ?」

 

「ああ、見事に粉々だ。さっき先生に言ったら後で呼びに来るってさ。」

 

 空が言い終わり、さっき自販機で買った紅茶を飲んだ。

 周りにも結構な数の生徒たちが帰ってきていた。

 それはおそらく学園から近いところだったからだろう。

 とは言え、日本ではないのだが。

 

「ん、琥珀呼ばれてるぞ~」

 

 だるそうに名前を呼んだ明の方を見てみると担当の教師が手招きをしていた。

 疲れた体を無理やり持ち上げて立ち上がった。

 

「じゃあちょっと行ってくる。」

 

 それを告げて疲れきっている友達に話しかけた。

 空はまだピンピンしていたが・・・

 やっぱり出来が違うんだなと一人納得しながら琥珀は学園長室に通された。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 2,3度ドアをノックしてからドアノブをひねった。

 さすがというほどの重々しい扉を開いた。

 室内は下品ではない程度に装飾がされている。

 

「失礼します。」

 

 振り返って琥珀はドアを閉めた。

 室内には学園長と琥珀だけ。

 さっきまでいた教師はいつの間にか姿を消していた。

 

「おお、来よったか。まあ疲れたじゃろうてまずはほれ、そこに座れ。」

 

 やさしそうな微笑を浮かべながら、大きないすから立ち上がって部屋の中央部にあるソファを指差した。

 自らもソファに座りなおすためにこっちに歩いてきた。

 

「まずはお帰りと言わねばならぬな。」

 

 座る前に近くにあったティーカップに紅茶を注ぎながらゆっくりと話し出した。

 

「それで集会もあることだし単刀直入に本題を話すとしようか。」

 

 その言葉で琥珀の顔は一気に引き締まった。

 出発前に注意されていたこと、それは極力魔法の使用は控えること

 今の琥珀のおかれている立場はそれを堂々と真正面からぶち壊してしまっている。

 

「・・・すみませんでした。」

 

 謝罪の言葉しか話すことができない。

 明らかな違反行為である。

 

「ふむ。何か勘違いをしているようじゃがな。」

 

 と学園長が続ける。

 

「わしは極力使うなと言っただけじゃ。誰も使うなとは言っておらん。

 それに事情はちゃあんと聞いておるぞ。」

 

 その学園長の言葉に思い当たるものが琥珀にはあった。

 

「・・・やっぱり付けてましたか。」

 

「ほぉ、気づいておったか。」

 

 と言って学園長はほっほっほ、と笑い出した。

 

「・・・西野先輩ってところですね?」

 

「そこまで気づいておったか。西野もまだまだじゃのぉ。

 と、そんな話は今は良いのじゃ。重要なことはおぬしの持っていた魔法玉じゃ。」

 

「はい。」

 

 と短く返事をする。

 

「あれはそうそう簡単に壊れるものじゃないんじゃよ。」

 

 その言葉に続く言葉を琥珀は気づいていた。

 

「・・・」

 

 けれどもその理由を話すことはなかなかできない。

 

「もちろん物理的な破壊も用意ではない。

 そして西野くんからの報告から推測するに・・・」

 

「たぶんお考えのとおりだと思います。」

 

 と、それだけを告げて沈黙が二人を包んだ。

 そして学園長がおもむろに、そして驚くべきことを琥珀に告げた。

 

「そのイヤリングをはずしてくれるかの?」

 

「・・・!?」

 

 驚いて琥珀は話すべきことを見失った。

 

「わかっておる。じゃがこの学園なら多少の魔力ならば問題にはなるまい。それにの・・・」

 

 という前に学園長にせかされて琥珀はしぶしぶ言われたことをすることにした。

 もちろん危険かもしれないが、まあ一学園の長ともなれば大丈夫なのだろうと無理にでも思うことにした。

 それでも無事でいられるかは保障できない。

 

「・・・はあ、わかりました。」

 

 と言っておもむろに右手で耳のイヤリングをはずした。

 ゆっくりとした動作だったが、はずした後の出来事は一瞬だった。

 学園長室の中の空気が張り詰めた。

 ピリピリとした空気で満たされる。

 

「・・・」

 

「おお、噂以上じゃのぉ。」

 

 と暢気に笑って見せた学園長。

 

「この程度ならば大丈夫じゃろ。」

 

 と立ち上がった学園長をよそに琥珀は目を閉じてゆっくりと息を整える。

 それは魔法遣いが集中力を高めるときにする行為である。

 するとさらに部屋の空気が変わる。

 それは先ほどまでのピリピリと肌に感じる程度ではなく・・・

 

 ~~~~~~~~~~

 

 空はまだ待っていた。

 なかなか帰ってこない琥珀にいい加減痺れを切らした空は、

 

「探してくる。」

 

 とだけみんなに言ってから立ち上がった。

 それをとめることもなく美代も明も手を振るだけだった。

 帰るために魔法玉の魔力と自らの魔力を大量に使ったからだ。

 

「もう、いつまで話してるんだろ。」

 

 行き先はたぶん学園長室だろうと見当は付いていた。

 魔法玉を壊したとあればそこしかないと思っていた。

 最上階の5階にある学園長室を目指して校舎の中に足を踏み入れた。

 目の前に続く階段に一歩踏み出そうとした瞬間に学園を包む莫大な魔力に体が強張った。

 それだけなら空にも驚いた程度で済んだが、次の瞬間その魔力が爆発したように空には感じた。

 もちろんそれは物理的な爆発などではなかった。

 

「・・・な、なに・・・これ。」

 

 足が震える感覚に陥る。

 圧倒的な魔力、圧倒的な威圧感、そして言い知れぬ恐怖感が空を襲った。

 ただ立っているだけでも辛く感じる。

 場所は離れているはずなのに、これほどのプレッシャーなど今まで感じたことがない。

 

「あ、うっ・・・」

 

 うまく空気が吸えない。

 おそらく他の人間ならばすでに倒れていたかもしれない。

 動かないどころか震え出した足に無理やり力をこめてかろうじて立つ。

 廊下に崩れかける一瞬手前にあたりを包み込んでいた魔力が急速に減退していった。

 最後にはその存在さえ消えてしまうほどに。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 何度か息を整えてから、再び恐怖で震えていた足に力をこめた。

 今度は立つためではなく、歩き出し階段を上るために。

 先ほどの時間に比べるとあっという間に学園長室の前に着いた。

 そしてノックをして琥珀がいることを確認しようとしたところ、中からよく知った声が漏れてきた。

 それを盗み聞きするつもりは空にはなかった。

 それでも聞こえてしまった。

 琥珀の声が

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